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法規制・制度 2026年10月23日

国土交通省が6051者調査を拡充|標準労務費違反に公表リスク

国土交通省が6051者調査を拡充|標準労務費違反に公表リスク

国土交通省の須藤明夫不動産・建設経済局長は2026年10月2日の就任インタビューにおいて、第三次・担い手3法の全面施行を受けた労務費と賃金の確保・行き渡りを最重要施策として推進する方針を示した。2025年12月の法改正全面施行後初となる今年度、建設Gメンによる立ち入りや取引実態調査を拡充し、元請から技能労働者へ適正な対価が渡る環境づくりを急ぐ。

第三次担い手3法の全面施行と国交省が示す取引適正化の施策

国土交通省の不動産・建設経済局長に就任した須藤明夫氏は、2026年10月2日に行われた専門紙合同インタビューにおいて、担い手確保に向けた具体的な方針を明らかにしました。2026年度は、2024年6月に公布され段階的に導入されてきた「第三次・担い手3法(建設業法、入札契約適正化法、公共工事品質確保促進法)」が2025年12月12日に全面施行されてから最初の運用年度となります。

須藤局長は、旧来の商慣行や多重下請構造が技能者への賃金還元を阻害している実態に言及し、中央建設業審議会(中建審)が勧告した標準労務費の遵守状況や、労務費が末端の職人まで確実に届いているかを厳格に把握する意向を表明しました。

時期 主な法制度・行政の動き 規制内容と実務への影響
2024年6月 第三次・担い手3法が国会で成立・公布 処遇改善、価格転嫁協議、工期ダンピング対策の義務化
2024年9月 改正建設業法が一部施行(第1段階) 中建審に標準労務費の勧告権限を付与、調査権限新設
2025年12月 改正法が全面施行(第3段階) 13職種99工種の標準労務費勧告、原価割れ契約等の禁止
2026年8月 須藤明夫氏が不動産・建設経済局長に就任 内閣総務官等を経て着任、持続可能な建設業の推進を掲げる
2026年10月 取引実態調査の大幅拡充を公表 必要経費内訳明示状況等の調査対象を広げ監視を強化

総務省の労働力調査および国土交通省の公表データによると、建設業就業者における55歳以上の割合は36.7%(全産業平均32.4%)に達する一方、29歳以下の若年層は11.7%(全産業平均16.9%)にとどまっています。さらに建設業生産労働者の年間平均賃金は432万円と、全産業労働者の508万円を下回る水準です。

こうした構造的課題に対し、国交省は2025年度実績で6,051者を対象とした取引実態調査を2026年度にさらに拡充し、不当な労務費カットや指値発注を行う事業者への指導・勧告体制を強めています。加えて、消費者の適正な評価を促す標準管理ガイドラインや管理評価制度の整備、2027年4月に開始が予定される育成就労制度と特定技能制度の連携強化も並行して進められます。

参考記事: 担い手3法(品確法・入契法・建業法)とは?法改正の変遷と実務で押さえるべきポイントを徹底解説

参考記事: 標準労務費の勧告制度とは?2024年建設業法改正で変わる実務と見積・契約のポイント

サプライチェーン各層に求められる労務費管理と取引の再設計

改正建設業法の全面施行と国交省による監視強化は、元請から下請、現場の技能労働者に至る各プレイヤーの契約実務と原価管理に直接的な変化をもたらします。

ゼネコン(元請け):労務費内訳の確認義務と適正価格転嫁の責務

元請企業は、下請負人に対して標準労務費を著しく下回る額で見積提出を求めることや、予算に合わせた一方的な減額(歩引き)を行うことが法令上禁止されました。下請契約の締結時には、提出された見積書において労務費・材料費・法定福利費が適正に内訳明示されているかを点検し、原価割れ契約を回避する確認体制が求められます。

