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施工管理 2026年9月2日

前田建設工業の床版架設機、施工範囲2倍で高速道路更新を省人化

前田建設工業の床版架設機、施工範囲2倍で高速道路更新を省人化

前田建設工業株式会社は、高速道路などの床版取替工事において施工範囲を従来の約2倍に拡大する連結式半断面床版架設機「どすこいガントリー」を開発しました。桁スパンを15mに延長しながら機械幅を4mに抑えたことで、供用車線を確保する半断面施工における架設機の移設回数を半減させ、老朽化インフラの更新工期短縮と現場の省人化を大きく後押しします。

「どすこいガントリー」が実現する高速道路リニューアルの刷新

高度経済成長期に集中的に整備された高速道路橋をはじめとする道路インフラは、供用開始から半世紀以上が経過し、抜本的な維持更新期を迎えています。大型車両の増加による疲労や、冬季の凍結防止剤散布に伴う塩害によって鉄筋腐食やコンクリートの剥離が進行しており、既設のコンクリート床版を新しいプレキャスト床版へ交換する大規模更新事業が各地で本格化しています。

しかし、高速道路の更新工事では、道路を全面通行止めにせず1車線の通行を確保しながら作業を進める「半断面施工」が基本となります。限られた幅員と厳しい交通規制の中で、いかに一般車両への影響を抑えつつ迅速に工事を完了させるかが大きな課題となっていました。

前田建設工業が株式会社前田製作所の協力を得て開発した「どすこいガントリー」(特許出願中)は、「どこでも すばやく コンパクトに いつでも」取替できることをコンセプトに設計された新型架設機です。2026年8月21日に発表され、実物大の実証試験を経て、2026年10月より常磐自動車道「日立中央IC~日立北IC」間の更新工事への初弾導入が予定されています。

従来機との仕様比較と革新的な構造

本装置の最大の技術的特長は、2基のメインユニット間を15mのロングスパンガータ(桁)で連結する構造を採用した点にあります。従来の床版架設機は桁スパンが短く、1回の設置で交換できる床版は3枚程度が限界でした。どすこいガントリーでは、1回の据え付けで5〜6枚の床版をまとめて交換可能となり、施工範囲が従来の約2倍に拡大しました。

項目 従来型の床版架設機 どすこいガントリー
1回設置あたりの施工枚数 3枚程度 5〜6枚(約2倍)
主桁スパン長 短スパン(単独運用) 15m(2基連結時)
最大機械幅 4.0m〜4.5m程度 4,000mm(1車線幅に収容)
機械高さ 固定式 5,800mm〜6,500mm(伸縮調整)
定格荷重 10t〜12t程度 15t(壁高欄一体型に対応)
搬入・組立方式 大型クレーンによる組立 トレーラ自立・1車線内組立
線形・勾配への追従性 標準勾配のみ対応 縦断勾配6%、横勾配2%対応

厳しい現場制約を克服する4つの機構設計

どすこいガントリーは、単に桁を伸ばしただけでなく、実現場の複雑な制約条件をクリアするための高度な機構を備えています。

車線制限を守る幅4mのスリムボディと高さ調整機構

1車線規制(半断面施工)の幅員内に収まるよう機械全幅を4,000mmに抑えており、隣接する供用車線を走行する一般車両への干渉を防ぎます。また、機械高さを5,800mmから6,500mmまで伸縮調整できるため、跨道橋や標識といった上空障害物が存在する現場でも安全に施工できます。

重構造化する最新床版に対応する15t吊上能力

耐久性向上を目的に近年採用が増えている「壁高欄一体型プレキャスト床版」などの重量部材に対応するため、定格荷重15tを確保しています。

大型クレーン不要の自立組立システム

メインユニットは1基ずつトレーラで運搬でき、現地では大型クレーンを使用せずにトレーラ荷台から自立昇降して1車線の規制幅内で安全・迅速に組み立てが可能です。

道路の線形や勾配に追従する水平補正機能

平面半径R1,000m、縦断曲率半径R2,000m、横勾配2%、走行縦断勾配6%までの複雑な道路線形に対応しています。鉄輪の昇降機能によって機械本体を常に水平に保ち、安全な吊り上げ作業を継続できます。

参考記事: プレキャストコンクリート(PCa)とは?RC・PCとの差異や現場導入のメリットを徹底解説

床版更新の高速化がもたらす関係者への波及効果

施工機械の大型スパン化と移設回数の削減は、インフラ更新に携わる各プレイヤーの実務に直接的な恩恵をもたらします。

元請けゼネコン:非定常作業の半減による生産性と安全性の両立

床版更新工事において、架設機の解体・移設・再設置・芯出し作業は、最も人工と時間を要するクリティカルパスです。移設作業は定常的な床版吊り上げ作業とは異なり、転倒や挟まれといった重大事故リスクが潜む非定常作業でもあります。

