全国建設業協会と中国地方5県の建設業協会は2026年10月2日、国土交通省との2026年度地域懇談会・ブロック会議を岡山市で開催した。会議では、資機材価格や労務費の上昇に伴う実質事業量の減少を補うため、2027年度当初予算として2025年度補正予算と2026年度当初予算の合計を上回る規模の確保や、スライド条項の柔軟な運用を国交省へ要請した。
2026年度中国ブロック会議の開催経緯と5県建設業協会の重点要望事項
全国建設業協会(今井雅則会長)が主催する地域懇談会・ブロック会議は、全国9ブロックで順次開催される意見交換の場である。2026年度は10月2日の中国地区会議(岡山市北区・ホテルグランヴィア岡山)を皮切りにスタートした。当日は建設業協会中国ブロック協議会(会長:中村高志山口県建設業協会会長)をはじめとする中国5県の協会幹部と、国土交通省から大臣官房の佐藤弘之審議官や中国地方整備局の山本大志局長らが出席した。
会合では、頻発する豪雨や地震災害に対応する国土強靱化施策の推進と、資機材価格・人件費の高騰が地域建設業の経営基盤を圧迫している実態が議論の中心となった。中国5県の各協会からは、地域の施工実態に根ざした制度改善や積算基準の見直しに関する要望が相次いだ。
| 提案団体 | 主な要望項目 | 要望の背景と具体的な内容 |
|---|---|---|
| 山口県建設業協会 | 公共事業予算の地方重点配分 | 防災・減災やインフラ老朽化対策を中長期的に進めるための財源確保 |
| 鳥取県建設業協会 | 不可抗力による損害負担制度の見直し | 災害時などに受注者が請負代金額の1%を負担するルールの撤廃や上限設定 |
| 島根県建設業協会 | 不調・不落の原因調査と対策 | 実勢価格との積算乖離や労務制約による入札不調の実態解明と是正 |
| 岡山県建設業協会 | 予定価格設定と入札制度の見直し | 設計価格相当額での適正受注を可能とする積算基準および入札制度の改善 |
| 広島県建設工業協会 | 中小規模工事のICT積算基準見直し | DX推進や情報化施工に伴う機器経費・初期投資を回収できる適正利潤の計上 |
これらの提案に対し、国土交通省の佐藤審議官は、労務費確保や今後の資材動向を踏まえた予算確保に努めると表明した。同時に、2027年度当初からの事業量を確保するため、国庫債務負担行為(ゼロ国債)の活用による施工時期平準化を推進する方針を示した。
参考記事: 国土交通省、単品スライドで乖離30%以内の実勢価格反映を明確化
資材・労務インフレが地域インフラ維持と施工プレイヤーに及ぼす影響
相次ぐ資機材価格の上昇と労務コストの増加は、発注者から下請企業に至るサプライチェーン全体へ構造的な変化を強いている。
ゼネコン・元請企業への影響
地域インフラ工事を担う元請企業では、資材調達価格の高止まりと技能者の賃上げ要求が重複し、契約当初に見込んだ利益が圧迫される事態が日常化している。工事請負契約書第26条第5項に基づく「単品スライド条項」や同第6項の「インフレスライド条項」を活用した請負代金の変更請求を迅速に行える体制が欠かせない。発注者協議に必要な納品書や請求書等の取引証憑を調達時点で集約し、購入価格と物価資料単価の差額を立証する実務能力が、元請企業の採算を左右する要因となっている。
行政・規制当局への影響
国土交通省中国地方整備局をはじめとする発注機関には、インフレ局面における工事の不調・不落を防ぐ調達管理が求められている。最新の実勢価格を速やかに積算基準へ反映させるだけでなく、契約締結後も受注者からのスライド請求に対して柔軟かつ速やかに変更契約へ応じる審査体制の維持が必要となる。また、年度末への工事集中を回避し、年間を通じた施工余力を確保するための平準化債務負担行為の設定が、発注規律の要となる。
サブコン・専門工事業者(下請け)への影響
専門工事業者にとっては、改正建設業法に基づく標準労務費の勧告制度や労務費見積り尊重宣言を活用し、法定福利費を含んだ実質的な人件費を見積書に適正反映させることが喫緊の課題となっている。元請企業との協議において、下請契約の段階で労務単価の上昇分や燃料費・副資材の高騰分を明示し、原価割れによる施工引き受けを回避する自律的な価格交渉が定着しつつある。
参考記事: 日建連発表、労務単価2.5万円超で建設コスト増|積算・見積りの再調整が急務
参考記事: 標準労務費の勧告制度とは?2024年建設業法改正で変わる実務と見積・契約のポイント
ConShiftの視点:不可抗力条項の見直しと精緻な調達データ管理が迫る契約変革
今回の中国ブロック会議で注目すべき論点は、鳥取県建設業協会から提起された「不可抗力による損害の請負代金1%受注者負担ルールの撤廃・負担軽減」である。現行の公共工事標準請負契約約款第30条では、暴風、豪雨、洪水、地震等によって工事の出来形部分や現場搬入資材に損害が生じた場合、請負代金額の1%までは受注者が自己負担し、超過分を発注者が負担する枠組みが採用されている。
気象災害が激甚化・頻発化する環境下において、地域建設企業は災害直後の応急復旧を担いながら、自社が施工中の現場で生じた被災損害についても数百万から数千万円単位の持ち出しリスクを負う。この1%負担条項は、粗利益率が数%にとどまる土木工事において企業のキャッシュフローを直接損なう要因となっており、制度の撤廃や免責上限の設定は地域企業の事業継続性を守るための現実的な論点といえる。
さらに、国交省が示した単品スライドにおける「実勢価格との乖離30%以内ルールの明文化」を生かすためには、施工企業側が日々の調達データをどのように蓄積するかが問われる。資材店からの納品データ、燃料納入伝票、下請負契約の単価変動を紙書類で事後的に整理する旧来の手法では、変更契約の立証作業にかかる事務工数が過大になる。調達時点の取引証憑を発注システムや原価管理基盤に自動蓄積し、監督員との事前協議へ即座に提示できるデータ環境を構築できた企業こそが、インフレ下での利益確保を実現できる。
地域インフラ施工を維持するために明日から意識すべき実務
- 資材の調達証憑を仕入れ時点でデジタル集約する
納品書や請求書、契約単価の合意書類を紙のまま放置せず、工事番号と紐付けて調達発生時に即座に保管する。これにより、単品スライド請求時に必要となる乖離率30%以内の立証作業や差額計算を短時間で完了させる。
- 改正法に基づく法定福利費と標準労務費を見積へ別枠明示する
下請企業との協議や民間発注者への価格提示において、労務費を総額一式で計上せず、法定福利費や安全衛生経費を内訳として独立表記する。労務費の行き渡りを証拠書類として残すことで、不当な減額交渉を抑止する。
- 自然災害リスクに備えた被災時損害補償条項と保険適用範囲を確認する
施工中現場における不可抗力条項の特約事項や、自社が加入する建設工事保険の免責金額・補償限度額を点検する。被災時の発注者負担申請フローを現場代理人と共有し、損害発生から報告までの連絡手順を定めておく。



