デジタル庁および厚生労働省が運営する「e-Gov電子申請」において、就業規則届や時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定届)を含む労働基準行政関係手続きの申請様式が2026年9月28日に改訂されました。この改訂により、前日の2026年9月27日以前にシステム内で作成・保存されていた下書きデータはすべて再利用できなくなり、継続申請を行う場合でも新様式への新規入力が必須となります。
2026年9月28日施行のe-Gov様式改訂とシステム仕様変更
今回の仕様変更は、労働基準法第36条に基づく時間外・休日労働協定届や、同法第89条に基づく就業規則(変更)届など、事業場が労働基準監督署へ届け出る中核的な行政手続き全般に適用されました。特に建設業専用の協定様式(一般条項および特別条項付き)も直接の改訂対象に含まれています。
旧保存データの失効条件と入力チェックの変更内容
これまでe-Gov電子申請では、定期的に締結・届出を行う36協定や変形労働時間制の届出書について、過去の保存データを呼び出して日付や一部数値を修正・流用する運用が広く行われていました。しかし、2026年9月28日のシステム更新以降、旧様式で保存された一時保存データは新システムへの互換性が遮断され、呼び出して送信しようとするとエラーが発生します。
今回の改訂では、データ構造の刷新に伴い入力項目とバリデーション(エラーチェック)の仕様も見直されました。協定届における「業務の種類」の選択肢指定や、特別条項における時間外労働の上限基準に関する整合性チェックが強化されています。
| 項目 | 2026年9月27日以前の仕様 | 2026年9月28日以降の新仕様 |
|---|---|---|
| 保存データの再利用 | 過去の保存データを呼び出して更新・送信が可能 | 旧様式の保存データは再利用不可。新規作成が必須 |
| 業務の種類の入力方式 | 任意のテキスト記述が中心 | e-Gov指定の選択肢からの選択が必須 |
| 特別条項のチェック | 基本的な数値入力チェックのみ | 1か月・1年の超過時間数と適用事由の入力必須条件を厳格化 |
| 外部労務ソフト連携 | 従来のAPI・CSV仕様に基づくデータ取込 | 各ソフト会社による新様式対応アップデート版の適用が必要 |
改訂の対象となった主要な手続き一覧
建設業の事業活動に直結する協定届を含め、改訂対象は多岐にわたります。各事業場単位の届出だけでなく、複数事業場を統括する本社一括届出の様式もすべて変更されています。
- 時間外労働・休日労働に関する協定届(建設業)(各事業場単位による届出/本社一括届)(一般条項)
- 時間外労働・休日労働に関する協定届(建設業)(各事業場単位による届出/本社一括届)(特別条項付き)
- 1年単位の変形労働時間制に関する協定届(各事業場単位による届出/本社一括届)
- 就業規則(変更)届(各事業場単位による届出/本社一括届)
- 時間外労働・休日労働に関する協定届(一般・自動車運転者・医師・研究開発)(各事業場単位/本社一括)
参考記事: 建設業の36協定・時間外労働の上限規制の基礎知識|2024年4月適用ルールと違反リスクを解説
建設業界の各プレイヤーに生じる実務上の影響
建設業においては、2024年4月の時間外労働上限規制(年720時間、月45時間超は年6回まで等)の適用に伴い、協定届の記載精度が法規制遵守の面で厳密に評価されます。今回のe-Gov仕様変更は、元請け・下請け双方の労務管理オペレーションおよび関連システムに具体的な実務対応を発生させます。
ゼネコン(元請け):本社一括届出と複数事業場の申請プロセスの見直し
支店や作業所など多数の事業場を抱えるゼネコンでは、本社または支店単位で36協定や変形労働時間制の協定届を一括電子申請するケースが多く見られます。下書きデータの流用が遮断されたことにより、改訂直後の申請期日を迎える現場においては、ゼロからのデータ入力が必要となり、労務担当部門の工数が一時的に増加します。
