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施工管理 2026年9月4日

首都高など4社が4拠点で実証、ドローンと巡回車で遠隔点検を実現

首都高など4社が4拠点で実証、ドローンと巡回車で遠隔点検を実現

首都高速道路、首都高技術、エアロセンス、KDDIスマートドローンの4社は2026年8月25日、ドローンや道路パトロールカー、ウェアラブルカメラを連携させ、道路点検を遠隔・リアルタイムに一元管理する実証実験の成果を発表しました。上空と地上、広域と局所の複数データをシームレスに統合した本取り組みは、深刻化するインフラの老朽化と技術者不足を打破する持続可能な点検管理体制の確立へ向けた重要なマイルストーンです。

4拠点を結ぶ異種デバイス統合点検実証の全容

首都高速道路およびその100%子会社である首都高技術、エアロセンス、KDDIスマートドローンの4社は、2026年3月30日に異種点検デバイスを統合した大規模な実証実験を実施しました。

首都高速道路が運用する「総合防災情報システム」内のリアルタイム動画配信システムに、上空を飛行するドローンや地上を巡回する車両、現場作業員が装着するカメラを同時に接続し、遠隔地から道路状況を一元的に監視・把握できる体制の有効性を検証したものです。

実証実験の概要と運用フレームワーク

本実証実験は、東京都心部の要衝である大橋ジャンクションをはじめ、千葉県君津市、茨城県守谷市、埼玉県川口市の計4拠点において同時に実施されました。

従来の点検業務では、ドローンによる空撮映像の確認、パトロールカーによる路面巡視、作業員による構造物の近接確認がそれぞれ個別の運用系統に分断されていました。今回の実証では、これらすべての位置情報と映像データをひとつのシステム画面へ低遅延で集約し、遠隔本部の管理者が即座に現場状況を多角的に把握できる仕組みを構築しています。

項目 詳細内容
発表日 2026年8月25日
実験実施日 2026年3月30日
参画企業 首都高速道路、首都高技術、エアロセンス、KDDIスマートドローン
実施拠点 大橋ジャンクション(東京都)、君津市(千葉県)、守谷市(茨城県)、川口市(埼玉県)
連携機器 VTOL型ドローン、マルチコプター型ドローン、道路パトロールカー、ウェアラブルカメラ
統合システム 首都高速道路「総合防災情報システム」(リアルタイム動画配信システム)
背景事業 国土交通省 SBIRフェーズ3基金事業(最大交付上限額8.6億円)

役割分担と連携デバイスの特性

実証実験では、それぞれのデバイスの特性を活かした立体的な役割分担が行われました。上空の広域視点から地上の作業員の手元視点までをシームレスに結ぶことで、異常検知から初期対応までのリードタイム短縮を狙っています。

  • VTOL(垂直離着陸型無人航空機): エアロセンスが開発した長距離・高速飛行が可能なVTOL機を使用し、上空の高い高度から高速道路本線および周辺斜面などの広域点検を実施しました。広範囲の変状や周辺環境の急変を素早く俯瞰把握する役割を担います。
  • マルチコプター型ドローン: 橋梁の桁下や橋脚周辺、大橋ジャンクションの複雑なループ構造など、局所的な構造物の詳細点検に投入されました。安定したホバリングにより、近接しなければ確認できない亀裂や腐食などの微細な損傷箇所を鮮明に撮影します。
  • 道路パトロールカー: 地上を走行しながら路面の落下物やポットホール、路肩の異常などを車載カメラと巡回員によって確認し、異常が発見された現場へ緊急急行する実動部隊として機能します。
  • ウェアラブルカメラ: 現場に到着した作業員や技術者が身につけ、手元の作業状況や構造物の近接ディテールを一人称視点(ファーストパーソンビュー)で遠隔本部にライブ配信します。

これら4種類の機器から送られてくる映像ストリームとGPS位置情報は、首都高速道路のリアルタイム動画配信システム上に統合マップおよびマルチウィンドウとして展開され、管理者は現場の全体像と細部を同時に把握しながら指示を出す運用が行われました。

SBIRフェーズ3採択からの開発経緯

本実証の背景には、国土交通省が推進する「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」の存在があります。この事業は、先端技術を有するスタートアップ企業などの技術開発と社会実装を支援・促進する国の大型補助事業です。

2024年1月30日、国土交通省が設定した「デジタルツインを活用した公共構造物(道路・河川)の維持管理手法の技術開発・実証」というテーマに対し、エアロセンス、KDDIスマートドローン、首都高速道路の3社共同提案(事業計画名「災害に屈しない国土づくり、広域的・戦略的なインフラマネジメント技術の開発・実証」)が採択されました。2027年度末までの交付上限額は8.6億円に達し、3社は同日付で共同研究契約を締結して研究開発を加速させてきました。

年月日 主な出来事とマイルストーン
2022年12月5日 改正航空法が施行。有人地帯での補助者なし目視外飛行(レベル4)が解禁
2024年1月30日 国交省SBIRフェーズ3に採択(上限8.6億円)。3社で共同研究契約を締結
2025年2月14日 レインボーブリッジにて往復約2.8kmの自動飛行・夜間視認性実証を実施
2026年3月30日 4拠点で異種デバイスを統合したリアルタイム動画配信実証実験を実施
2026年8月25日 首都高速道路ら4社が実証実験の成果と今後の展望を共同発表

