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人材マネジメント 2026年10月14日

アンドプロ調査で建設転職者の62%が働き方優先|43%が年収減容認

アンドプロ調査で建設転職者の62%が働き方優先|43%が年収減容認

株式会社クイックが運営する転職サービス『アンドプロ』は、直近3年間に転職した建設業従事者198名を対象とした意識調査を実施し、転職活動で62.6%が年収より働き方を優先した実態を公表しました。
前職の年収に不満を抱いていた層に絞っても48.1%が休日数や残業時間の改善を重視して年収減を容認しており、労働時間の削減が採用成否に直結する状況が示されています。

アンドプロ意識調査が示す建設従事者の転職動機と労働条件

株式会社クイックは2026年10月14日、自社サービスに登録し直近3年間(2023年下半期から2026年上半期)に転職を決定した建設業従事者を対象に実施した「建設業の転職と年収に関する意識調査」を公表しました。同社が2026年9月29日に発表した先行データによると、2023年度から2025年度の実績において転職決定者の平均決定年収は3年間で64.0万円増加(640.1万円)しています。こうした給与水準の上昇傾向が見られる中、実際の求職者がどのような基準で転職先を選択しているのか、具体的なデータが明らかになりました。

転職前の年収不満と年代別の格差

調査によると、転職前の年収に対して「不満を感じていた」と回答した割合は全体の53.6%(強い不満があった16.7%、やや不満だった36.9%)に達しました。一方で、前職の年収に「満足していた」と答えた人は12.1%にとどまっています。

この年収に対する不満を年代別に集計すると、若年層における不満の高さが際立ちます。20代の回答者では「やや不満」が72.8%、「強い不満」が9.1%となり、合計で81.8%が前職の年収に対して不満を抱いていました。20代は施工管理技士などの資格取得前であるケースが多く、下積み期間として給与水準が抑えられやすい傾向にあります。現場の拘束時間や肉体的負担に対して給与が釣り合っていないと感じる点に加え、他業界で進む初任給引き上げや完全週休2日制の定着と比較しやすい環境にあることが、不満比率を押し上げている要因です。

年代区分 転職前の年収不満率(合計) やや不満 強い不満
20代 81.8% 72.8% 9.1%
30代以上含む全体 53.6% 36.9% 16.7%

「年収減を受け入れても働き方を優先」が過半数を占める構図

転職活動における優先条件について、「年収が多少下がったとしても、働き方(休日数や残業時間)を優先したいという意識があったか」を尋ねた設問では、全体の62.6%が「あった」(強くあった24.2%、ややあった38.4%)と回答しました。

さらに注目すべきは、前職の給与に不満を感じていた層(53.6%)の回答動向です。年収に不満を抱えて転職活動を始めた求職者であっても、48.1%(強くあった16.0%、ややあった32.1%)が「年収より働き方を優先したい」と回答しました。給与水準の低さに課題を感じて離職を決意した人材であっても、その約半数は単に給与の額面を追うのではなく、残業時間の抑制や確実な休日の確保を就職先選定の第一条件に据えていることが確認できます。

対象者区分 働き方優先の意識「あり」 強くあった ややあった
全体(198名) 62.6% 24.2% 38.4%
転職前年収不満層 48.1% 16.0% 32.1%

実態データとしても、2025年度に同サービスを利用して転職した建設業従事者のうち、43.7%が実際に年収を下げて入社を決定しています。年収アップを実現した転職者が54.0%を占める一方で、4割以上の技術者が給与の減額を受け入れてでも拘束時間の短い環境や生活環境の安定を選んでいる事実が示されています。

転職理由の内訳と希望年収の乖離

求職者が転職を考えた理由(複数回答)では、「年収を上げたかった」が19.1%で首位となったものの、「人間関係や職場の雰囲気に問題があった」が18.5%、「残業を減らしたかった・休日を増やしたかった」が14.9%と僅差で続いています。

