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法規制・制度 2026年9月11日

国交省リフォーム受注5兆円超、非住宅の増築需要が市場を牽引

国交省リフォーム受注5兆円超、非住宅の増築需要が市場を牽引

国土交通省は2026年9月10日、令和8年度第1四半期(4〜6月期)における建築物リフォーム・リニューアル工事受注高が前年同期比22.8%増の5兆427億円に達したと発表した。住宅分野の受注高が1兆807億円と前年同期比7.6%減少した一方で、非住宅建築物分野が3兆9,619億円と前年同期比34.9%の大幅増を記録し、市場全体を押し上げた。

非住宅ストック活用へシフトするリフォーム市場の最新動向

国土交通省が四半期ごとに実施している「建築物リフォーム・リニューアル調査」の2026年度第1四半期(4〜6月受注分)結果において、建築ストックの改修需要が急速に拡大している状況が示された。建設業許可業者5,000者を対象とした元請け受注高の集計によると、総受注高は前年同期の4兆1,061億円から9,366億円増加し、四半期ベースで5兆円の大台を突破した。

この成長を牽引した主因は、非住宅建築物分野における1兆248億円の純増である。同分野の受注高は前年同期の2兆9,371億円から3兆9,619億円へと34.9%急伸し、全体の約78.6%を占めるに至った。対照的に、個人向けや管理組合向けを中心とする住宅分野は前年同期の1兆1,690億円から1兆807億円へと883億円縮小しており、住宅の落ち込みを非住宅の大型投資が補う構図が鮮明となっている。

調査開始からの変遷と直近の推移

国土交通省の建築物リフォーム・リニューアル調査は、2008年度(平成20年度)に半期ベースの統計として開始され、2018年度(平成30年度)からは市場の早期把握を目的に四半期ごとの公表体制へと移行した。直近における受注高の推移は以下の通りである。

調査期・発表日 リフォーム総受注高 非住宅建築物受注高 住宅建築物受注高
2025年4〜6月期(前年同期) 4兆1,061億円 2兆9,371億円 1兆1,690億円
2025年度通期(2026年6月公表) 16兆4,104億円 11兆5,071億円 4兆9,033億円
2026年4〜6月期(今期実績) 5兆427億円 3兆9,619億円 1兆807億円
前年同期比(伸び率) 22.8%増 34.9%増 7.6%減

2025年度通期の総受注高は前年度比18.7%増の16.4兆円に達していたが、2026年度に入っても非住宅分野を中心とした拡大ペースは加速している。

工事種類別に見る非住宅分野の伸長

非住宅建築物における工事種類別の内訳を見ると、改装・改修工事だけでなく、増築や一部改築などの大規模な構造変更を伴う工事が大幅に増加している。

工事種類 2026年4〜6月受注高 前年同期比 主な工事内容・特徴
増築工事 2,399億円 148.3%増 敷地内増棟や既存棟の増床による生産・保管能力の拡張
一部改築工事 748億円 38.8%増 躯体の一部解体および構造再編を伴う用途変更工事
改装・改修および維持・修理 3兆6,472億円 30.9%増 空調・衛生・受変電設備等の更新および内外装の刷新
非住宅合計 3兆9,619億円 34.9%増 設備更新から大規模再構築まで全領域で大幅伸長

特に増築工事は前年同期比で約2.5倍(148.3%増)に達しており、新築工事における用地取得費や建築費の高騰を避けるため、既存施設の敷地余裕スペースを活用した増築や既存棟接続を選択する企業が急増している状況がうかがえる。

用途別・構造別の受注動向

非住宅建築物のリニューアル需要を用途別に分類すると、オフィスビルおよび工場・作業場における投資が突出している。

建物用途と構造区分 2026年4〜6月受注高 前年同期比 主な改修ニーズ
コンクリート系「事務所」 6,273億円 60.4%増 築古ビルの高断熱化、空調高効率化、テナント誘致改修
鉄骨造「生産施設(工場等)」 5,518億円 17.5%増 製造ライン刷新に伴う受変電・搬送設備改修、屋根外壁更新

