Skip to content

Conshift(コンシフト)

  • 施工管理
  • 人材マネジメント
  • 積算・受発注
  • 政策動向
  • ツール紹介
  • 統計分析
  • 用語辞典
Home > 積算・受発注> 日本鳶工業連合会が日当3.6万円要求|下請倒産110件で施工班確保が急務
積算・受発注 2026年10月16日

日本鳶工業連合会が日当3.6万円要求|下請倒産110件で施工班確保が急務

日本鳶工業連合会が日当3.6万円要求|下請倒産110件で施工班確保が急務

日本鳶工業連合会は、高所作業を担う「とび工」の技能承継と処遇改善に向け、日当単価の妥当水準を3万6680円とする構造改革案を提示しました。国土交通省が定める設計労務単価(3万780円)を約19%上回る水準を求めており、元請からの発注単価叩きや多重下請け構造による利益の目減りが現場の職人不足に直結しています。

設計労務単価と実勢価格の乖離が招く鳶工事業者の経営逼迫

タワーマンションや高層ビルなどの大規模建築現場において、鉄骨建方や足場架設は機械による完全自動化が困難な基幹工種です。クレーンで吊り上げた数十トンの鉄骨部材を高所でミリ単位の位置合わせを行い締結する作業は、熟練した鳶職人の手作業に依存しています。しかし、その技能に対する対価の支払いが下請け現場へ行き届いていません。

国土交通省が公表する公共工事設計労務単価において、とび工の全国平均は1日(8時間)あたり3万780円と設定されています。これに対し、日本鳶工業連合会(日鳶連)は、墜落・転落といった死亡事故リスクの高さや、40代から50代で体力的限界を迎える職掌の特殊性を考慮し、全業種平均の1.42倍にあたる3万6680円が本来の適正水準であると算出しました。

現場で問題視されているのは、公表単価そのものの水準以上に、元請から一次下請、二次下請へと工事が発注される過程で単価が切り下げられ、現場の職人に設計労務単価相当の金額すら届かない点です。日鳶連の技術技能委員会では、元請ゼネコンによる競争激化を理由とした減額要請により、本来1000万円相当の工事が500万円で受注されるような実態が報告されています。採算割れの工事を引き受けざるを得ない専門工事業者が増え、末端の職人の手取り額は危険度に見合わない水準に据え置かれています。

加えて、労働環境の変化も職人の稼働日数と収入に影響を与えています。屋外作業が中心の鳶工事は降雨時に作業効率や安全性が著しく低下しますが、時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間)の適用により、雨天で遅れた工期を休日出勤や夜間作業で挽回することが難しくなりました。日給月給制で働く技能工にとって、天候不良による現場稼働停止はそのまま手取り収入の減少に直結します。

鳶工事を取り巻く業界環境と倒産動向

大手・準大手ゼネコン23社の第1四半期決算では、15社が増収(うち9社が過去最高を更新)、19社が増益(うち7社が過去最高を更新)と堅調な業績を示しています。一方で、現場の施工を支える躯体・鳶工事業者の経営環境は急速に悪化しています。帝国データバンクおよび東京商工リサーチの公表データによると、下請けに依存する小規模事業者の倒産が目立ちます。

項目 統計数値・公表データ 備考・背景
建設躯体工事の有効求人倍率 7.94倍(2026年7月時点) 全業種平均(1.18倍)の6倍以上
鳶工事業者の倒産件数 110件(2026年1〜8月) 前年同期比26.4%増、16年ぶりに100件超
鳶工事業者の倒産規模内訳 従業員10人未満が91.8% 資本金1,000万円未満が89.0%
建設業全体の高齢化比率 55歳以上が36.7% 29歳以下は11.7%にとどまる

躯体工事の有効求人倍率が約8倍に迫る中、次世代の若年入職者は極端に不足しています。高所作業の過酷さに加え、安全管理上の厳格な指導が若年層からハラスメントと受け取られやすい指導環境の難しさも重なり、離職と高齢化に歯止めがかかっていません。

参考記事: とび職(鳶)とは?5つの分類・年収推移から必須資格の取得方法まで徹底解説

参考記事: [公共工事設計労務単価の仕組みと実務|令和6年改定ポイントと積算・下請契約の注意点](https://conshift.net/glossary/%e5%85%ac%e5%85%b1%e5%b7%a5%e4%ba%8b%e8%a8%ad%e8%a8%88%e5%8a%b4%e5%8b%99%e5%8d%98%e4%be%a1/)

重層下請け構造と各プレイヤーへの波及

鳶職人の供給途絶と専門工事業者の疲弊は、元請ゼネコン、下請事業者、技能労働者の各層に深刻な影響を及ぼしています。

元請ゼネコン:施工班の調達不能による工程破綻リスク

大手ゼネコンが過去最高益を計上する背景には、資材高騰を織り込んだ請負金額の是正や民間開発需要の底堅さがあります。しかし、得られた利益を下請けの労務費へ反映せず原価圧縮を続けた結果、足場や鉄骨を建て起こす鳶工事業者の調達が極めて困難になっています。

鳶職人が確保できなければ、基礎工事後の躯体立ち上げや外壁施工用の外部足場の架設が進まず、後続の設備工事や内装工事に着手できません。どれほど大型案件を受注しても現場が稼働せず、工期遅延ペナルティの発生や現場管理費の増大により、最終的な工事採算が悪化するリスクを直接背負うことになります。

