全国建設産業団体連合会は2026年9月29日の全国会長会議において、国土交通省に対し公共工事の発注・施工時期の平準化と補正予算の当初予算化を要請した。会議では各府県の建産連から提出された議案に基づき、年度末への工事偏重と年度初めの閑散期を解消するための具体的な制度運用が求められた。
補正予算依存の脱却と全国建産連による要望の経緯
長崎市で開催された2026年9月29日の全国建産連全国会長会議には、全国建設産業団体連合会の石津健光会長をはじめ、各都道府県の建産連代表者および国土交通省の幹部が出席した。会議では、国土強靱化実施中期計画の推進や社会資本整備特定財源の創設など8項目の決議が行われるとともに、各府県建産連から寄せられた地域ごとの課題について国交省との意見交換が交わされた。
従来の公共事業費は、当初予算に加えて秋以降の補正予算によって事業量が追加される運用が定着していた。しかし、政府が補正予算依存からの脱却を進める方針を示したことで、補正予算によって年度後半から翌年度前半にかけて担保されていた工事発注が縮小し、年度末への極端な工期集中や年度初めの「端境期(はざかいき)」が再発する懸念が急速に高まっている。
| 日付 | 主催・関係機関 | 主な動きと要望内容 |
|---|---|---|
| 2026年6月30日 | 全国建設産業団体連合会 | 総会にて石津健光会長の再任を決定。事業量確保に向けた活動方針を策定。 |
| 2026年9月28日 | 建設業主要4団体・国土交通省 | 井林辰憲国交相らと意見交換会を開催。ゼロ国債の拡充や発注平準化を要請。 |
| 2026年9月29日 | 全国建産連・国土交通省 | 全国会長会議にて国土強靱化推進など8項目を決議し、補正予算の当初化や平準化について国交省と意見交換。 |
この動きに先立ち、2026年9月28日には建設業主要4団体(日本建設業連合会、全国建設業協会、全国中小建設業協会、建設産業専門団体連合会)が井林辰憲国土交通大臣らと意見交換を実施している。その席上でも、4月当初からの着工を担保する「ゼロ国債」の拡充や、市区町村での設計遅延に伴う年度末発注集中の是正が求められた。
改正品確法(公共工事の品質確保の促進に関する法律)および第3次・担い手3法では、発注者の責務として施工時期の平準化や適正な工期設定が明確に義務付けられている。今回の全国建産連による国交省への働きかけは、国の基本方針を地方自治体の発注現場にまで確実に浸透させ、法改正の実効性を担保させるための申し入れである。
参考記事: 建設業主要4団体、井林国交相へ平準化要請|ゼロ国債拡充で端境期回避
参考記事: 担い手3法(品確法・入契法・建業法)とは?法改正の変遷と実務で押さえるべきポイントを徹底解説
建設業界プレイヤーへの具体的な影響
公共工事の発注・施工時期の平準化と補正予算の当初予算化は、行政の調達実務から元請ゼネコン、現場管理者の就労形態に至るまで、オペレーションの根幹に影響を与える。
行政・規制当局:債務負担行為の運用拡大と発注プロセスの前倒し
発注者となる国や地方自治体は、単年度予算主義に基づく「3月完成」を前提とした発注プロセスの抜本的な再構築を迫られる。具体的には、前年度内に翌年度の工事契約を結ぶ「ゼロ国債」や「平準化債」といった債務負担行為の活用が不可欠となる。
入契法に基づく調査によると、単年度で実施可能な工期1年未満の工事に対して債務負担行為を設定した実績のある自治体は、都道府県・政令指定都市で82.1%に達している。しかし、技術職員が不足する市区町村では債務負担行為の設定や早期の調査・設計業務の完了が遅れており、発注時期の偏りを生む主因となっている。国交省による「入札契約適正化キャラバン」などを通じた自治体指導と、設計ストックを前倒しで確保する体制支援が求められている。
ゼネコン(元請け):施工体制の通年安定と調達コストの抑制
元請ゼネコンにとって、工事着工が年間を通じて分散されることは、人員や重機の稼働率向上に直結する。これまでは1月から3月の繁忙期に主任技術者や監理技術者が枯渇し、案件ごとの人員配置に制約が生じていたが、通年施工が可能になれば1人の技術者が年間で複数工区を無理なく担当できるようになる。
資機材の調達面でも大きな改善が見込める。年度末の過密工程では、クレーンやバックホウなどの重機、仮設材のリース需要が一極集中し、スポット価格の上昇や調達難が発生していた。発注が平準化されれば、機材の年間調達計画を立てやすくなり、リース事業者との長期契約締結によるコスト抑制が可能となる。
現場監督・施工管理者:年度末の業務過密解消と休日取得の定着
現場管理の実務を担う施工管理者にとっては、年度末に集中していた突貫工事のプレッシャーが軽減される。工期末の書類作成や検査対応が特定の月に集中しなくなり、計画的な年次有給休暇の取得や月45時間・年720時間以内の時間外労働規制の遵守が容易になる。
日本建設業連合会の2025年度調査では会員作業所の約7割で「4週8閉所」が達成されているが、地方の中小現場では工期の厳しさから休日確保が困難な事例も残る。通年施工を前提とした余裕のある工程管理が定着すれば、現場閉所型の週休2日工事が円滑に機能し、現場管理者の労働負荷軽減と離職防止につながる。
参考記事: 国交省調査、2026年度末に27府県で市区町村の週休2日完全実施へ
ConShiftの視点:制度運用と設計ストック確保の実効性
全国建産連が求めた補正予算の当初予算化と発注平準化は、公共投資の枠組みを単年度の景気調整弁から、持続的なインフラ保全のための通年稼働システムへと転換させる動きである。
国交省が2027年度予算要求で公共事業関係費を要求し平準化方針を打ち出しても、発注権限を持つ地方自治体、特に市区町村の業務体制が伴わなければ現場の負荷は改善されない。全国中小建設業協会が指摘している通り、現場での年度末集中を引き起こす最大のボトルネックは「市区町村における設計業務の遅延」にある。設計ストックが年度内に確保できず、予算繰越を避けるために12月以降に急遽発注される構造が温存されている限り、平準化は掛け声倒れに終わる。
施工企業側が取るべき現実的な対応は、発注者側の制度変更を待つことだけではない。自治体がゼロ国債や平準化債を活用して前年度第4四半期に入札を前倒しする案件を早期に捕捉し、4月当初から即座に現場稼働できる技術者配置計画を事前に組んでおく体制整備が求められる。
まとめ
全国建産連による国交省への平準化・補正予算当初化の要望は、現場の労働環境保全と持続的な事業量確保に向けた取り組みである。
施工企業の実務責任者は、自治体の発注見通し公表スケジュールを注視し、前倒し入札される債務負担行為案件への対応準備を早期に整える必要がある。年度末の繁忙に左右されない通年施工を前提に、技術者配置と協力会社の手配計画を見直すことが重要となる。
出典: 建設通信新聞Digital
出典: 建通新聞
出典: 日刊建設工業新聞



