清水建設は2026年10月1日、建物情報の一元管理と専門技術者による助言を組み合わせた施設管理者向けソリューション「de大工」の本格提供を開始した。明治学院大学横浜キャンパスに先行導入されており、日常的な漏水対応から工事仕様書の確認、長期修繕計画の立案までをワンストップで支援する。
「de大工」の機能構成と明治学院大学における先行運用の実態
施設管理の現場では、図面や過去の修繕履歴が紙媒体や個別フォルダに分散し、担当者の異動や退職に伴って維持管理の履歴が失われる事態が生じている。また、施設の直営管理部門に建築・設備の専門知識を持つ技術者がいない場合、突発的な不具合に対する施工会社の選定や見積内容の妥当性評価が困難になり、不具合発生の都度対応する対症療法的な修繕に偏る傾向がある。
清水建設が提供を開始した「de大工」は、こうした管理体制のボトルネックを解消するため、クラウド型のデジタル基盤と自社の建築・設備専門技術者による技術支援を一体化したサービスである。
| 支援項目 | 提供内容・プラットフォーム機能 | 現場における解決対象 |
|---|---|---|
| 建物データの一元管理 | 図面、修繕履歴、点検記録、エネルギー使用量をクラウド上に集約 | 情報の属人化解消、担当者交代時の引き継ぎ漏れ防止 |
| 日常の維持管理・トラブル対応 | 漏水や設備不具合発生時の受付、技術的助言、原因調査支援 | 専門技術者がいない現場における初動遅れや誤診断の防止 |
| 修繕工事の仕様策定・妥当性確認 | 工事仕様書の立案および確認、見積精査、施工手順の検証 | 外注先工事業者の選定ミスや不適正な修繕工事価格の抑制 |
| 長期修繕計画の策定・運用 | 劣化状況に応じた改修スケジュールの提案、LCCの最適化 | 突発的な大規模補修費用の発生防止、予算の平準化 |
先行導入された明治学院大学横浜キャンパスでは、学内施設の図面や工事履歴が属人的に管理されており、担当部署に専門技術者が不在であったことから、工事の妥当性確認や緊急時の手配に課題を抱えていた。同大学の担当者は、プラットフォーム上で生じた課題を入力することで清水建設から迅速な専門的レスポンスと説明が得られる体制が整ったことを導入理由に挙げている。
清水建設は今後、教育施設だけでなくオフィスビルや商業施設、工場など多様な施設用途へ本サービスを展開し、予防保全の定着とライフサイクルコストの低減を支援する方針である。
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施設管理のデジタル化が元請けゼネコンと発注者に及ぼす影響
建物の維持管理情報をプラットフォームに集約し、技術者が日常的に伴走するスキームは、請負側と発注側の双方における業務構造を変える要因となる。
ゼネコン(元請け):竣工後の維持管理データを軸とした継続的受注の獲得
元請けゼネコンにとって、新築着工ボリュームの変動リスクを抑えるためには、竣工後のストックマネジメント領域で安定的収益を確保する体制の確立が求められる。従来の施工請負契約は建物の引き渡し時点で主要な商流が終了し、アフターサービス期間を経過した後の修繕工事は他社との相見積もりに晒されるケースが一般的であった。
「de大工」のように日常の不具合相談や点検履歴の管理プラットフォームを掌握することで、ゼネコンは建物の劣化状態や設備機器の更新時期をリアルタイムに把握できるようになる。これにより、機器更新や外壁改修のタイミングに合わせた最適な改修提案を先手で提示でき、他社との価格競争に巻き込まれずに継続的な修繕工事を受注する基盤が整う。
発注者・デベロッパー(施主):専門人材不足の補完とライフサイクルコストの抑制
企業の総務部門や大学などの施設管理部門では、専門的な建築・設備技術者を自社で雇用・維持することが困難になっている。施設情報のデジタル化が進んでいない場合、不具合が発生するたびに複数の工事会社へ個別に現地確認を依頼しなければならず、業務負担が増大していた。
デジタルプラットフォームを介して専門技術者の助言を受けられる体制を構築することで、発注者は工事の妥当性評価や仕様書の作成を外部委託しながら、自社施設のアセット情報を資産として残すことができる。予防保全の計画に基づいた段階的な修繕投資が可能になるため、設備停止による事業中断リスクや、重度劣化に伴う突発的な修繕費用の発生を回避できる。
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ConShiftの視点|建物OSとFM伴走型ビジネスがもたらす構造変化
清水建設が「de大工」を展開した背景には、施工中心のフロー型ビジネスモデルから、建物のライフサイクル全体に関与するストック型ビジネスモデルへの転換がある。
同社は建物向けオペレーティングシステム「DX-Core」を基盤に、サービスロボットの統合管理やビル運用DXを進めてきた。今回の「de大工」は、最先端のスマートビルだけでなく、既存の一般建築ストックにおける日常的な維持管理の現場へデジタル基盤と人的リソースを直接投下する取り組みである。
施工会社が図面データや修繕履歴の管理基盤を握ることは、単なるソフトウェア提供にとどまらず、将来の更新工事における主導権を握ることを意味する。データと技術サポートをセットで提供して顧客を囲い込むアプローチは、新築需要が限定される局面において、ゼネコンが生き残るための標準的な営業手法となっていく。
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まとめ|施設管理DXに向けて企業が着手すべき実務対応
建物の運用・維持管理領域でデジタル技術と専門知識を融合させたサービスが実用化される中、建設会社および施設管理部門が明日から意識すべき実務対応は以下の通りである。
- 過去の施工図面・修繕履歴・点検データの電子化とクラウド集約
社内や書庫に紙で保管されている竣功図面や定期点検報告書をデジタル化し、担当者が変わっても過去の経緯を即座に参照できるデータ保管ルールを策定する。
- 対症療法的な修繕から予防保全を前提とした中長期修繕計画への見直し
不具合が発生してから工事会社を手配する体制を改め、機器の耐用年数や劣化状況のデータに基づいた年次別の更新スケジュールを策定して予算の平準化を図る。
- 施工引き渡し後のアセットデータを活用した改修・保全提案体制の構築
ゼネコンや工務店においては、建物を引き渡して終わりにするのではなく、竣工データを活用して定期点検や設備更新の計画的提案を行うアフターサポート体制を強化する。



