NTTドコモビジネス株式会社、株式会社竹中工務店、清水建設株式会社の3社は2026年10月2日、共同開発した建設業向けクラウド型工程アプリ「GaNett®」を、竹中工務店および清水建設の日本国内における建築現場へ本格展開した。施工管理業務の総労働時間を3割削減することを目指し、現場ごとに紙や表計算ソフトで分散管理されていた工程データをクラウド上でリアルタイムに統合・更新する運用へ切り替える。
竹中工務店・清水建設・NTTドコモビジネスによるGaNett国内現場展開の全容
国内の建築現場における工程管理は、現場代理人や工事主任の経験則に依存する傾向が強く、日々の工程変更や職種間の進捗調整に多大な時間が割かれてきた。今回本格展開された「GaNett®」は、工程表の作成から日々の進捗トラッキング、協力会社との情報共有までをクラウド上で一元化する現場支援アプリケーションである。
協業開始から国内現場への本格展開に至る経緯
NTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)は、従来個別に進めていた竹中工務店および清水建設との協業を2023年に統合し、業界標準となる工程管理プラットフォームの構築を進めてきた。
| 年月日 | 主な出来事・発表内容 | 実施目的・到達内容 |
|---|---|---|
| 2023年7月11日 | 3社による施工管理業務DXの協業発表 | 開発体制の統合、業界標準プラットフォームの企画着手 |
| 2024年4月25日 | クラウド型工程アプリ「GaNett」の製品化発表 | 建設DXソリューション体系「tateras」の一環として位置付け |
| 2024年7月1日 | 「GaNett」サービス提供開始 | 試験現場での実証運用、機能フィードバックの収集 |
| 2026年10月2日 | 国内建築現場への本格展開発表 | 竹中工務店・清水建設の全国現場への実装と運用標準化 |
2024年4月1日からは、改正労働基準法に基づく時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間)が建設業にも適用されている。2023年7月の協業発表時において、建設投資額が2020年比で約2.3%増加する一方で、技能労働者を含む就労人口はピーク時から約28%減少している実態が示された。限られた管理人員で工事現場を稼働させるため、施工管理業務全体の3割削減を定量目標に掲げて実用化が進められた経緯がある。
クラウド上で工程・人工・工区を連動させる機能設計
「GaNett®」は、単に紙のバーチャート工程表を画面上に置き換えるツールではない。工程の最小単位に対して、工種、施工場所、担当する専門工事業者、施工数量、投入人工(にんく)といった属性情報を直接紐付けて管理できるデータ構造を備えている。
現場管理者は、工程の前後関係を可視化するネットワーク形式、全体のスケジュールを鳥瞰するバーチャート形式、詳細な数値や属性を一覧管理するテーブル形式の3つの表示モードを用途に合わせて切り替えられる。工程表がクラウド上で常時同期されるため、元請けの施工管理者だけでなく各専門工事業者の職長も自身のスマートフォンやタブレット端末から最新の作業手順を確認できる。ある工区で遅れが生じた場合でも、後続作業や他工区への影響範囲が自動的に再計算され、関係者全員の画面へ即座に反映される。
将来構想としてのAI遅延予測と計画立案支援
本ソリューションの展開は、日々の工程更新作業の省力化にとどまらない。3社は、日々の施工実績や歩掛データ、工程変更の履歴を構造化データとしてクラウド上に蓄積し、将来的にはAIを活用した工程遅延リスクの予測や、最適工程の自動生成機能の実装を計画している。天候不順や資材調達の遅れ、先行工種の出来高に応じたリスクシナリオをAIが提示することで、現場監督個人の経験に頼らない科学的な工程管理体制への昇華を企図している。
参考記事: 施工管理アプリ(クラウド型)入門|導入メリットと失敗しない選び方を徹底解説
建設業界各プレイヤーへの実務的影響
大手スーパーゼネコン2社が同一の工程管理基盤を国内現場へ一斉展開することは、元請ゼネコンの組織運営から下請けの専門工事業者に至るまで、日々の施工管理プロセスに直接的な影響を与える。
ゼネコン(元請け):現場の属人管理解消と施工実績の資産化
元請ゼネコンにとって、現場監督ごとに異なっていた工程表のフォーマットや管理水準が統一される。従来のExcelや専用CADを用いた工程表作成では、ファイルが現場のローカル環境に埋もれ、全社的なナレッジとして活用することが困難であった。
「GaNett®」の全社展開により、工種ごとの標準歩掛や工程遅延の発生パターンがクラウド上に蓄積される。支店や本社の工務部門が遠隔から現場の進捗状況をリアルタイムに把握できるようになり、定例会議のための報告書作成業務が大幅に削減される。清水建設が進める現場常駐技術者を少数化する取り組みや、支店・本社による遠隔現場支援体制を運用する上でも、リアルタイムに更新される共通工程データは不可欠な運用基盤として機能する。
現場監督・施工管理者:段取り調整の簡素化と夜間事務作業の圧縮
施工現場の最前線に立つ現場監督にとって、毎夕行われる職長会(工程会議)での調整負荷と、その結果を反映した翌日・翌週の工程表修正作業が大幅に短縮される。従来は、昼間に現場を巡回して確認した進捗を手書きの図面やメモに記録し、夕方に事務所へ戻ってからパソコンで工程表を打ち直す作業が常態化していた。
