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法規制・制度 2026年9月3日

国土交通省の2027年度予算1.45倍要求とAI活用が促す現場の働き方改革

国土交通省の2027年度予算1.45倍要求とAI活用が促す現場の働き方改革

国土交通省の官房技術審議官に就任した松本健氏は就任インタビューに応じ、直轄土木工事における週休2日の定着を前提とした「多様で柔軟な働き方」の実現と、発注・管理の双方におけるAI(人工知能)の全面活用を推進する方針を示しました。2027年度予算の概算要求で前年度当初比1.45倍の公共事業関係費を要求する中、事業量の安定確保とi-Construction 2.0を連動させ、若手人材に選ばれる建設産業への構造転換を加速させます。

松本健官房技術審議官の就任と発注行政の新方針

国土交通省大臣官房技術審議官に2026年8月7日付で就任した松本健氏は、建設専門紙各社のインタビューにおいて、担い手不足の克服と魅力ある建設産業の実現に向けた基本姿勢を示しました。直轄工事で進められてきた週休2日の取り組みを土台としつつ、猛暑回避やデジタル技術の適用を組み合わせた「現場環境に即した働き方の選択肢」を広げる方針です。

就任の経緯と国土交通行政における技術施策の歩み

松本健氏は1996年に建設省(現国土交通省)に入省後、道路局や地方整備局の要職を歴任し、現場の施工管理から国土強靱化政策まで幅広い実務に携わってきました。

年月・時期 役職・経歴および主な施策動向 発注行政における位置づけ
1996年 東京大学大学院修了後、近畿地方整備局採用 技術系行政官としてインフラ整備の現場に従事
歴任期 新潟国道事務所長、奈良県県土マネジメント部長等 地方自治体および直轄現場での事業執行を統括
2024年4月 i-Construction 2.0の策定公表 2040年度までに現場省人化3割を目指す方針を設定
2026年8月 国土交通省 大臣官房技術審議官に就任 技術行政の統括として多様な働き方とAI実装を指揮
2026年9月 就任インタビューにて新方針を表明 2027年度予算1.45倍要求と柔軟な就業環境構築を明言

参考記事: i-Constructionとは?建設DXを推進する3つの柱と導入のメリットをわかりやすく解説

週休2日の定着から「環境適応型の柔軟な働き方」への移行

直轄土木工事では「4週8閉所」を基本とする週休2日工事がすでに定着段階に入っています。松本氏は、2026年度からの取り組みとして、従来の画一的な休日確保にとどまらず、現場特性や気候変動に合わせた柔軟な就業体制を支援するフェーズへ移行することを強調しました。

具体的には、夏季の記録的な猛暑下における日中作業の回避や、デジタルツールを活用した移動・立ち会い時間の削減が挙げられます。労働時間の長さだけでなく「働く時間帯や場所の柔軟性」を確保することが、若年層や多様な人材から選ばれる産業への不可欠なステップとなります。

参考記事: 関東地方整備局、猛暑対策を最大30点評価へ!省人化技術が受注を左右

i-Construction 2.0とAIフル活用による生産性向上

働き方改革と対をなす生産性向上策として、国土交通省は2024年に策定した「i-Construction 2.0」を強力に推進しています。松本氏は、インフラ分野において発注者と施工管理者の双方がAIをフル活用する体制を整え、官民連携によるデータ基盤の構築を進めると明言しました。

施策の柱 具体的な推進内容 現場・発注業務への効果
施工のオートメーション化 自動建機・遠隔操作重機の導入、プレキャスト化 現場の屋外作業人数を削減し熱中症リスクを低減
データ連携のオートメーション化 官民の現場データ連携、BIM/CIMデータの一元化 書類作成工数の削減と情報共有の即時化
施工管理のオートメーション化 AI画像認識による出来形検測、遠隔臨場の定着 監督員の移動・拘束時間を圧縮し検査業務を迅速化

2016年に開始された従来のi-Construction施策では、直轄事業のICT施工対象工種において作業時間が約21%短縮されるなどの成果を上げました。i-Construction 2.0では、これをさらに進化させ、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割達成(生産性1.5倍)することを目指しています。

参考記事: 国土交通白書、民間AI投資は米国の250分の1|現場導入1割の打開策

2027年度予算概算要求に見る事業量確保と価格転嫁

2027年度予算の概算要求において、国土交通省は前年度当初比1.45倍の公共事業関係費を計上しました。相次ぐ自然災害への対応や防災・減災、国土強靱化を着実に進めるため、単なる予算額の積み上げだけでなく、資材価格や労務費の高騰を適切に反映した「実質的な事業量」を確保する狙いがあります。

松本氏は、計画的な予算執行に向けて受発注者間のコミュニケーションを深め、適切な事業マネジメントを行う姿勢を示しました。適正な工期設定とスライド条項の円滑な適用を通じ、地域のインフラ維持や災害対応を担う建設企業の経営体質強化を後押しします。