転職活動開始時点における希望年収の調査では、年収引き上げを希望していた層は41.4%(100万円以上の大幅アップ20.2%、50万〜90万円程度のアップ21.2%)でした。これに対して、「前職と同等(現状維持)でよい」が35.4%、「年収ダウンも許容する」が23.2%(最大50万円減の許容11.6%、50万円以上の減少許容11.6%)となり、両者を合算すると58.6%が「現状以下の年収でも構わない」と考えて転職活動に臨んでいました。

転職活動時の希望年収 構成比 内訳
年収アップ希望 41.4% 100万円以上増:20.2%、50万〜90万円増:21.2%
現状維持希望 35.4% 前職と同等を希望:35.4%
年収ダウン許容 23.2% 最大50万円減:11.6%、50万円以上減:11.6%

転職後の年収満足度と世代別年収上昇額

転職後の年収に対する評価では、全体の59.1%が「満足」(非常に満足19.7%、おおむね満足39.4%)と回答し、不満と答えた人は16.6%(やや不満12.6%、非常に不満4.0%)にとどまりました。転職前は53.6%が不満を抱いていた状態から満足と不満の比率が反転しています。

2025年度の実績データにおいて、年代別の転職時年収上昇額の平均を見ると、20代を除くすべての世代で100万円を超えています。特に40代では平均+113.5万円の昇給を記録しました。人手不足の深刻化を背景に、実務経験を持つ中堅・ベテラン技術者に対しては高い提示額を出す企業が多い一方、求職者側は給与額面だけでなく労働時間や休日の取りやすさを併せて評価した結果として、転職後の満足度向上につながっています。

年代区分 2025年度 転職時平均年収上昇額 特記事項
40代 +113.5万円 60代以上を除く全世代中トップの上昇額
30代・50代 +100万円超 経験者採用における提示条件の引き上げが継続
全体平均(3年間) +64.0万円 2023〜2025年度実績、決定年収は640.1万円に到達

参考記事: 建設業の2024年問題とは?時間外労働上限規制のポイントと現場が取るべき対策を徹底解説

建設業のサプライチェーン各層に及ぶ実務的影響

転職市場における「年収より労働環境」という明確な志向の変化は、ゼネコン各社の採用戦略、現場管理者の就業継続判断、さらには現場のデジタル化を支えるツール選定に直接的な影響を及ぼしています。

ゼネコン(元請け)の採用要件と現場運用の再構築

大手・準大手および地方ゼネコンにおいて、求人票に高水準の給与額を提示するだけでは技術者を確保できない事態が常態化しています。求職者の62.6%が働き方を最優先事項とし、実際に43.7%が減給を受け入れて転職している市場動向は、過重労働や頻繁な遠方出張を前提とした雇用形態が明確に忌避されていることを示しています。

元請け企業に求められているのは、週休2日(4週8休)の閉所スケジュールの厳守や、宿舎生活を伴う長期出張の削減です。日本建設業連合会が進める「週休二日実現行動計画」への追従だけでなく、1現場あたりの施工管理体制を複数名配置へシフトさせ、当番制による休日取得を可能にする組織設計が不可欠となっています。これらを担保できない企業では、中途採用市場での母集団形成が困難になるだけでなく、在籍技術者の流出を招く要因となっています。

参考記事: 改正建設業法(2024・2025年施行)のポイントを解説|標準労務費と契約実務の変更点

現場監督・施工管理者のキャリア選択基準の変化

現場を預かる主任技術者や監理技術者において、キャリア形成の判断軸が「年収の最大化」から「持続可能な労働環境」へ明確に移束しています。今回のアンケートの自由記述でも、深夜対応や休日稼働が常態化している職場からの離脱を望む声や、転勤の有無、家族と過ごす時間の確保を転職理由に挙げる記述が多数を占めました。

2024年4月に施行された改正労働基準法により、建設業にも罰則付きの時間外労働上限規制(原則月45時間・年360時間、特別条項で年720時間など)が適用されました。法令遵守が徹底されている現場と、現場代理人の裁量に任せてサービス残業や記録外の休日労働を黙認する現場との間で、技術者の流動化が加速しています。無理な工期設定や人員不足を個人の精神論でカバーさせる企業から、労務管理が体系化された企業へと人材が移動する傾向が顕著になっています。

