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Home > BIM/CIM> 清水建設、FEM解析モデル生成を3日に短縮!設計変更の即時反映を実現
BIM/CIM 2026年8月13日

清水建設、FEM解析モデル生成を3日に短縮!設計変更の即時反映を実現

清水建設、FEM解析モデル生成を3日に短縮!設計変更の即時反映を実現

清水建設は、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)データから有限要素法(FEM)による解析モデルを自動生成する「BIM-FEM連携システム」を開発し、モデル作成期間を従来の1カ月以上から約3日へと短縮しました。この技術開発により、頻繁に発生する設計変更をシミュレーションへシームレスに反映することが可能となり、建築物の安全性向上や意思決定の迅速化、フロントローディングの推進に寄与します。

清水建設が開発した「BIM-FEM連携システム」の全貌

清水建設は2026年6月30日に公式発表を行い、BIMデータから3次元FEM解析モデルを自動生成する革新的なシステム技術を確立したことを明らかにしました。本技術は、日経アーキテクチュア2026年8月13日号などの専門誌でも大きく取り上げられ、業界内での注目を集めています。

手作業による再定義を解消する自動生成メカニズム

従来の建築設計プロセスにおいて、建物の詳細な構造解析や耐震評価を行うためのFEM解析モデルの作成は、構造設計者にとって非常に重い負担となっていました。BIMソフトウェア上に登録された3次元形状データが存在していても、それを解析ソフトにそのまま読み込ませて高度な計算を行うことは困難であり、技術者が図面やBIMモデルを参照しながら、解析専用ソフト上で部材形状や節点、メッシュ分割、材質情報などを手作業で再定義・再構築する必要があったためです。

この複雑な手作業による再入力プロセスは、大規模な案件や複雑な意匠形状を持つ構造体の場合、解析モデルを1つ作成するだけで1カ月以上の期間を要することが一般的でした。また、入力ミスや形状の整合性エラーが発生しやすく、チェック工程にも多大な労力が費やされていました。

清水建設が開発した「BIM-FEM連携システム」は、BIMデータに含まれる情報を直接かつ統合的に自動読み取りするアルゴリズムを搭載しています。具体的には、単なる外形寸法や幾何学的な位置情報にとどまらず、以下の情報をシステムが自動的に抽出・処理します。

  • 部材形状および空間配置データ: 柱、梁、壁、スラブなどの3次元幾何情報および接合部の関係性
  • 材質・材料特性データ: コンクリート強度、鋼材規格、ヤング率、密度等の物性値
  • 配筋情報・断面構成情報: 構造部材内部の鉄筋配置(配筋ピッチ、鉄筋径)や断面性能パラメータ

これらの情報が自動的に読み取られ、解析に必要な3次元FEMメッシュや境界条件へと一元的に直接変換されます。これにより、人間の手を介した再定義プロセスが不要となり、作業期間は従来の「1カ月以上」から「約3日(作業時間を約10分の1)」へと大幅に短縮されました。

従来手法と「BIM-FEM連携システム」の仕様比較

従来の手作業に依存した手法と、今回開発された「BIM-FEM連携システム」の主要スペックおよび業務プロセスにおける違いを下表に整理します。

項目 従来の手法 BIM-FEM連携システム
モデル作成方法 技術者が図面やBIMデータを参照し手作業で再定義 BIMデータの自動分析・直接変換により自動生成
自動読み取り対象 なし(すべて手動でパラメータを入力) 部材形状、材質、配筋情報等の詳細構造情報
モデル作成期間 1カ月以上 約3日(作業期間・時間を約10分の1に縮小)
設計変更時の影響 解析モデルの再構築に時間を要し、即座の反映が困難 変更内容をシームレスに連動・反映し常に最新状態を維持

地震応答解析からデジタルツインへの機能拡張ロードマップ

本システムは、高度な安全性を担保しなければならない重要な構造物の設計・検証現場で実用化が進められています。主な適用事例および想定用途としては、以下の領域が挙げられます。

