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海外トレンド 2026年9月29日

Autodesk、データ66倍増に対応|FormaでAIネイティブな判断へ

Autodesk、データ66倍増に対応|FormaでAIネイティブな判断へ

米Autodeskは「Design & Make Summit Japan 2026」にて、従来の共通データ環境(CDE)「Autodesk Docs」の名称を変更した「Forma Data Management」を軸に、AIが建設プロセスの意思決定を支援するグラニュラーデータ基盤の戦略について語りました。日本国内でも2026年4月に国土交通省による「BIM図面審査」が始動しており、設計変更や施工管理における膨大なデータ処理をAIネイティブなクラウド環境へ移行させる動きが本格化しています。

ファイル共有から「グラニュラーデータ」へ移行するグローバル建設DX

米国をはじめとする海外の建設市場では、BIMモデルや施工管理データの増大に伴い、従来のファイル単位によるデータ共有方式が限界を迎えています。米Autodeskの副社長ニコラ・マンゴン氏が提示した米カンザスシティーの事例では、建築プロジェクトで取り扱うデータ量が2003年から2023年までの20年間で66倍以上に急増しました。3次元形状モデルだけでなく、設備仕様書、工程表、資材調達ログ、各種点検記録など、多種多様なデジタルデータが各フェーズで個別に出力され、関係者間でサイロ化する問題が顕在化しています。

クラウド共通データ環境(CDE)とブランド統合の推移

Autodeskはこうした課題に対し、設計初期から施工・運用までをつなぐプラットフォーム戦略を進めています。2020年のSpacemaker買収を起点として、2026年には「Autodesk Construction Cloud(ACC)」を「Autodesk Forma」へとブランド統合し、データ基盤の構造を刷新しました。

年月 主な動き・マイルストーン プラットフォーム上の技術的変化
2020年11月 ノルウェーのSpacemaker社を買収 AIによる初期段階の都市・建築計画シミュレーション技術を獲得
2023年5月 企画・初期設計クラウド「Autodesk Forma」提供開始 設計初期の風環境、日影、騒音などの自動解析をWebブラウザ上で実現
2025年 RevitおよびAutoCADユーザーへのアクセス権拡大 既存デスクトップツールとForma Data Managementの連携基盤へのアクセス権を付与
2026年3月 Autodesk Construction Cloud(ACC)をFormaへブランド統合 従来の「Autodesk Docs」を「Forma Data Management(FDM)」へ改編
2026年9月 「AU 2026」にて次世代エージェント型AIを公開 グラニュラーデータを基盤とした自律的意思決定支援(Assistant)の展開

従来のCDEでは、RevitのRVTファイルやAutoCADのDWGファイル、PDF書類といった「ファイル」をクラウドにアップロードしてバージョン管理を行う方式が中心でした。しかし、ファイルサイズがギガバイト単位に肥大化すると、軽微な設計変更であってもファイル全体の再アップロードやダウンロードが発生し、リアルタイムなコラボレーションが阻害されます。

Forma Data Managementが採用した「グラニュラーデータ(粒度データ)」は、3Dモデルや図面を構成する壁、柱、配管、設備仕様、工程といった要素を個別のデータ単位に細分化してクラウド上で管理します。ユーザーはファイル全体を開くことなく、必要な属性データやジオメトリ情報のみをAPI経由で直接読み書き可能です。

設計・施工・運用の分断を解消するAPI連携基盤

グラニュラーデータの管理体制が確立されたことで、設計事務所、ゼネコン、専門工事業者、施主の間で発生していたデータ連携の手戻りが圧縮されます。例えば設備機器に変更が生じた場合、3Dモデルの配置情報だけでなく、機器の型番、電源容量、設置工程、点検周期といった属性情報が個別に更新され、関係各所のダッシュボードへ即座に反映されます。

米IDCのリサーチ担当バイスプレジデントであるジェフリー・ホイロ氏は、プロジェクトライフサイクル全体でデータとプロセスを統合するプラットフォームアプローチの不可欠性を指摘しています。Autodeskが提供する建設向けAIツール「Construction IQ」では、現場の安全リスクや施工品質の不具合予測において年間500万回以上の利用実績を記録しており、蓄積された構造化データがAIの学習基盤として機能しています。

