- 概要:2020〜2025年度で全建築物の㎡単価は22.00万円から32.39万円(+47.2%、坪107.1万円)に上昇し、特にS造(+62.6%)とRC造(+54.0%)の伸びは資材・労務の物価指数(+21〜24%)の2倍を超えました。
- 実務への影響:着工床面積が18.9%減る中で工事費総額は19.4%増えており、見積有効期限の短縮やスライド条項の導入、標準労務費を踏まえた積算体系の見直しが急務となっています。
建築費はどれだけ上がったか?5年で約1.5倍に達した㎡単価の実態
2025年度における全建築物の平均㎡単価は32.39万円(坪単価107.1万円)に達しました。2020年度の22.00万円(坪単価72.7万円)と比べると、+47.2%(約1.5倍)の上昇となります。
この5年間で、国内の着工床面積が大きく落ち込んだ一方で、工事費予定額の合計は増加を続けました。なお、本記事で扱う数値はすべて年度(4月〜翌3月)の集計値です。2023年4月分から実施された集計方法(外れ値処理)の変更の影響をそろえるため、2022年度以前は国土交通省が公表した新方式の参考値を用いて比較しています。
なお、建築着工統計における「工事費予定額」は着工届出に書かれた予定の金額であり、工事完成後に実際にかかった確定工事費ではありません。また、㎡単価は全建築物の平均値であるため、建物の用途・規模・仕様などの構成比率が変わると、個々の工事価格に変化がなくても数値が上下します。
建てる量は減り、工事費の総額は増えた:床面積マイナス18.9%と工事費プラス19.4%の差
着工床面積と工事費予定額の推移を、2020年度を基準(2020年度=100)として比べると、施工量と総金額の動きが分かれます。2025年度は、着工床面積の指数が81.1まで落ち込んだ一方で、工事費予定額の指数は119.4まで拡大しました。

実数で見ると、着工床面積は2020年度の114.30百万㎡から2025年度には92.71百万㎡へと18.9%減少しました。長期的に比較すると、2017年度の133.03百万㎡からは30.3%の減少となります。一方で、工事費予定額の合計は2020年度の25.14兆円から2025年度には30.02兆円へと19.4%増加しています。
| 指標 | 2020年度 | 2025年度 | 2020年度比 |
|---|---|---|---|
| 着工床面積(百万㎡) | 114.30 | 92.71 | -18.9% |
| 工事費予定額(兆円) | 25.14 | 30.02 | +19.4% |
| 全建築物 ㎡単価(万円/㎡) | 22.00 | 32.39 | +47.2% |
| 全建築物 坪単価(万円/坪) | 72.7 | 107.1 | +47.2% |
直近の2025年度単年では、着工床面積が前年度比で-11.3%と減少したことに加え、工事費予定額の合計も前年度(30.38兆円)から-1.2%とわずかに減少しています。
構造別の㎡単価:RC造・S造の上昇が大きく、S造は5年で+62.6%
建築物の構造によって、単価の上昇ペースにははっきりとした差があります。2020年度から2025年度にかけて、木造の㎡単価が+28.9%の上昇にとどまる一方、RC造(鉄筋コンクリート造)は+54.0%、S造(鉄骨造)は+62.6%と大きく上がりました。

| 構造区分 | 2020年度 ㎡単価 | 2025年度 ㎡単価 | 2020→2025年度 上昇率 |
|---|---|---|---|
| 全建築物 | 22.00万円 | 32.39万円 | +47.2% |
| 木造 | 18.21万円 | 23.48万円 | +28.9% |
| RC造 | 28.12万円 | 43.29万円 | +54.0% |
| S造 | 23.21万円 | 37.74万円 | +62.6% |
※SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)は棟数が少なく年度ごとの振れが大きいため、本分析からは除外しています。また、用途別の分類は2025年1月に改定されたため扱っていません。
上昇時期とペースの構造差
構造別に推移を追うと、上がり始めた時期や勢いにも違いが見られます。
- 木造:2022年度以降、毎年+5〜7%のペースで上がっています(2022年度+6.9%、2023年度+6.4%、2024年度+5.5%、2025年度+5.2%)。
- RC造:2020〜2022年度までは横ばい圏(28.12万円→28.73万円)でしたが、2023〜2025年度にかけて毎年+13〜15%で上がっています(2023年度+13.3%、2024年度+15.2%、2025年度+15.4%)。
- S造:2023年度に前年度比+19.5%と急伸した後、2024年度は+6.4%と落ち着きましたが、2025年度に再び+18.9%と大きく上がりました。
2017年度から2021年度までの4年間は、全建築物の㎡単価上昇率が+7.3%にとどまっていました。単価の上昇が本格化したのは2022年度以降です。
資材・労務費の物価指数との比較:RC造・S造の上昇率は指数の2倍超
工事原価そのものの物価変動を捉える指標として、国土交通省の「建設工事費デフレーター」(資材と労務の価格から作る工事費の物価指数、2020年度=100)があります。この記事における着工統計の㎡単価は構造ごとに住宅と非住宅を合わせた平均値であるため、デフレーターの住宅・非住宅の指数とそれぞれ比較します。

