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Home > 品質・安全> 清水建設、最大1800人規模の現場で8秒顔解析AI導入し熱中症防ぐ
品質・安全 2026年9月2日

清水建設、最大1800人規模の現場で8秒顔解析AI導入し熱中症防ぐ

清水建設、最大1800人規模の現場で8秒顔解析AI導入し熱中症防ぐ

清水建設株式会社は2026年9月1日、大規模な橋りょう新設工事現場において、株式会社サウンド&ヴィジョンテクノロジーズが提供する画像解析AI「Care Cubeバイタル」の本格運用を開始しました。作業員の主観的な自己申告に依存してきた従来の安全管理から脱却し、短時間の非接触測定による客観的データで熱中症や体調不良を未然に防ぐ本取り組みは、建設DXにおける労務安全管理の新たな標準モデルとして注目されます。

リニア中央新幹線の大規模現場で始動した画像解析AIによる安全管理

建設現場における安全管理は長年、朝礼時の問診や作業員本人の自己申告に委ねられてきました。しかし、責任感や周囲への気遣いから体調不良を隠して「大丈夫です」と答えてしまうケースが後を絶たず、潜在的なリスクの早期発見が困難でした。こうした課題に対し、清水建設は最先端の画像解析技術を用いた生体データ可視化ツールの現場実装に踏み切りました。

「中央新幹線第一木曽川橋りょうほか新設工事」における導入概要

今回のシステムが導入されたのは、清水建設が施工を手がける「中央新幹線第一木曽川橋りょうほか新設工事」の現場です。着工から竣工までに最大約200社・約1,800名が携わる大規模インフラプロジェクトであり、一次下請けから四次下請けまで多数の専門工事業者が混在して作業を進めています。

項目 詳細内容
導入現場名 中央新幹線第一木曽川橋りょうほか新設工事
発表日・運用開始日 2026年9月1日
導入システム 画像解析AI「Care Cubeバイタル」
対象規模 着工〜竣工で最大約200社・約1,800名(利用想定は約40社・約500名)
現行の運用体制 毎日約60名が朝夕2回(始業前・就業後)測定
推定バイタル項目 心拍数、血圧(収縮期・拡張期)、血中酸素濃度、乳酸値

現場では現在、毎日約60名が始業前と就業後の1日2回、測定を実施しています。測定データはクラウド上で一元管理され、管理者は一覧画面を通じて全員の健康状態をリアルタイムに把握できます。今後は現場の進捗に伴い、約40社・約500名規模へと利用対象を拡大する計画です。

8秒間の顔画像解析で血圧や血中酸素濃度を非接触測定する仕組み

「Care Cubeバイタル」は、専用端末のカメラに約8秒間顔を向けるだけで、皮膚下の微細な血管の動き(収縮と膨張)を画像解析し、複数のバイタルサインを非接触で推定するシステムです。

医療機器ではないものの、安全管理を目的とした参考値として以下の指標を短時間で可視化します。

  • 心拍数
  • 血圧(収縮期・拡張期)
  • 血中酸素濃度(SpO2)
  • 乳酸値(疲労度の指標)

さらに、システムには暑さ指数(WBGT)の表示機能および熱中症アラート機能が搭載されています。暑熱環境下では血圧の低下や心拍数の上昇といった生体反応が現れやすくなります。単一の指標だけでなく複数のバイタルデータの変動を複合的に分析することで、熱中症の初期兆候を早期に検知できる仕組みを備えています。

熱中症対策義務化と建設業における労災リスクの高まり

今回の導入の背景には、近年の記録的な猛暑と、それに伴う法規制の強化があります。

厚生労働省の統計によると、2025年における職場での熱中症死傷者数(休業4日以上)は1,803人に達し、統計開始以来の過去最多を記録しました。そのうち建設業の死傷者数は292人と全体の16.2%を占め、死亡者数は5人で全業種中最悪となっています。また、過去5年間(2021年〜2025年)の累計で見ても、建設業の熱中症死亡者数は52人に上り、全産業の死亡者(131人)の約4割を占めています。

関連制度・法規制 施行・適用時期 現場への要求事項と影響
改正気候変動適応法 2024年4月全面施行 「熱中症特別警戒アラート」の新設と広域避難・対策の強化
改正労働安全衛生規則 2025年6月1日施行 WBGTに応じた早期発見体制整備、重篤化防止措置手順の作成・周知の義務化
職場における熱中症防止ガイドライン 2026年3月18日策定 JIS適合計器によるWBGT実測、暑熱順化の計画的導入、休憩所環境の整備

2025年6月施行の改正労働安全衛生規則により、熱中症予防は事業者の法的義務となりました。元請企業だけでなく関係請負人を含めた混在作業現場全体で、実効性のある健康管理体制を構築することが強く求められています。

参考記事: 厚生労働省、熱中症対策義務化で死傷1803人受け現場管理を刷新せよ

建設業界の主要プレイヤーに与える実務的インパクト

非接触型バイタル測定AIの本格導入は、元請ゼネコンの管理責任から現場監督の巡回実務、職人のセルフケアに至るまで、建設バリューチェーンの各層に大きな変化をもたらします。

ゼネコン(元請け):重層下請構造における安全配慮義務の履行基盤

元請ゼネコンにとって、最大200社もの協力会社が入れ替わり立ち替わり入場する大規模現場において、全作業員の健康状態を一元的に把握することは極めて困難な業務でした。