地震応答解析による高度なリスク評価

巨大地震の発生時に建物全体がどのように変形・損傷するかを、部材の塑性化やひび割れレベルまで詳細に予測する非線形地震応答解析へ適用されます。高精度なFEMモデルが迅速に手に入るため、設計の初期段階から詳細なリスク評価が可能となります。

既存重要施設の補強・改修工事の合理化

原子力関連施設やインフラ拠点、大規模産業施設など、高い安全性が求められる建物のBCP(事業継続計画)策定や、耐震補強・改修工事の設計において、現況のBIMデータから即座に解析モデルを生成し、最適な補強案の検証を行うことができます。

さらに、清水建設は本システムの機能を順次拡張していくロードマップを掲げています。

  • 対応事象の拡大: 現在展開している地震応答解析にとどまらず、風圧による暴風解析、飛来物などの衝撃・衝突解析、津波荷重解析など、多様な自然災害・外力事象に対する高度な構造解析全般へ適用範囲を順次拡大する計画です。
  • デジタルツイン化への発展: 将来的には、建物内に配置されたセンサー群から取得するリアルタイムのモニタリングデータ(センシング技術)と、BIMデータ、FEMシミュレーションを統合連動させ、実建物の状態をデジタル空間上に忠実に再現・予測する「構造デジタルツイン」の実現を目指しています。

参考記事: 建設業働き方改革加速化プログラムとは?2024年適用後の3本柱と現場の対応手順を解説


建設業界の主要プレイヤーに及ぼす波及効果

「BIMからFEM解析モデルを自動生成する」技術の確立は、単一企業内の作業効率化にとどまらず、建設業界全体の業務フローや組織の役割分担に大きな変化をもたらします。ゼネコン、設計組織、そしてプロジェクト全体のフロントローディングという観点から、その影響を紐解きます。

スーパーゼネコンにおける設計施工一貫体制と競争力の強化

ゼネコン(特に設計施工を一括で受注する大手・中堅元請け企業)にとって、設計から施工、維持管理に至る工程でデータをシームレスに連携させることは、長年の課題でした。

従来の設計施工プロセスでは、意匠設計や構造設計の段階で変更が生じるたびに、解析モデルの作成・改訂に1カ月以上を要していたため、施工計画や見積もり作成の段階で「旧バージョンの解析結果に基づいて調整を進めざるを得ない」というタイムラグが発生していました。これが後工程での手戻りや、施工段階での取り合いエラー、設計変更に伴うコスト増大の原因となっていたのです。

本システムのようにBIMデータから約3日でFEM解析モデルが生成できるようになれば、設計変更が行われた直後に構造シミュレーションを実行し、その結果をただちに意匠・設備・施工の各担当部署へフィードバックできます。意匠・構造・施工の意思決定がタイムラグなしで行われることで、設計施工一貫モデルの強みが最大限に発揮され、施工品質の向上と工期短縮が同時に達成されます。

構造設計者の業務変革とクリエイティブ領域への注力

本技術の普及は、構造設計事務所やゼネコンの構造設計部門における実務者の役割を劇的に変化させます。

これまでの構造設計者は、業務時間の大半を「図面やBIMデータからの寸法拾い出し」「解析ソフトへのノード(節点)やエレメント(要素)の手動入力」「メッシュ分割の調整」「入力データの整合性チェック」といった、単純だが高度な注意力を要する非創造的な入力作業に追われていました。

解析モデルの自動生成によってこのプロセスが自動化されると、構造設計者の主な役割は「モデルを作る入力作業者」から「自動生成された解析結果を分析し、構造的な最適解を判断・提案する評価者」へと移行します。手作業の負担から解放された設計者は、複数の構造システムの比較検討や、より高度な耐震・免震性能の追求、コストパフォーマンスに優れた新部材の選定といった、付加価値の高いクリエイティブな業務にリソースを集中できるようになります。