参考記事: 厚労省・国交省、27年度助成73億円要求で問われる採用変革

クラウド施工管理・BIMベンダーの導入需要拡大

施工管理技術者の残業時間削減と休日の確保を両立させるため、建設会社による施工管理SaaSやBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ツールの導入が現場運用の前提条件となりつつあります。限られた工期の中で労働時間の上限を遵守するためには、施工管理者の間接業務を圧縮する以外に手段がないためです。

写真整理、日報作成、検査記録の帳票化、図面共有などをスマートフォンやタブレット端末から即座に完結できる施工管理クラウドは、現場事務所に戻ってからの書類作成時間を直接削る手段として機能しています。また、施工計画段階での干渉チェックを自動化するBIMツールの活用も、現場での手戻り工事や突発的な工程調整を未然に防ぎ、作業員の待機時間や施工管理者の休日出勤を抑止する基盤として導入が進んでいます。

参考記事: 施工管理アプリ(クラウド型)入門|導入メリットと失敗しない選び方を徹底解説

ConShiftの視点(独自考察)

株式会社クイックの調査データが示した「転職者の43.7%が年収ダウンを容認した」という事実は、建設業界の採用市場における競争原理が変容したことを物語っています。かつての建設業では、他産業に比べて拘束時間が長く身体的負荷が大きい分、手厚い残業手当や手当の支給による「高年収」を提示することで人材を惹きつけてきました。しかし、2024年4月の時間外労働上限規制適用と2025年12月の改正建設業法完全施行を経た現在、その均衡は完全に崩れています。

総務省の労働力調査を基にした国土交通省の公表資料によれば、建設業就業者の年齢構成は55歳以上が36.6%を占めるのに対し、29歳以下は11.9%にとどまります。この極端な人口ピラミッドにおいて、若年層の年収不満率は81.8%に達している一方、転職活動時には全体の62.6%が年収より休日数や残業削減を優先しています。つまり、企業側が「業界水準より高い基本給」を提示したとしても、現場の月間残業時間が45時間を常態的に超え、隔週土曜出勤が解消されていない場合、技術者からの応募を獲得することはできません。

今後は、適正工期の見積もりと発注者との協議徹底により「4週8休」を現場レベルで物理的に成立させ、クラウド施工管理ツールによる書類業務の内製自動化を完了させた企業にのみ、中堅技術者や若手資格者が集中します。給与原資の引き上げだけでなく、現場代理人が定時退勤や有給休暇の取得を当たり前に行える業務体制を整えられるかどうかが、建設会社の事業継続能力を分ける最大の変数です。

参考記事: 建設業働き方改革加速化プログラムとは?適正工期・賃金引き上げ・現場DXを実現する3つの柱を解説

明日から意識すべきこと

中途採用や既存技術者の定着率を高めるために、経営層および現場リーダーが直ちに着手すべき実務対応は次の通りです。

  1. 現場別の実労働時間と休日取得日数の可視化

タイムカードや入退場ログの客観的記録を用いて、現場代理人や主任技術者の月間時間外労働時間を正確に把握します。月45時間を超える現場や日曜以外の閉所ができていない現場を特定し、応援要員の配置や外注化による業務切り分けを行います。

  1. クラウド施工管理ツールによる間接業務の現場完結

工事写真の撮影・自動台帳作成、現場検査のアプリ入力、電子小黒板の運用を統一ルール化します。事務所へ戻ってから行う書類作成を日中の現場巡回時に完了させ、日常的な残業発生の原因を排除します。

  1. 求人票における労働環境データの数値開示

採用活動において、月平均残業時間の実績値、年間休日数、現場閉所率(4週8休の達成度)、転勤や長期出張の有無を具体的に明記します。高年収の提示だけでなく、労働負荷の低さを数値で提示することが、母集団形成の実効性を高める条件となります。


出典: PR TIMES
出典: 国土交通省

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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