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Home > 法規制・制度> 厚生労働省、熱中症対策義務化で死傷1803人受け現場管理を刷新せよ
法規制・制度 2026年8月27日

厚生労働省、熱中症対策義務化で死傷1803人受け現場管理を刷新せよ

厚生労働省、熱中症対策義務化で死傷1803人受け現場管理を刷新せよ

2025年6月1日の改正労働安全衛生規則の施行により、建設現場における熱中症対策は従来の努力義務から罰則を伴う法的義務へと引き上げられました。2025年の職場における熱中症死傷者数が過去最多の1,803人に達する中、元請から下請に至る全事業者に対して、WBGT値の測定や発症抑制を見据えた実効的な安全衛生管理体制の再構築が強く求められています。

熱中症対策の法的義務化と2026年3月策定「新ガイドライン」の要点

猛暑日の増加と現場従事者の高齢化が重なり、労働災害としての熱中症リスクは深刻度を増しています。従来の啓蒙を中心としたアプローチから、法的拘束力を持つ労務管理・安全管理への転換が進められています。

努力義務から罰則対象へ移行した改正労働安全衛生規則の骨子

2025年6月1日に施行された改正労働安全衛生規則では、熱中症のおそれがある作業場所において、事業者が講ずべき措置が明確に義務付けられました。対象となる作業環境の目安は「暑さ指数(WBGT)28度以上、または気温31度以上」かつ「連続1時間以上または1日計4時間を超える作業」です。

事業者に対して法的に義務付けられた基本項目は以下の3点です。

  • 熱中症のおそれがある作業者を早期に発見するための報告・巡視体制の整備
  • 症状の悪化を防止するための作業離脱・身体冷却・医療機関搬送などの措置手順の作成
  • 策定した体制および緊急時措置手順の関係作業者(下請作業員を含む)への周知・教育

これらの措置を怠った場合、労働安全衛生法に基づく是正勧告や罰則、現場の使用停止命令などの対象となる可能性があります。

2026年3月発出「新ガイドライン」が求める発症予防と体制整備

厚生労働省は2026年3月18日、従来の「職場における熱中症予防基本対策要綱」を全面的に改定し、「職場における熱中症防止のためのガイドライン」を新たに策定しました。新ガイドラインの主眼は、起きてからの「早期発見と措置」にとどまらず、「発症そのものを未然に抑制する」予防的措置の標準化にあります。

新ガイドラインでは、作業環境におけるWBGTの実測(JIS適合機器の使用および着衣補正値の加算)、作業強度に応じた作業休止時間の確保、そして体を暑さに慣らす「暑熱順化(7日から14日程度)」の計画的導入が明記されました。さらに、現場ごとに「熱中症予防管理者」を選任し、休憩場所の環境整備(28度以下に保てる冷房設備等の設置推奨)を主導することが求められています。

比較項目 2025年6月施行「改正安衛則」(法的義務) 2026年3月策定「新ガイドライン」(推奨・実施基準)
法的位置づけ 労働安全衛生法に基づく法的義務(違反時は罰則対象) 法令義務に上乗せして実施すべき具体的な実務推奨基準
対象作業の目安 WBGT28度以上または気温31度以上、連続1時間超または1日4時間超 熱中症のおそれがある全作業(短時間作業や下請も包含)
主な要求事項 早期発見体制の整備、重篤化防止手順の作成、関係者周知 JIS適合計器によるWBGT実測、暑熱順化期間の設定、休憩室の温度管理
現場管理体制 報告体制の確立と緊急連絡フローの策定・掲示 熱中症予防管理者の選任、作業強度ごとの休憩基準設定
責任の対象範囲 作業を行わせる全事業者(元請および各下請事業者) 元請事業者、関係請負人、統括安全衛生責任者、発注者