本アプリの導入により、現場巡回中にタブレットから直接進捗状況を入力・更新できるようになる。工程変更が生じた際も、協力会社への電話連絡や修正版工程表の印刷・配布を行う必要がなく、アプリを通じたプッシュ通知で変更情報が伝達される。現場監督が最も時間を奪われていた「見えない段取り調整」が自動化され、安全巡視や品質検査といった現場本来の技術的職務に集中できる労働環境が整う。
専門工事業者(サブコン・協力会社):手待ち時間の削減と人工配置の最適化
専門工事業者の職長や経営層にとっても、工程の可視化は経営効率の改善に直結する。これまでは、先行工種の遅れが直前まで共有されず、現場に職人を手配したものの作業に入れず待機が発生する「手待ちロス」が日常的な課題であった。
元請けとリアルタイムに工程情報が共有されることで、先行作業の仕上がり具合を事前に把握し、適正なタイミングで人員や資機材を現場へ投入できるようになる。無駄な人工の発生を抑制し、労務費の適正化を図れる。
施工管理SaaS・BIMベンダー:キャリア主導基盤との連携と機能競争の加速
大手通信キャリアであるNTTドコモビジネスが主導し、スーパーゼネコンが現場実装を進める動きは、既存の施工管理SaaSやBIMベンダーに相互連携の強化を迫る要因となる。工程管理データは、図面や3次元モデル(BIM)、資機材物流データと密接に関連している。
単独の工程管理アプリにとどまらず、Autodesk FormaなどのBIM環境や、現場内物流を管理する揚重予約システムとのAPI連携が求められる。工程情報を起点としたデータ統合が進むことで、施工管理ツール群のオープン化と標準規格の策定が一段と加速する。
参考記事: 施工管理の4大管理(品質・工程・原価・安全)とは?現場で役立つ実務手順と5大管理・DXへの拡張ポイント
ConShiftの視点:工程データの「構造化」が切り拓く自律施工と組織的ガバナンス
竹中工務店と清水建設による「GaNett®」の国内現場展開が示す構造的変化は、個別現場ごとのExcelや紙による属人的な工程管理から、クラウドツールを活用したリアルタイムなデータ共有・標準化への移行である。
建設現場におけるDXは、写真整理や図面閲覧といった「静的データ」のペーパーレス化から進展してきた。しかし、施工管理の本質であり最も工数を消費しているのは、日々変動する作業の前後関係や人工リソースを差配する「動的な工程管理」である。清水建設の山崎明専務執行役員が指摘するように、工程管理は現場に関わるすべての作業員に影響を及ぼす基幹業務であり、ここがアナログのままでは現場全体の生産性を向上させることはできない。
清水建設は現在、20億円規模の建築現場を常駐2名で運営する体制構築を進めており、設計・施工・見積もりの定常業務を50%削減する目標を掲げている。現場の常駐人員を減らし、遠隔から現場を統括・支援するモデルを成立させるためには、現場監督の頭の中にあった「施工の順序」「作業の進み具合」「職人の手配状況」が客観的なデータとして常時把握できなければならない。
【従来の工程管理】
現場監督の経験則(属人化) ──> 紙・Excel工程表(孤立) ──> 夕方の対面職長会で都度調整
※他工区への影響把握が遅れ、手待ちや工程変更の伝達漏れが発生
【GaNett®による工程管理】
属性付き工程データ(構造化) ──> クラウド同期(共有) ──> リアルタイム通知・影響自動計算
※本社・支店からの遠隔支援、AIによる遅延予測、自律的な作業差配の基盤へ
工程情報がネットワーク形式やテーブル形式で属性情報とともに保持されることは、将来的なAIエージェントによる施工支援の前提条件となる。工程管理の標準化とデータ構造化に踏み切った企業と、依然として現場監督個人のExcelシートに依存する企業との間には、将来的な施工消化能力と労働生産性において埋めがたい格差が生じる。
参考記事: 清水建設、20億円現場を常駐2人で運営へ|Forma活用AXで定常業務半減
まとめ:明日から自社現場で意識すべき3つの実務方針
大手2社によるクラウド型工程アプリの本格展開を受け、一般のゼネコンや工務店、専門工事業者が現場レベルで着手すべき実務方針は以下の通りである。
- 現場独自仕様となっている工程管理フォーマットの全社棚卸し
現場監督ごとに異なるExcelシートや作成ルールを精査し、全社で統一可能な共通項目(工種分類、工区設定、日次進捗基準)を整理する。
- 協力会社との情報伝達手段を紙や口頭からクラウド共有へ段階的に移行
毎夕の職長会で配布している紙の工程表をタブレットやスマートフォンでの画面共有へ切り替え、協力会社の職長層がデジタル端末上で工程変更を把握する運用に慣れさせる。
- 投入人工と日次出来高をセットで記録するデータ蓄積の開始
単に作業の完了・未完了をチェックするだけでなく、何工区に何人の職人が入りどれだけの施工量を消化したかを数値で残し、次期現場の見積もりや歩掛管理に直結させる社内ルールを策定する。
出典: ntt.com
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出典: itmedia.co.jp
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