民間発注者に対しても、中建審が勧告した標準労務費を根拠として請負代金の確保を交渉する責任が生じます。建設Gメンによる立ち入り調査で不当な買いたたきが確認された場合、指導や改善勧告にとどまらず企業名公表のリスクを負うため、調達・積算部門における契約プロセスの全面的な見直しが必要です。

サブコン・専門工事業者(下請け):材工分離見積りの徹底と賃金反映

一次下請から三次以下の専門工事業者は、従来の「材工一式」による見積慣行から脱却し、工種・作業ごとの所要人工数と適正な労務単価を明示した「材工分離見積書」を作成・提示する実務能力が問われます。根拠ある見積書を提示できなければ、元請側も適正な労務費を支払う正当な契約根拠を確保できません。

同時に、元請から確保した適正な労務費原資を、自社が雇用する技能労働者や下位下請への支払いに確実に反映させる説明責任も課されます。単価アップ分を自社のマージンとして吸収し、現場の職人の日当を引き上げない不透明な配分を行っている事業者は、今後の取引実態調査において是正対象となるリスクを抱えます。

職人・技能労働者:適正労務費の末端還元と処遇改善の進展

多重下請構造の末端に位置する技能労働者にとっては、法令に基づく労務費の保護と行政調査により、適正な賃金が行き渡る基盤が整備されつつあります。日給月給制に起因する天候不良時の収入減や、危険作業に見合わない低賃金が改善されることで、若年層の離職防止と入職促進が期待されます。

建設キャリアアップシステム(CCUS)の技能レベルに応じた処遇反映と連動させることで、経験や保有資格に見合った日当単価の正当な受け取りが可能となり、技術伝承を支える労働環境の確立につながります。

参考記事: 改正建設業法で標準労務費の認知は59%、元請が負う違反リスクと対策

ConShiftの視点:労務費の固定原価化が迫る見積・調達プロセスの根本的刷新

須藤局長が示した「労務費・賃金の行き渡り徹底」は、建設業界において長年続いてきた「労務費を削って価格競争力を生み出す」という調達手法が完全に通用しなくなったことを示しています。中建審が13職種99工種にわたる標準労務費を勧告し、これを下回る契約が建設業法違反となったことで、労務費は企業努力による削減対象ではなく、必ず確保すべき「固定原価」へと位置づけが変わりました。

日経コンストラクションの調査では標準労務費の認知度が59%にとどまり、業界の約4割が制度内容を正確に把握していない端境期にあるからこそ、先んじて法適合調達へ舵を切った企業が優位に立ちます。躯体工事の有効求人倍率が7.94倍に達する中、適正な労務費を確実に支払う元請企業には優良な専門工事業者が集まる一方、旧態依然とした買い叩きを続ける企業は施工班を調達できず、工程破綻や着工不能に直結します。

今後は、労務単価の多寡ではなく、現場のプレハブ化やユニット工法の導入、ICT施工による省力化といった「同一労務費でどれだけ工期を短縮し生産性を高められるか」が企業の真の競争軸となります。

まとめ

第三次・担い手3法が全面施行された初年度において、国交省は取引実態調査の拡充と建設Gメンの運用を通じて、労務費の末端行き渡りを厳しく確認しています。各社が明日から着手すべき実務は以下の通りです。

  1. 見積書の材工分離と法定福利費の内訳明示の徹底
    下請企業への発注および元請への見積提出において、労務費・材料費・法定福利費を明確に分けた標準見積書フォーマットへの統一を完了させる。
  2. 標準労務費の基準額と社内積算単価の照合・改定
    中建審が告示した13職種99工種の標準労務費と自社の発注単価を突き合わせ、基準を下回る工種がないか調達基準を再点検する。
  3. 下請企業への適正労務費の支払履歴と賃金反映状況の可視化
    下位下請への支払条件が適正であるかを把握し、行政調査や建設Gメンの立ち入りに対して適正取引を証明できる証憑管理体制を整備する。

出典: 住宅産業新聞
出典: 国土交通省
出典: 住宅新報

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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