- 概要:2025年の新設住宅着工戸数は前年比6.5%減の74.07万戸となり、ピークの1973年(190.51万戸)から約4割の水準まで縮小しました。内訳では注文住宅が1958年以来の低水準となる20.13万戸に落ち込み、戸建て全体に占める建売住宅の割合は36.5%まで上がっています。
- 実務への影響:戸建て受注の落ち込みが続く工務店はZEH水準等の高付加価値化や改修事業への展開、ゼネコンや専門工事業者は新築マンション縮小に伴う非住宅建築・大規模修繕分野への施工体制のシフトが選択肢になる可能性があります。
2025年の住宅着工は74.07万戸、1963年以来62年ぶりの低水準
国土交通省が公表した「建築着工統計調査」によると、2025年の新設住宅着工戸数は74.07万戸となり、前年(79.22万戸)から 6.5%減少 しました。この戸数は1963年以来62年ぶりの低い水準で、1951年以降で最多を記録した1973年の約4割にあたります。
なお、この記事では統計の「持家」を注文住宅、「分譲住宅の一戸建」を建売住宅、「貸家」を賃貸として扱います。
2025年の内訳を見ると、以下の通りです。
- 戸建て:31.72万戸(注文住宅 20.13万戸、建売住宅 11.59万戸)
- マンション・アパート:41.49万戸(賃貸 32.50万戸、分譲マンション 8.99万戸)
※給与住宅など(2025年は0.86万戸)を含まないため、4分類の合計は総数と一致しません。
民間建築の現場では、資材価格や人件費の上昇によるコスト高が着工計画の見送りや規模縮小に影響している可能性があります。また、2025年4月に施行された省エネ基準の適合義務化や建築確認申請における4号特例の縮小などが、着工時期の調整につながった可能性もあります。
75年間の推移:1973年のピークから続く長期の縮小
1951年から2025年までの75年間を振り返ると、住宅着工にはいくつかの大きな山と谷がありました。

| 年 | 新設住宅着工戸数(総数) | 前年比 | 主な位置づけ |
|---|---|---|---|
| 1963年 | 68.87万戸 | +17.5% | 2025年数値を下回っていた直近の年 |
| 1973年 | 190.51万戸 | +5.4% | 1951年以降で最多(最大の山) |
| 1983年 | 113.68万戸 | -0.8% | 1980年代前半の谷 |
| 1987年 | 167.43万戸 | +22.7% | 160万戸台への回復期 |
| 1990年 | 170.71万戸 | +2.7% | 1980年代後半から続く山 |
| 1996年 | 164.33万戸 | +11.8% | 1990年代の山 |
| 2008年 | 109.35万戸 | +3.1% | リーマン・ショック前の水準 |
| 2009年 | 78.84万戸 | -27.9% | 前年109.35万戸から急減した深い谷 |
| 2020年 | 81.53万戸 | -9.9% | 再び80万戸台前半へ低下 |
| 2024年 | 79.22万戸 | -3.3% | 80万戸割れ |
| 2025年 | 74.07万戸 | -6.5% | 最新値(1963年以来の低水準) |
着工戸数が1951年以降で最多となったのは1973年の190.51万戸でした。その後、1983年に113.68万戸まで落ち込む谷を迎えますが、1987〜1990年には166万〜171万戸水準まで持ち直しました。1996年にも164.33万戸の山を記録しています。
しかし、2000年代以降は減少傾向が続きます。特に2009年は78.84万戸にとどまり、前年の109.35万戸から27.9%減る深い谷となりました。これは世界的な金融危機や景気後退の時期と重なります。2010〜2019年は81.31万〜98.00万戸の間で推移し、2020年は81.53万戸となりました。2024年に79.22万戸と再び80万戸を下回り、2025年は74.07万戸まで減っています。
戸建てとマンション・アパート:2022年以降は集合住宅が上回る
統計の区分が整った1988年以降のデータで「戸建て」と「マンション・アパート」を比較すると、市場の構成が変わってきたことが分かります。

