日経クロステックは2026年10月5日、全国の主要建設会社を対象とした2025年度決算アンケート調査に基づく土木13分野の売上高ランキングを公表した。同調査の第1弾となった舗装分野では、前田道路が増収を達成して首位を維持し、2位の日本道路に対して売上高で2.6倍の差をつけた。
2025年度決算における土木13分野の勢力図と業況データ
日経クロステックが実施したアンケート調査は、舗装、海洋、基礎、地盤改良、機械土工、山岳トンネル、シールドトンネル、PC(プレストレスト・コンクリート)、鋼橋、法面、推進、ダム、上下水道の13分野を網羅している。回答企業の売上高を基に最大上位25社までのランキングが作成されており、工種ごとに首位企業の交代や売上高の急伸が生じている。
土木13分野の首位企業と主要な業況変動
各工種における首位企業および上位企業の動向を整理すると、特定の専門技術を持つ企業への受注集中や、大手ゼネコン間での順位変動が確認できる。
| 工種分野 | 首位企業(および連続記録) | 主要な順位・売上高の変動 | 市場環境の傾向 |
|---|---|---|---|
| 舗装 | 前田道路(首位維持) | 2位日本道路との売上差が2.6倍に拡大 | 維持修繕・更新需要が堅調に推移 |
| 海洋 | 五洋建設(首位維持) | 東亜建設工業が約3割の増収を記録 | 港湾・洋上風力関連などの需要が継続 |
| 基礎 | 五洋建設(首位奪還) | 清水建設が約3割減収で3位へ後退 | 大規模基礎工事の発注タイミングが影響 |
| 地盤改良 | ライト工業(首位維持) | 五洋建設が売上高2.5倍を達成し4位に浮上 | 防災・減災関連工事の底堅い推移 |
| 機械土工 | 五洋建設(3連覇) | 前田建設工業が75%増収で3位に浮上 | 大型造成や土工プロジェクトの進捗 |
| 山岳トンネル | 安藤ハザマ(3連覇) | 大林組が清水建設を逆転して2位へ浮上 | リニアや高速道路網整備の施工進捗 |
| シールドトンネル | 奥村組(初の首位獲得) | 大林組が急上昇するも僅差で2位 | 都市部地下インフラ整備の競争激化 |
| PC | ピーエス・コンストラクション(3連覇) | 三井住友建設が減収 | 橋梁新設から補修・更新への移行期 |
| 鋼橋 | 横河ブリッジ(首位維持) | 上位4社がそろって減収を記録 | 新設案件の減少と鋼材価格高騰の影響 |
| 法面 | ライト工業(首位維持) | 日特建設とともに2強が2桁増収を達成 | 斜面崩壊対策など防災・減災需要の拡大 |
| 推進 | 機動建設工業(首位返り咲き) | 下水道の更新需要を背景に市場が活況 | 老朽管路の非開削更新工事の増加 |
| ダム | 大林組(2連覇) | 前田建設工業は2年連続減収でピークから半減 | 大型本体工事の端境期と再生需要 |
| 上下水道 | 大林組(初の首位獲得) | クボタ建設が初登場で2位にランクイン | 管路耐震化や官民連携事業の伸長 |
再編とグループ化が進む専門土木分野の構造
ランキング上位企業の資本関係を検証すると、大手ゼネコンやインフロニア・ホールディングスなどによる専門工事業者のグループ化が進展している。
PC分野で3連覇を達成したピーエス・コンストラクションは、旧ピーエス三菱が2024年に商号変更した企業である。同社は2023年に大成建設が株式の過半数を取得して連結子会社化した経緯を持つ。舗装分野で独走する前田道路はインフロニア・ホールディングスの連結子会社であり、2位の日本道路は清水建設グループに属している。大手ゼネコンが特定工種に強みを持つ専門土木企業をグループ内に取り込むことで、施工能力の囲い込みを進めた結果がランキングの数値にも反映されている。
