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施工管理 2026年9月7日

鹿島建設、三笠ぽんべつダムで誤差±5cmの自動測量を導入し盛土を3D管理

鹿島建設、三笠ぽんべつダムで誤差±5cmの自動測量を導入し盛土を3D管理

鹿島建設株式会社は2026年9月1日、施工および品質データを一元管理して3次元で可視化する「土工総合管理システム」を開発し、北海道三笠市で施工中の「三笠ぽんべつダム堤体建設第1期工事」に適用したと発表した。本システムは現場計測データを集約するサーバと3D描画ソフトで構成され、常設型ドローンによる誤差±5センチメートルの自動点群計測や、無人搬送車を用いた地盤密度の面的測定データを現場地形と重ね合わせて盛土のデジタルツインを構築する。

三笠ぽんべつダムで実証された土工総合管理システムの全容

建設業界において土工の自動化・省人化が急務となる中、施工現場で取得される各種計測データや重機の稼働情報を一元的に統合・管理するプラットフォームの構築が進んでいる。鹿島建設が開発した土工総合管理システムは、ダム堤体盛土工事における出来形情報、品質管理情報、建設機械の稼働履歴をリアルタイムに統合する基盤である。

盛土デジタルツインを構築するシステムアーキテクチャ

本システムの中核は、現場で取得されたあらゆる計測データを集約する専用サーバと、計画図や現地形の3次元データ上に施工情報をリアルタイムで重畳表示する3D描画エンジンにある。

従来の現場管理では、測量データ、転圧管理データ、材料試験結果などが個別のシステムや帳票に分散して保存されていた。本システムでは、3次元現場モデル内に座標(X・Y・Z)および時刻歴(タイムスタンプ)をひもづけた状態で全データを蓄積する。これにより、任意の断面や過去の特定日時を指定して盛土内部の施工履歴や締固め状況を立体的に呼び出す「盛土のデジタルツイン」を再現できる構造となっている。

三笠ぽんべつダム工事の概要と適用技術の変遷

北海道三笠市で進められている三笠ぽんべつダム堤体建設第1期工事は、国土交通省北海道開発局が発注した大規模プロジェクトであり、鹿島・飛島特定建設工事共同企業体が施工を担っている。本工事では、台形CSGダムの堤体材料であるCSG(Cemented Sand and Gravel:セメント混合砂礫)の製造および打設が行われている。

本システムの適用に至るまでには、要素技術となる自動化施工技術や品質測定手法の実証が段階的に進められてきた。

年月 プロジェクト・開発項目 概要と位置づけ
2023年3月 三笠ぽんべつダム堤体建設第1期工事 着工 国土交通省北海道開発局発注。工期は2027年3月までの計画。
2024年4月 国土交通省「i-Construction 2.0」策定 2040年度までに現場省人化少なくとも3割を目指す方針を発表。
2024年12月 成瀬ダムで「Geo-DX Compaction」初導入 CSG締固め品質の連続測定技術を秋田県の成瀬ダム堤体工事に適用。
2025年4月 三笠ぽんべつダム堤体コンクリート初打設 基礎掘削完了を受け、堤体コンクリート打設セレモニーを実施。
2026年5月 「A4CSEL AGV」を新名神盛土工事に適用 無人搬送車を用いたGeo-DX Compaction測定装置の自動けん引を実現。
2026年9月 土工総合管理システムの開発・実証発表 出来形・品質・ドローン測量データを統合した3D管理基盤を適用。

参考記事: 土工とは?施工の基本手順から「とび・土工工事業」の許可範囲・年収まで解説

現場に導入された2つの高度化測定技術

三笠ぽんべつダムの現場では、土工総合管理システムへ高密度なデータを供給するため、品質管理と測量の両面で新たな自動測定技術が導入された。

1. A4CSEL AGVによる面的密度測定「Geo-DX Compaction」

従来の盛土やCSGの締固め品質管理は、施工完了後の地表を無作為に削孔して密度を測定する「抜き取り検査」が主流であった。この手法は人力作業が多く、作業員の拘束時間が長いだけでなく、検査箇所が「点」にとどまるため、施工面全体の締固め均一性をリアルタイムに保証することが困難であった。

現場に導入された「Geo-DX Compaction」は、4つの電極を取り付けた測定装置を地盤上で移動させ、電気抵抗を連続測定することで締固め密度を瞬時に算出する手法である。本工事では、この測定装置を自動けん引するため、無人搬送車「A4CSEL AGV(Automated Geo Vehicle)」を適用した。

これにより、転圧が完了した施工エリア全域をAGVが自律走行しながら密度を自動計測し、「点」ではなく「面」の密度分布データとして土工総合管理システムへ即座に送信される運用が確立された。先行する成瀬ダムでの導入実績では品質管理試験要員を7割から9割削減した知見があり、A4CSEL AGVの活用によってけん引機の運転員1名分の省人化も達成されている。

