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施工管理 2026年8月21日

国交省が能越道で4機種を1台に集約、盛土ICT自動化施工を全国初公開

国交省が能越道で4機種を1台に集約、盛土ICT自動化施工を全国初公開

国土交通省北陸地方整備局金沢河川国道事務所は2026年8月20日、能越自動車道の災害復旧現場において、敷均し・締固め・法面整形の3工程を1台で完結させる「ブルドーザ機能付きバックホウ」を用いたICT自動化施工を全国で初めて公開しました。従来4機種の建設機械とオペレーターを要した盛土作業を集約・自動制御する本技術は、狭小な被災現場における安全性向上と、建設業界が直面する人手不足への抜本的な解決策として大きな注目を集めています。

能越道災害復旧で公開された「ブルドーザ機能付きバックホウ」の全貌

令和6年能登半島地震により甚大な被害を受けた石川県能登地域では、幹線道路の早期本復旧が最優先課題となっています。特に急峻な地形を通過する能越自動車道では、土砂崩落や路盤崩壊が発生した狭小な現場において、迅速かつ安全な土工プロセスの確立が求められていました。

こうした背景のもと、国土交通省金沢河川国道事務所は石川県穴水町の復旧工事現場において、多機能型ICT建機の実証実演会を開催しました。

盛土3工程を1台でシームレスに完結する技術構造

道路や堤防などの盛土工において、土砂を所定の厚さに広げる「敷均し」、規定の密度まで締め固める「締固め」、そして法面(傾斜面)を設計通りに削り整える「法面整形」は、構造物の品質と耐久性を担保する基本工程です。

従来の手法では、これらの工程ごとに異なる専用機械を現場へ投入し、作業を切り替える必要がありました。

  • 敷均し: ブルドーザを使用し、搬入された土砂を平坦に敷き均す。
  • 締固め: 大型転圧ローラーや小型ローラーを順次投入し、地盤の密度を高める。
  • 法面整形: バックホウ(油圧ショベル)のアタッチメントを用いて法面の勾配を仕上げる。

今回公開された「ブルドーザ機能付きバックホウ」は、単にバックホウの足回りに排土板(ブレード)を取り付けただけの機械ではありません。機体本体の掘削・法面整形機能に加え、ブレード部による敷均し作業、さらに機体重量と専用アタッチメントを活用した締固め機構を備え、これら3工程の作業を1台の機体で連続して行うことが可能です。

さらに、マシンコントロール(MC)およびマシンガイダンス(MG)をはじめとするICT技術を高度に統合しています。3次元設計データとGNSS(衛星測位システム)やトータルステーションを連動させ、ブレードやバケットの動きを一部自動制御することにより、熟練オペレーターの感覚に頼ることなく高精度な仕上がりを実現します。

従来工法とICT多機能建機の比較

本技術の導入によって、盛土工事の現場オペレーションは大きく刷新されます。従来の標準的な盛土工法と、今回の「ブルドーザ機能付きバックホウ」によるICT施工の主な違いを以下に整理します。

比較項目 従来の盛土施工 ブルドーザ機能付きバックホウ(ICT施工)
使用重機 計4機種(ブルドーザ、転圧ローラー、小型ローラー、法面整形バックホウ) 1台(ブルドーザ機能付きバックホウ)
オペレーター配置 各重機ごとに専任オペレーターが必要(最大4名体制) 原則として1名(ワンオペレーション化)
重機入替・段取り 工程ごとに機械の搬入・退出・入れ替え作業が発生 1台の機体で3工程をシームレスに連続施工
制御・施工管理 オペレーターの手動操作および丁張りによる検測 3次元設計データ連動によるICT自動制御・ガイダンス
現場の安全性 複数重機・誘導員・手元作業員が混在し接触リスク大 重機台数と手元作業員の削減により接触リスクが激減

公開・実証に至る時系列の推移

金沢河川国道事務所による実証実演会の開催までは、被災現場での試行運用とデータ取得が段階的に進められてきました。

年月日 実施事項・マイルストーン
2026年7月24日 金沢河川国道事務所が公式SNS(X等)にて能越道復旧現場での施工映像を先行公開
2026年8月17日 記者発表「『ブルドーザ機能付きバックホウ』の実演会を開催します~全国初!一台3役でのICT施工!~」を発出
2026年8月20日 石川県穴水町の能越自動車道災害復旧現場にて、報道機関および関係者向け実演会を開催

3工程すべてをICT自動制御によって一括施工する実装事例は全国で初めてであり、過酷な災害現場における実効性が公の場で示された形となりました。

参考記事: 建設業働き方改革加速化プログラムとは?2024年適用後の3本柱と現場の対応手順を解説

建設業界の主要プレイヤーに及ぼす波及効果

「1台3役」のICT建機による自動化施工は、発注者、元請けゼネコン、建機メーカー・レンタル会社のサプライチェーン全体に直接的な影響を与えます。

元請けゼネコン:ヤード狭小現場での施工性向上と接触事故根絶

元請けゼネコンにとって、災害復旧現場や山間部の道路工事における最大の制約は「作業ヤードの狭さ」です。崩落法面や片側通行規制下の現場では、複数台の大型重機を配置する待機スペースや離合スペースの確保が極めて困難でした。