また、2025年3月期における親会社単体の土木受注高では大林組が5,038億円を記録してトップに立ち、シールドトンネルや上下水道分野での売上拡大を牽引している。
インフラ老朽化と資材高騰を巡る政策・市場指標
今回のランキング結果の背景には、政府のインフラ政策と資材物価の変動が直接的に作用している。
政府が2025年6月6日に閣議決定した「第1次国土強靱化実施中期計画」では、2026年度から2030年度までの5年間でおおむね20兆円強の事業規模が定められた。このうちライフライン強靱化には約10.6兆円、防災インフラ整備等には約5.8兆円が配分されている。具体目標として、緊急・早期対策が必要な約9.2万橋の道路橋梁における修繕完了率を2023年度末の55%から2030年度に80%、2041年度に100%へ引き上げることが明記された。さらに、重要施設に接続する上下水道管路の耐震化率を2023年の9%から2030年度に30%へと高める方針が示されている。
一方で、建設物価調査会などの公表データによると、建設資材物価指数は2015年平均と比較して2025年時点で約40%上昇した。鋼橋分野で上位4社がそろって減収となった要因には、新設架橋案件の選別受注に加えて、鋼材価格の高止まりに伴う採算性の見極めが影響している。
参考記事: インフラ長寿命化計画とは?予防保全への転換と実務担当者が押さえるべき計画策定のポイント
参考記事: 国土交通省が2026年度81.4兆円発表、実質横ばいで問われる採算管理
建設業界の各プレイヤーに及ぼす影響
土木13分野における売上高の変動は、元請ゼネコンから専門工事業者、下請サプライチェーンに至るまで、受注戦略の再構築を促している。
元請ゼネコン:工種ごとの採算性とシェアの差による選別受注の加速
大手・準大手ゼネコンにおいては、全工種を網羅する総合請負体制から、高い収益性を確保できる得意分野への経営資源集中が進んでいる。
例えば、五洋建設は「海洋」「基礎」「機械土工」で首位を獲得し、「地盤改良」でも売上高を2.5倍に伸ばすなど、地盤・海上土木領域での強みを明確に打ち出している。これに対し、清水建設は基礎分野で約3割減収となり3位に後退した。大林組は山岳トンネルで清水建設を逆転して2位となり、シールドトンネルで2位、上下水道で初の首位に立つなど、都市土木・インフラ更新領域へのシフトを強化している。
2025年12月12日に全面施行された改正建設業法・入契法(第3次担い手3法)により、受注者による原価割れ契約の禁止や、著しく短い工期の禁止が義務付けられた。これにより、元請各社はシェア維持のみを目的とした低採算案件の入札を回避し、自社の施工実績と特殊機械の稼働率を最大化できる工種へ受注活動を絞り込んでいる。
参考記事: 改正建設業法(2024・2025年施行)のポイントを解説|標準労務費と契約実務の変更点
サブコン・専門工事業者:首位企業への集中と更新分野への対応力
専門工事業者においては、得意工種を持つ元請企業との関係強化が、受注量の安定確保に直結する状況が強まっている。
下水道の更新需要が増加する「推進」分野では機動建設工業が首位に返り咲き、「法面」分野ではライト工業と日特建設の2強がそろって2桁増収を記録した。斜面対策や管路更新といった防災・老朽化対策の現場では、特殊な施工機械や熟練オペレーターの保有数が施工能力の限界を規定する。
JR主要各社が進める安全投資や自治体の管路耐震化工事など、稼働中のインフラに近接する難工事が増加している。夜間作業や狭小空間での非開削施工に対応できる特殊技術を持つ専門業者は、元請企業に対する価格交渉力を高めている。一方で、新設主体の工種に依存する下請企業は、元請の受注減少に連動して工事量が縮小するリスクに直面している。
参考記事: JR各社が挑む1.3兆円規模のインフラ更新|施工管理の受注戦略
構造的変化:新設主体の受注構造から維持更新・専門特化への二極化
