- キーワードの概要:生コンクリートの軟らかさや流動性(作業のしやすさ)を測るための基本的な品質検査です。
- 実務への関わり:受入時にスランプ値を測定することで、型枠へ隙間なく充填できる流動性があるかや、余分な加水による強度不足がないかを確認し、ジャンカなどの施工不良を未然に防ぎます。
- トレンド/将来予測:基本手順の厳格な順守が続く一方で、近年は画像認識AIによるスランプ値の自動計測やセンサーを用いた連続管理など、受入検査の省力化・デジタル化技術の導入が進んでいます。
- 【JIS A 1101準拠】スランプ試験の目的と器具の規格寸法
- スランプ試験の目的とコンクリートのワーカビリティー評価
- 試験器具の規格寸法一覧(スランプコーン・突き棒・平板)
- 【失敗を防ぐ手順解説】スランプ試験の測定ステップとJIS規定ルール
- 等体積3層充填と25回突きの正しい締固め手順
- コーン引き上げ(2〜3秒)とスランプ値の測定基準(0.5cm刻み)
- 【早見表】JIS A 5308に基づくスランプ許容差とスランプフローとの違い
- 指定スランプ値に対する許容差一覧(JIS A 5308対照表)
- 高流動コンクリートにおけるスランプフロー試験との適用区分
- スランプ値が許容範囲を外れた場合の要因分析と現場対応フロー
- スランプ値が変動する主な要因
- 再試験の判定基準と規格外時の荷卸し判断フロー
- 受入検査を効率化するDX技術動向と現場管理チェックリスト
- AI画像解析・車載センサを活用した受入検査の自動化動向
- 受入検査(空気量・塩化物・温度)連動の実務チェックリスト
- よくある質問(FAQ)
【JIS A 1101準拠】スランプ試験の目的と器具の規格寸法
スランプ試験の目的とコンクリートのワーカビリティー評価
スランプ試験は、フレッシュコンクリートの流動性や軟らかさの指標となるワーカビリティー(施工軟度・作業性)を判定するための物理試験です。日本産業規格『JIS A 1101(コンクリートのスランプ試験方法)』に規定されており、生コンクリート納入時における受入検査の必須項目として位置づけられています。
コンクリートは、練り混ぜ後の単位水量や骨材の表面水率、粒度分布の変動によって流動性が大きく変化します。所定の型枠内へ空隙なく充填できる流動性を確保しつつ、過剰な加水による強度低下や乾燥収縮ひび割れを防ぐため、荷卸し地点でスランプ値を測定して品質の均一性を確認します。
- ワーカビリティーの定量評価
型枠への充填性、ポンプ圧送性、締固め作業の難易度を数値化します。スランプ値が小さすぎると充填不良(豆板・ジャンカ)の原因となり、過大になると材料分離やブリーディングの増大を招きます。 - 単位水量の適正管理
配合設計どおりの水セメント比(W/C)が維持されているかを間接的に推定する指標となります。許容範囲を超えた変動を検知することで、生コンプラントにおける骨材表面水率の補正ミスや誤加水を早期に発見できます。 - 適用範囲とスランプフローの境界
JIS A 1101の適用対象は、粗骨材の最大寸法が40mm以下のコンクリートです(40mmを超える骨材はあらかじめふるい落として試験を実施)。高流動コンクリートや超高強度コンクリートなど、スランプ値換算で20cmを超える高流動な配合では、自重による沈下量ではなく広がり径を測定する「スランプフロー試験(JIS A 1150)」を適用します。
受入検査で測定されたスランプ値は『JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)』の許容差と照合され、基準外やせん断破壊(斜め崩れ)が生じた場合は、JIS規定に基づき1回に限り別試料による再試験を行います。
試験器具の規格寸法一覧(スランプコーン・突き棒・平板)
器具の摩耗や寸法の歪みは測定値の直接的な誤差要因となります。JIS A 1101では器具の材質・寸法・形状がミリ単位で規定されています。
| 器具名 | 規格・材質 | 主要寸法・仕様 | 実務上の確認・管理基準 |
|---|---|---|---|
| スランプコーン | 金属製(厚さ1.5mm以上) | 上端内径: 100mm 下端内径: 200mm 高さ: 300mm |
内面は平滑で付着物のない状態を維持。落下による開口部の歪みやへこみがあるものは使用不可。 |
