国交省が自動物流道路の実証実験を2026年10月28日より順次開始
国土交通省道路局と国土技術政策総合研究所は、物流危機への対応やカーボンニュートラルの実現に向け、道路空間に専用スペースを設けて無人・自動輸送を行う「自動物流道路」の社会実装に向けた実証実験を2026年10月28日より順次開始します。
本実証にはゼネコン各社、荷役機器メーカー、物流事業者など計7グループが参画し、国土技術政策総合研究所(茨城県つくば市)の試験走路や成田国際空港施設、民間自社施設において、拠点荷役の効率化や複数台の搬送機器による自動走行、設備簡素化の検証を行います。
物流危機と脱炭素化に対応する「自動物流道路」構想の背景
物流業界におけるドライバー不足の深刻化(物流2024年問題等)や温室効果ガス排出削減が喫緊の課題となる中、国土交通省は高速道路等の中央分離帯や地下空間を活用し、クリーンエネルギーで稼働する無人化・自動化された新たな物流インフラ「自動物流道路(オートフロー・ロード)」の構築を進めています。
2024年2月設置の有識者検討会や2025年5月に設立された産官学コンソーシアムにおける検討を踏まえ、2026年7月22日〜8月21日にかけて「令和8年度自動物流道路の社会実装に向けた実証実験」の公募を実施。同年9月8日の採択を経て、現場検証およびシミュレーションによる技術的課題の抽出と運用条件の整理に着手する運びとなりました。
荷役シミュレーションと複数台自動走行の現場実証内容
実証実験は「テーマ1(拠点における荷役)」と「テーマ2(複数台の搬送機器の自動走行)」の2つで構成され、2026年10月から12月にかけて実施されます。
- テーマ1:拠点における荷役
- 株式会社ロジスネクスト
- トラックおよび小型モビリティと自動運転フォークリフト(AGF)やコンベヤを組み合わせた荷役シミュレーション(FlexSim利用)を実施し、必要台数、搬送能力、必要面積を算出。
- 株式会社豊田自動織機
- 3D-SLAM誘導方式の自動運転フォークリフト(2本フォーク/4本フォーク)を用いた荷積み・荷下ろしをシミュレータ上で検証し、同時可能台数や保管ゾーンとの連携スペースを算定。
- 清水建設株式会社、株式会社IHI、野村不動産株式会社
- パレットコンベヤ、伸縮フォーク式移載機、無人フォークリフト、トラック自動荷役装置を対象に、想定交通需要に応じた荷役レーン数・バース数および施設規模を机上・シミュレーションで算定。
- 株式会社ロジスネクスト
- テーマ2:複数台の搬送機器の自動走行
- 清水建設株式会社、株式会社IHI、野村不動産株式会社
- 成田国際空港施設(D隊舎跡地)および清水建設の技術研究拠点「温故創新の森 NOVARE」にて、搬送機器2〜3台を用いた10〜30km/hでの直線・曲線走行、車間距離保持、車線変更、障害物検知・回避行動、消費電力等を検証。
- 大成建設株式会社、株式会社ティアフォー、大成ロテック株式会社
- 国土技術政策総合研究所にて、形状変化の乏しい直線トンネル区間を想定し、80m間隔で設置した12箇所の位置補正用反射体を活用したLiDAR検知による自己位置推定補正効果、複数台自動走行(JPN TAXI匠をベースとした車両3台、Autoware搭載)の停止・追従・回避精度を検証。
- 千葉県、成田国際空港株式会社、株式会社大林組、Cuebus株式会社、株式会社NTTデータ
- 成田国際空港施設(T-3カーブサイド)にて、床面に敷設したコイルタイル(永久磁石式リニア同期モータ、本線44m+分岐22m)と永久磁石搭載トレイを用い、複数台走行、直角分岐、車線変更、すれ違い、落下物回避を実証。
- 鹿島建設株式会社、三菱電機株式会社、西濃運輸株式会社、ダイナミックマッププラットフォーム株式会社
- 成田国際空港施設(D隊舎跡地)および三菱電機尾張旭工場にて、搬送路に敷設した光ファイバーセンシングによる落下物等の異常検知、道路側設備の集約・簡素化評価、高精度3次元地図を用いた複数台走行(最大3台・15パターン)、マルチFMS統合監視システムによる運行管理と中継輸送・荷物管理連携を検証。
- 株式会社フォーラムエイト
- 流体解析(OpenFOAM)と動的解析(Engineer’s Studio)を組み合わせ、トンネル内の対面走行やすれ違い時、高速度走行時における風圧・圧力波の影響と搬送機器の車体動揺をシミュレーション評価。
- 清水建設株式会社、株式会社IHI、野村不動産株式会社
実証実験に参画・関係する事業者と組織
- 総合建設業者(ゼネコン)および道路舗装事業者:清水建設、大成建設、大成ロテック、大林組、鹿島建設
- 搬送・物流設備・産業機械メーカー:ロジスネクスト、豊田自動織機、IHI、三菱電機
- 自動運転技術開発・地図情報・ITソリューション企業:ティアフォー、ダイナミックマッププラットフォーム、Cuebus、NTTデータ、フォーラムエイト
- 物流・運送事業者:西濃運輸、ヤマト運輸(協賛企業として段ボール提供)
- 不動産・インフラ管理者・自治体:野村不動産、成田国際空港株式会社、千葉県
建設・インフラ整備実務に与える影響と展望
- 元請(ゼネコン)
- 自動物流専用道路(トンネル・地下空間・専用レーン等)の設計・施工に向け、路面構造、離隔幅、カーブの最小回転半径、トンネル断面などの幾何構造要件を自ら検証する機会となります。また、光ファイバーセンシングや位置補正用反射体の埋設・設置など、走行支援インフラの施工技術や維持管理ノウハウの確立につながる可能性があります。