国内の公共土木事業は、実質ベースでの工事量が横ばいから微減で推移する中、工事の中身が「新設構造物の築造」から「供用中インフラの長寿命化・更新」へと転換した。
鋼橋分野において上位4社がそろって減収となる一方、舗装や法面、上下水道といった維持管理・補修サイクルの短い工種が増収基調を維持している点は、市場構造の転換を象徴している。国土強靱化実施中期計画で掲げられた道路橋梁約9.2万橋の修繕目標や管路耐震化目標は、今後5年間にわたる確実な施工量を担保する。
この環境下では、汎用的な土木施工能力のみを有する企業と、特定の補修技術や更新工法の特許・施工実績を押さえる企業との間で、営業利益率と受注残高の乖離が拡大している。
ConShiftの視点:得意工種への集中と更新特化工法が分ける競争優位性
今回のランキングデータは、土木事業におけるポートフォリオの再編が企業の売上規模を左右する段階に入ったことを示している。
注目すべきは、奥村組がシールドトンネルで初の首位を獲得し、大林組が上下水道で初の首位に立った点である。大林組は2025年3月期の親会社単体土木受注高で5,038億円を計上しているが、その内訳は単なる大規模土工ではなく、都市部の地下空間利用や上下水道管路の耐震化といった更新系インフラ需要を確実に取り込んだ結果である。
一方、前田建設工業はダム分野で2年連続の減収となりピーク時から売上高が半減したものの、機械土工分野では75%の増収を達成して3位に浮上した。単一の大型構造物案件の完了に伴う反落を、別の得意工種で補填できるかどうかが、企業業績の安定性を決定づけている。
第1次国土強靱化実施中期計画による20兆円強の投資配分を見ても、ライフライン強靱化の10.6兆円に対し、新設を含む防災インフラ整備等は5.8兆円である。新設案件の減少が見込まれる鋼橋や大型ダムにおいて、横河ブリッジや前田建設工業が直面している業況は一時的なものではなく、市場構造そのものの変化に起因する。
今後は、大成建設によるピーエス・コンストラクションの連結子会社化や、インフロニア・ホールディングス傘下における前田道路の展開のように、大手ゼネコンが自社の弱手工種を専門大手の買収・アライアンスによって補完する動きが一段と強まる。現場の施工管理体制においても、新設土木の大型現場から、稼働中インフラを止めずに施工する維持更新型プロジェクトへの人員再配置を早期に完了させた企業が、持続的な採算性を確保する。
まとめ:明日から自社で確認すべき実務指針
工種別の勢力図変化と市場構造の転換を受け、建設企業の経営層および現場リーダーが明日から取り組むべき実務対応を整理する。
- 自社における工種別売上高と限界利益率の棚卸しを実施する
過去3期分の施工実績を工種ごとに分類し、資材価格高騰や労務単価上昇を適正に転嫁できている工種と、赤字傾向にある工種を特定する。利益率の低い新設依存型工種から、維持補修・更新型工種への技術者配置転換を検討する。
- 改正建設業法に基づく原価割れ防止と労務費見積りの徹底
2025年12月に全面施行された改正建設業法に則り、下請契約および発注者向け積算において標準労務費が適正に反映されているかを再点検する。資材価格のスライド条項適用が契約書面に明記されているかを確認し、価格高騰リスクの自社負担を排除する。
- 国土強靱化実施中期計画に連動した更新需要の入札情報収集
2026年度から本格化するライフライン強靱化(上下水道、道路橋梁修繕等)の地方自治体発注計画を抽出し、自社が保有する特殊技術や施工実績と合致する案件への事前営業活動を開始する。
出典: 日経クロステック(xTECH)
出典: ピーエス・コンストラクション(Wikipedia)
出典: CREX 建設業界主要企業分析
_hero-1024x572.webp)