戸建ては 1996年の79.15万戸が最多 でした。これに対して2025年は 31.72万戸 となり、1988年以降で最も少なくなりました。最多だった1996年と比べると、約59.9%減少(約0.40倍)した水準です。
一方、マンション・アパートの最多は 1990年の104.47万戸 でした。2025年は 41.49万戸 で、最多の年と比べて約60.3%少なくなっています。
両者の関係を見ると、戸建てがマンション・アパートを上回ったのは 2010年、2011年、2013年、2021年の4回 にとどまります。2022年以降はマンション・アパートが戸建てを上回り続けています。
戸建ての内訳:注文住宅は1958年以来の低水準、建売の比率は36.5%に上昇
戸建て(31.72万戸)の内訳を見ると、注文住宅が大きく減っているのに対し、建売住宅の減り方は比較的小さく収まっています。

注文住宅の推移
注文住宅は 1973年の76.50万戸 が1951年以降で最多でした。1996年にも64.35万戸ありましたが、2025年は前年比7.7%減の 20.13万戸 まで減りました。これは1958年(18.87万戸、沖縄県を除く)以来の低い水準です。最多だった1973年と比べると、約73.7%減少(約0.26倍)しています。
建売住宅の推移
建売住宅の最多は 1996年の14.79万戸 でした。2025年は前年比4.3%減の 11.59万戸 となり、2010年(11.04万戸)以来の低い水準となっています。最多だった1996年からの減り幅は約21.6%減にとどまります。
戸建てに占める建売住宅の割合
戸建て市場の中で、建売住宅が占める割合は大きく上がっています。
| 項目 | 1996年(戸建て最多時) | 2025年(最新) | 変化 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 戸建て着工戸数 | 79.15万戸 | 31.72万戸 | -59.9% | 注文住宅+建売住宅 |
| 注文住宅 | 64.35万戸 | 20.13万戸 | -68.7% | 1958年以来の低水準 |
| 建売住宅 | 14.79万戸 | 11.59万戸 | -21.6% | 2010年以来の低水準 |
| 建売住宅の割合 | 18.7% | 36.5% | 約1.95倍 | 戸建てに占める比率 |
戸建て全体に占める建売住宅の割合は、1996年の18.7%から2025年には 36.5% へと約1.95倍になりました。建設物価調査会の建築費指数(2015年=100)において木造住宅建築費が上昇傾向にある中、取得費用を一定程度抑えやすい分譲戸建て住宅の需要が維持された可能性があります。
マンション・アパートの内訳:賃貸が約8割、分譲は2009年以来の低水準
マンション・アパート(41.49万戸)の内訳を見ると、全体の大半を賃貸住宅が占めています。なお、賃貸には鉄筋コンクリート造のマンションだけでなく、木造や鉄骨造などのアパートも含まれます。

賃貸住宅の推移
賃貸は 1987年の85.87万戸 が1951年以降で最多でした。2025年は前年比5.0%減の 32.50万戸 となっています。マンション・アパート全体に占める賃貸の割合は、1990年が77.2%(集合住宅104.47万戸のうち賃貸80.61万戸)、2025年が 78.3%(集合住宅41.49万戸のうち賃貸32.50万戸)であり、長年にわたり約8割の水準を維持しています。
分譲マンションの推移
分譲マンションは 2006年の23.86万戸 が1988年以降で最多でした(1990年も23.86万戸)。2025年は前年比12.2%減の 8.99万戸 となり、2009年(7.67万戸)以来の低い水準となりました。
建設資材価格の推移に伴う工事費の上昇や用地取得費の高止まりにより、事業者が新規開発の採算性を慎重に見極めている可能性があります。
工務店・ゼネコン・専門工事業者への影響
新設住宅着工戸数が1963年以来の低い水準になる中、建築に関わる事業者には事業戦略の見直しが求められる可能性があります。
1. 工務店・ハウスメーカー(注文住宅)
注文住宅の着工戸数は2025年に20.13万戸まで減少し、1958年以来の低水準となりました。着工棟数の減少は、売上高を押し下げる要因になる可能性があります。富裕層向けなど1棟あたりの性能向上による単価アップを図る動きがある一方、中間価格帯を中心に手掛ける地域工務店では、新築請負の減少をカバーするための対策が必要になる可能性があります。
