Skip to content

Conshift(コンシフト)

  • 施工管理
  • 人材マネジメント
  • 積算・受発注
  • 政策動向
  • ツール紹介
  • 統計分析
  • 用語辞典
Home > 法規制・制度> 国土交通省が取引調査3種を拡充|歩掛明示と労務費を6千者規模で監視
法規制・制度 2026年10月20日

国土交通省が取引調査3種を拡充|歩掛明示と労務費を6千者規模で監視

国土交通省が取引調査3種を拡充|歩掛明示と労務費を6千者規模で監視

国土交通省は2026年10月20日、改正建設業法の全面施行を受けた取引実態の把握に向け、受発注者を対象とした3つの行政調査を大幅に拡充することを公表しました。従来の「社保調査」を「見積書における必要経費の内訳明示状況等に関する調査」へと改編し、歩掛を用いた労務費明示や適正な支払いを確約するコミットメント条項の導入状況などを全国6,000者超規模で追跡します。

取引監視を強化する3大調査の改編内容と運用実態

国土交通省が今回実施方針を固めた調査拡充は、2025年12月12日に全面施行された改正建設業法(第三次・担い手3法)の実効性を担保するための措置です。これまでの社会保険加入確認を中心とした調査から枠組みを転換し、見積段階での労務費算出根拠、契約約款への規定状況、公共発注者のダンピング対策までを一元的に検証する体制へと移行します。

「社保調査」から改編された必要経費内訳明示調査の概要

従来の社会保険加入状況調査は、「見積書における必要経費の内訳明示状況等に関する調査」へと改称・再編されました。対象は全国の建設業許可業者であり、直近の2025年度実績では6,051者から回答を得ています。

改正建設業法第20条第1項では、工事の適正な施工を確保するための必要経費として、労務費、法定福利費、安全衛生経費、建退共掛金、材料費の内訳明示が努力義務化されました。これを受け、新調査ではこれらの費目が適正に見積書へ計上されているかを精査します。

特に労務費に関しては、単なる総額の記載にとどまらず、作業内容ごとの「歩掛(ぶがかり)」を根拠として明示しているかどうかが新たな確認項目となりました。2025年12月2日に中央建設業審議会が作成・勧告した「労務費に関する基準(労務費の基準値)」が実際の価格交渉でどのように活用されているか、定量的・定性的な実態把握が進められます。

コミットメント条項の浸透度と約款運用の確認

調査では、2025年12月の中央建設業審議会による建設工事標準請負契約約款改正で導入された「コミットメント条項」の運用状況も重点的に追跡されます。コミットメント条項には次の2種類が存在し、それぞれの認知・適用状況が調査されます。

  • 条項A(包括的コミットメント条項):発注者・元請間だけでなく、下請以降のサプライチェーン全体において適切な労務費・賃金の支払いを約する規定
  • 条項B(個別契約コミットメント条項):注文者と受注者の直接契約間において、適切な労務費・賃金の支払いを約する規定

民間連合協定工事請負契約約款(七会約款)においても条項Bに沿った規定が新設されており、民間工事を含めた請負契約実務への定着度が測定されます。

下請取引等実態調査と入契調査の連動体制

民間取引を監視する「下請取引等実態調査」では、元請・下請双方から同一取引の状況を突き合わせて照合する手法が継続・強化されます。

2025年度実績では30,000者を抽出して19,964者から有効回答を得ており、不適正な取引の疑いが生じた17,207者に対して指導が行われました。同調査のデータでは、元下取引において労務費を内訳明示した見積書を元請へ提出した下請業者は約7割に達し、そのうち見積額の全額が支払われた割合は約8割にとどまっています。残る2割の減額交渉や労務費カットの有無について、元請側への確認項目を拡充し、疑義があれば指導を行う体制を敷きます。