| 突き棒 | 鋼製丸棒等 | 直径: 16mm 長さ: 500〜600mm |
先端は半径8mmの半球状。先端が摩耗・平坦化した棒や異形鉄筋の代用は不可(締固めエネルギーが変わるため)。 |
| 平板(底板) | 金属板または剛性板 | コーン底面(200mm)より十分に大きい面積 | 水分を吸わない非吸水性部材。水平かつ振動のない強固な床面にガタつきなく設置する。 |
| 測定器(検測スケール) | 金尺またはスランプゲージ | 0.5cm(5mm)単位で測定可能な目盛り | スランプコーン上面の高さと、変形したコンクリート中央頂部との垂直沈下量を測定。 |
【失敗を防ぐ手順解説】スランプ試験の測定ステップとJIS規定ルール
JIS A 1101では「スランプコーンへのコンクリート充填開始から引き上げ完了までの操作を3分以内に行う」と厳格に定められています。時間を超過するとセメントの水和反応や水分の蒸発によりスランプロスが生じ、正確な判定ができません。
等体積3層充填と25回突きの正しい締固め手順
スランプコーンは円錐台形状(上すぼまり)であるため、高さを基準に3等分(各100mm)すると上層の体積が不足します。必ず「容積比でほぼ等しい3層(容積の約1/3ずつ)」に分割して充填します。
【スランプコーン充填高さの目安(容積1/3分割)】
・第3層(上層):上面から山盛りに盛り上げ(充填後の上面高さ 300mm)
・第2層(中層):底面から約150〜160mm(高さの約半分)
・第1層(下層):底面から約65〜70mm
- 第1層の充填・締固め
- 足踏み部に両足を乗せてコーンを床面に密着させ、底面から約70mmまで試料を投入します。
- 突き棒を垂直に保持し、全面に均等に行き渡るよう25回突きます。外周部はコーンの内壁に沿うようわずかに傾けて突き込み、底部の角まで密実に充填します。
- 第2層の充填・締固め
- 底面から約160mmの高さまで均等に投入します。
- 突き棒で25回均等に突きます。先端が第1層の上面に約20mm食い込む深さまで挿入し、層間の空洞化を防ぎます。
- 第3層の充填・天端均し
- コーンの縁より高く盛り上がるように試料を投入します。
- 25回均等に突きます(先端は第2層上面へ約20mm貫入)。突き込みに伴いコンクリートが縁より沈下した場合は、直ちに試料を追加して常に縁の上にコンクリートがある状態を保ちます。
- 突固め完了後、上面のはみ出たコンクリートを突き棒や金ごてで転がすようにすり落とし、平滑に均します。コーン周辺の床面にこぼれたコンクリートは完全に拭き取ります。
コーン引き上げ(2〜3秒)とスランプ値の測定基準(0.5cm刻み)
- 引き上げ操作
足踏み部から静かに足を下ろし、取っ手を両手で垂直上方に引き抜きます。引き上げに要する時間はJIS規定で「5±2秒(実務上は2〜3秒が目安)」です。急激に引き抜くと負圧で頂部が引っ張られ、時間をかけすぎると内壁との摩擦で変形するため、一定の速度で真上に抜き去ります。 - 沈下量の検測
コーンを引き上げたら、直ちに沈下量を測定します。スランプコーンを試料の脇に置くか専用の測定スケールを用い、コーン上面高さと「変形したコンクリートの中央部頂面」との垂直距離を0.5cm(5mm)単位で測定します。ミリ単位の端数は2捨3入・7捨8入(例:11.2cmは11.0cm、11.3cmは11.5cm)で処理します。
試料が片側に斜めに滑り落ちたり、崩壊したりする「せん断破壊」が生じた場合は、正規の塑性変形ではないため試験不成立となります。同一アジテータ車から新しい試料を再採取し、1回に限り再試験を行います。
【早見表】JIS A 5308に基づくスランプ許容差とスランプフローとの違い
指定スランプ値に対する許容差一覧(JIS A 5308対照表)
荷卸し地点におけるスランプの合否判定は、『JIS A 5308』に規定された許容差の範囲内であるかによって判断します。
| 指定スランプ値 | JIS A 5308 許容差 | 合格となる実測範囲 | 主な適用箇所 |
|---|---|---|---|
| 2.5cm | ±1.0cm | 1.5cm 〜 3.5cm | 舗装コンクリート、ダム等のマスコンクリート |
| 5.0cm / 6.5cm | ±1.5cm | 3.5〜6.5cm / 5.0〜8.0cm | 無筋構造物、重力式擁壁、基礎部材 |
