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施工管理 2026年10月27日

Nefrontと清水建設が巡回GOを10月提供|ARで図面プロットを自動化

Nefrontと清水建設が巡回GOを10月提供|ARで図面プロットを自動化

筑波大学発ベンチャーのNefrontは2026年10月6日、清水建設との共創により開発した巡回・点検支援サービス「巡回GO」を正式リリースした。利用者が建物内のQRコードを読み取ると画像位置認識により現在地が特定され、立っている場所のAR画面上にピンを立てるだけで写真や指摘事項が建物位置と自動で紐付け記録される。

「巡回GO」の機能仕様とNOVAREを起点とした開発経緯

建設現場や維持管理現場の巡回業務において、撮影した写真の整理や図面への指摘箇所のプロット、事務所に戻ってからのExcel報告書作成には多くの事務工数が割かれている。加えて、口頭やテキストだけの伝達では「どの階のどの柱周りか」といった位置認識の齟齬が発生し、手戻りの要因となっていた。

Nefrontと清水建設が実用化した「巡回GO」は、屋内位置特定技術とAR技術を組み合わせ、現場にいながら位置情報の特定と指摘事項の記録を完結させるクラウドサービスである。

共創開発の歩みと実証プロセス

Nefrontは空間クラウド「Nefront Spatial Cloud」を基盤に、屋内位置特定やAR可視化の技術開発を進めてきた。2025年に清水建設のイノベーション拠点「温故創新の森 NOVARE」での展示をきっかけに現場巡回への適用検討が開始され、約1年半にわたる実証を経て正式リリースに至っている。

時期 開発・実証の経緯 取り組み内容
2021年6月 株式会社Nefront設立 屋内測位・空間情報管理の技術開発を開始
2025年5月 「Be Smart Tokyo」実装採択 清水建設の「温故創新の森 NOVARE」で空間情報技術の検証開始
2026年3月 筑波大学発ベンチャー称号授与 産学連携による空間認識アルゴリズムの高度化を推進
2026年8月 現場実証とアジャイル開発 NOVAREアカデミーの現場モックアップおよび都内実現場で機能検証
2026年10月 「巡回GO」正式リリース 建設現場向けに位置連動型巡回支援サービスとして商用提供を開始

現場開発においては、清水建設の技術者教育施設「NOVAREアカデミー」に設置された建設現場モックアップでの予備検証に加え、稼働中の都内建設現場にNefrontの開発者が直接入り込み、2週間単位のアジャイル開発で機能改善を繰り返した。

「巡回GO」の主要機能とデータ連携の仕組み

「巡回GO」の運用フローは、現場内の移動と記録を同一端末上でシームレスにつなぐ構成となっている。

現場内に掲示されたQRコードをスマートフォンやタブレットのカメラで読み取ると、画像位置認識技術(VPS技術等)によって空間内の現在位置が特定される。一度位置が特定されると、移動中も端末のセンサーと画像認識によって自己位置が追従される仕組みである。

機能項目 提供機能 現場実務における役割
位置特定・ARピン留め QRコード読み取りと画像位置認識 図面を探すことなく立っている位置へ直接指摘を記録
図面・BIM連携表示 2D図面および3D BIMモデルへの重畳 指摘事項の発生位置を視覚的に関係者へ共有
写真描画・チャット 撮影写真へのペン描画、報告単位の対話 是正指示の具体化と関係者間のコミュニケーション集約
ステータス・履歴管理 「要修正」「進行中」「修正完了」の管理 是正完了項目の非表示化と未対応タスクの可視化
帳票エクスポート 図面形式・一覧形式での報告書出力 事務所での写真整理およびExcel報告書作成作業の排除

巡回中に壁面の傷や配管の納まり不良などの指摘事項を発見した作業者は、AR画面上で該当箇所をタップしてピンを立てる。その場で写真撮影を行い、手書きメモやコメントを添えて登録すれば、建物内の正確な座標情報とともにクラウドへ保存される。従来の施工管理アプリのように、電子図面を開いて該当の部屋や通り芯を手動で探し、ピンを打ち直す作業は発生しない。

登録されたデータは、図面や3Dデータ(BIM)と自動で連携して表示される。対応状況は「要修正」「進行中」「修正完了」といったステータスで管理され、完了した指摘を画面上で非表示に切り替えることで、未完了タスクのみを抽出して確認できる。蓄積データは図面付きのPDFや一覧表としてそのまま出力できるため、現場事務所に戻ってからの転記作業が不要となる。

参考記事: 施工管理アプリ(クラウド型)入門|導入メリットと失敗しない選び方を徹底解説

施工管理実務と関係各社に及ぼす影響

現場巡回における位置情報の自動記録は、現場監督個人の業務時間短縮だけでなく、元請けゼネコンと専門工事業者間の指示伝達プロセスにも直接的な影響を与える。

現場監督・施工管理者:巡回後の事務作業削減と安全管理への集中

2024年4月に建設業へ時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間、特別条項付き年720時間)が適用されて以降、現場技術者の事務作業削減は労務管理上の必須要件となっている。

