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Home > 施工管理> NTTと安藤ハザマ、1000km遠隔から0.2mmひび割れ検知|27年度実用化へ
施工管理 2026年11月2日

NTTと安藤ハザマ、1000km遠隔から0.2mmひび割れ検知|27年度実用化へ

NTTと安藤ハザマ、1000km遠隔から0.2mmひび割れ検知|27年度実用化へ

NTT、安藤ハザマ、1Finityの3社は2026年10月19日、次世代光通信基盤「IOWN(アイオン)」を活用し、施工中の山岳トンネル坑内を約1,000キロメートル離れた遠隔地から点検する実証実験に成功したと発表した。東海北陸自動車道の椿原トンネル現場において、国の施工管理基準値である幅0.2ミリメートルの微細な覆工コンクリートひび割れを高精細映像から検知できる通信・解析性能を確認している。

IOWNを用いた遠隔施工管理実証の全貌と検証データ

山岳トンネルなどの土木工事現場は、粉塵や騒音、崩落リスクが伴う過酷な閉鎖空間であり、電波が減衰しやすいため大容量通信の確保が技術的な障壁となってきた。今回の実証実験では、大容量・超低遅延を特長とするIOWNのオールフォトニクス・ネットワーク(APN)関連技術を坑内に適用し、遠隔地からの精密点検に必要な通信基盤を構築した。

実証実験の概要と実施体制

本実証は、実稼働中の高速道路トンネル工事区間を利用して実施された。

項目 詳細内容
発表主体 日本電信電話(NTT)、安藤ハザマ、1Finity(富士通グループ)
発表日 2026年10月19日
実証期間 2026年3月9日〜3月13日
実証場所 東海北陸自動車道(4車線化)椿原トンネル工事現場
通信環境 約1,000kmの長距離光通信環境を模擬
検証対象 覆工コンクリート壁面における幅0.2mmの微細ひび割れ検知精度
坑内設備 光ファイバケーブル1,100m敷設、光伝送装置6台(100m間隔)

実証が行われた東海北陸自動車道の椿原トンネル工事現場では、坑内に1,100メートルの光ファイバケーブルを敷設した。切羽から100メートル間隔で計6台の光伝送装置を配置し、掘削作業の進捗に合わせて通信網を延伸できるネットワーク構成を検証している。

0.2ミリメートルのひび割れ検知と画像解析精度

国土交通省の土木工事共通仕様書や各地方整備局の品質出来形管理基準において、コンクリート構造物の有害なひび割れとして補修や追跡調査の基準とされる最小幅は0.2ミリメートルである。従来、この幅のひび割れを確認するためには、熟練の施工管理者や点検技術者が高所作業車や足場を使って覆工壁面に近接し、クラックスケールを目視で当てて計測する必要があった。

今回の検証では、約1,000キロメートル離れた遠隔地から坑内のカメラを操作し、非圧縮に近い高精細映像を伝送した。さらに、遠隔点検を支援する画像認識モデルを組み合わせた性能評価も実施されている。

検証項目 測定条件・結果
撮影距離 壁面から1.0m離隔
撮影範囲 1フレームあたり幅75cm
検知対象 幅0.2mm以上のひび割れ
適合率(Precision) 100%
再現率(Recall) 85%

撮影距離1メートルの位置から幅75センチメートルの視野で撮影した画像データを解析した結果、誤検出のない適合率100パーセント、見逃しを防ぐ指標である再現率85パーセントを記録した。長距離伝送に伴う映像の劣化やフレーム落ちを排除できたことで、遠隔地からでも現地目視と同等以上の判定精度を確保できることが確認された。

2027年度の実運用に向けたロードマップ

安藤ハザマは2022年7月に建設業界として初めて「IOWN Global Forum」へ参画し、山岳トンネルや都市部土木工事における大容量通信のユースケース策定を主導してきた。同フォーラムには世界175を超える組織が加盟しており、光電融合デバイスや超低遅延ネットワークの標準規格化が進められている。

参画3社は、今回の椿原トンネルでの成果をもとに、2027年度以降の段階的な実現場運用を計画している。施工管理者がひとつの拠点から全国の複数現場を横断監視する体制を整え、実務運用で得られたデータや通信要件をフォーラムへフィードバックすることで、建設通信基盤の国際標準化を推進する方針である。

参考記事: 遠隔臨場とは?現場の立ち会い待ちをゼロにする仕組みと最新ガイドラインの重要ポイント

建設業界各プレイヤーに及ぼす実務的影響

山岳トンネル坑内から1,000キロメートル先への超低遅延伝送が確立されたことは、現場配置人員の制約や品質管理のワークフローに直接的な影響を与える。

ゼネコン(元請け):1人の専門技術者による複数現場の横断管理

元請けゼネコンにとって、施工管理技士の不足とトンネル技術者の偏在は重大な経営課題である。山岳トンネル工事では、掘削の進捗や地山性状の変化、覆工コンクリートの打設品質を判断できる熟練技術者の常駐が不可欠とされてきた。

IOWNの通信基盤が実用化されれば、都市部の統括拠点にいる高度専門技術者が、北海道から九州まで点在する複数のトンネル現場の覆工面を高精細映像で確認し、ひび割れの進展度合いや補修要否をリアルタイムで判断できるようになる。熟練者の移動にかかる拘束時間と出張コストが削減され、限られた専門技術者を効率的に再配置する管理体制が整う。