| 8.0cm 以上 18.0cm 以下 | ±2.5cm | 例:12cm指定時 9.5〜14.5cm 例:15cm指定時 12.5〜17.5cm |
一般建築・土木構造物(標準的なRC構造) |
| 21.0cm(18.0cm超) | ±1.5cm(※) | 19.5cm 〜 22.5cm | 鉄筋過密部、高密度配筋部材 |
※呼び強度27以上で高性能AE減水剤を使用する場合は±2.0cm(実測許容範囲:19.0〜23.0cm)。
高流動コンクリートにおけるスランプフロー試験との適用区分
スランプ値が20cmを超える高流動配合では、スランプコーンを引き抜いた際にコンクリートが自重で薄く平らに広がります。高さの沈下量(スランプ値)では流動性の差異や材料分離抵抗性を判別できないため、「スランプフロー試験(JIS A 1150)」を適用します。
| 評価項目 | スランプ試験(JIS A 1101) | スランプフロー試験(JIS A 1150) |
|---|---|---|
| 主な対象配合 | 普通コンクリート、舗装コンクリート | 高流動コンクリート、超高強度コンクリート |
| 測定対象・単位 | コーン上面からの沈下量(cm単位、0.5cm刻み) | 底板上に広がったコンクリートの広がり直径(mm単位) |
| 突固め操作の有無 | 突き棒により3層各25回突固める | 材料分離を防ぐため突き棒による突固めは行わない |
| 管理の主目的 | 施工軟度(ワーカビリティー)と単位水量の確認 | 自己充填性と材料分離抵抗性の同時評価 |
スランプ値が許容範囲を外れた場合の要因分析と現場対応フロー
スランプ値が変動する主な要因
スランプ値が設計値から逸脱する要因は、製造段階の計量誤差から運搬環境の変化まで多岐にわたります。性状変化が確認された場合は、納入伝票(計量印字記録)と運搬時間を確認し、以下のメカニズムから原因を切り分けます。
| 変動方向 | 主な要因 | 変動メカニズムと品質への影響 |
|---|---|---|
| スランプ過大(軟らかすぎる) | 骨材表面水率の上昇 | 雨天等で骨材の表面水率が補正値を超え、実質的な単位水量が増加して流動性が過多になる。 |
| 混和剤の過剰計量 | AE減水剤等の計量弁不良により規定量を超えて投入された場合に発生する。 | |
| スランプ過小(硬すぎる) | 運搬・待機時間の長期化 | 練り混ぜ開始からの時間経過に伴い、初期水和反応とアジテータ撹拌によってスランプロスが進行する。 |
| 外気温の上昇・乾燥 | 夏季など高温環境下ではコンクリート温度が上昇し、水分の蒸発と水和反応の加速で急激に硬化が進む。 | |
| 骨材の過乾燥 | ストックヤードの骨材乾燥により、練り混ぜ水の一部が骨材に吸収されて有効水量が減少する。 |
再試験の判定基準と規格外時の荷卸し判断フロー
受入検査でスランプ値が許容差を外れた場合は、JIS規格および各種示方書に基づき以下のフローに沿って対応します。
【受入検査(1回目)】
│
├─ [許容差内] ─── 荷卸し・打設開始
│
└─ [許容差外 / せん断破壊]
│
▼
【直ちに再試験を実施(同一アジテータ車)】
│ ※別試料を再採取、3分以内の操作を厳格に順守
│
├─ [許容差内] ─── 荷卸し・打設開始
│
└─ [再試験不合格(規格外)]
│
▼
【受入拒否(返品処理)】
・納入伝票に不適合理由(実測スランプ値等)を明記し受領拒否
・生コンプラントへ即時連絡、後続車の表面水補正・配合修正を指示
※ アジテータドラム内への現場加水は厳禁
再試験および返品時の厳格ルール
- 現場加水(加水行為)の禁止
スランプ値が小さく硬いコンクリートに対し、作業性を確保する目的でアジテータ車内に注水する行為は、水セメント比(W/C)を上昇させ、構造体強度の未達や乾燥収縮ひび割れを招くため禁止されています。 - 流動化剤の現場添加条件
流動化コンクリートとして施工計画書・配合計画書で事前に承認され、添加量や高速撹拌時間が規定されている場合を除き、現場判断での混和剤後添加は認められません。 - プラントとの即時連携
返品が決定した際は、納入伝票に「不適合理由(例:スランプ実測値 20.5cm / 指定 15.0cm ± 2.5cm)」を記録して送り返します。同時にプラントの品質管理責任者へ連絡し、骨材表面水率の再測定と後続車両の配合修正を行わせます。
受入検査を効率化するDX技術動向と現場管理チェックリスト
