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法規制・制度 2026年8月23日

厚労省が2026年8月に新PR動画公開、発注者との適正工期交渉を後押し

厚労省が2026年8月に新PR動画公開、発注者との適正工期交渉を後押し

厚生労働省は2026年8月17日、建設業および運輸業における長時間労働の是正と取引環境の改善を呼びかける新PR動画「その手で広げる はたらきかたススメ!」を公開しました。2024年4月の時間外労働上限規制の適用以降も課題として残る「短工期設定」や「荷待ち時間」に対し、発注者やサプライチェーン全体を巻き込んだ商慣習の変革を促す重要な施策となります。

厚生労働省が新PR動画を公開した背景と取引環境改善の狙い

「その手で広げる はたらきかたススメ!」の概要

厚生労働省は、俳優の内田有紀氏を起用した新たなPR動画「その手で広げる はたらきかたススメ!」を制作し、働き方改革総合サイト「はたらきかたススメ」および公式YouTubeチャンネル等で公開しました。公開期間は2027年3月31日までとなっています。

本施策は、建設業や自動車運転業務などの長時間労働を削減するためには、現場作業を担う事業者自身の労務管理だけでなく、工事を発注する施主・デベロッパーや荷主企業の理解と協力が不可欠であるという認識のもとで展開されています。

長時間労働を生む「短工期」という商慣習へのメス

建設業において時間外労働が常態化してきた背景には、発注者側による無理な短工期の設定や、天候不良・設計変更に伴う工期延長が認められにくいといった取引上の力関係が存在します。元請負人や下請負人の自助努力のみでは労働時間の短縮に限界があるため、行政主導で発注者側の意識改革を促すアプローチが強化されています。

厚生労働省は国土交通省と緊密に連携し、法制度や取引ルールの周知に加え、受発注者が協力して工期設定や作業プロセスを見直した具体的な改善事例をポータルサイト等で発信しています。

PR動画シリーズの展開推移

厚生労働省は2024年4月の上限規制適用前後から、継続的に著名人を起用した啓発動画を制作し、社会全体への働きかけを段階的に進めています。

公開時期 メインキャラクター 主な発信テーマ・対象
2023年6月〜 小芝風花 氏 2024年4月の上限規制適用に向けた事前啓発と制度理解の促進
2024年11月〜 たしかめたん 上限規制適用後の定着と、荷待ち削減など取引関係者への協力要請
2025年8月〜 玉木宏 氏 短工期設定や荷待ち等の商慣習是正を広く社会に訴求
2026年8月〜 内田有紀 氏 取引関係者・発注者との協力による具体的な取引環境改善事例の周知

参考記事: 建設業働き方改革加速化プログラムとは?2024年適用後の3本柱と現場の対応手順を解説

建設業界の主要プレイヤーに与える影響

発注者・デベロッパー:短工期強要に対するコンプライアンスリスクの増大

施主や不動産デベロッパーにとって、行政が「短工期設定」を長時間労働の主要因として明示し、広く一般社会へ発信している現状は無視できないリスクとなります。

従来のような「引き渡し期日を優先し、無理な工程を施工者に押し付ける」姿勢は、企業の社会的信用を損なうだけでなく、改正建設業法や改正品確法に定められた適正工期確保の責務に抵触する恐れがあります。今後は発注段階から週休2日を前提とした余裕ある工期計画を策定することが、発注者側のガバナンスとして厳しく求められます。

参考記事: 公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)とは?2024年改正のポイントと発注者・受注者の実務を徹底解説

ゼネコン(元請け):工期・価格交渉における公的根拠の獲得

元請けゼネコンにとっては、民間工事を含む発注者との契約交渉において、行政の公式キャンペーンや公開事例を直接的な交渉材料として活用できるようになります。

自社の努力不足ではなく「業界共通の是正課題」として発注者に適正な工期とコストを主張しやすくなるため、見積提出時の工程シミュレーションや、天候不順等による工期変更請求の正当性が高まります。また、一次・二次下請に対する適正な労務費の支払いと併せ、サプライチェーン全体で無理のない施工体制を構築するリーダーシップが期待されます。

参考記事: 標準労務費の勧告制度とは?改正建設業法での変更点と企業が取るべき対応策を解説

現場監督・施工管理者:無理な工程挽回からの脱却と働き方見直し

施工現場の最前線に立つ現場監督や施工管理者にとっては、現場単位での是正要請が通りやすくなる環境が整いつつあります。

工程遅延が発生した際に、作業員の休日出勤や夜間作業による力技の挽回を前提とするのではなく、発注者や設計者と工程調整を行うための後ろ盾が得られます。4週8閉所などの現場環境改善を進めるうえでも、発注者側の理解を得るための説得力が増すことになります。

参考記事: 4週8閉所(週休2日現場)とは?4週8休との違いや公共工事の補正ルール・DX活用法を解説

ConShiftの視点(独自考察)

「受注者側の自助努力」から「サプライチェーン全体の構造改革」へ

今回のPR動画公開およびポータルサイト「はたらきかたススメ」における事例発信が示しているのは、建設業の働き方改革が「現場の労働時間管理」というミクロな段階から、「発注者を含む商慣習の是正」というマクロな構造改革へ完全にシフトしたという事実です。

2024年4月に施行された時間外労働上限規制により、建設会社は勤怠管理の厳格化や現場DXによる省人化を推進してきました。しかし、発注者による着工遅延や頻繁な設計変更、タイトな工期設定が放置されたままでは、元請けや専門工事業者の努力だけでコンプライアンスを遵守し続けることには限界があります。

厚生労働省と国土交通省が連携して発注者側の責務を社会的に周知し始めたことは、建設業界が長年抱えてきた「受発注間の非対称な力関係」を是正するための重要な転換点です。企業は行政によるこうした広報展開を単なるプロモーションとして見過ごすのではなく、自社の契約実務や発注者交渉をアップデートするための追い風として戦略的に位置付ける必要があります。

まとめ

厚生労働省の新PR動画「その手で広げる はたらきかたススメ!」の公開は、建設業における長時間労働の是正が取引関係者全体の責務であることを改めて社会に明示しました。施工会社や経営層は、以下の実務対応を意識して進めることが求められます。

  1. ポータルサイト「はたらきかたススメ」等の改善事例を確認する
    自社と同規模・同工種の受発注者間での工期見直し事例をインプットし、発注者との交渉における具体的な参照モデルを把握します。
  2. 見積・契約段階における適正工期の根拠提示を徹底する
    休日日数や気象条件を織り込んだ標準的な工期根拠を明確にし、発注者に対して無理な短工期を受け入れない姿勢を契約初期から明示します。
  3. 現場の工程管理とサプライチェーン間の情報共有を可視化する
    下請事業者や建材・重機の搬入スケジュールをデジタルツール等で共有し、手戻りや待機時間の発生を防ぐ施工体制を構築します。

出典: みんなの広報宣伝部
出典: 厚生労働省

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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