従来の現場巡回では、午前や午後に現場を回りながら数十枚から数百枚の写真を撮影し、夕方に事務所へ戻ってから「どの工区のどの取り合いか」を記憶やメモを頼りに仕分けする作業が常態化していた。「巡回GO」の導入により、立っている場所でシャッターを切るだけで位置情報が付与され、報告書フォーマットへの流し込みまで自動化されるため、巡回後の写真整理と書類作成の拘束時間が直接削減される。浮いた時間を協力会社との工程打ち合わせや危険予知の確認といった現場常駐業務へ振り分けることが可能になる。

ゼネコン(元請け):施工品質の均一化と現場常駐体制の効率化

元請けゼネコンにとっては、現場監督の経験年数による指摘漏れや記録精度のばらつきを標準化できる点が挙げられる。若手社員が現場を巡回する場合でも、ARピンによって位置情報が正確に保持されるため、上長や工事長が事務所や支店から「どこで何が起きているか」を遠隔で把握できる。

また、清水建設が進めている「Forma Build」などの共通データ環境(CDE)を通じた現場業務の支店集約や、少数常駐での現場運営とも親和性が高い。現場で発生した品質指摘データがリアルタイムにBIMモデルやクラウド基盤へ連携されることで、支店の技術部隊が現場に出向くことなく是正指示の妥当性を確認できるようになり、元請け技術者の常駐人数を抑えながら品質管理レベルを維持する体制づくりに寄与する。

参考記事: 清水建設、20億円現場を常駐2人で運営へ|Forma活用AXで定常業務半減

サブコン・専門工事業者:是正指示の特定ミスに伴う手戻りの防止

設備工事会社や内装工事業者などの専門工事業者にとっても、元請けからの是正指示の精度向上は直接的なメリットとなる。

従来の電話やテキストチャットによる「○階東側の配管取り合い部を手直ししてほしい」といった曖昧な指示では、現場に入った職人が該当箇所を誤認し、関係のない箇所を直してしまう、あるいは探すだけで時間を浪費するといった手戻りが発生していた。「巡回GO」では、図面上の正確な座標ピンに加え、AR写真への直接の書き込みやチャット履歴が紐付いているため、職長はスマートフォン上でピンポイントに作業対象を確認できる。作業完了後は同じピンに対して完了写真を投稿しステータスを「修正完了」に更新するだけで報告が完了するため、手戻り工数と連絡の往復が削減される。

ConShiftの視点|「手動プロット」から「空間データ基盤」への移行

「巡回GO」の実用化が示す本質的な変化は、施工現場における情報記録の手段が「図面に対する手動プロット」から「測位技術による空間データへの自動マッピング」へ移行した点にある。

これまでの施工管理DXツールの多くは、紙の図面をiPad等のタブレットに表示させ、作業者が画面をタップしてピンを打つ「紙から画面への置き換え」が中心であった。しかし、大規模建築や配管が入り組んだ現場では、今自分がいる正確な位置を図面上で同定すること自体が一定のスキルを要し、入力ミスの温床となっていた。Nefrontの画像認識による位置特定は、人間の認知判断を介さずに物理空間とデジタル空間の座標を直接一致させるアプローチである。

この空間座標が紐付いた指摘データの蓄積は、単なる施工中の不具合管理にとどまらない。清水建設が2026年10月に開始した施設管理者向けソリューション「de大工」のように、竣工後の維持管理・修繕計画へ施工段階のデータをシームレスに引き渡す基盤として機能する。施工時に「どの部材にどのような修正履歴があったか」が3次元座標付きで残っていれば、10年後、20年後の設備更新や外壁改修時の調査工数は最小限に抑えられる。

さらにNefrontが公表しているスマートグラス対応や巡回ロボット連携、空間AIプラットフォームへの拡張構想は、清水建設が建設RXコンソーシアム等で進める自律施工ロボットの運用とも合致する。人間が端末を持って歩く巡回から、四足歩行ロボットやドローンが現場内を自動巡回して不具合を自律検知する体制への移行において、物理空間をコード化する「空間クラウド」の存在は不可欠なインフラとなる。

参考記事: 清水建設、10月1日に施設管理「de大工」開始|修繕計画の立案まで支援

参考記事: 建設RX・施工ロボットとは?設立背景や主要技術・現場での活用メリットを解説

まとめ|現場巡回DXに向けて企業が着手すべき実務対応

位置情報連動型の巡回・点検ツールが実用段階に入ったことを踏まえ、ゼネコンおよび協力会社が明日から取り組むべき実務対応は以下の3点である。

  1. 巡回・写真整理・報告書作成にかかる実作業工数の棚卸し

現場監督や検査員が「現場の歩行・目視」「写真撮影」「図面へのプロット」「Excelでの報告書作成」の各工程に費やしている時間を工種ごとに計測し、事務処理に偏重しているボトルネックを定量把握する。

  1. 是正指示伝達における手戻り・確認ミスの発生原因の分類

元請けから協力会社への手直し指示において、「場所の特定ミス」「指示内容の伝達不足」「修正完了の確認漏れ」のどれが最も手戻りを生んでいるかを分析し、チャットやステータス管理機能の導入優先度を整理する。

  1. 施工段階の点検ログを竣工後の建物管理へ引き渡すデータ連携の検討

工事完了とともに破棄されがちな検査記録や是正履歴について、BIMデータや施設管理台帳と紐付けて保存・管理するルールを社内標準として策定する。

出典: BUILT
出典: PR TIMES
出典: 温故創新の森 NOVARE 公式note

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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