AI画像解析・車載センサを活用した受入検査の自動化動向
従来の抜き取り検査による手作業のスランプ測定に対し、画像解析やセンシングを活用した連続測定技術の現場導入が進んでいます。
- AI画像解析による全量連続判定
アジテータ車のシュート部を流下するコンクリート表面をカメラで連続撮影し、AIが表面性状や流動テクスチャからスランプ値をリアルタイムに推定するシステム(鹿島建設「CON@i」など)が運用されています。これにより、抜き取り検査以外のバッチにおける性状異常も即座に検知できます。 - 遠隔臨場による立会検査の合理化
国土交通省の「インフラDXアクションプラン」に基づき、ウェアラブルカメラ(1080p以上)を用いた遠隔臨場検査の適用が拡大しています。発注者・監理技術者が詰所や遠隔地からスランプ値・空気量等の検測状況をリアルタイムに確認することで、立会い待ちによる打設遅延を抑制し、JIS A 5308に準拠した受入記録を映像データとして保存できます。
受入検査(空気量・塩化物・温度)連動の実務チェックリスト
スランプ試験は、空気量・塩化物含有量・温度測定と並行して実施します。打設当日の抜け漏れを防ぐための管理チェックリストを以下に示します。
| 検査フェーズ | 主な確認項目 | 判定基準・確認仕様 | 不適合時の対応手順 |
|---|---|---|---|
| 事前点検 | 器具寸法・状態 | スランプコーン(100×200×300mm、厚さ1.5mm以上)、突き棒(径16mm・先端半球状) | 付着物除去、変形・摩耗器具の交換 |
| 納入伝票確認 | 配合・運搬時間 | 配合番号、呼び強度、指定スランプ、練り混ぜから荷卸しまでの時間(外気温25℃未満: 1.5時間以内 / 25℃以上: 1.5時間以内 ※示方書基準) | 配合相違・時間超過時は受入拒否(返品) |
| スランプ試験 | 流動性 | JIS A 5308の許容差内(例:8〜18cm指定時は±2.5cm) | 許容外・形崩れ時は1回のみ再試験。不合格時は返品 |
| 空気量測定 | 耐凍害性・ワーカビリティー | 普通コンクリート:指定値 ± 1.5%(標準配合は4.5%) | 許容外時は別試料で再試験。連続不適合は返品 |
| 塩化物含有量 | 鉄筋防錆性 | コンクリート中の塩化物イオン総量:0.30 kg/m³ 以下 | 基準値超過時は即時受入拒否 |
| コンクリート温度 | 水和熱・凍結防止 | 標準期:10〜35℃(寒中:5〜20℃、暑中:35℃以下) | 範囲外時は打設中止または養生計画見直し |
現場測定の手順要領
- 測定環境の準備
平坦で振動のない場所に底板を水平設置し、コーン内面および底板を固く絞った湿布等で均一に湿らせます。 - 試料採取と充填
アジテータ車の荷卸し開始直後と終了間際を避け、中間部分から代表試料を採取します。容積1/3ずつ3層に分けて各層25回均等に突き、充填開始からコーン引き上げまでを3分以内に完了させます。 - 検測と電子記録
中央頂部の沈下量を0.5cm刻みで検測し、スケール目盛りが明瞭に視認できるアングルで電子小黒板とともに写真撮影します。空気量・塩化物量・温度の実測値と合わせて品質管理記録表へ即時登録します。
よくある質問(FAQ)
Q. スランプ試験を行う目的は何ですか?
A. フレッシュコンクリートの流動性や作業性(ワーカビリティー)を判定し、均質な品質を確保するためです。JIS A 1101に基づく生コン受入時の必須検査であり、スランプ値を管理することで充填不良(ジャンカ)や過剰加水による強度低下・ひび割れを防ぎます。
Q. スランプ試験とスランプフロー試験の違いは何ですか?
A. 測定対象のコンクリートの流動性と測定方法が異なります。通常のスランプ試験はコーン引き抜き後の垂直な「沈下量」を測定しますが、高流動コンクリートなどスランプ値換算で20cmを超える配合では、自重による「広がり径」を測るスランプフロー試験(JIS A 1150)を適用します。
Q. スランプ試験に使うスランプコーンの寸法規格は?
A. JIS A 1101により、上端内径100mm、下端内径200mm、高さ300mm、厚さ1.5mm以上の金属製と規定されています。測定誤差を防ぐため、内面が平滑で開口部に歪みやへこみのない器具を使用し、粗骨材の最大寸法が40mm以下のコンクリートに適用します。