| 構造区分 | ㎡単価(住宅・非住宅合計) | 物価指数(住宅) | 物価指数(非住宅) |
|---|---|---|---|
| 全建築物 | +47.2% | +22.2%(建築総合) | (建築総合に含む) |
| 木造 | +28.9% | +22.3% | +21.4% |
| RC造 | +54.0% | +22.1% | +21.4% |
| S造 | +62.6% | +24.3% | +21.8% |
※建設工事費デフレーターの2023年度以降の数値は暫定値です。デフレーターには施工企業の営業余剰(利益)や間接税(消費税を含む)は含まれていません。
㎡単価と物価指数の違い
建設工事費デフレーターは、どの構造・用途でも2020年度比で+21〜24%の上昇幅に収まっています。これに対し、建築着工統計の㎡単価を見ると、木造(+28.9%)はデフレーターの伸びに近い水準ですが、RC造(+54.0%)とS造(+62.6%)はデフレーターの上昇率の2倍を超えています。
また、上昇した時期にもズレがあります。
- 2020年度→2022年度:建設工事費デフレーター(建築総合)が+13.0%上昇したのに対し、全建築物の㎡単価は+8.4%にとどまりました。
- 2022年度→2025年度:デフレーターの上昇が+8.1%に落ち着いたのに対し、㎡単価は+35.8%と急激に上がっています。
㎡単価の伸びが資材・労務費の物価指数を大きく上回った正確な理由は、この統計データからは特定できません。大型の工場・倉庫・データセンターといった建物の構成比率の変化、空調・電気設備の高度化、省エネ性能の向上に伴う仕様変更、人手不足に伴う実質的な労務費の上乗せ、企業の利益率の変動などが影響している可能性があります。
工務店・ゼネコン・発注者への影響:原価管理と価格転嫁の実務課題
構造による単価上昇のペースの違いは、各プレイヤーの実務に影響を与えています。
木造(工務店・ハウスメーカー)
木造の坪単価は60.2万円から77.6万円へ上がりました。資材・労務の物価指数に近い安定した上昇ペースですが、新築住宅の省エネ基準適合義務化や建築基準法の見直しに伴い、設計や確認申請の手間・コストが増加している可能性があります。資材価格の動向については「建設資材価格の推移:企業物価指数で見る鉄鋼・セメント・生コン・木材の値動き」もあわせてご確認ください。
RC造・S造(ゼネコン・専門工事業者)
RC造の坪単価は92.9万円から143.1万円、S造は76.7万円から124.8万円へと急上昇しました。金属系資材の価格変動や労務単価の上昇が重なり、見積提出から着工までの価格変動リスクを抑えるため、見積有効期限の短縮やスライド条項の活用を検討する必要性が高まっている可能性があります。労務費の適切な積算にあたっては「公共工事設計労務単価の仕組みと実務|令和6年改定ポイントと積算・下請契約の注意点」の確認が欠かせません。
発注者(施主・デベロッパー)
全建築物の坪単価が107.1万円に達し、当初の事業予算をオーバーして計画の変更や延期を迫られる案件が生じている可能性があります。着工床面積が全体で18.9%減少しているデータは、こうした投資の慎重化と整合的です。
今後のウォッチ指標と実務のまとめ
建築コストの先行きを予測することは困難ですが、適切な見積や価格協議を行うためには、以下の公的指標を継続して追跡することが目安になります。
| 指標名 | 確認元 | 公表頻度 | チェックのポイント |
|---|---|---|---|
| 建築着工統計調査 | 国土交通省 | 毎月 | ㎡単価(工事費予定額÷床面積)の傾向把握 |
| 建設工事費デフレーター | 国土交通省 | 毎月 | 資材・労務価格の基礎的な物価上昇ペース |
| 公共工事設計労務単価 | 国土交通省 | 年1回(3月から適用) | 法定福利費や適正労務費の基準 |
法改正を踏まえた対応実務については「改正建設業法(2024・2025年施行)のポイントを解説|標準労務費と契約実務の変更点」および「標準労務費の勧告制度とは?2024年建設業法改正で変わる実務と見積・契約のポイント」も参考にしてください。
2020年度から2025年度にかけて、全建築物の㎡単価は22.00万円から32.39万円へと+47.2%上昇し、坪単価は107.1万円に達しました。着工床面積が-18.9%縮小するなかで工事費予定額は+19.4%増加しており、特にRC造(+54.0%)とS造(+62.6%)で物価指数を大きく上回るペースでの上昇が続いています。客観的な指標に基づいた原価の把握と、早めの契約条件の調整が実務上の鍵となります。
出典: 国土交通省「建築着工統計調査」 / 国土交通省「建設工事費デフレーター」 / 統計最終更新: 2025年度
よくある質問(FAQ)
Q. 建築費高騰はいつまで続くのか
A. 統計データから先行きを正確に予測することはできません。時間外労働規制や標準労務費の勧告制度など労務費の適正化が進む中、高止まりや上昇が続く可能性があります。今後の動向は、建築着工統計調査の㎡単価、資材と労務の価格を示す建設工事費デフレーター、毎年改定される公共工事設計労務単価などの指標を確認しながら判断することが目安になります。
Q. 現在の建築工事の坪単価はいくらになっているのか
A. 2025年度の全建築物平均の坪単価は107.1万円(㎡単価32.39万円)です。2020年度の72.7万円(㎡単価22.00万円)から約1.5倍になりました。構造別に見ると、木造は77.6万円(2020年度60.2万円)、RC造は143.1万円(同92.9万円)、S造は124.8万円(同76.7万円)に達しています。
Q. 過去の建築着工統計と比較する際の注意点は何か
A. 国土交通省が2023年4月着工分から、工事費予定額の外れ値の集計方法を変更した点に注意が必要です。公表値をそのまま比べると木造などで不自然な段差が生じます。過去推移を正確に比較・分析する際は、2022年度以前について国交省が公表した新方式に基づく参考値を使用する必要があります。