フロントローディングの具現化と最適設計(VE)の加速

建築プロジェクトの初期段階(基本設計・実施設計フェーズ)において、あらかじめ詳細な課題抽出と検証を完了させておく「フロントローディング」は、建設DXにおける重要なテーマです。

解析モデルの作成に1カ月以上かかっていた従来環境では、プロジェクト初期に複数のバリエーションを解析比較(ケーススタディ)することは時間的・コスト的に不可能であり、過去の類似事例に基づく経験則や安全側に寄せすぎた設計に頼らざるを得ない面がありました。

しかし、BIMからFEM解析モデルが約3日で生成できるようになれば、設計初期の段階で「A案(標準構造)」「B案(コスト優先)」「C案(大空間優先)」といった複数の設計パターンに対し、それぞれ即座にFEMシミュレーションを実行し、構造的安全性と経済性を定量的に比較・評価することが可能となります。

これは、品質や性能を維持・向上させながらコスト最適化を図るVE(バリューエンジニアリング)提案の精度を高めることと同義であり、施主に対する提案力や説明責任(アカウンタビリティ)の劇的な向上につながります。

参考記事: VE提案(バリューエンジニアリング)とは?CDとの違いや現場で使える具体事例・提案手順を解説


ConShiftの視点|BIMデータがシミュレーションの「マスターデータ」となる未来

今回の清水建設による「BIM-FEM連携システム」の開発は、建設業界におけるBIMの捉え方が根本的に変化したことを象徴する出来事です。

これまで多くの建設現場や設計組織において、BIMは主に「3次元で形状を可視化し、納まりや干渉をチェックするためのツール」として使われる傾向が強くありました。データ連携と言っても、IFCデータなどを介した形状情報の受け渡しにとどまり、構造解析や設備計算などの専門的な数値シミュレーションにおいては、結局人間がデータを打ち直して再構築していたのが実情です。

しかし、本件が示しているのは、BIMが「単なる可視化ツール」から「高度な計算・解析を実行するためのマスターデータ」へと進化したという構造的変化です。

BIMデータ内に部材形状だけでなく、材質や詳細な配筋情報までを高精度に保持させ、それを解析エンジンと直接連動させる技術が確立されたことで、今後は「設計データを修正すれば、解析結果も自動的に更新される」というシームレスなデータエコシステムが一般的になっていくでしょう。

今後、他のスーパーゼネコンや大手設計事務所においても、BIMデータを核としたシミュレーション自動化ツールの開発・導入が急速に進むと予想されます。データの再入力を前提とした従来の設計プロセスに固執する企業は、意思決定のスピードと提案のバリエーションにおいて、大きな競合不利を被ることになります。


建設実務者が明日から意識すべき3つのアクション

BIMを活用した構造解析の自動化・高速化という潮流に対し、現場リーダーや経営層、設計担当者が明日から取り組むべきアクションを整理します。

  1. 自社のBIM活用フェーズを「可視化」から「データ連携」へと再定義する
    自社のBIM導入状況が単なる「3D図面の作成」や「パース作成による施主説明」にとどまっていないかを評価し、積算・構造解析・施工管理データへの連動を見据えたデータ入力ルールの整備に着手する。

  2. 構造設計・解析業務における手戻りと入力工数の定量的把握を行う
    自社の設計部門や協力会社とのやり取りにおいて、設計変更に伴う解析モデルの修正・再作成にどの程度の工数と期間が費やされているかを可視化し、自動化・省力化ツール導入による投資対効果(ROI)を試算する。

  3. 属性情報(パラメータ)を保持した高品質なBIMモデル作成フローを確立する
    将来的なFEM自動生成や各種シミュレーションツールとの連携に対応できるよう、形状データだけでなく部材の「材質」「強度」「配筋情報」などの属性情報をBIMモデル内にルール通り正確に入力する標準化プロセスを現場・設計部門全体で徹底する。


出典: 日経クロステック(xTECH)
出典: 清水建設株式会社 ニュースリリース

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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