- 概要:2026年8月の建設資材指数(2020年平均=100)は電線・ケーブル299.1、アスファルト237.8、合板・集成材152.8など主要品目が総平均(136.1)を上回り、資材ごとの高値時期のズレや鋼材・木材の再上昇が確認されています。
- 実務への影響:下落傾向にあった鋼材や木材が2026年に再び上昇し、セメント・生コンも高水準が続く中、単品スライド条項の運用基準改定に合わせた証憑管理や契約前のおそれ情報通知を通じた契約変更協議が不可欠です。
物価総平均を上回る建設資材、電線は基準年の約3倍へ
日本銀行が公表している国内企業物価指数(2020年平均=100)を見ると、建設資材に当たる品目・商品群・類別の指数は、物価全体の動きを示す「国内企業物価指数・総平均」の136.1をすべて上回っています。国内企業物価指数とは、企業の間で売買されるモノの価格水準を測る統計指標です。
2026年8月時点で最も高い水準にあるのは「電線・ケーブル」の299.1で、基準年である2020年平均と比べて約3.0倍に達しています。次いで「アスファルト」が237.8(同約2.4倍)、「石こうボード・粘土かわら」が169.2(同約1.7倍)、「セメント」が166.2(同約1.7倍)、「生コンクリート」が161.7(同約1.6倍)と続いています。
企業物価指数は工事費そのものや現場の支払価格を示す指標ではありませんが、資材調達にかかる取引価格の上昇は、施工現場の予算管理や原価管理に大きな影響を与えています。株式会社アイピアが2026年5月にまとめた原価管理実態調査では、建設会社の約7割が資材価格の上昇によって完成工事の利益率が下がったと答えており、値上がり分を請負金額に転嫁できている企業は1割未満にとどまります。
資材ごとに異なる高騰期、2026年は木材・鋼材が再び上昇傾向
前年同月比に見る主要12系列の値動き
建設資材の指数を前年同月比(2025年8月から2026年8月への変化)で見ると、品目によって値動きの幅が大きく分かれています。
| 系列名(品目・類別・商品群) | 分類 | 2026年8月指数(2020年平均=100) | 前年同月比(2025年8月比) | 2026年1月比 |
|---|---|---|---|---|
| 電線・ケーブル | 商品群 | 299.1 | +51.4% | +12.7% |
| アスファルト | 品目 | 237.8 | +36.8% | +44.0% |
| 合板・集成材 | 商品群 | 152.8 | +14.6% | +14.3% |
| 石こうボード・粘土かわら | 品目 | 169.2 | +11.0% | +10.9% |
| 木材・木製品 | 類別 | 148.3 | +8.4% | +8.0% |
| 形鋼 | 品目 | 152.5 | +6.4% | +8.1% |
| 生コンクリート | 商品群 | 161.7 | +6.0% | +3.3% |
| 小形棒鋼 | 品目 | 157.0 | +3.3% | +5.4% |
| 鉄鋼 | 類別 | 146.6 | +2.4% | +3.6% |
| セメント | 商品群 | 166.2 | +2.3% | 0.0% |
| 建設用金属製品 | 商品群 | 137.5 | -0.4% | +4.5% |
※「建設用金属製品」は、鉄骨や橋りょうなどの品目で構成されています。
最高値を付けた時期のズレ:木材から鋼材、セメント・生コンへ
2020年以降の流れを振り返ると、資材によって最高値を付けた時期が順にずれていることがわかります。
まず木材関連では、「木材・木製品」が2022年6月に178.3、「合板・集成材」が同月に199.6となり、2020年以降の最高値を記録しました。その後は価格が下がりました。
鉄鋼関連は木材より遅れて高値を付けています。「鉄鋼」が2022年11月に158.4、「小形棒鋼」が2023年7月に167.6、「形鋼」が2024年5月に161.5で最高値を記録し、その後下がりました。ただし、高値から下がったとはいえ、2026年8月時点の水準(合板・集成材152.8、形鋼152.5など)は、2020年の平均より5割ほど高い状態が続いています。

