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Home > 人材マネジメント> 国土交通省が専門工事の日給制4割を月給制転換へ|前金払いや多能工化で支援
人材マネジメント 2026年10月14日

国土交通省が専門工事の日給制4割を月給制転換へ|前金払いや多能工化で支援

国土交通省が専門工事の日給制4割を月給制転換へ|前金払いや多能工化で支援

国土交通省は2026年10月13日、「持続的な成長産業としての建設業のあり方に関する検討会」の第2回会合を開き、専門工事業者の技能者を対象とした月給制への転換に向けた具体施策の検討に着手しました。専門工事業者の約4割が現在も日給制を採用する中、業務の繁閑や気象要因による技能者の収入不安定を解消するため、多能工化や発注者の前金払い推進による経営リスク低減策を盛り込みます。

2027年夏の新ビジョン策定に向けた第2回検討会の論点

国土交通省不動産・建設経済局が主導する今回の検討会は、2017年に策定された「建設産業政策2017+10」から約10年が経過したことを受け、次の10年を見据えた新たな基本指針をまとめる場として設置されました。2026年7月9日の初会合(座長:三井住友信託銀行特別顧問・中央建設業審議会会長の大久保哲夫氏)以降、入札・契約制度や労働環境の改善に向けた審議を重ねており、2027年夏をめどに中央建設業審議会への報告と政策ビジョンの正式決定を予定しています。

2026年10月13日に開催された第2回会合では、須藤明夫不動産・建設経済局長が出席し、専門工事業の賃金体系を日給制から月給制へ転換するための課題整理が行われました。

項目 会合で示された検討内容
会合名称 第2回 持続的な成長産業としての建設業のあり方に関する検討会
主な論点 専門工事業者における技能者の月給制導入に伴う経営リスクの解消
阻害要因 施工の繁閑による稼働ムラ、出来高払いの契約慣行、降雨・猛暑による作業中止
支援施策 多能工化、オフサイト化、部材標準化、就業機会確保事業の見直し、前金払いの拡大
実施スケジュール 2027年夏の中央建設業審議会への報告・新ビジョン策定に向けて施策を具体化

従来の建設現場では、技能者の給与体系が日給月給制や日給制に偏っており、天候不順や猛暑による作業中止、工程の空き期間が生じるたびに技能者の月間手取り額が直接目減りする構造が続いていました。国土交通省の提示資料によると、専門工事業者の約4割が日給制を採用しています。全国建設業協会の調査(2026年9月公表)では会員企業が直接雇用する技能者の月給制比率は57.4%に達しているものの、下請けとして現場作業を担う専門工事会社では依然として出来高連動の雇用形態が根強く残っています。

この状況を打開するため、国交省は単に月給制の導入を義務付けるのではなく、専門工事業者が人件費を固定費化しても経営が破綻しないための実務環境を整備する方針を示しました。

具体的には、工場製作比率を高めるオフサイト化や部材の標準化・規格化によって現場の作業負荷を平準化するほか、1人の技能者が複数の工種を担う多能工化を後押しします。また、閑散期に他社の現場へ技能者を一時的に出向・派遣できる「建設業務労働者就業機会確保事業」の運用ルール見直しや、民間工事を含む発注者側への前金払い導入の働きかけなど、資金繰りと労務需給の両面から固定費化のリスクを緩和する措置が議論されています。

参考記事: 建設業働き方改革加速化プログラムとは?適正工期・賃金引き上げ・現場DXを実現する3つの柱を解説

サプライチェーン全体で問われる月給制移行の実行体制

技能者の月給制への移行は、雇用主である専門工事会社単独の努力だけでは成立せず、契約と支払いを上流で司る元請ゼネコンや発注者の実務プロセスにも改変を伴います。

サブコン・専門工事業者(下請け)

専門工事業者が月給制へ舵を切る際、最大の懸念となるのが雨天中止や工程遅延による遊休労務費の発生です。これまでの日給制は労務費を出来高に応じた変動費として処理できる防衛策でもあったため、固定給化は稼働率の低下が直接キャッシュフローを圧迫することを意味します。

この固定費化リスクを吸収するため、専門工事業者には現場間の工程調整をまたいで稼働率を維持する多能工化の教育体制や、プレカット・ユニット化部材を活用したオフサイト工法の現場適用が求められます。また、月給制移行に伴う就業規則の改定、割増賃金の適正算定、閑散期における建設業務労働者就業機会確保事業を通じた相互応援体制の構築など、労務管理体制を再構築する事務負担への対応が発生します。

ゼネコン(元請け)

直工を担う専門工事業者が月給制を前提とした労務費構成へとシフトする場合、元請ゼネコンは工程遅延による待機補償や下請代金の支払期日短縮といった取引条件の再設計を迫られます。下請業者が技能者へ毎月固定の給与を支払う以上、出来高払いの遅延や締め支払日の長期化は下請企業の資金ショートに直結するためです。

