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Home > BIM/CIM> オフィスケイワンら4社がPC床版配筋を自動化|作図・数量算出工数を80%削減
BIM/CIM 2026年10月21日

オフィスケイワンら4社がPC床版配筋を自動化|作図・数量算出工数を80%削減

オフィスケイワンら4社がPC床版配筋を自動化|作図・数量算出工数を80%削減

オフィスケイワン、エム・エム ブリッジ、大林組、IHIインフラスクエアの4社は2026年10月1日、プレキャストPC床版の配筋設計と図面作成を自動化する「プレキャストPC床版配筋BIM/CIMシステム」を共同開発したと発表しました。本システムは「NEXCO設計要領 第二集 橋梁保全編(令和7年7月改訂)」に準拠し、標準版を対象とした試験運用において設計図面作成と数量算出に要する作業時間を従来比で約80%削減しています。

プレキャストPC床版配筋BIM/CIMシステムの開発経緯と機能構成

高速道路の橋梁大規模更新工事では、供用中の車線規制を最小限に抑えるため、工場で部材をあらかじめ製作して現場で架設するプレキャストPC床版の採用が主流となっています。しかしプレキャスト床版は、現場打ちコンクリートと異なり据付時の微調整や現場加工の余地がほとんどありません。そのため、わずかな鉄筋の干渉や寸法誤差が工場製作の手戻りや現場架設の停止に直結するリスクを抱えていました。

配筋図面の作成作業は、熟練技術者が経験則に基づいて最小・最大ピッチや干渉回避を調整する属人的なノウハウに依存しており、作図と照査に膨大な工数が割かれていました。この課題に対し、2026年9月の「令和8年度土木学会全国大会 第81回年次学術講演会」での研究発表を経て、実務適用を見据えたシステムとして共同発表されたのが本技術です。

設計要領と材料マスタに基づく自動配筋機能

本システムは、床版割付け情報、材料マスタ、最新の設計基準を連動させ、入力データから3次元配筋モデルの生成、2次元図面の出力、鉄筋数量の集計までを一気通貫で自動処理します。

処理ステップ 主な処理内容 従来作業との差異
1. 条件入力 床版割付けと材料マスタの読み込み 基準床版からの自動複写により反復入力を削減
2. 配筋自動生成 NEXCO設計要領に準拠したルール処理 スタッド孔や排水桝の補強、版間の半ピッチずらしを自動計算
3. 干渉チェック 全体座標系での3Dモデル配置照査 隣接床版間および既設鋼桁(CIM-GIRDER)との取り合いを可視化
4. 帳票・図面出力 2D図面と鉄筋数量表の一括書き出し 手作業トレースを廃止し数量拾い出しミスを排除

自動処理の根幹には、スタッド孔や排水桝に伴う鉄筋の分割・補強処理、a版とb版の継手鉄筋を半ピッチずらす千鳥配置ルールなど、現場の設計要領に即したアルゴリズムが組み込まれています。床版グループ単位でのデータ管理や基準床版からのパラメータ複写機能により、初期入力の手間も抑制されています。

CIM-GIRDER連携による鋼桁取り合いの事前検証

本システムのもう一つの技術的特長は、全体座標系での3Dモデル出力による取り合い照査の自動化です。オフィスケイワンが提供する鋼橋CIMシステム「CIM-GIRDER」で作成された既設鋼桁の3次元データを取り込むことで、新設するPC床版のスタッドジベル用開口部と鋼桁上フランジのスタッド位置が整合しているかを設計段階で視覚的・幾何学的に照査できます。

設計者支援UI(GUI)には、隣接する複数の床版データを一画面上でスクロールしながら連続確認できる俯瞰ビューが実装されており、床版境界をまたぐ継手鉄筋のピッチずれや不整合を施工前に検出可能です。

今回の成果は標準版を対象とする「フェーズ1」であり、今後は台形版などの特殊形状への対応拡大や、床版割付けシステムおよび設計計算システムとの直接連携を図る「フェーズ2」の開発が進められます。