2025年2月には、レインボーブリッジ周辺において夜間および強風下を想定した約2.8kmのドローン自動飛行検証を行い、都市部インフラにおける目視外飛行の通信安定性と撮影データの精度を検証していました。今回の実証は、それらの要素技術をさらに発展させ、地上部隊を含む複合オペレーションへとスケールアップさせた段階に位置付けられます。

参考記事: 遠隔臨場とは?現場の立ち会い待ちをゼロにする仕組みと最新ガイドラインの重要ポイント

加速するインフラ老朽化と点検DXの必然性

今回の実証実験が業界内で大きな注目を集める理由は、日本の社会インフラが直面している「老朽化の波」と「人手不足」という構造的な課題にあります。

急増する高経年化インフラと修繕の停滞

日本国内の道路インフラは、高度経済成長期以降に集中的に整備されたため、現在急速に老朽化が進んでいます。国土交通省の公表データによると、全国に約73万橋存在する道路橋のうち、建設後50年以上が経過する施設の割合は、2023年3月時点で約37%でした。これが2030年3月には約54%、2040年3月には約75%へと跳ね上がります。

さらに深刻なのは、早期または緊急に措置を講ずべき状態(判定区分Ⅲ・Ⅳ)と診断された橋梁のうち、実際に修繕へ着手できている割合が約76%にとどまっている点です。残り2割以上の危険箇所が、予算や技術者不足を理由に手付かずのまま放置されかねない状態にあります。

2014年7月の道路法改正以降、道路管理者には橋梁やトンネルに対する5年に1度の「近接目視点検」が義務付けられており、2024年度からは「3巡目点検」が全国で進行しています。しかし、従来のロープアクセスや高所作業車を用いた人海戦術の点検方式では、増大し続ける点検需要を現場の技術者数だけで賄うことは物理的に不可能です。

ドローン点検市場の急成長とアナログ規制撤廃

こうしたインフラ危機の解決策として、国はデジタル技術を活用した規制改革を急速に進めています。デジタル庁が主導する「アナログ規制の見直し」により、従来の目視・常駐・対面を前提としていた点検基準が見直され、ドローンや高性能センサー、AIを用いた点検手法への代替が公式に認められ始めました。

民間市場におけるドローン点検需要も急速に拡大しています。インプレス総合研究所の推計によると、国内ドローンビジネスの点検分野における市場規模は、2025年度時点で983億円に達し、サービス分野全体の中で最大のシェアを占めています。さらに2030年度には約1,614億円へと拡大する見込みです。

単にドローンを飛ばして写真を撮るという初期段階を終え、取得したデータをいかに既存の管理台帳や防災システムと連携させ、リアルタイムの迅速な修繕判断へ結びつけるかという「統合運用プラットフォーム」の構築が、インフラ業界全体の共通課題となっています。

参考記事: 橋梁定期点検(近接目視)とは?5年ごとの判定基準と現場課題・最新技術を解説

建設・インフラ業界の各プレイヤーに及ぶ具体的影響

上空のドローンと地上のパトロールカー、ウェアラブルカメラを一元管理する運用の実現は、インフラの維持管理に携わる各プレイヤーの業務構造を大きく変革します。

インフラ発注者・道路管理者の変革

高速道路会社や国土交通省、地方自治体などのインフラ管理者にとって、本実証が示した統合監視モデルは、点検コストの抑制と災害初動の迅速化を同時に達成する新たな標準仕様となります。

これまでは、地震や集中豪雨などの自然災害が発生した際、パトロールカーが通行止め区間を走り抜けて被害状況を目視確認するまで、全体の被災規模を把握できませんでした。道路が寸断されていればパトロールカーすら侵入できず、状況把握に数時間から数日を要するケースもありました。

VTOL型ドローンによる広域空撮と地上車両がリアルタイムにつながることで、遠隔司令室は数十分以内に管内全体の被災状況をマクロに把握し、被害が甚大な箇所へピンポイントで地上部隊を急行させることが可能になります。日常点検業務においても、危険な高所作業や交通規制を伴う車線規制点検を大幅に削減できるため、道路利用者の安全性向上と維持管理予算の最適配分が両立します。

現場監督・点検施工管理者の変革

維持管理工事を請け負うゼネコンや保全専門業者、点検技術者の現場実務も劇的に変化します。最大のメリットは「無駄な移動時間と待機時間の削減」です。

広域の異常把握からピンポイントの損傷確認までを遠隔から高精細映像で確認できるため、管理技術者が何時間もかけて複数現場を車で移動する必要がなくなります。現場にいる若手技術者や作業員がウェアラブルカメラを装着していれば、事務所にいる熟練のベテラン技術者が映像をリアルタイムで見ながら「その箇所のクラック幅を計測してほしい」「ボルトの緩みを確認してほしい」と的確な指示を出すことができます。