- 道路舗装・維持管理事業者
- コイルタイルの敷設工法や、路側・路面インフラ協調設備の施工性・耐久性の評価に関わる知見が得られ、将来の専用レーン整備工事の仕様検討に反映される可能性があります。
- 設計・建設コンサルタント
- トンネル内の圧力波影響評価や、荷役拠点におけるバース数・レーン数算定手法、高精度3次元地図データの活用仕様など、自動物流インフラ特有の計画・設計手法の体系化に向けた基礎データが整備される見通しです。
2026年10月から12月にかけての実証スケジュール
- 2026年10月1日〜:各社によるシミュレーション環境構築や準備作業、フォーラムエイトによる流体解析・動的解析シミュレーションが順次開始。
- 2026年10月28日(水)〜11月2日(月)、11月10日(火):大成建設グループが国土技術政策総合研究所(つくば市)にて走行実証を実施(報道関係者向け視察可能日:10月30日AM)。
- 2026年11月4日(水)〜11月6日(金)、11月24日(火)〜11月26日(木):清水建設グループが自社施設「温故創新の森 NOVARE」にて走行実証を実施。
- 2026年11月9日(月)〜11月18日(水):清水建設グループが成田国際空港施設にて走行実証を実施(報道関係者向け視察可能日:11月19日AM)。
- 2026年11月19日(木)〜11月25日(水):千葉県・大林組グループが成田国際空港施設にてリニア同期モータを用いた走行実証を実施(報道関係者向け視察可能日:11月24日AM)。
- 2026年11月24日(火)〜12月4日(金):鹿島建設・三菱電機グループが三菱電機尾張旭工場にてシステム連携実証を実施。
- 2026年12月7日(月)〜12月18日(金):鹿島建設グループが成田国際空港施設にて光ファイバーセンシングおよび走行実証を実施(報道関係者向け視察可能日:12月17日AM)。
- 2026年12月下旬〜2027年1月:各参画事業者による実験データ取りまとめおよび報告書の提出。
- 2030年代半ば:東京〜大阪間を基本ルートとした自動物流道路の社会実装・本格運行開始を目指す方針(国土交通省検討会の別途公表資料によれば)。
社会実装に向けた技術基準・インフラ整備の注目論点
- インフラ側設備と車載機器の役割分担:専用空間での走行を前提として、車載センサ類をどこまで簡素化できるか、反射体や光ファイバー等の道路側インフラ支援の費用対効果が今後の焦点になります。
- 道路幾何構造基準の策定:搬送機器同士のすれ違い時の離隔や風圧・圧力波の影響、曲線部の最小回転半径など、将来の道路構造令等に位置付ける技術的基準の具体化は現時点で示されていません。
- 拠点(物流ハブ)の規模・立地要件:高速道路本線から拠点への分流・合流方式や、自動荷役設備の配置に必要な敷地面積・バース数の標準仕様がどのように整理されるかが注目されます。
- 事業スキームと費用負担:本線トンネル等の専用空間整備や路側インフラ整備にかかる莫大な整備費を、公費・民間投資・利用料でどのように分担するか等のビジネスモデルは検討継続課題とされています。
検討会が示す輸送力代替効果と制度的背景
- 輸送能力とCO2削減効果の試算:自動物流道路に関する検討会の試算によれば、東京〜大阪間の本構想が実装された場合(積載率約80%想定)、代替可能なドライバー労働時間は日当たり2.1万〜5.7万人分、CO2削減効果は年間240万〜640万トンに上るとされています。
- 既存法制度との接続:2024年4月からのトラックドライバーに対する時間外労働上限規制(年960時間)への抜本的対策として位置付けられており、将来的には道路法の専用利用・占用基準などの制度改正も視野に入れた議論が進められています。
自動物流道路の実証実験に関するよくある質問
Q. 自動物流道路の実証実験にはどのような企業が参画していますか?
A. 清水建設、大成建設、大林組、鹿島建設の大手ゼネコン各社をはじめ、豊田自動織機やロジスネクストなどの荷役機器メーカー、ティアフォーやNTTデータ、ダイナミックマッププラットフォームなどのIT・自動運転関連企業、西濃運輸などの物流事業者、成田国際空港株式会社、千葉県など計18社・団体(7グループ)が参画しています。
Q. 今回の実証実験ではどのような場所で何が検証されますか?
A. 国土技術政策総合研究所(つくば市)の試験走路、成田国際空港施設、民間自社施設(清水建設NOVARE、三菱電機尾張旭工場)およびシミュレーション環境で実施されます。検証項目は、自動運転フォークリフト等を用いた拠点での荷役能力算定(テーマ1)と、複数台の搬送機器による自動走行・車線変更・光ファイバーや磁気モータを活用した走行制御・設備簡素化(テーマ2)です。
Q. 自動物流道路の実用化・社会実装はいつ頃を目指していますか?
A. (国土交通省の「自動物流道路に関する検討会」公表資料によれば)東京〜大阪間を基本ルートとして、2030年代半ばの社会実装・本格運行開始を目指して制度設計や技術基準の検討が進められています。
出典
- 発表主体: 道路局企画課、国土技術政策総合研究所 / 発表日: 2026-10-20
- https://www.mlit.go.jp/road/content/002026547.pdf(PDF)
- 報道発表資料(PDF)
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