発注者側を対象とする「入札契約適正化法に基づく実施状況調査(入契調査)」では、中央省庁、高速道路会社などの特殊法人、全国の地方自治体を対象に、公共工事の入札金額内訳書における「労務費ダンピング調査」の実施状況を確認します。予定価格や最低制限価格の算出において歩掛や適正単価が反映されているか、公共工事標準請負契約約款に盛り込まれたコミットメント条項が実際の入札契約手続きに反映されているかを検証します。

国土交通省が拡充する3つの取引実態調査の比較

今回拡充される3つの調査について、対象・調査項目・是正措置の枠組みを整理した内容は以下の通りです。

調査名称 主な対象者 重点調査項目 不適切事例への対応
見積書における必要経費の内訳明示状況等に関する調査(旧社保調査) 全国の建設業許可業者(前年度実績6,051者) 歩掛を用いた労務費明示、労務費の基準値の活用、コミットメント条項(A・B)の導入状況 業界全体の浸透度分析および施策運用の改善資料として活用
下請取引等実態調査 全国の建設業許可業者(前年度有効回答19,964者) 下請側の労務費明示見積の提示、元請側の考慮状況、労務費の減額・買いたたき有無 不適切な取引の恐れが確認された業者への直接的な是正指導
入札契約適正化法に基づく実施状況調査(入契調査) 中央省庁、特殊法人、全国の地方自治体 入札金額内訳書での労務費ダンピング調査の実施状況、標準約款に準じた条項の導入 技能者の労務費確保に向けた公共発注機関への改善要請・公表

参考記事: 改正建設業法(2024・2025年施行)のポイントを解説|標準労務費と契約実務の変更点

発注・元請・下請・SaaS各層に及ぶ実務への影響

3方向からの調査強化は、建設工事における見積積算、下請発注、原価管理のオペレーションに直接的な変化を及ぼします。

ゼネコン(元請け):見積査定・下請発注フローの変更

元請ゼネコンは、下請業者から提出された見積書に対する査定基準を改める必要があります。従来行われていた「総額からの値引き要請(歩引き)」や「一式見積に対する指値発注」は、下請取引等実態調査を通じて容易に把握され、是正指導の対象となるリスクを抱えます。

下請から歩掛を明示した労務費内訳が提示された場合、元請側は中央建設業審議会が定めた「労務費に関する基準」を尊重し、合理的理由のない労務費の減額を行わない契約手続きを社内ルール化しなければなりません。入札金額内訳書や請負契約書におけるコミットメント条項の採択に伴い、自社の下請調達部門が二次以降の下請構造まで含めて適正な賃金原資を確保しているかを証明する管理体制の整備が求められます。

サブコン・専門工事業者(下請け):歩掛に基づく積算への移行

下請となるサブコンや専門工事業者にとっては、経験則や一式表記による見積作成からの脱却が求められます。必要経費調査や下請取引調査では「歩掛を用いて労務費を算定・明示しているか」が問われるため、歩掛の算出根拠を持たない見積書は取引適正化の保護を受けにくくなります。

施工部位や工種ごとの人工(にんく)、標準的な作業能率を反映した歩掛データを用い、法定福利費や安全衛生経費と切り離して労務費を提示する実務が定着すれば、元請からの不当な指値発注に対して法的根拠を持って対抗できるようになります。労務費の基準値を活用した価格交渉記録を残すことが、行政調査への回答時における自社の正当性の裏付けとなります。

BIM・施工管理SaaSベンダー:内訳明示・歩掛連動機能への需要増

積算システム、購買調達プラットフォーム、施工管理SaaSを提供するソフトウェアベンダーにとっては、改正業法と新調査基準に準拠したシステム改修が商機となります。

従来のシステムでは材料費や外注費を一括管理する仕様が多く見られましたが、今後は法定福利費、安全衛生経費、建退共掛金、そして歩掛連動の労務費を自動で項目分解できる見積・請求機能が求められます。さらに、下請取引等実態調査の提出時に活用できる取引履歴ログや、コミットメント条項を含む電子契約のワークフローを備えたシステムへの移行が進む環境が整いつつあります。