これにより、現場技術者の熟練度不足を遠隔のベテランが補う体制が整い、1人の主任技術者がカバーできる現場数が実質的に倍増します。深刻な技術者不足に直面する建設会社にとって、施工管理リソースの有効活用につながる強力な武器となります。

BIM・施工管理SaaS・通信ベンダーのビジネス機会

ドローンや地上機器の統合運用が進むことで、建設IT市場の要求仕様も次のフェーズへと引き上げられます。

従来の施工管理SaaSや点検ソフトは、「ドローンの空撮写真をクラウドにアップロードしてオルソ画像を作成する」「現場巡回日報をタブレットで入力する」といった単一ツールごとのデータ処理が主流でした。しかし今後は、VTOL、マルチコプター、地上走行車両、作業員の生体センサーやカメラといった「異種デバイス群(マルチモーダル)」を同時に束ね、超低遅延でマップ上にプロットして映像を同時配信する統合ダッシュボードのUI/UXが求められます。

さらに、配信された映像からAIが変状(ひび割れ、剥落、路面異常)をリアルタイムに検知し、BIM/CIMモデルやデジタルツイン空間上に自動でマッピングする連携機能の需要も拡大します。通信領域においては、山間部や都市部の電波不感地帯をカバーするためのStarlinkなどの衛星通信やプライベート5Gの導入が急速に進む契機となります。

参考記事: インフラ長寿命化計画とは?予防保全への転換と実務担当者が押さえるべき計画策定のポイント

ConShiftの視点(独自考察)

今回の首都高速道路ら4社による実証は、インフラDXが「単体ツールの現場導入フェーズ」から「複数機器が自律協調するオーケストレーションフェーズ」へ移行したことを象徴する出来事です。

「点のDX」から「マルチモーダルな空間管理」への構造転換

これまで建設・保全業界で進められてきたDXの多くは、ドローンの導入、遠隔臨場カメラの導入、タブレット日報の導入といった「個別デバイスの単体導入」に留まっていました。その結果、現場には機器ごとの操作用アプリや管理画面が乱立し、かえって現場管理者の作業負荷を増大させる「DXのサイロ化」という副作用を生んでいました。

本実証の革新性は、大橋ジャンクションや郊外拠点という地理的に離れた複数拠点において、高度の異なる空域(VTOLの広域巡航高度、マルチコプターの低空近接高度)と地上空間(車両、作業員)の映像・位置情報を、首都高既存の総合防災情報システムという単一のプラットフォームへ吸収させた点にあります。

これは、現場運用の構造が「デバイス中心」から「空間データ中心」へと根本的にシフトしたことを意味します。地上と上空の境目をなくし、異種デバイスを統合運用する「オーケストレーション(調和・統合制御)」の仕組みこそが、今後のインフラ維持管理におけるコア競争力になります。

今後の実装に向けた最大のボトルネック:運航管理と組織フロー

今回の発表でも触れられている通り、本格的な社会実装に向けた最大の課題は技術そのものよりも「統合運航管理とオペレーションフローの再設計」にあります。

複数のドローンが都市部の上空を自律飛行し、地上では一般車両とともにパトロールカーが走行する環境下では、通信の途絶や悪天候時のフェイルセーフ設計、航空法と道路交通法にまたがる運行管理プロトコルの策定が不可欠です。また、送られてくる膨大な映像データの中から、管理者が即座に「どの映像を見て、どの指示を出すべきか」を迷わないためのインシデント管理UIの洗練が求められます。

ゼネコンや保全企業は、単に最新ドローンを保有するだけでは優位性を保てません。「上空と地上のデータを同時に指揮命令系統へ組み込める運用マニュアルと組織体制」を早期に構築できた企業が、次期インフラ維持管理の大型包括委託案件をリードすることになります。

まとめ

首都高速道路、首都高技術、エアロセンス、KDDIスマートドローンによる実証実験は、異種点検デバイスをリアルタイム動画配信システムへ統合し、遠隔地からのインフラ一元管理が現場レベルで機能することを実証しました。2024年度から始まった点検3巡目の遂行と、2030年に向けて50年超インフラが過半を超える日本の道路網において、この仕組みの社会実装は待ったなしの要請です。

明日から意識すべきアクションは以下の通りです。

  1. 自社の点検・施工管理現場において、単一ツールの導入にとどまらず、地上と上空のデータを統合して本部から遠隔管理できる業務フローの検討に着手すること。
  2. ドローンやウェアラブルカメラの映像データを単なる記録写真として終わらせず、維持管理台帳やBIM/CIMモデルと連携させて予防保全に活かすデジタルスキルの習得を進めること。
  3. 熟練技術者が現場へ赴く従来の業務設計を見直し、遠隔からのリアルタイム指示を前提とした若手育成と省人化オペレーションへの組織再編を進めること。

出典: BUILT
出典: 首都高速道路プレスリリース
出典: 国土交通省「中小企業イノベーション創出推進事業」
出典: 国土交通省「道路メンテナンス年報」
出典: 国土交通省「社会資本の老朽化の現状と将来」
出典: インプレス総合研究所『ドローンビジネス調査報告書2026』

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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