コンクリート系構造の事務所ビルに対するリニューアル受注は前年同期比60.4%増と跳ね上がった。東京都心部をはじめとする大都市圏において、築30年を超えた既存オフィスビルの競争力低下を防ぐため、内装・ファサードの刷新と同時に高効率設備への更新投資が相次いでいる。また、生産施設(工場・作業場)においても、国内回帰に伴う生産ライン増強や労働環境改善を目的とした鉄骨造工場のリニューアルが堅調に推移している。

発注者別および工事目的別の実態

発注者の属性別に見ると、民間企業からの発注が市場拡大の直接的な原動力となっている。一方で、住宅分野における分譲マンション管理組合の発注落ち込みが顕著である。

発注者区分 工事対象区分 2026年4〜6月受注高 前年同期比
民間企業等 非住宅建築物 3兆1,390億円 40.4%増
国・地方公共団体等 非住宅建築物 7,105億円 15.9%増
個人 住宅建築物 7,327億円 0.7%減
管理組合 住宅建築物 1,476億円 36.2%減

非住宅分野における民間企業等からの受注高は3兆1,390億円に達し、前年同期比40.4%増と急激な伸びを示した。脱炭素経営やサプライチェーン全体での温室効果ガス排出量削減が企業評価に直結する中、民間事業者が保有ビルの改修投資を前倒しで進めている。公共建築物についても長寿命化計画に基づく改修が15.9%増と手堅く推移している。

対照的なのが住宅分野であり、個人向け戸建てリフォームが0.7%減と微減にとどまったのに対し、マンション管理組合による大規模修繕工事などの受注高は1,476億円と36.2%減の大幅なマイナスを記録した。資材高騰や人件費上昇に伴い、当初の見積もり予算と修繕積立金の総額が乖離し、総会での工事決議が見送られたり工期が先送りされたりする事態が多発している。

工事目的別の受注件数においても、住宅と非住宅の方向性の違いが浮き彫りとなっている。

工事目的区分 住宅件数(伸び率) 非住宅件数(伸び率) 背景要因
省エネルギー対策 109,399件(4.9%増) 105,736件(78.2%増) 非住宅におけるZEB化・高効率設備更新の急拡大
劣化・破損部位の修繕 1,583,823件(6.8%減) 966,560件(27.6%増) 企業の維持保全予算執行と住宅所有者の修繕手控え

非住宅における「省エネルギー対策」を目的とした工事件数は前年同期比78.2%増の10万5,736件に急増した。法制度の改正や光熱費高騰への対策、さらには公的補助金の拡充が、民間企業の省エネ改修を強く後押ししている。

参考記事: ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の4つの定義区分とは?メリット・補助金・導入手順を徹底解説

参考記事: 国交省、27年度1699億円計上でLCCO2補助新設へ|低炭素施工を加速

建設業界の各プレイヤーに与える影響

非住宅リニューアル工事の急激な拡大と住宅分野の縮小は、元請ゼネコンから地場工務店、現場の施工管理者に至るまで、事業ポートフォリオや現場体制の再構築を強いている。

ゼネコン(元請け):新築依存からの脱却と改修専門部隊の拡充

大手・準大手ゼネコンにとって、非住宅分野における工事受注高の34.9%増は、事業構造の転換を決定づける数値である。新築民間建築工事においては、資材価格や労務単価の高止まりを背景に、民間デベロッパーが採算悪化から着工を延期または見送る事例が相次いでいる。実際、計画通りに発注できなかった民間企業の約68%がコスト増を許容できず調達見直しを行っている実態があり、大型新築案件の新規獲得環境は厳しさを増している。