2. 分譲ビルダー(建売住宅)
建売住宅は2025年に11.59万戸まで減少したものの、戸建て市場に占める割合は36.5%に高まりました。部資材の規格化やスケールメリットを生かした調達力を持つ事業者がシェアを維持している可能性がある一方、資材高や用地仕入れ価格の上昇への対応力が今後の経営を左右する可能性があります。
3. ゼネコン・専門工事業者(マンション・非住宅)
分譲マンションが8.99万戸、賃貸が32.50万戸と集合住宅の新築も縮小傾向にあります。国土交通省の「建築物リフォーム・リニューアル調査」によると、住宅リフォームが減少傾向を示す一方、非住宅建築物の増築・改修需要は堅調に推移しています。新築着工の減少に直面するゼネコンや躯体・設備工事のサブコンは、工場やオフィスなどの既存ストック改修分野へ施工体制をシフトする動きが広がる可能性があります。
今後のウォッチ指標とまとめ
今後の事業計画を検討するにあたり、定期的に確認したい指標は以下の通りです。
| 指標名 | 確認元 | 頻度 |
|---|---|---|
| 新設住宅着工戸数(総数・利用関係別戸数) | 国土交通省「建築着工統計調査」 | 毎月 |
| 建築費指数(木造住宅・RC集合住宅等) | 一般財団法人 建設物価調査会 | 毎月 |
| 建築物リフォーム・リニューアル調査 | 国土交通省 | 四半期 |
| 標準労務費・公共工事設計労務単価 | 国土交通省 | 年1回(随時) |
今後の見通しについて
人口や世帯数の動向、建築費の水準などによっては、着工戸数の減少が続く可能性もあります。月次の着工戸数と建築費の動きを合わせて確認することが目安になります。また、改正建設業法に基づく標準労務費の勧告制度などにより、適正な労務費を反映した見積もりや契約の定着が進む中で、工事原価の動向を注視する必要があります。
まとめ
2025年の新設住宅着工戸数は 74.07万戸 となり、ピークだった1973年(190.51万戸)の約4割に相当する1963年以来の低い水準となりました。特に注文住宅が20.13万戸まで減少する一方、戸建て内の建売住宅の割合は36.5%に上がり、マンション・アパートが賃貸(32.50万戸)を中心として戸建て全体の着工規模を上回る構造が続いています。
工務店・住宅事業者の実務ポイント
- ZEH水準や長期優良住宅などの性能向上による高付加価値化と補助金の活用
- 省エネ基準適合義務化や4号特例見直しに対応した設計・確認申請業務の標準化
- 新築請負への一本足打法を見直し、断熱改修・リノベーション需要の取り込み
ゼネコン・専門工事業者の実務ポイント
- 住宅着工の減少を踏まえた、工場・事業用施設や改修工事への施工リソースの再配置
- 標準労務費を踏まえた見積作成と、適切な労務費・資材費の価格転嫁
- 遠隔施工管理やデジタルツールの活用による現場技術者の業務効率化
出典: 国土交通省「建築着工統計調査」 / 統計最終更新: 2025年
よくある質問(FAQ)
Q. 2025年の新設住宅着工戸数はどのくらい減少しましたか?
A. 2025年の新設住宅着工戸数は74.07万戸で、前年の79.22万戸から6.5%減少しました。これは1963年(68.87万戸、沖縄県を除く)以来62年ぶりの低い水準であり、1951年以降で最多だった1973年(190.51万戸)の約4割(38.9%)にとどまります。
Q. 注文住宅と建売住宅の着工推移にはどのような違いがありますか?
A. 注文住宅は1973年の76.50万戸から2025年は20.13万戸まで減少し、1958年以来の低水準となりました。一方、建売住宅は1996年の14.79万戸から2025年は11.59万戸と減少幅が小さく推移しています。その結果、戸建て着工に占める建売住宅の割合は1996年の18.7%から2025年には36.5%へと約1.95倍に拡大しました。
Q. 住宅着工の減少に対して工務店やゼネコンはどのように対応すべきですか?
A. 工務店は新築請負の棟数追及から、断熱・省エネ性能の向上による1棟あたりの高付加価値化や、既存ストックの改修事業への進出が選択肢となります。また、ゼネコンや専門工事業者は分譲マンション等の着工減を見据え、工場などの非住宅施設や改修・リニューアル工事へ施工人員を振り向ける動きが目安になります。