建設業における熱中症死傷者の推移と年齢層の偏り

厚生労働省の統計によると、2025年の職場における熱中症死傷者数(休業4日以上)は1,803人に達し、2005年の統計開始以来で過去最多を更新しました。

業種別に見ると、建設業の死傷者数は292人と製造業に次ぐ規模となっています。特に重大なのは死亡災害の割合です。過去5年間(2021年から2025年)の累計死亡者数131人のうち、建設業は52人を占め、全業種の中で最も高い割合を示しています。

また、死傷者の約52%を50歳以上が占めており、死亡者に至っては8割以上が50歳以上のシニア層に集中しています。気象庁の統計では、猛暑日の年間日数は100年あたり2.6日のペースで増加しており、現場技能者の高齢化と温暖化が重なった結果、従来の「個人の体力頼み」の作業管理は限界を迎えています。

建設業界の主要プレイヤーに生じる実務的インパクト

熱中症対策の義務化とガイドラインの強化は、元請ゼネコン、現場監督、技能労働者のそれぞれに対して、現場運用や労務管理の抜本的な見直しを迫っています。

ゼネコン(元請け):安全配慮義務の履行とサプライチェーン統括

元請ゼネコンにとって、熱中症対策の義務化は単なる現場単位の安全施策ではなく、重大な経営リスク管理および企業防衛の対象となりました。建設現場では元請と多数の専門工事業者が混在して作業を行うため、元請には統括安全衛生責任者を中心とした全体管理が課されます。

下請企業が対策を怠っていた場合でも、元請側の作業環境整備義務(適切な休憩所の設置やWBGT計測情報の提供など)が問われることになります。そのため、一次下請から二次・三次下請に至るまで、共通の安全管理手順を周知徹底させる契約・教育スキームの構築が不可欠です。

さらに、大手ゼネコンの間では、現場近隣へのエアコン完備休憩所の配備や、下請作業員も含めた冷却ウェア等の装備支援に数千万円から億円単位の予算を投じる動きが加速しています。安全配慮義務を適正に履行している体制そのものが、優秀な協力会社や技能者を惹きつける企業ブランド価値へと直結しています。

参考記事: 大林組や鴻池組は朝7時始業へ|対策費1.5億円拡大に見る酷暑対策の最前線

現場監督・施工管理者:管理業務の増大とDXツールの実装

現場監督や施工管理者は、毎日の現場管理実務において最も直接的な影響を受けています。WBGT値の定期測定と記録、危険数値に応じた作業中断や休憩指示、新規入場者教育での熱中症予防項目の追加、緊急時の搬送手順の掲示など、日々の管理業務は大幅に増加しました。

2024年4月から建設業に適用されている時間外労働の上限規制(年960時間上限)がある中、これらの安全管理業務を手作業でこなすことは監督自身の長時間労働を招く要因となります。

このため、IoT環境センサーを用いたWBGTの自動測定・遠隔監視システムや、クラウド型施工管理ツールを活用した作業日報との自動連携など、安全管理のDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に普及しています。現場監督が常時巡回しなくても、危険な数値や異常の兆候を検知できる仕組みの導入が、持続可能な現場運営の必須条件となっています。

参考記事: 建設業働き方改革加速化プログラムとは?2024年適用後の3本柱と現場の対応手順を解説

職人・技能労働者:個別リスクに応じた就労管理と個人装備の進化

現場で身体を動かす職人や技能労働者においては、「暑さは我慢するもの」という精神論からの完全な脱却が進んでいます。特に50代以上のベテラン層や、高血圧・糖尿病などの基礎疾患を抱える作業員に対しては、個人の健康状態に応じた作業配置や配慮が義務付けられます。

梅雨明け直後や休暇明けの「暑熱順化」が完了していない期間は、作業負荷を段階的に引き上げる措置が取られるようになり、無理な突貫作業による発症リスクが抑えられています。

また、個人装備の面でも進化が見られます。ファン付き作業服に加え、PCM(相変化材料)を搭載した電源不要のアイスベストや、ヘルメット用冷却遮熱ライナーなどの併用が標準化されつつあります。さらに、心拍数や体表面温度をリアルタイムで測定するウェアラブルデバイスを装着し、本人が自覚症状を感じる前に休憩を促す体調管理体制も実用化されています。