参考記事: Autodesk Revitとは?意匠・構造・設備を双方向連動で一元管理する統合BIMの機能と価値

清水建設が進める「Forma活用AX」と常駐2人体制の実装

グラニュラーデータを中核に据えた海外のプラットフォーム戦略を、日本の施工現場へ直接適用している代表例が清水建設の取り組みです。同社は2026年7月、通常5名を要していた請負金額20億円規模の建築現場を元請け常駐2名で運営する「20億、2人」体制の構築を発表しました。

業務集約と自律化を進める2段階のAX戦略

清水建設は、Autodesk Forma内の施工管理機能「Forma Build」をCDEの基盤として採用し、業務プロセスを「集約化」と「自律化(AX:AI Transformation)」の2段階で再構築しています。

変革フェーズ 実施施策 導入テクノロジー 定量目標・運用状況
第1段階:集約化 現場管理業務の本社・支店移管、遠隔コラボレーション Forma Build(共通データ環境) 全プロジェクトの約8割、特定部署で100%適用
第2段階:自律化(AX) 鉄筋モデル自動生成、AI納まり判定、AIエージェント化 マルチモーダルAI、Autodesk Informed Design 2030年までに定常業務50%削減、現場常駐2人体制

清水建設の受注構造において、過去5年間の国内建築案件で請負金額10億〜50億円の工事は全プロジェクトの約20%を占めるボリュームゾーンです。100億円超の大規模現場とは異なり専任スタッフの配置が難しく、現場代理人が品質・安全・工程・原価管理を包括的に抱え込む構造がありました。Forma上にデータを集約することで、図面検討や進捗照合といった作業を現場から切り離し、支店や専門部署へ移管しています。

幾何学モデルと「現場の対話ログ」を紐付けるデータ構造

清水建設の実装における技術的特徴は、BIMの幾何学的な3次元形状データ(IFC等)に対し、現場で交わされる非構造化データを文脈ごと関連付けて保存している点です。

現場用語のゆらぎを許容した文脈保存

AIに施工判断を学習させる際、専門用語や指示内容を厳格なコード体系に統一しようとすると、現場特有の言い回しや職人間のやり取りに対応できません。清水建設の手法では、現場での指摘事項や変更議論のテキストデータを、「BIMモデル内のどの部材に対するやり取りか」「どの工種・日時の変更プロセスか」という位置情報・時間情報と紐付けてForma上に記録しています。

鉄筋納まり判定の自動化

蓄積されたデータを活用し、構造躯体モデルから配筋ルールに基づいて鉄筋モデルを自動生成する仕組みを実務へ投入しています。従来は構造図面から手作業でモデリングしていた工程をアルゴリズムによって自動化し、さらに50年以上の実務経験を持つ熟練職人の知見を学習させたAIが、部材同士の干渉やコンクリートの充填性不良を自動判定します。

参考記事: 清水建設、20億円現場を常駐2人で運営へ|Forma活用AXで定常業務半減

2026年BIM図面審査から2029年データ審査への適応要件

日本国内の建設業界において、Autodesk Formaのようなグラニュラーデータ基盤の導入は、国土交通省が推進する建築確認手続きのデジタル化ロードマップと直結しています。

建築確認審査における2段階の移行ロードマップ

2026年4月1日より、全国の指定確認検査機関等において「BIM図面審査」の本格運用が開始されました。今後は2029年春に予定される「BIMデータ審査」への完全移行が控えており、設計・施工データの管理基準を前倒しで引き上げる必要があります。

項目 第1段階:BIM図面審査(2026年4月開始) 第2段階:BIMデータ審査(2029年春予定)
審査正本 BIMモデルから出力された設計図書(PDF) 属性情報を含むBIMデータ(モデルそのもの)
提出データ形式 申請図書(PDF)、参考提出のIFCデータ 国際標準IFCデータ等のBIMモデルデータ
審査側の処理 図面間の整合性確認を一部簡素化、ヒューマンエラー防止 ルールエンジンによる法規適合判定の自動化
現場側の管理課題 PDFとIFCデータの整合性担保、出力基準の遵守 属性(プロパティ)情報の入力厳格化、データ標準整備

2026年時点のBIM図面審査では、提出されたPDF図面が正本として扱われ、IFCデータは参考図書としての位置付けです。しかし、2029年のBIMデータ審査ではモデルデータ自体が直接審査されるため、部屋の面積、防火区画、建具の仕様といったプロパティ情報が厳格に定義されていなければ審査に通りません。