参考記事: BIM/CIMとは?原則義務化の運用ルールと実務での導入メリット・導入ステップを解説

参考記事: プレキャストコンクリート(PCa)とは?RC・PCとの差異や現場導入のメリットを徹底解説

更新事業の各プレイヤーに生じる実務上の変化

配筋設計の自動化と工数80%削減という実績は、床版更新に関わる関係者の業務プロセスに直接的な影響を与えます。

元請けゼネコン:施工フロントローディングと調達工程の前倒し

大林組をはじめとする施工元請けにとって、設計図面作成と数量算出の自動化は、工事着手前の検討期間(準備工)の大幅な短縮につながります。標準版の図面確定が早期化することで、PCファブリケーターに対するプレキャスト部材の製作手配を前倒しでき、工場製作リードタイムの圧迫を回避できます。

また、既設鋼桁との干渉が設計段階で排除されるため、現場架設時に鉄筋がぶつかって部材を据え付けられないといった致命的なトラブルが防がれます。供用車線を規制したタイトな夜間・通行止め工事において、据付工程の確実性を担保する要素となります。

構造設計者:図面トレース作業の解消と構造最適化へのシフト

橋梁設計を担当する設計事務所やエンジニアリング企業では、配筋図の作図作業や鉄筋径ごとの数量手計算という単純反復作業から解放されます。

これまでは熟練技術者の頭の中にあった「排水桝回りの割り付け」「千鳥配置の逃げ」といった暗黙知がルールベースで標準化されるため、若手技術者であっても規格に適合した高精度な図面成果品を作成できるようになります。設計者は作図作業ではなく、床版割付け計画の全体最適化や構造計算値の精査など、安全性能とコスト低減に直結する検討へ時間を充当できます。

ソフトウェアベンダー:ルールベース設計機能の標準化要求

建設DX関連のSaaSやCADベンダーにとっては、3次元モデリング機能を提供するだけでは差別化が困難になる契機となります。国土交通省の直轄土木におけるBIM/CIM原則適用以降、実務現場が求めているのは「3Dで可視化できるツール」から「設計要領やマスタを読み込んで自動作図・自動集計まで完結する実務直結ツール」へと移行しています。設計基準(コード)を組み込んだジェネレーティブな自動生成機能の有無が、土木BIM/CIMツールの選定基準を左右することになります。

参考記事: 前田建設工業の床版架設機、施工範囲2倍で高速道路更新を省人化

ConShiftの視点:熟練知のコード化がもたらす設計・製造プロセスの結合

本システムの開発において特筆すべきは、建設DXの性質が「図面の手入力をデジタルに置き換える段階」から「設計基準と製造ルールをコード化して自動生成する段階」へ移行した点です。

従来、プレキャストPC床版の配筋設計が自動化できなかった根本的な理由は、単なる幾何学的配置の難しさではなく、「NEXCO設計要領」に代表される基準書上の規定と、現場ごとの開口部・継手構造とのすり合わせノウハウが個々の熟練設計者に属人化していたためです。オフィスケイワンや大林組らがこの暗黙知をパラメータと幾何ルールに分解し、材料マスタと連動させたことは、エンジニアリング業務の形式知化を意味します。

さらに、既設鋼桁の3Dモデル(CIM-GIRDER)と直接照査するパイプラインを確立したことは、土木設計を個別完結の「図面作成」から、製造・架設を見据えた「コンカレント・エンジニアリング」へと押し上げます。今後は、設計段階で自動生成された鉄筋データがそのまま鉄筋自動加工機のNCデータや工場の配筋ロボットへとダイレクトに連携される仕組みが整えば、プレキャスト部材の製造リードタイムそのものが根本から短縮されることになります。

明日から現場・企業が意識すべきこと

設計自動化技術の進展を踏まえ、橋梁保全事業に関わる企業が着手すべき実務対応は以下の通りです。

  1. 自社設計ルールのパラメータ化と棚卸し

社内に蓄積されている配筋ノウハウや標準取り合いパターンを、担当者の頭の中から取り出し、ルールベースの条件式(最大・最小ピッチ、開口補強ルールなど)としてドキュメント化しておくことが自動化ツール活用の前提条件となります。

  1. 既設側BIM/CIMデータ取得精度の確認

新設床版の自動配筋モデルの価値を発揮するには、照査対象となる既設鋼桁の寸法・スタッド位置の計測精度が担保されている必要があります。現況測量や既設橋梁モデリングの段階で、後工程の鉄筋照査に耐えうる精度基準が満たされているかを工事初期に確認してください。

出典: BUILT
出典: PR TIMES
出典: 土木学会 第81回年次学術講演会プログラム

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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