参考記事: 遠隔臨場とは?令和6年最新要領と活用メリット・導入手順を徹底解説

ConShiftの視点:気候変動を前提とした「安全インフラ」への投資

2025年の安衛則改正と2026年3月の新ガイドライン策定は、建設業界の安全管理におけるパラダイムシフトを象徴しています。年間猛暑日数の増加傾向が確実視される中、熱中症対策はもはや「夏季の一時的な注意喚起」ではなく、通年で計画・投資すべき「現場の基本インフラ」へと位置づけが変わりました。

第一に、施工計画と工程管理の前提条件が変わります。WBGT値に基づく作業中断基準を厳格に適用すれば、夏季の日中における実稼働時間は構造的に減少します。この稼働低下を従来の突貫工事や残業で補うことは、時間外労働上限規制の下では不可能です。したがって、発注者との契約段階において酷暑による不稼働リスクを織り込んだ適正工期を設定すること、そして季節ごとの変形労働時間制を活用して春・秋・冬へ作業量を平準化する工程再設計が、経営戦略上の重要課題となります。

第二に、重層下請構造における「安全格差」の解消が急務です。大手元請による設備投資が進む一方で、二次・三次下請の小規模事業者や一人親方への装備提供・体調管理は後手に回りがちです。下請契約における適正な安全衛生経費の計上や、元請による冷却装備の一括配備といったサプライチェーン全体を包括する仕組みがなければ、現場全体の法的コンプライアンスを維持することは困難です。気候変動に適応した安全インフラを構築できる企業こそが、人材確保と施工品質の両面で生き残ることになります。

現場と経営層が明日から取り組むべき3つのアクション

法的義務化と新ガイドラインに対応し、現場の安全と法令遵守を両立させるために直ちに着手すべき実務項目を整理しました。

  1. 現場のWBGT測定環境と重篤化防止手順の明文化・掲示
    空行を入れずに説明文を記述します。JIS適合のWBGT計測器を現場の主要作業場所に配備し、定期的な測定・記録フローを確立します。あわせて、WBGT値に応じた作業中断基準、体調不良者発生時の冷却方法、救急搬送手順、緊急連絡先を明記したフロー図を作成し、詰所や朝礼看板など作業員全員が見える場所に掲示します。

  2. 新規入場者教育および朝礼での「暑熱順化」「基礎疾患」への配慮徹底
    空行を入れずに説明文を記述します。新規入場時教育のカリキュラムに熱中症防止項目を正式に組み込み、緊急手順の周知を行います。特に梅雨明けや長期休暇明けの作業員に対しては、7〜14日程度の暑熱順化期間を考慮した作業量調整を実施します。朝礼時の問診や血圧測定などを通じ、高血圧等の持病を持つ作業員や高齢作業員の体調を個別把握する体制を整えます。

  3. 休憩所環境の整備と冷却装備・デジタル管理ツールの導入
    空行を入れずに説明文を記述します。現場内に28度以下を維持できる冷房完備の休憩スペースや日陰の確保、冷水・塩分補給設備の常備を進めます。あわせて、PCM冷却ベスト等の個人装備の配備や、ウェアラブル端末・IoT環境センサーによる遠隔監視体制の導入を検討し、ハードウェアとデジタルの両面から発症を未然に防ぐ環境を構築します。

出典

  • Mr.Nomads | https://www.atpress.ne.jp/news/613411
  • mhlw.go.jp | https://jsite.mhlw.go.jp/toyama-roudoukyoku/news_topics/oshirase/0706nechushokyoka.html
  • alsok.co.jp | https://www.alsok.co.jp/corporate/recommend/heatstroke-prevention.html
  • xn--alg-li9dki71toh.com | https://xn--alg-li9dki71toh.com/roumu/workplace-heatstroke-law/
  • jil.go.jp | https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2026/07/kokunai_02.html

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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