元請各社には、月給制を導入した協力会社を優先評価する調達方針の策定や、天候等による不可抗力の現場休止時における下請契約の変更・精算手続きの迅速化が求められます。同時に、後工程の遅れが専門工事業者の稼働計画を崩さないよう、クリティカルパスの厳格な工程管理と適切な歩掛設定による協力会社支援の実務が不可欠となります。

発注者・デベロッパー(施主)

技能者の雇用形態転換は、最終発注者の発注条件や契約条項とも連動します。国交省が検討会で掲げた「前金払いの実施などの支払い条件の改善」は、公共工事だけでなく民間デベロッパーや民間施主の支払い慣行にも再考を促す内容です。

発注者側は、部材規格の標準化を受け入れる設計仕様の統一や、適正な工期設定の遵守によって現場の突貫作業・閑散期を発生させない配慮が求められます。労務費の固定化を踏まえた契約価格の妥当性を評価し、前金払いや中間前金払いの比率を引き上げることで、施工サプライチェーン全体の財務安定に寄与する発注姿勢が実務上の要件となります。

参考記事: 標準労務費の勧告制度とは?2024年建設業法改正で変わる実務と見積・契約のポイント

ConShiftの視点:変動費依存から固定費経営への転換と契約リスクの再配分

本検討会で提示された論点は、建設業界に長年定着していた「技能者の雇用リスクを下請けの変動費(日給制)として現場末端に押し付ける構造」を、サプライチェーン全体で固定費として受け止める枠組みへの転換を意味します。

背景には、2024年6月に公布された「第三次・担い手3法」による適正労務費の確保義務や、中央建設業審議会による標準労務費の勧告制度の存在があります。標準労務費によって下請見積時の労務単価割れが規制される環境下では、日給単価の引き上げだけでなく「年間の総所得が天候や繁閑に左右されず安定していること」が、入職者の確保において必須の比較要件となります。

この転換を現場レベルで成立させるための制度的レバーとなるのが、建設キャリアアップシステム(CCUS)の技能レベル評価と「建設業務労働者就業機会確保事業」の規制緩和です。

月給制を維持するためには、技能者の現場稼働率を年間を通じて高水準に保つ必要があります。CCUSの能力評価基準(4段階判定)と連携して多能工としての習得技能を証明できれば、基礎工事から内装・仕上げ工事に至るまで単一企業内で工程を横断した配置転換が可能になります。さらに、自社現場に空きが生じた期間に他社へ技能者を合法的に送り出せる就業機会確保事業の送出・受入要件が緩和されれば、下請企業間での「労務プールのシェアリング」が機能し、月給制に伴う固定給支払いの原資を確保しやすくなります。

民間デベロッパーや元請ゼネコンにとって、月給制に対応できない専門工事業者の淘汰は、そのまま自社の施工余力(サプライチェーンの調達力)の喪失を意味します。下請代金の算定根拠として月給制を前提とした労務費率を組み入れ、前金払いや出来高の月次現金決済を約款に明記できる企業グループが、中長期的な施工体制の囲い込みで優位に立つと考えられます。

参考記事: 建設キャリアアップシステム(CCUS)とは?2026年完全義務化への対応と導入メリット・登録手順を解説

明日から現場と経営層が着手すべき労務・工程管理の備え

2027年夏の新ビジョン策定を見据え、元請企業および専門工事会社の実務担当者が直ちに着手すべき具体的アクションを整理します。

  1. 自社・協力会社の雇用契約形態と日給制依存度の棚卸し

自社の直雇用技能者および主要下請業者の賃金形態(完全月給制・日給月給制・日給制)の内訳を把握し、雨天中止や工程待機が技能者の実収入へ与えている影響額を工種別に数値化します。

  1. 労務費見積における月給換算単価の算出と標準労務費への照合

第三次担い手3法の標準労務費勧告を前提に、月次固定給+賞与+法定福利費を年間の標準稼働日数(約210〜220日)で割り返した適正日額歩掛を算出し、現行の見積提示額との乖離を検証します。

  1. 多能工化に向けたCCUS登録スキルの確認と育成計画の策定

現場技能者のCCUS登録状況と保有資格を精査し、主工種以外の隣接作業(型枠工の鉄筋配筋作業、内装工のボード・塗装作業など)を習得させるための訓練計画を立て、現場繁閑時の配置転換余力を確保します。

  1. 支払条件の見直しと中間前金払い条項の契約書への反映

下請契約における締め支払日の短縮(受託から支払までの期間短縮)や、民間工事における前金払いの適用可否について発注者・元請間での協議項目を洗い出します。

出典: decn.co.jp
出典: 国土交通省(持続的な成長産業としての建設業のあり方に関する検討会)

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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