ファイル管理からデータ属性管理への業務転換

多くの国内設計事務所や地方ゼネコンでは、BIMソフトを「立体的なパースを描くツール」や「3面連動の図面出力ツール」として運用しています。しかし、審査の自動化やAIによる施工判定を実現するためには、図面という成果物の管理から、データ属性そのものを管理する運用へ移行しなければなりません。

属性情報の入力負荷と分散化

意匠設計者が初期段階ですべての施工・法規属性を入力することは業務負荷の偏重を招きます。Formaのようなクラウド基盤を用いれば、設計初期のボリュームスタディ段階から法規チェックに必要なデータを部分的に付与し、設計の進捗に合わせて構造・設備設計者や施工者が属性情報を追記していく分散入力が可能です。

ISO 19650に準拠した命名規則と承認フロー

国際規格「ISO 19650」シリーズでは、CDE環境内での情報管理プロセスとして「作業中(Work in Progress)」「共有(Shared)」「公開(Published)」「アーカイブ(Archived)」のステータス管理が規定されています。ファイル名によるバージョン管理を脱却し、グラニュラーデータ単位で承認ステータスを管理することで、古いデータに基づく手戻り工事や誤発注を防止できます。

参考記事: オートデスク、2026年4月開始のBIM図面審査支援で特設サイト公開!実務定着へ

AIエージェントが建設ワークフローを自律化する展望

BIMデータのグラニュラー化とクラウドCDEへの集約は、AIが単純作業を引き受け、人が高度な判断に専念できる環境へと移行させる基盤となります。

生成AIからエージェント型AIへの機能進化

従来の生成AIは、プロンプトに応じたパース画像の生成や、議事録の要約といった補助的なタスクに留まっていました。Autodeskが「AU 2026」で公開した次世代AI機能群は、ユーザーの指示に基づいて複数のツールやデータベースを横断操作する「エージェント型AI」の構造を持っています。

[設計者・施工技術者]
       │
       ▼ (設計条件・コスト上限・工期の指示)
[エージェント型AI(Autodesk Assistant等)]
       │
 ┌─────┴──────────────────────────┐
 │                                │
 ▼                                ▼
[ジオメトリ自動生成]             [リアルタイム法規・環境解析]
 (壁・柱・スラブの自動配置)        (日影・斜線制限・風環境解析)
 │                                │
 └─────┬──────────────────────────┘
       │
       ▼
[Forma Data Management(グラニュラーデータ基盤)]
       │
 ┌─────┴──────────────────────────┐
 │                                │
 ▼                                ▼
[サプライチェーン連携]           [施工性・納まり判定]
 (部材納期・積算データの照合)     (鉄筋干渉・打設ルート自動チェック)

エージェント型AIは、設計者が入力した計画条件(延床面積、階数、構造種別、コスト上限など)を受け取り、Forma Data Management上で複数の配置案を自動生成します。その上で、日影規制や斜線制限への適合性、構造的な成立性、施工時の鉄筋干渉リスクをグラニュラーデータから瞬時に解析し、最適な修正案を提示します。

日本の建設企業が取るべきデータ資産化の工程

国内の元請けゼネコンおよび設計組織において、AIネイティブな建設プロセスを構築するための手順は以下の段階に集約されます。

  1. ファイルベース運用の棚卸し: 社内サーバーやクラウドストレージに散在しているDWG、RVT、PDF、ExcelデータをCDEへ移行し、案件横断で検索・参照可能なフォルダ構造を確立する。
  2. RevitおよびAutoCADのクラウド直結: 2025年より提供されているForma Data Managementのアクセス権を活用し、ローカル作業からクラウド同期型の一元管理へワークフローを切り替える。
  3. 対話ログ・指摘事項のデータ紐付け: 現場巡視時の指摘写真、変更図面の修正理由、定例会議の決定事項を、図面・モデルの該当部材と紐付けてクラウド上に蓄積する。
  4. 属性データの標準化: 2029年のBIMデータ審査を見据え、部材ごとに付与すべきプロパティ情報の社内ルールを策定し、テンプレート化を完了させる。

AIが自律的に施工手順を最適化し、納まりを判定するためには、学習データとなる過去プロジェクトの実績ログが欠かせません。図面を紙や静的なPDFとして保存するのではなく、意思決定の背景を含む粒度の高いデジタル資産としてForma上に蓄積することが、将来的な工事消化能力の維持に直結します。

参考記事: BIM確認申請とは?2026年運用の図面審査と2029年モデル審査のロードマップを解説

出典: BUILT
出典: Autodesk
出典: Autodesk News

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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