一方、「セメント」は段階的に上がった後、2025年10月に166.2に達し、2026年8月まで同じ値で横ばいが続いています。さらにセメントを原料とする「生コンクリート」は上昇が続き、2026年7月および8月に付けた161.7が2020年以降の最高値となっています。

2026年に入り再上昇する鋼材・木材と突出する電線・アスファルト
2026年の注目すべき動きは、一度値下がりしていた鋼材と木材が再び上昇へ転じている点です。2026年1月から8月の変化率を見ると、以下の通り総平均(+5.8%)を上回るペースで伸びている品目があります。
- 合板・集成材: 133.7 → 152.8(+14.3%)
- 形鋼: 141.1 → 152.5(+8.1%)
- 木材・木製品: 137.3 → 148.3(+8.0%)
- 小形棒鋼: 149.0 → 157.0(+5.4%)
- 鉄鋼: 141.5 → 146.6(+3.6%)
特に伸び幅が大きいのが「アスファルト」と「電線・ケーブル」です。アスファルトは2026年1月の165.1から5月に268.8(2020年以降最高値)まで急上昇し、8月は237.8(1月比+44.0%)となっています。原油価格や精製コストの動きが影響している可能性があります。
電線・ケーブルは2026年1月の265.5から8月には299.1(同+12.7%、前年同月比+51.4%)へと上がり続けています。主原料となる国内銅建値の高騰や、世界的な需要動向が調達価格を押し上げている可能性があります。

契約変更協議の二極化と単品スライド条項の実務対応
公共工事と民間工事における価格転嫁の差
資材価格の変動を請負金額へ反映できるかどうかは、発注者によって大きな差があります。全国建設業協会(全建)が会員企業1,877社を対象に実施したアンケート(2026年7月公表)によると、資材価格が高騰した際に契約変更協議が行われなかった工事の割合は、国土交通省案件が4.1%だったのに対し、民間発注者では20.8%に上りました。さらに、変更が認められず原価割れの契約となった事例も民間工事では15.7%(国交省案件は7.1%)ありました。
民間工事では「予算がない」ことを理由に変更を断られるケースが約6割を占めています。ただし同じ調査では、契約前に資材価格の上昇リスクを書面などで伝えていた場合、約7割の現場で増額変更が認められたという結果も出ています。事前のリスク共有が、増額交渉を進めるきっかけになっている可能性があります。
単品スライド条項の運用改定ポイント
公共工事では契約変更の仕組みが整っている一方、「提出書類が多く事務負担が重い」という声が多く聞かれました。国土交通省の直轄工事では、「単品スライド条項(工事請負契約書第26条第5項)」の運用マニュアルが2022年7月に改定されています。
単品スライド条項は、鋼材や燃料油などの主要資材の価格変動額のうち、対象工事費の1%を超える部分を発注者が負担する仕組みです。従来の運用では「購入した月の物価資料単価」と「実際の購入価格」の低い方を基準とする決まりがあり、実勢価格が先に上がった場合に差額を回収しにくい課題がありました。
この改定では、適正な見積書や請求書などの証拠書類により実際の購入価格が物価資料単価を上回っている場合でも、その開きが30%以内であれば実際の購入価格を用いてスライド額を計算できる基準が明文化されました。ゼネコンや専門工事業者にとっては、日々の注文請書や請求書を品目ごとに整理し、調達価格の妥当性をすぐに証明できる体制を整えておくことが実務上のポイントになります。
資材価格への対応策と定期的に確認すべき項目
短期〜中期の見通し(3〜12ヶ月)
今後3〜12ヶ月の資材価格については、資材ごとの背景を踏まえた対応が必要です。
- 価格が安定する方向のシナリオ
為替相場の安定や国際原材料価格の落ち着きに伴い、鋼材や木材の再上昇が一服する可能性があります。また、銅市況の過熱が和らげば、電線・ケーブルの急激な上昇ペースも緩やかになる可能性があります。 - 高止まり・再値上げが進む方向のシナリオ