このような中、既存ビルの延命化や機能向上を図るリニューアル市場の急伸は、ゼネコン各社にとって安定した利益確保の主戦場となっている。新築工事に比べて工期が短く、資材価格変動のリスク露出期間を抑えやすいリニューアル工事は、キャッシュフローの安定化にも寄与する。各社は設計施工一貫でのリニューアル専任部門や、既存ストックの脱炭素・ZEB化提案を担うエンジニアリング部隊への人員シフトを加速させている。

さらに、2028年度から義務化が予定される「建築物通算炭素排出量(LCCO2)評価」への対応を見据え、既存躯体を残置・再利用する改修工法は、新築建て替えに比べて解体・製造時のエンボディドカーボン(初期建設時CO2)を大幅に抑制できる切り札となる。発注者である事業会社に対し、単なる設備の老朽更新にとどまらず、LCCO2削減効果を算定・提示した上でのバリューエンジニアリング(VE)提案を行えるかどうかが、特命受注を獲得する分水嶺となっている。

参考記事: 国土交通省調査、民間発注未達企業の68%がコスト増拒否で調達見直しへ

参考記事: VE提案(バリューエンジニアリング)の仕組みと実践|コスト削減と品質維持を両立する具体例と書き方

中小工務店・地場ビルダー:住宅依存の脱却と地域非住宅改修への越境

住宅リフォーム受注高が前年同期比7.6%減、特にマンション管理組合向けが36.2%減となった動向は、住宅市場を主戦場としてきた地域工務店やリフォーム専業会社に直接的な打撃を与えている。物価高や金利上昇局面において個人の購買意欲が減退し、水回り改修や内外装塗装などの一般的な修繕工事は先送りにされる傾向が強まっている。

生き残りを図る中小施工会社にとって不可避となっているのが、地域の非住宅ストック改修への事業領域拡大である。地方都市においても、中小企業の自社ビル、ロードサイド店舗、町工場、医療・福祉施設などの老朽化が進んでおり、大手ゼネコンが対応しきれない数千万円から1億円規模の改修需要が潜在している。2025年4月の改正建築基準法全面施行に伴い、木造非住宅建築物を含む大規模修繕・模様替での審査省略制度(旧4号特例)が見直されたため、構造計算や法適合確認を的確に処理できる工務店の価値が高まっている。

また、環境省・経済産業省・国土交通省が連携する補助事業(先進的窓リノベ事業など)を活用し、地元の事業所やテナントビルに対する開口部断熱・空調高効率化の提案をパッケージ化して営業展開できるかどうかが、住宅部門の落ち込みを埋める決定打となる。

参考記事: 既存不適格建築物の耐震改修とは?放置リスクから耐震診断・補助金活用・解消アプローチまで解説

現場監督・施工管理者:居ながら改修の制約管理と既存図面不整合への対応

非住宅リニューアル現場の急増は、施工管理の実務に高度な難易度をもたらしている。事務所ビルや商業施設、稼働中の工場における改修工事の多くは、テナントや工場ラインを停止させない「居ながら改修」の形態をとる。現場監督には、新築現場とは全く異なる施工計画と安全管理が要求される。

夜間工事や休日施工への対応、稼働エリアと施工エリアを遮断する仮設・防塵・防音対策、さらには第三者(ビル利用者や従業員)の動線確保など、作業手順の細分化と厳格な時間管理が欠かせない。時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間)が完全に定着する中、夜間施工を伴う現場での労務管理は極めてシビアであり、交代制勤務の導入や昼夜の引き継ぎプロセスの標準化が不可欠となる。

加えて、築数十年が経過した既存建築物では、竣工図と現場の実況が一致しない「図面不整合」が常態化している。隠蔽部の配管ルートや梁・スラブの開口位置が事前の想定と異なり、解体後に手戻りや設計変更が発生するケースが後を絶たない。施工管理者には、着工前の3Dレーザースキャナを用いた点群データの取得や、BIMを活用した既存構造の可視化など、デジタルツールを駆使して現場の不確実性を着工前に極小化する技術が強く求められている。