クラウド上で全社の測定結果が一覧表示されるシステムを導入することで、元請は統括安全衛生責任者としての安全配慮義務を高い水準で履行できるようになります。下請次数に関わらず、現場に入場するすべての作業員の状態を同一基準でモニタリングできるため、安全管理の抜け漏れを防ぎ、企業のコンプライアンス体制を強固に維持することが可能です。

また、酷暑期における積極的な安全DX投資は、人手不足が深刻化する専門工事会社からの信頼獲得や、優秀な職人に選ばれる現場づくりという採用ブランディングの観点でも強力な武器となります。

参考記事: 大林組や鴻池組は朝7時始業へ|対策費1.5億円拡大に見る酷暑対策の最前線

現場監督・施工管理者:主観的判断の排除と声かけ業務の効率化

現場監督や施工管理者にとって、毎朝の朝礼時に一人ひとりの顔色や体調を目視だけで確認することには限界がありました。「大丈夫です」という作業員の返答を鵜呑みにせざるを得ず、後から熱中症で倒れる事故が発生した際の後悔や精神的負担は小さくありませんでした。

AIによる客観的な数値が可視化されることで、管理者は「血圧が通常時より大幅に下がっている」「疲労度を示す数値が上がっている」といった具体的なデータに基づいて、作業配置の変更や休憩の指示を出せるようになります。

根拠に基づいた指示は作業員側への納得感を生み、余計な摩擦を減らします。さらに、全員の状態を一覧画面で即座にチェックできるため、朝の過密なスケジュールの中でも安全確認業務の時間を大幅に圧縮できます。

参考記事: 施工管理の4大管理(品質・工程・原価・安全)とは?現場で役立つ実務手順と5大管理・DXへの拡張ポイント

職人・技能労働者:ウェアラブルの装着負担がないセルフケアの定着

現場で身体を動かす職人や技能労働者にとって、ウェアラブル端末を常時身につける運用は「充電の手間」「作業中の引っかかり」「汗によるかぶれ」といったストレスを伴い、現場への定着が難しい要因となっていました。

カメラに向かって8秒間静止するだけの非接触測定であれば、入場時のルーティンとして自然に組み込むことができます。また、測定結果がその場でフィードバックされることにより、作業員自身が「自分では平気配だと思っていたが、身体には疲労が溜まっている」と客観的に自覚するきっかけになります。

無理を美徳とする現場の風土から、データを見て自主的に水分補給や休息を取る「自律型セルフケア」へと意識改革が進むことが期待されます。

参考記事: KY活動(危険予知活動)の進め方と4R法|形骸化を防ぐ現場ネタとDX活用

ConShiftの視点:精神論からデータ駆動型「予兆管理」への構造転換

清水建設による「Care Cubeバイタル」の導入事例は、建設業界の安全管理が「個人の責任感や精神論」から「AIによる予兆管理とデータ駆動型の意思決定」へと構造転換を遂げつつある決定的な証左です。

「大丈夫」を疑う仕組みが組織の心理的安全性を生む

建設現場では長らく、職人気質に基づく「体調不良を言い出しにくい空気」が存在していました。工期の遅れを懸念する心理や、チームに迷惑をかけたくないという責任感が、結果として重大な労災事故を引き起こす引き金となってきました。

AIがバイタルデータを可視化する環境では、「本人が申告したから休ませる」のではなく、「データに基づいて管理者が休養を命じる」というプロセスが成立します。これにより、作業員は罪悪感を感じることなく身体を休めることができ、現場全体の心理的安全性と生産性が担保されます。

環境データと生体データの統合による次世代セーフティマネジメント

今後、建設現場の安全DXは「環境監視」と「生体監視」の統合へと向かいます。すでに普及が進むIoT環境センサーによるリアルタイムWBGT測定データと、入場時・退場時の生体バイタルデータ、さらには音声解析によるメンタルストレスデータを掛け合わせることで、事故の発生確率を事前に予測するアルゴリズムの構築が可能になります。

単なる事後報告や対症療法にとどまらず、危険を未然に察知して作業計画そのものをダイナミックに変更できる企業体制こそが、人手不足時代における最大の事業継続基盤となります。

参考記事: 関東地方整備局、猛暑対策を最大30点評価へ!省人化技術が受注を左右

現場の安全管理を刷新するために明日から取り組むべきアクション

主観に頼らない客観的な健康管理体制を現場へ導入するために、経営層や現場リーダーが直ちに着手すべき実務項目を整理しました。

  1. 朝礼問診における「数値確認」項目の追加と形骸化の防止

朝礼時の健康確認において「体調は大丈夫か」という定型的な声かけをやめ、体温や血圧、前夜の睡眠時間などの具体的な数値を基準にした問診フローへ見直します。作業員が自身の不調を客観的に認識できるよう、体調不良時の申告基準をあらかじめ現場ルールとして明確化します。

  1. 非接触型バイタル測定ツールやIoT環境計の試験導入

ウェアラブル端末の装着に抵抗がある現場では、カメラ画像解析やタブレットを活用した非接触測定ツールの試験運用を検討します。あわせてJIS適合のWBGT計測器を現場内に配備し、作業場所の温湿度環境と作業員の生体変化を紐づけて観察できる体制を整えます。

  1. 生体データ取り扱いに関する同意形成とプライバシー規程の整備

バイタルデータや顔画像は高度な個人情報に該当するため、導入前に入場する下請事業者および作業員に対して利用目的(安全管理・事故防止)を丁寧に説明します。取得したデータの保存期間や閲覧権限を社内規程として明文化し、作業員が安心して測定に応じられる運用環境を構築します。


出典: note(ノート)
出典: value-press.com
出典: prtimes.jp

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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