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Home > BIM/CIM> 大林組、PLATEAU活用で風環境解析の計算効率を約500倍向上
BIM/CIM 2026年8月26日

大林組、PLATEAU活用で風環境解析の計算効率を約500倍向上

大林組、PLATEAU活用で風環境解析の計算効率を約500倍向上

株式会社大林組は2026年8月26日、国土交通省の3D都市モデル「PLATEAU」を活用し、設計者自らが風環境や景観の影響を迅速に予測・評価できる環境設計プラットフォーム「ArchiPALETTE(アーキパレット)」を開発したと発表しました。専門家への外注や高度な専門知識が必須だった環境シミュレーションが設計初期から手軽に実行可能となり、設計のフロントローディングと合意形成の大幅な迅速化をもたらします。

大林組「ArchiPALETTE」が打破する環境シミュレーションの構造課題

持続可能な都市・建築づくりに向けて、風環境、日照、屋外快適性などを考慮した環境配慮設計の重要性は急速に高まっています。しかし、従来の設計実務における環境評価には、専門知識の要求と膨大な計算負荷という2つの大きな壁が存在していました。

専門部署依存と手戻りを生んでいた従来の業務フロー

従来の設計プロセスにおいて、建物周辺の風環境評価(風環境CFD解析)や景観検討を行う場合、設計者は周辺建物の形状や地形データを手作業でモデリング・整形し、専門部署や外部の解析コンサルタントへ依頼する必要がありました。

この進め方では、設計者がデザイン案を変更するたびに解析依頼と結果の受領を繰り返すことになり、数日から数週間のタイムラグが発生します。その結果、設計初期段階における複数パターンの比較検討が難しく、基本設計や実施設計が進んだ段階でビル風などの問題が発覚し、大幅な設計変更や手戻りが発生する要因となっていました。

クラウドHPCとPLATEAUの自動連動による全自動解析プロセス

大林組が開発した「ArchiPALETTE」は、第1フェーズとして風環境CFD解析機能を実装し、Webブラウザ上の直感的な操作のみで解析を完結させる仕組みを構築しました。

設計者がWebブラウザ上で計画地のエリアを指定すると、国土交通省が進める3D都市モデル「PLATEAU」の高精細なテクスチャ付き3Dデータをシステムが自動取得します。さらに、大林組独自の形状処理技術によってシミュレーション用の3Dモデルへと自動最適化し、気象データと組み合わせた条件設定からCFD解析の実行、3D空間上への可視化までを全自動で処理します。

計算処理基盤にはクラウドHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)を採用し、多風向の解析を同時並列で実行することで、一般的なパソコン1台で計算した場合と比較して約500倍の計算効率向上を達成しました。解析精度についても、信頼性の高い評価手法である風洞実験との綿密な比較検証を行い、実務に十分な精度を備えていることが確認されています。

従来手法と「ArchiPALETTE」の機能比較

従来の環境評価手法と「ArchiPALETTE」によるプロセスの違いは以下の通りです。

評価項目 従来の環境評価プロセス 「ArchiPALETTE」導入後
実施主体 専門部署または外部コンサルタント 設計者自身(Webブラウザ上で操作)
周辺建物データ準備 手作業でのモデリング・データ整形 PLATEAUから自動取得・解析用モデルへ自動最適化
計算環境・処理効率 一般PCまたは限られた社内解析マシン クラウドHPC並列処理(計算効率約500倍向上)
設計初期の適用性 依頼〜受領のタイムラグにより反復検討が困難 初期段階から複数デザイン案を迅速・繰り返し比較可能
解析結果の可視化 専門的な数値データや2Dグラフ フォトリアルな3D地図上に重ねて直感的に表示

日照・屋外快適性への領域拡大とAI学習による高速化ロードマップ

大林組は、自社が手がける設計施工プロジェクトにおいて「ArchiPALETTE」の標準導入を進める方針です。

今後は風環境や景観の評価にとどまらず、「日照」や「屋外快適性」など解析対象領域の順次拡大を計画しています。さらに、蓄積されたシミュレーションデータをAIに学習させることで、環境予測のさらなる超高速化を推進し、設計者と施主がリアルタイムにデータを共有しながら街区と建物を一体的に検討できる総合プラットフォームへと進化させる構えです。

参考記事: 大林組、生成AIで法令調査を67%削減|設計手戻りを防ぐDX手法

参考記事: 清水建設、FEM解析モデル生成を3日に短縮!設計変更の即時反映を実現

建設業界の主要プレイヤーに与える波及効果

「ArchiPALETTE」による環境シミュレーションの自動化と超高速化は、設計者個人の業務にとどまらず、元請けゼネコンの提案力や発注者の事業推進プロセス全体に大きな変革を促します。