2. 常設型ドローンとクラウド解析による自動土量計測

盛土工事における日々の進捗管理や材料残量の把握には、高頻度な地形測量が欠かせない。しかし、人手による地上レーザー測量や通常のドローン手動フライトは、オペレーターの配置や撮影後のデータ解析作業に多大な工数を要していた。

本現場では、自動離着陸装置(ドック)を備えた常設型ドローンを設置し、クラウド処理システムと直結させた。あらかじめ設定されたスケジュールと飛行ルートに基づき、ドローンが自律飛行して空撮を実施する。

取得された画像データはクラウド上へ自動アップロードされ、誤差±5センチメートル以内の高精度な3次元点群データとして自動生成される。管制画面から飛行指示を行うだけで、ストックヤードに保管されているCSG材の残容量や日々の盛土土量が自動算出され、土工総合管理システム上で即時に把握できる体制が整備された。

A4CSEL自動振動ローラとのリアルタイム連動

本現場では、鹿島建設が推進する自動化施工システム「A4CSEL(クワッドアクセル)」による自動振動ローラも稼働している。土工総合管理システムは、この自動建機が走行した軌跡から転圧回数を自動集計し、3次元モデル上に色分け表示する。

設計で定められた規定転圧回数に達しているかどうかが管制室のモニタ上で即座に視覚化されるため、転圧不足箇所の早期発見や、過剰転圧の防止がリアルタイムで行われる。作業後の帳票集計を待つことなく、現場施工へ直ちにフィードバックを返すサイクルが構築されている。

参考記事: 出来形管理基準及び規格値とは?品質管理との違いや主要工種の許容範囲・最新ICT活用まで解説

建設業界の主要プレイヤーに及ぼす具体的な影響

土工現場におけるデジタルツインの構築と品質・土量計測の全自動化は、元請けゼネコンの施工体制から現場監督の実務、発注者との協議プロセスに至るまで、建設生産システム全体に波及する。

元請けゼネコン:自律重機とデータ基盤が一体化した施工モデルの確立

大手から中堅に至る元請けゼネコンにとって、重機の遠隔操作や自動運転技術の導入はこれまで個別の機械制御にとどまる傾向があった。建機が自律走行しても、施工結果の検測や品質確認を人間が手作業で行っていては、現場全体の生産性向上には限界が生じる。

今回の実証は、自律建機(A4CSEL)、自律搬送機(A4CSEL AGV)、常設ドローン、そしてそれらを統合する3Dデータ基盤が有機的に結合したモデルケースを示した。国土交通省が掲げる「i-Construction 2.0」では、2040年度までに現場作業員を少なくとも3割削減(生産性1.5倍向上)することが目標とされている。

直轄土木工事におけるICT施工率は2022年度時点で約87%に達しているものの、データ連携の自動化は依然として発展途上にある。元請けゼネコン各社は、単一の建機自動化を競う段階から、現場全体の施工・品質データを統合して自律建機群を管制する「現場オペレーティングシステム(OS)」の確立へと開発方針のシフトを迫られることになる。

参考記事: 建設RX・施工ロボットとは?設立背景や主要技術・現場での活用メリットを解説

現場監督・施工管理者:抜き取り検査と帳票作成からの解放

現場監督や施工管理者にとって、盛土工事における品質管理試験と出来形測量は、工期中の身体的・時間的負担が大きい業務の筆頭であった。炎天下や寒冷地において、転圧完了箇所ごとに削孔して乾燥密度を測る作業や、測量ポールを持って広大な現場を歩き回る作業は、安全面でもリスクを伴う。

面的なリアルタイム密度測定(Geo-DX Compaction)と常設ドローンによる自動点群測量の導入により、現場管理者のルーチン業務は激変する。手作業による測定や試験データ・測量データのオフィスでの取りまとめ作業が大幅に圧縮され、データ入力ミスや帳票作成の手戻りも防止される。

施工管理者は、現場での立ち会い作業や書類作成から解放され、3D画面上で全体の進捗偏差を把握し、気象変動や地質変化に応じた工程調整、安全管理といった高付加価値なマネジメント業務へ集中できる環境が整う。

発注者・施主:施工履歴の透明化による遠隔臨場と検査省力化

国土交通省をはじめとする公共工事の発注機関やインフラ開発を担う施主にとって、盛土やコンクリート構造物の不可視部分は常に品質保証上の重要課題であった。従来の抜き取り検査では、検査点以外の領域に施工不良が存在するリスクを完全には排除できない。

本システムによって構築される盛土デジタルツインは、堤体内部の全層における転圧回数や締固め密度、材料受入履歴を座標・時刻データとして完全網羅している。発注者は、任意の層や断面の品質履歴をWebブラウザや専用端末から確認できるため、現場での破壊検査や立ち会い検査の回数を大幅に合理化できる。

また、手戻り工事の発生リスクが着工段階から抑制されるため、工期遅延の防止や完成後のインフラ長期耐久性の向上という観点からも、施主にとって極めてメリットが大きい。

参考記事: 国交省が能越道で4機種を1台に集約、盛土ICT自動化施工を全国初公開

ConShiftの視点|「点」の検査から「面」の常時同期へ向かう土工の構造転換

三笠ぽんべつダムで実証された土工総合管理システムの意義は、単なる可視化ソフトウェアの開発にとどまらない。土木施工の本質である品質保証のパラダイムが、長年続いた「サンプリングによる点の事後検査」から、「自律センシングによる面のリアルタイム常時同期」へと不可逆的な転換を遂げた点にある。