サブコン・専門工事業者の限界と価格転嫁の遅れ

一次・二次の専門工事業者は、元請からの受注競争に勝つための値下げ圧力と、職人側からの賃上げ要求の板挟みに陥っています。従業員10人未満の零細事業者が大半を占める鳶業界では、価格交渉力が弱く、不当な値引き要求を拒否すれば取引から排除される恐れを抱えています。

手持ち資金の乏しい事業者は、赤字受注による自転車操業を余儀なくされ、2026年に入り倒産ペースが加速しています。健全な経営を維持できなければ、法定福利費の適切な負担や安全装備への投資も滞り、施工不良や重大労災を引き起こす要因となります。

参考記事: 重層下請構造とは?ピラミッド型組織の仕組み・背景と現場リスクを徹底解説

技能労働者:適正労務費の未払いによる他産業への流出

高所での重量物据付という生命の危険を伴う職種でありながら、実質的な手取り賃金が他産業の肉体労働と大差ない水準にとどまる現状は、若手労働者の製造業や物流業への流出を加速させています。

経験豊富なベテラン職人が身体的限界を迎える40代後半以降、地上作業や管理業務へ移行できるキャリアパスが整備されていないことも定着を阻む要因です。技能に見合った日当が得られなければ、新規入職者が途絶え、既存技術の伝承そのものが途切れることになります。

参考記事: 人工(にんく)とは?計算方法や歩掛・労務単価との違いをわかりやすく解説

ConShiftの視点:改正建設業法に基づく標準労務費の遵守と調達変革

ゼネコンの好業績と専門工事業者の倒産急増という乖離は、多重下請け構造に依存した従来の原価管理手法が限界を迎えた証拠です。この構造的歪みを解消するためには、2024年に成立し順次施行されている改正建設業法における「労務費に関する基準(標準労務費)」の実務への完全定着が不可欠となります。

改正建設業法では、中央建設業審議会が作成・勧告する標準労務費を著しく下回る金額での見積りや契約締結が禁止されます。元請ゼネコンは、下請業者に対して単なる「一式見積り」を求めるのではなく、とび工の必要人工数と適正単価(日鳶連が提示する3万6680円の目安や国交省の基準)を内訳明示させた調達プロセスへと移行しなければなりません。発注者に対しても労務費の上乗せを法的に主張できる環境が整いつつあるため、元請が下請けに不当なしわ寄せを行う口実は失われます。

さらに、現場管理においては「高所作業そのものを減らす工法転換」が同時に求められます。地上での地組み(ユニット化)の推進やプレハブ化、揚重作業の省力化技術を積極的に取り入れ、限られた熟練鳶職人の稼働負荷を分散する施工計画への刷新が必要です。単価の引き上げと作業環境の負荷低減を両輪で進めない限り、サプライチェーンの断絶は防げません。

参考記事: 改正建設業法(2024・2025年施行)のポイントを解説|標準労務費と契約実務の変更点

参考記事: 標準労務費の勧告制度とは?2024年建設業法改正で変わる実務と見積・契約のポイント

明日から意識すべきこと

  1. 下請契約における見積書で「労務費」と「法定福利費」が明確に別枠計上されているか確認する

下請け叩きとみなされる原価割れ発注を防止するため、外注費の一括交渉を取りやめ、工種ごとの必要人工と労務単価の根拠を精査します。

  1. 鳶工事の工程計画において雨天予備日と時間外労働規制を織り込んだ余裕期間を設定する

天候不良による遅延を取り戻すための無理な工程短縮を排し、安全確保と技能工の実質稼働日数を両立できる工期を算定します。

  1. 自社の調達先である専門工事業者の財務健全性と技能工の定着状況を把握する

小規模事業者の倒産リスクを回避するため、直近の受注残だけでなく専属職人の確保状況を定期的にヒアリングし、必要に応じた単価改定協議を実施します。


出典: Yahoo!ニュース
出典: 国土交通省
出典: 一般社団法人日本鳶工業連合会
出典: 東京商工リサーチ(BUILT掲載)

Share this article:

監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

関連記事

関東地方整備局がPC上部工34橋の発注計画を公表|技術者の配置設計に直結
2026年10月16日

関東地方整備局がPC上部工34橋の発注計画を公表|技術者の配置設計に直結

竹中工務店が耐火集成材を民間開放|14階までの他社木造施工が可能に
2026年10月22日

竹中工務店が耐火集成材を民間開放|14階までの他社木造施工が可能に

PFNら、2027年3月完了へ国交省発注AIで図書不整合を解消
2026年9月8日

PFNら、2027年3月完了へ国交省発注AIで図書不整合を解消

ConShift

建設業のビジネス知識に関心を持つ経営層・現場リーダーのための課題解決メディア。現場のノウハウから最新のDX事例まで、ビジネスを加速させる情報をお届けします。

カテゴリー

  • 施工管理
  • 品質・安全
  • コスト管理
  • 人材マネジメント
  • 積算・受発注

もっと探す

  • 政策動向
  • BIM/CIM
  • 法規制・制度
  • 海外トレンド
  • ツール紹介
  • 統計分析
  • 建設業界用語辞典

サイト情報

  • 運営者情報
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー
  • LogiShift
  • TechShift

© 2026 ConShift. All rights reserved.