設計事務所・設計者:高度解析スキルの民主化と提案スピードの劇的向上

これまで環境シミュレーションは専門解析技術者の領域であり、一般の意匠設計者にとってはハードルの高い業務でした。「ArchiPALETTE」の登場は、高度な解析スキルを設計者自身へ「民主化」することを意味します。

設計者は初期のボリューム検討段階から、「風の抜け道」や「ビル風のリスク」を自らの手で即座に検証し、複数のデザイン案を定量的なデータに基づいてブラッシュアップできるようになります。専門部署への依頼待ちによるタイムラグが解消されるため、クリエイティブな試行錯誤に十分な時間を確保でき、意匠性と環境性能を高次元で両立させた提案をスピーディーに行うことが可能になります。

ゼネコン(元請け):ライブ設計による合意形成と設計施工一貫モデルの強化

元請けゼネコンにとって、計算効率の約500倍向上は単なる作業時間の短縮にとどまらず、顧客へのプレゼンテーションや合意形成プロセスのあり方を根本から変えます。

フォトリアルな3D都市モデル上に解析結果が直感的に重畳表示されるため、専門知識を持たない施主や事業関係者に対しても、施設計画が周辺環境に与える影響を一目で理解させることができます。打ち合わせの場で施主の要望に応じたレイアウト変更を行い、その場で環境変化をシミュレーションして提示する「ライブ設計」が可能となり、コンペやプロポーザルにおける提案力と受注確度を飛躍的に高めます。

参考記事: VE提案(バリューエンジニアリング)とは?CDとの違いや現場で使える具体事例・提案手順を解説

発注者・デベロッパー:近隣説明・環境アセスメントのリスク低減と資産価値向上

大規模な都市開発や高層建築の建設において、周辺市街地へのビル風被害や日影の影響は、近隣住民との協議や行政手続きにおいて最大の係争リスクとなり得ます。

設計初期から国交省の公式オープンデータであるPLATEAUと高精度なCFD解析に裏付けられた3Dビジュアルデータを保持できることは、住民説明会や環境アセスメントにおける強力な客観的エビデンスとなります。周辺環境への悪影響を事前に回避した計画を立案できるため、プロジェクトの遅延リスクを大幅に低減し、ESG投資やSDGsの観点からも評価の高いサステナブルな開発を実現できます。

参考記事: 新菱冷熱工業、AI気流解析で計算時間200分の1を実現 ZEB運用の新軸に

ConShiftの視点|オープンデータとHPCが促す設計プロセスの「分業から統合」へのシフト

大林組による「ArchiPALETTE」の開発は、建設DXの本質が「部分的なツール導入」から「オープンデータと計算資源を活用した業務プロセスの構造統合」へ移行したことを明確に示しています。

従来の建築設計では、意匠設計、構造解析、環境設備検討、法規チェックがそれぞれ独立した専門家によって分業化されていました。しかし、大林組が2026年8月に発表したAI法令調査ツール「Tektome」の実務適用(調査時間67%削減)や、今回の「ArchiPALETTE」によるCFD解析の500倍高速化に見られるように、大手ゼネコンはこれまで専門部署に分散していた判断ノウハウを次々とプラットフォームへと集約しています。

国土交通省が2027年度末までに約500都市への整備拡大を目指す「PLATEAU」のような国家級オープンデータ基盤と、クラウドHPCという無制限に近い計算リソースが結びついたことで、従来は数週間を要した都市環境シミュレーションがWebブラウザ上で瞬時に完了する時代が到来しました。

今後は、個人の経験則や感覚に頼った設計提案ではなく、初期段階から客観的な環境データと法的根拠をリアルタイムに統合・提示できる企業だけが、発注者や社会からの高い信頼を獲得することになります。設計データを核としたシミュレーション統合の巧拙が、ゼネコンや設計組織の競争格差を決定づける要因となるでしょう。

まとめ:明日から意識すべき3つのアクション

設計初期段階における環境シミュレーションの高速化・民主化の潮流を捉え、自社の競争力向上につなげるために取り組むべきアクションを整理します。

  1. 設計初期における「手戻り要因」と「解析待ち時間」の現状を定量把握する
    意匠決定後に周辺環境や風害の影響でレイアウト変更を余儀なくされた過去事例を洗い出し、初期検討プロセスのボトルネックを可視化します。
  2. PLATEAU等のオープンデータとシミュレーション技術の社内検証を開始する
    自社の設計対象エリアにおける3D都市モデルの整備状況を確認し、無償・有償の解析ツールやクラウド基盤を活用した簡易シミュレーションの試行導入を進めます。
  3. 施主・地域説明における「3Dデータ活用による合意形成フロー」を標準化する
    2D図面や数値中心の報告書から脱却し、フォトリアルな3D空間上で環境影響を可視化して提示するプレゼンテーション手法を営業・設計部門の標準手順として整備します。

出典: 大林組 公式プレスリリース

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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