抜き取り検査の限界を超える全数データ保証

従来の土工施工管理は、統計的なサンプリング理論に基づく抜き取り削孔検査に依存してきた。広大な造成地やダム堤体において全域を掘削検査することは物理的に不可能なため、基準値に合致した数箇所の「点」をもって現場全体の品質を推定するしかなかった。

しかし、A4CSEL AGVを用いたGeo-DX Compactionによる電気抵抗の連続計測は、この構造的制約を根本から打破した。電極を牽引しながら走行するだけで施工面全域の密度分布がリアルタイムに面データとして可視化されるため、土工管理は実質的な「全数保証」のフェーズへと到達した。

これは、製造工場のインライン全数検査と同様の品質保証レベルが、屋外の土木現場に持ち込まれたことを意味している。

項目 従来の土工品質管理手法 土工総合管理システムによる新手法
密度計測方式 人力による抜き取り削孔検査(点) AGVけん引のGeo-DX Compaction(面)
測定対象範囲 規定ピッチごとの代表点のみ 施工面全域を網羅した連続データ
測量・土量算出 人力測量または通常ドローン手動飛行 常設ドック型ドローンによる自律飛行
点群解析精度 解析環境や標定点配置に依存 クラウド自動解析で誤差±5cmを高精度担保
データ管理形態 個別ファイル・手書き帳票・分散サーバ 盛土デジタルツイン(座標・時刻歴で一元化)
フィードバック速度 検査完了後(数時間〜翌日) リアルタイム(直ちに転圧・運搬へ反映)

自律施工(A4CSEL)とデジタルツインの双方向フィードバック

国土交通省が推進する「i-Construction 2.0」では、「施工」「データ連携」「施工管理」の3本柱が掲げられており、自律建機等による「施工のオートメーション化」とBIM/CIM等の「データ連携のオートメーション化」はその重要施策として位置づけられている。

三笠ぽんべつダムでの取り組みは、これら2つの柱が双方向で連動している好例である。常設ドローンが取得した誤差±5センチメートルの点群データから材料の残量を算出し、A4CSELの自動振動ローラが転圧した回数を3D空間にマッピングし、AGVが密度を測定して品質の合否を判定する。

この一連の流れは、デジタル空間に構築された現場の双子(デジタルツイン)が、フィジカル空間の機械群に対して作業指示を出し、機械群の作業結果が即座にデジタルツインを更新するという「サイバー・フィジカル・システム(CPS)」そのものである。鹿島建設が今後本システムをダムだけでなく一般の道路盛土や宅地造成工事へ横展開する方針を示していることは、土木施工現場の基本インフラがCPSへと標準化されていく未来を先取りしている。

参考記事: 国交省フィジカルAI戦略、2040年省人化3割へ産学官で実装加速

明日から経営層・現場リーダーが意識すべき3つの実務アクション

三笠ぽんべつダムで実証された土工管理の高度化を踏まえ、施工会社や現場管理者が今すぐ準備すべき具体的な実務アクションを提示する。

1. 現場内の分散データを座標・時刻に紐づけて一元化する準備を進める

出来形測量結果、重機の運行ログ、ダンプの運搬伝票、材料試験データなど、現場内で個別に管理されているデータを共通の座標情報(世界測地系・公共座標)とタイムスタンプで整理する運用ルールを定める。将来的に統合プラットフォームや3次元ビューアを導入する際、データ構造が統一されていなければデジタルツインを構築できないため、現行の帳票やデータ出力形式の標準化を先行して進めることが不可欠である。

2. 定常業務におけるドローン自動飛行と点群活用の内製化・定着化を図る

外注や手動操作に頼りがちだったドローン測量を、現場常設型ドックやクラウド解析サービスの導入によって定常業務へと組み込む検討を行う。日々の土量計算や進捗管理において、誤差数センチメートル単位の点群データを定期的に自動取得・更新できる体制を構築し、現場管理者がPC画面上で盛土・切土量を即座に把握できるオペレーションを定着させる。

3. 「点」の管理から「面」の品質保証への社内意識改革と教育を行う

従来の削孔検査による抜き取り手法を前提とした管理マインドから脱却し、ICT建機の走行軌跡データや連続測定装置を活用した面的な品質管理手法への理解を深める。技術提案(総合評価落札方式)において、面的締固め管理やリアルタイムフィードバックの導入を積極的に提案できるよう、直轄工事等の先行要領や実証事例のノウハウを社内勉強会等で共有し、施工管理者のスキルアップを図る。


出典: BUILT
出典: 鹿島建設 プレスリリース(2026年9月1日)
出典: 国土交通省 報道発表資料(i-Construction 2.0)
出典: 鹿島建設 プレスリリース(2026年5月27日)

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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