参考記事: 標準労務費の勧告制度とは?2024年建設業法改正で変わる実務と見積・契約のポイント

ConShiftの視点:形式的管理から監査型管理への構造転換

国土交通省による今回の調査枠組みの刷新は、改正建設業法の実効性確保において大きな転換点を示しています。

従来の建設業行政における商慣行是正は、標準約款の提示やガイドラインの策定といった「努力義務の呼びかけ」が中心でした。しかし、今回の3調査の連動は、法令で規定された内訳明示義務や著しく低い請負代金の禁止規定が現場で機能しているかを直接検証する「監査型管理」への移行を意味します。

注目すべきは、下請取引等実態調査における2025年度の指導実績が17,207業者に上っている点です。この数字は、調査回答が単なる統計処理で終わらず、行政処分や指導に直結する仕組みとして運用されていることを裏付けています。元請が下請からの明示見積を考慮せずに価格を設定した場合、双方へのクロスチェック調査によって不適正な取引が特定される構造が完成しています。

また、コミットメント条項(条項A・条項B)の導入状況調査は、単に工事現場の安全や品質を担保するだけでなく、技能者本人の賃金台帳に至るまでのキャッシュフローを契約上で担保させようとする国の意向を反映しています。公共発注者に対する入契調査で労務費ダンピング調査の実施状況を追及する点も含め、民間・公共を問わず「労務費を原価低減の調整弁にする調達手法」は制度的に遮断されつつあります。歩掛と労務費基準値をベースにした透明性の高い積算データを持たない事業者は、元請・下請の別を問わず、サプライチェーンからの排除や行政指導の対象となるリスクが現実のものとなっています。

参考記事: 建設業の2024年問題とは?時間外労働上限規制のポイントと現場が取るべき対策を徹底解説

明日から意識すべき契約・見積実務のアクション

今回の調査拡充を踏まえ、建設業各社が直ちに着手すべき実務対応は以下の通りです。

  1. 見積書式を改訂し労務費・法定福利費・安全衛生経費・建退共掛金の内訳欄を完全分離する

工種別の作業工数(人工)に歩掛を掛け合わせた算出根拠を明記し、一式計上による不明瞭な見積提示を廃止します。

  1. 標準請負契約約款のコミットメント条項(条項A・条項B)の採用基準を社内で決定する

自社が発注者・元請・下請のどの立場であっても、契約締結時に労務費確保の約定条項を盛り込めるよう契約書式を見直します。

  1. 価格交渉の過程で「労務費に関する基準」を活用しその交渉履歴を記録・保存する

元下間の協議において労務費の減額を求められた、あるいは妥結した経緯を議事録や電子データで保管し、行政調査への回答根拠として整備します。

出典: 建通新聞 電子版

Share this article:

監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

関連記事

公正取引委員会の28社一斉捜査が東海へ波及|法令遵守体制の再構築が急務
2026年8月6日

公正取引委員会の28社一斉捜査が東海へ波及|法令遵守体制の再構築が急務

公正取引委員会、修繕談合で37社に課徴金16億円命令|171棟公表
2026年9月28日

公正取引委員会、修繕談合で37社に課徴金16億円命令|171棟公表

国交省フィジカルAI戦略、2040年省人化3割へ産学官で実装加速
2026年9月7日

国交省フィジカルAI戦略、2040年省人化3割へ産学官で実装加速

ConShift

建設業のビジネス知識に関心を持つ経営層・現場リーダーのための課題解決メディア。現場のノウハウから最新のDX事例まで、ビジネスを加速させる情報をお届けします。

カテゴリー

  • 施工管理
  • 品質・安全
  • コスト管理
  • 人材マネジメント
  • 積算・受発注

もっと探す

  • 政策動向
  • BIM/CIM
  • 法規制・制度
  • 海外トレンド
  • ツール紹介
  • 統計分析
  • 建設業界用語辞典

サイト情報

  • 運営者情報
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー
  • LogiShift
  • TechShift

© 2026 ConShift. All rights reserved.