現場監督・施工管理者:坑内巡回と目視点検作業からの解放

トンネル現場の施工管理者は、粉塵や騒音が充満する坑内を毎日往復し、打設直後の覆工コンクリート表面にひび割れが生じていないかを目視で点検・記録してきた。高所での検尺作業は転落災害のリスクを伴う上、作業台車の昇降待ちによる手待ち時間も発生していた。

遠隔から0.2ミリメートル単位のクラックを自動検知・記録できるようになれば、現場監督は坑外の詰所や事務所にいながら品質管理記録を完了させることが可能になる。危険区域への立ち入り頻度が激減し、労働安全性が高まるとともに、現場巡回に費やしていた時間を安全工程の調整や協力会社との施工打ち合わせに振り分けることができる。

参考記事: 清水建設ら5社、トンネル自動吹付けで切羽作業ゼロと時間5%短縮を実証

維持管理・道路管理者:定期点検の省人化とデータベース連携

道路トンネルは道路法に基づき、5年に1度の頻度で定期点検を行うことが義務付けられている。しかし、全国に1万本以上存在する道路トンネルに対し、点検を担う技術者の不足は深刻さを増している。

新設工事の段階で敷設した光ファイバ網や高精細遠隔点検の仕組みを、供用開始後の維持管理フェーズへ転用できれば、供用中の定期点検や緊急点検を遠隔拠点から効率的に実施可能となる。打設直後のひび割れ初期データと経年変化のデータを同一基準で紐付けることで、予防保全計画の精度向上が見込める。

参考記事: NTT東日本・鹿島建設ら5社、道路下の光ファイバで振動・ひずみを常時監視

ConShiftの視点:通信の制約解除がもたらす現場常駐モデルの解体

拠点集中型施工管理への構造転換

従来の建設生産プロセスにおいて「現場常駐」が原則とされてきた最大の理由は、通信容量と遅延の物理的制約にあった。Web会議システムや汎用モバイル回線を用いた従来の遠隔臨場では、映像の解像度不足や遅延による手ブレが発生し、0.2ミリメートルという微細なクラックの合否判定や、重機・コンクリート打設の精密制御には現場臨場が不可避であった。

今回の実証は、光ファイバ直結のIOWN/APNを用いることで、1,000キロメートルの距離があっても物理的に現場の壁面直前に立っている状態と変わらない情報密度を伝送できることを示した。これにより、施工管理は「現場ごとに技術者が張り付く個別分散型」から、「広域センターに専門家が集約され、必要な瞬間に現場へ介入する拠点集中型」へと構造転換を果たすことになる。

i-Construction 2.0のオートメーション化を支えるバックボーン

国土交通省が掲げる「i-Construction 2.0」では、2040年度までに建設現場の省人化3割削減と生産性1.5倍の達成を目標に設定している。山岳トンネル分野では、自動吹付け機や全自動ドリルジャンボ、覆工コンクリート自動打設設備など、重機単体のロボット化が先行して実用化されつつある。

しかし、これらの自動化機器を坑外や遠隔地から統合制御し、複数の自律走行重機が吐き出す膨大なセンサーデータや点群データをリアルタイムに同期させるには、坑内の通信環境がボトルネックとなっていた。100メートル間隔で光伝送装置を増設し、1,000キロ先まで大容量データを損失なく送る通信バックボーンの確立は、点在する要素ロボット技術を統合的な無人化施工システムへと昇華させるための前提インフラとなる。

参考記事: 大成建設が全長55mのトンネル実証施設を構築|覆工自動打設の検証を加速

明日から意識すべきこと

IOWNを活用した超大容量遠隔施工管理の社会実装を見据え、施工管理部門および経営層は以下の実務対応を準備する必要がある。

  1. 品質管理基準とデジタルデータの照合体制の確認

自社で施工中のトンネル・コンクリート現場において、国土交通省の品質出来形管理基準(0.2mmひび割れ基準等)に適合する解像度と測定精度を担保できているか検証する。将来的な遠隔検査の導入を見越し、電子小黒板やクラックスケールによる手作業の記録フローを画像解析対応のデジタル台帳へ移行する準備を進める。

  1. 坑内インフラ設計における光ファイバ配線の検討

トンネル新設工事の施工計画を立案する際、従来の仮設通信(Wi-Fi中継機や漏洩同軸ケーブル)だけでなく、切羽進捗に追従できる光ファイバ網の敷設ルートを仮設計画に織り込む検討を始める。施工中の重機接触リスクを避ける配線経路や、光伝送装置の設置ピッチをあらかじめ仕様化しておくことが求められる。

  1. 遠隔支援体制を前提とした技術者配置の見直し

2027年度以降の実運用化に向け、現場代理人・主任技術者の現場常駐義務の緩和動向を注視しつつ、本社・支店の技術統括部署による遠隔モニタリング体制を想定した社内分業ルールを策定する。

出典: 環境新聞オンライン
出典: 安藤ハザマ プレスリリース(2025年8月7日)
出典: 安藤ハザマ プレスリリース(2026年10月19日)
出典: BUILT (ITmedia)
出典: TECH+ (マイナビニュース)
出典: ZDNET Japan

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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