重機を4機種から1台へ集約できる本技術は、ヤード内における重機の輻輳(ふくそう)を根本から解消します。重機同士の接触や、重機旋回範囲への合図確認員・手元作業員の立ち入りリスクを大幅に排除できるため、労働安全衛生管理のレベルが飛躍的に向上します。

さらに、丁張り設置作業や出来形測定の手間をICT制御によって省力化できるため、測量作業員の安全確保と工期短縮が同時に達成されます。

行政・規制当局:i-Construction 2.0の加速と積算基準の改定

国土交通省は、2040年度までに建設現場の省人化を3割以上達成することを目指す「i-Construction 2.0」を推進しています。本件のような多機能建機による工程集約は、オートメーション化の代表的なモデルケースとなります。

今回の実証成果を受け、直轄工事における多機能ICT建機の活用促進や、総合評価落札方式における技術提案評価(加点項目)への反映が進むと予想されます。

また、従来の積算基準は「機種ごとの歩掛(単機能重機の組み合わせ)」を前提として策定されているため、多機能機による連続施工に対応した新たな標準歩掛や機械損料の算定基準など、制度設計の見直しが急務となります。

建機メーカー・レンタル企業:多機能化・後付けアタッチメント需要の拡大

建機メーカーおよび建機レンタル会社にとっては、保有建機のポートフォリオとサービスモデルの再構築が求められます。単一機能の重機を大量に保有・貸し出すビジネスモデルから、高度なICT制御ユニットと多機能アタッチメントを搭載した高付加価値機械の供給へと軸足を移す必要があります。

特に、既存の汎用バックホウに対してブレードや転圧機構、3次元マシンコントロールユニットを後付け(レトロフィット)できるキットの開発・普及は、地域の中小建設会社への導入を加速させる鍵となります。

また、複雑化した電子制御機器や油圧システムのメンテナンス体制を現場レベルで維持できる専門部隊の育成が、レンタル企業の競争優位性を左右することになります。

参考記事: 清水建設ら5社、トンネル自動吹付けで切羽作業ゼロと時間5%短縮を実証

ConShiftの視点|「単機能機の物量作戦」から「多機能自律建機」への構造転換

能越道復旧現場で実証された取り組みは、土木施工における重機運用のパラダイムシフトを示しています。

専用機の物量投入からマルチタスク建機への転換

従来の土木工事は、「ブルドーザが敷き、ローラーが踏み、ショベルが均す」というように、各工程に専用機と専任オペレーターを割り振る物量作戦が標準でした。この体制は、十分な労働力と広大な作業空間が存在することを前提として成り立っていたものです。

しかし、少子高齢化に伴い建設技能者の離職が加速する中、工程ごとに人員と機械を張り付けるモデルは維持できません。今回の「1台3役」の実装は、単一の物理プラットフォームにソフトウェア制御と複合アタッチメントを組み合わせることで、1人のオペレーターが複数の工程を連続処理する「マルチタスク施工」への移行を実証しました。

これは、製造ラインにおける単一専用機から多軸マシニングセンタへの進化と同様の合理化プロセスであり、土木施工現場の基本設計を塗り替える可能性を秘めています。

3次元データが現場の物理制御を直結させるインフラへ

本技術の核心は、ハードウェアの複合化だけでなく、3次元設計データに基づくICT自動制御との統合にあります。

従来、オペレーターの熟練度に依存していたブレードの角度調整やバケットの押し引き、締固め回数の管理が、データによってリアルタイムに補正されます。これは、事前に作成されたBIM/CIMデータや地形点群データが、単なる図面確認用にとどまらず、現場の建機を物理的に精密制御する「実行プログラム」として機能していることを意味します。

将来的な完全無人化・自動自律施工を見据えた際、多機能機とデジタルデータの直結は不可欠な通過点であり、土木工事の省人化を次のステージへ引き上げる試金石となります。

参考記事: 清水建設、55歳以上37%の建設現場へ人型ロボ協調基盤を提唱

明日から経営層・現場リーダーが意識すべき3つのアクション

多機能ICT建機の実用化が進む建設業界において、経営層および現場責任者が今すぐ準備すべき実務的な対応をまとめます。

  1. 土工現場における重機配置と作業工程の統合可能性を再検証する
    現在進行中または計画中の盛土・造成工事において、複数機種の入れ替えによって生じている待機時間や段取り工数を可視化します。敷均し・締固め・整形の工程を一体化できる工区を洗い出し、多機能ICT建機の適用余地を評価します。
  2. ICT土工対応の3次元データ作成体制とオペレーター教育を前倒しする
    多機能建機の性能を引き出すためには、高精度な3次元設計データの迅速な作成と、マシンコントロール画面を正確にモニタリングできる現場体制が必須です。若手施工管理者やオペレーターに対するICT施工教育を強化し、社内のデジタルスキルを底上げします。
  3. 建機レンタル会社との連携による最新アタッチメント・制御ユニットの調達ルートを確保する
    自社での重機直接購入にこだわらず、レンタル各社が展開するICT多機能建機やレトロフィット型自動制御ユニットの導入可否をリサーチします。公共工事の技術提案(総合評価方式)で即座に活用できるよう、調達実績とコスト試算を事前に整備します。

出典: Yahoo!ニュース
出典: 国土交通省 北陸地方整備局 金沢河川国道事務所
出典: 乗りものニュース

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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