エネルギー価格や物流コストの上昇が続いた場合、メーカーによる追加の価格改定が進む可能性があります。一般財団法人建設物価調査会によると、セメント各社は原燃料費の上昇を背景に、2027年4月以降に向けてトン当たり3,000円以上の値上げを表明し、需要家への説明を進めています。セメントの値上げが浸透した場合、生コンクリートの価格もさらに押し上げられる可能性があります。
定期的に確認したい指標・法制度
原価管理の精度を保つため、以下の統計や制度の動きを定期的に把握しておくことが役立ちます。
| 確認項目 | 公表元 | 確認の目安 |
|---|---|---|
| 国内企業物価指数(CGPI) | 日本銀行 | 毎月公表 |
| 主要資材動向・建設物価単価 | 一般財団法人建設物価調査会 | 毎月公表 |
| 国内銅建値 | 非鉄金属製錬メーカー各社 | 随時(月平均値などを確認) |
| 改正建設業法の施行ルール | 国土交通省 | 随時(運用指針の確認) |
法制度の面では、改正建設業法(2024・2025年施行)のポイントを解説|標準労務費と契約実務の変更点にもあるように、2024年12月13日から契約前の「おそれ情報(資材価格高騰のおそれ)」の通知や、契約書への変更方法の記載が義務付けられました。さらに2025年12月12日からは、著しく低い材料費での見積依頼の禁止や、原価割れ契約の禁止規定が完全施行されています。民間工事においても、法令に基づいた手続きを踏むことが重要です。
調達リスクに先回りする管理体制づくり
2026年8月の企業物価指数では、主要な建設資材が総平均(136.1)を上回り、電線・ケーブルが299.1、アスファルトが237.8に達しています。さらに過去の高値から下がっていた鋼材や木材も2026年に入り再び上昇しており、見積時と発注時の価格差による採算悪化を防ぐ対策が欠かせません。
今後現場で進めるべき実務対応
発注者(施主・開発事業者)
- 実勢価格の変動を見込んだ予備費の確保
- 請負契約書へのスライド条項(価格変更の取り決め)の明記
- 受注者から資材高騰のおそれ情報が届いた際の迅速な協議対応
元請企業・専門工事業者
- 見積書を出す段階での資材急変動リスクの書面通知(おそれ情報の提示)
- 調達の証拠書類(見積書・注文請書・納品書・請求書)の案件別・月次での一元保存
- 単品スライド条項や契約変更協議に備えた、実勢価格と積算単価の定期チェック
まずは直近の取り組みとして、新規の見積書を提出する際に「価格変動リスクに関する通知書」を添え、契約書に価格変更の協議条件を明記することから進めてください。事前のリスク開示と正確な証拠書類の管理が、資材インフレ下で現場の利益を守る確実な土台になります。
出典: 日本銀行 時系列統計データ(企業物価指数) / 統計最終更新: 2026年8月
よくある質問(FAQ)
Q. 建設資材価格はいつピークを迎え、今後は下がる見通しですか?
A. 最高値を付けた時期は資材ごとに異なります。木材は2022年6月、鉄鋼は2022年11月に2020年以降の最高値を付けた後に下がりましたが、2026年に入り再び上昇傾向を示しています。一方、生コンクリートは2026年7・8月に最高値を付け、セメントも高水準のまま横ばいです。今後の動向は原材料相場や各メーカーの改定動向などに左右される可能性があります。
Q. 企業物価指数が上がると、実際の工事費や見積金額も同じ比率で上がりますか?
A. 国内企業物価指数は企業間で取引される財の価格水準を示す統計であり、建設会社が現場で支払う価格や工事費そのものではありません。工事費には運賃、加工費、現場経費なども含まれるため、この指数から工事費の上昇率をそのまま算出することはできません。調達価格の目安として活用するのが実務的です。
Q. 資材価格が急騰した場合、民間工事でも契約金額の増額変更は可能ですか?
A. 発注者との協議によって増額できる場合があります。全建の調査では、事前に資材高騰リスクを文書で通知していたケースの約7割で増額変更が行われました。改正建設業法により契約前の「おそれ情報」通知が義務付けられたため、見積提出時にリスクを書面で提示し、契約書にあらかじめ価格改定ルールを定めておくことが有効です。