特に建設業向けの特別条項付き36協定届(様式第9号の3の3等)では、臨時的な特別の事情が生じた場合の協定内容や労働時間の算定基準を厳格に入力しなければなりません。新設されたエラーチェック基準に従い、入力不備による差し戻しや届出遅延を防ぐための社内スケジュール再編が求められます。
サブコン・専門工事業者(下請け):専任不在のバックオフィスにおける手戻り対策
専門工事業者や地域工務店では、労務担当者が専任ではなく総務・経理や施工管理業務を兼務している事例が一般的です。過去データをベースに提出作業を迅速に済ませていた企業ほど、保存データの読み込みエラーによって手続きが滞るリスクが生じます。
協定届の有効期限が切れた状態で現場稼働を継続させた場合、労働基準法違反の瑕疵となり、元請け企業から施工体制台帳の点検時に指摘を受ける事態にもつながります。手戻りを防止するため、新様式における必須入力項目を事前確認し、代表者選任手続きの記録とあわせた入力データの再整備が必要です。
BIM・施工管理・労務SaaSベンダー:連携機能の改修とマスタ設定の整合
労務管理クラウドや給与計算ソフトを提供するベンダー各社(セルズ、オフィスステーションなど)は、2026年9月28日のe-Gov様式変更に合わせて相次いでバージョンアップやシステム改修を実施しました。API経由でe-Govと連携して電子申請を行う仕組みを持つサービスでは、改修プログラムの適用が前提となります。
施工管理ツールや勤怠管理SaaSと労務データを連携させている建設テック企業にとっても、自社ツールから出力される36協定用データやCSV形式が新様式のバリデーション仕様に合致しているかの点検が不可欠です。データ連携の齟齬による申請エラーを避けるため、ユーザー企業に対する改修情報の通知とマスタ更新の周知が重要となっています。
参考記事: 厚労省が9月16日に労働時間規制見直し着手、現場の労務管理に迫る変革
ConShiftの視点:行政DXの仕様変更が浮き彫りにする労務データの標準化課題
行政手続きのデジタル化は書類持参の負担を解消する一方、基幹システムの様式変更が民間企業側の実務ラインへ直時かつ強制的に波及する構造を持っています。今回のe-Gov改訂における「過去データの利用遮断」は、行政ポータル内に直接下書きを保持する属人的な運用スタイルの限界を示しました。
建設業では時間外労働の上限規制への対応に加え、労働政策審議会において変形労働時間制や勤務間インターバル制度の見直し議論が進展しています。協定届の提出は単なる形式的書類仕事ではなく、現場ごとの労務コンプライアンスを担保する法的根拠です。したがって、行政ポータルの仕様変更のたびに作業が混乱する体制から脱却し、社内の人事労務システム側で協定諸元を一元管理・マスタ化し、新様式へ機械的に適合できるデータ連携基盤を整えることが求められます。
届出遅延を防ぐために明日から取り組むべき実務対応
- 自社が保存しているe-Gov申請データと協定有効期限の照合
直近で更新期限を迎える36協定届(建設業様式)および変形労働時間制協定届を抽出し、2026年9月27日以前に保存した下書きデータの有無を確認します。該当データがある場合は破棄を前提とし、新様式画面での新規作成スケジュールを組み直します。
- 労務管理ソフトのバージョンおよびAPI連携状況の確認
自社で使用している給与・労務管理クラウドが、2026年9月28日施行のe-Gov新様式に対応したアップデートを完了しているか確認します。未適用の場合はソフトの更新を実施し、指定選択肢となった「業務の種類」などのマスタ登録内容を再設定します。
- 特別条項付き協定届の入力項目とエラーチェック基準の事前点検
限度時間を超えて労働させる事由や手続き、健康確保措置の記載内容について、新様式の入力条件に沿って整備します。管轄労働基準監督署への届出完了までのリードタイムを再計算し、現場稼働に空白期間を生じさせない運用を徹底します。
出典: 創業手帳株式会社
出典: 株式会社セルズ
出典: 株式会社エフアンドエム
出典: 社会保険労務士法人開東社会保険労務事務所
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