参考記事: [日建連発表、労務単価2.5万円超で建設コスト増|積算・見積りの再調整が急務](https://conshift.net/2026/08/10/post-205/

参考記事: 建設業の2024年問題とは?時間外労働上限規制のポイントと現場が取るべき対策を徹底解説

ConShiftの視点:建築ビジネスの重心は「新築」から「性能更新」へ

今回の統計データが示した非住宅リフォームの34.9%増という伸びは、単なる一時的な景気変動ではなく、日本の建設産業における構造的転換を反映している。新築市場が人口減少や用地制約、資材価格の構造的高止まりによって構造的な頭打ちを迎える中、建設投資の主戦場は「新築供給」から「既存非住宅ストックの機能更新・脱炭素リニューアル」へと明確に移行した。

今後、建設会社が非住宅リニューアル市場で持続的な収益を確保するためには、以下の2つの事業能力を確立することが不可欠である。

第一に、「脱炭素・省エネ改修の定量評価力」である。民間企業の非住宅改修受注が40.4%増と急伸し、省エネルギー対策工事が78.2%増となった背景には、企業のScope1・Scope2削減に対する株主や取引先からの強い要請がある。単に老朽化した設備を新品に取り替えるだけの提案では価格競争に巻き込まれる。BIMや環境シミュレーションを用いて「改修によって一次エネルギー消費量を何%削減でき、投資回収期間が何年になるか」「LCCO2をどれだけ抑制できるか」をエビデンスベースで提示できる企業が、高採算の特命案件を獲得することになる。

第二に、「既存不整合を吸収するプレコンストラクション(事前検証)体制」の確立である。日建連の報告にもある通り、建設資材物価は過去5年間で39%上昇し、公共工事設計労務単価も2.5万円を突破している。現場での手戻りや工期延長は、即座に工事採算の崩壊に直結する。改修工事の利益率は、現場着工前の現況把握と調達計画の精度によって決定される。3D点群スキャンによる既存躯体の即時モデリングや、配管・配線のプレハブ化を前提とした詳細設計など、着工前の検証プロセスへ工数を投入できる組織への変革が急務である。

建築ストックの有効活用が国家戦略となる中、非住宅建築物を「壊して建て直す」のではなく「性能を向上させて使い続ける」リニューアル技術を持つ企業こそが、次の10年の建設市場を主導することになる。

まとめ

国土交通省が公表した令和8年度第1四半期のリフォーム・リニューアル工事受注高は、非住宅分野が前年同期比34.9%増の3兆9,619億円に達し、住宅分野の落ち込みをカバーして市場全体を力強く押し上げた。事務所ビルの省エネ改修や工場の増築・ライン更新など、民間企業によるストック活用投資が加速している。

建設企業の経営層および現場リーダーが明日から取り組むべきアクションは以下の通りである。

  1. 自社保有の施工実績を棚卸しし非住宅改修向けの営業体制を再編する

自社の技術リソースを分析し、事務所・工場・倉庫などの既存ストックに対する改修提案メニューを策定する。住宅専業の工務店であっても、地域の事業所や商業ビルに対する断熱・省エネ改修工事の受注に向け、営業窓口や協力業者網の再構築を進める。

  1. 省エネ補助金とLCCO2算定を組み合わせた提案型見積りを標準化する

設備更新や外皮改修の商談において、国や自治体の補助金制度(建築物省エネ・脱炭素関連支援策)の採択シミュレーションを必須化する。一次エネルギー消費削減率やCO2削減量を数値で明示し、施主の事業収支に直結する提案体制を構築する。

  1. 改修現場特有の手戻りリスクを排除するデジタル現況調査を導入する

居ながら改修現場での工期遅延や二重コストを防ぐため、3Dレーザースキャナや点群処理ソフトウェアを活用した事前調査プロセスを確立する。図面不整合を現場着工前に洗い出し、協力会社との施工手順のすり合わせを早期に完了させる運用を徹底する。


出典: Housing Tribune Online
出典: 国土交通省 報道発表資料

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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