施工範囲が2倍になり移設回数が50%削減されることで、移設に伴う作業工数が大幅に圧縮され、現場全体の作業サイクルタイムが劇的に改善します。時間外労働の上限規制が課される中で、限られた労働力と実稼働時間を高付加価値な本設工事へ集中させることが可能になります。

発注者(道路会社・自治体):規制期間の短縮による社会的損失の抑制

東日本高速道路(NEXCO東日本)をはじめとする高速道路会社にとって、リニューアル工事に伴う車線規制や渋滞は、道路利用者に対する最大のサービス低下要因であり、物流の停滞という社会的損失を招きます。

1工事あたりの現場占有期間を短縮できる急速施工技術は、工事に伴う周辺交通への悪影響を最小化します。総合評価落札方式における技術提案においても、規制期間短縮や交通影響低減に直結する専用機械の保有・運用能力は、発注者から高く評価される差別化要素となります。

現場監督・施工管理者:工程管理の確実性と労働環境の改善

日々の施工管理において、天候や搬入タイミングに左右されやすい移設工程が減ることは、突発的な工程遅延リスクの低減を意味します。

また、1車線内での自立組立機構や路面勾配に応じた自動水平調整機能により、クレーン手配の調整や複雑なレベル出し作業の負担が軽減されます。夜間や休日に行われがちな規制シフト作業の回数が減ることで、現場技術者の労務管理適正化にも寄与します。

参考記事: 建設業働き方改革加速化プログラムとは?適正工期・賃金引き上げ・現場DXを実現する3つの柱を解説

参考記事: インフラ長寿命化計画とは?予防保全への転換と実務担当者が押さえるべき計画策定のポイント

ConShiftの視点:現場制約を突破する専用ハードウェア開発の重要性

建設業界のDXや生産性向上というと、施工管理クラウドやBIM/CIM、AIカメラといったソフトウェア技術が注目されがちです。しかし、土木構造物の更新現場においては、「1車線しか占有できない」「上空に桁がある」「路面に勾配がある」といった物理的な境界条件そのものがボトルネックとなっています。

前田建設工業の「どすこいガントリー」が示すのは、現場固有の制約条件を前提に専用機械(ハードウェア)を再設計し、作業プロセスそのものを根本から省力化するアプローチの有効性です。

【従来の改善アプローチ】
既存機械の運用 ──> 人員の追加投入・夜間作業 ──> 移設作業の繰り返し(効率の限界)

【ハードウェア再設計アプローチ】
15mスパン・幅4m機 ──> 施工範囲を2倍に拡大 ──> 移設回数半減と工程の抜本的短縮

老朽化インフラの更新需要が右肩上がりに増加する一方で、現場を担う技能労働者の減少は避けられません。今後は、汎用重機に頼る従来の施工計画から脱却し、インフラ更新の標準パターンに最適化された専用施工機械を開発・活用できる企業が、大規模更新市場での競争力を強固にしていくと考えられます。

参考記事: JR各社が挑む1.3兆円規模のインフラ更新|施工管理の受注戦略

大規模更新時代に向けた実務アクション

高速道路や橋梁の更新市場で受注を伸ばし、安全かつ収益性の高い現場運営を実現するために、以下の準備を進めることが推奨されます。

  1. 更新工事における作業ステップの棚卸しとボトルネックの可視化

自社の施工実績から、架設・解体・移設などの非定常作業に費やしている人工数と時間を算出し、機械化・大型化によって省略可能な作業工程を特定する。

  1. プレキャスト化・急速施工に対応した専用機械・工法の情報収集

1車線規制や夜間施工に対応する特殊架設機やモジュール化工法の最新動向を把握し、機械メーカーや専門工事業者との共同開発・提携を検討する。

  1. 交通影響低減と安全性向上を軸にした技術提案書のブラッシュアップ

発注者が重視する「規制期間短縮」「非定常作業の削減」「第三者被害防止」を定量的な数値データ(移設回数削減率、工期短縮日数など)を用いてアピールできる提案体制を構築する。

インフラ更新の現場では、物理的な制約を克服する機械化施工の進化が、安全と生産性の向上を同時に成し遂げる決定打となります。


出典: 日経クロステック(xTECH)
出典: 前田建設工業株式会社 プレスリリース

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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