参考記事: 建設業働き方改革加速化プログラムとは?適正工期・賃金引き上げ・現場DXを実現する3つの柱を解説

建設業界の主要プレイヤーに及ぼす影響

国土交通省が示した「多様な働き方」「AIの全面実装」「事業量の安定確保」という基本方針は、発注機関から地域建設業、テクノロジーベンダーに至るまで広範な影響を与えます。

行政・規制当局(国土交通省・地方整備局・自治体)

発注者側においては、従来の工事監督・検査手法の見直しが本格化します。直轄工事で先行してきた遠隔臨場やAIを活用した設計図書チェック、出来形確認システムを地方自治体発注工事へも水平展開するための標準化が進められます。

また、猛暑対策を総合評価落札方式で加点評価する試行工事のように、労働環境の改善を契約仕様や技術提案の評価項目へ直接組み込む制度設計が全国の地方整備局へ波及する見込みです。発注機関自身もAI導入によって業務の省力化を図り、受発注者双方の拘束時間を削減するマネジメントが求められます。

中小工務店・地場ゼネコン

地域のインフラ維持や災害対応を直接担う地場建設企業にとって、ICTやAIの活用は「大手主導の取り組み」から「事業継続のための必須要件」へと変化します。国が直轄工事の成果を中小規模工事へ波及させる支援策を強化することで、小規模現場でも扱いやすい簡易型ICTツールやクラウドサービスの普及が進みます。

さらに、概算要求で示された1.45倍の公共事業予算が着実に執行されれば、資材高騰や賃金引き上げに直面する地域建設業の採算性改善につながります。夏場の過酷な現場労働を回避する変形労働時間制やプレキャスト製品の積極採用など、労働環境を改善して若手入職者を確保する取り組みが受注力に直結する時代を迎えます。

参考記事: 厚生労働省、熱中症対策義務化で死傷1803人受け現場管理を刷新せよ

BIM・施工管理SaaSベンダー

国が「官民連携による現場データ連携」と「発注者・管理者双方でのAI活用」を掲げたことは、建設テック市場に大きな追い風となります。単独のシステムで業務を囲い込むのではなく、国のオープンデータ基盤や他社ツールと相互接続できるAPI連携機能が製品選定の決定打となります。

特に、現場監督の書類作成や検査立ち会いを肩代わりする生成AI機能、写真や点群データから自動で出来形を判定する画像認識AIなど、現場の即戦力となるSaaSツールの需要が急拡大します。初期投資を抑えた月額課金制で中小企業でも導入しやすいソリューションの提供が、シェア獲得の鍵を握ります。

ConShiftの視点|「現場固定制」から「AI前提の柔軟就業」への構造転換

松本技術審議官の方針表明は、建設業における働き方の基準が「決まった時間に全員が現場へ集まる」モデルから、「デジタルとAIを前提に環境へ合わせて働く」モデルへと完全に舵を切ったことを示しています。

これまで建設業のDXは、工程短縮やコスト削減といった「生産効率の向上」を目的に語られがちでした。しかし、時間外労働の上限規制が施行され、気候変動による酷暑が常態化する現在、DXの真の価値は「現場作業の省人化によって柔軟な働き方を担保する手段」へと昇華しています。

国が2027年度予算要求で前年度当初比1.45倍という積極的な姿勢を示し、事業量の確保とAIの官民連携を同時に打ち出した背景には、担い手不足によるインフラ維持の破綻を防ぐという強い危機感があります。民間AI投資が海外に比べて出遅れている日本の建設現場において、発注行政トップがAIフル活用を宣言した意義は極めて大きく、これを機に先端技術を現場の労務環境改善に直結させられる企業が、持続的な競争力を確立することになります。

参考記事: 【週間サマリー】08/24〜08/31|「現場依存と属人性の解体」が導く自律施工と組織的ガバナンスの確立

施工現場と経営陣が明日から取り組むべき3つのアクション

発注行政の新たな方針に対応し、魅力ある職場環境と生産性向上を両立するために、建設企業の経営層や現場リーダーが着手すべき実務項目を整理しました。

  1. 現場の作業時間帯と気候リスクに応じた柔軟就業パターンの策定

自社の施工現場における夏季の作業環境や拘束時間を棚卸しし、日中作業の回避やサマータイム、変形労働時間制の導入可否を検討します。直轄工事で広がる柔軟な働き方の要件を把握し、協力会社と合意形成を図りながら無理のない工程計画を作成します。

  1. 施工管理・発注連携におけるAIツールの試験導入と業務標準化

写真管理、出来形検測、安全書類作成など、現場管理者の負担が大きい定型業務を代替できるAI搭載SaaSツールの試行を開始します。発注者とのデータ連携や遠隔臨場を円滑に行えるよう、現場技術者のデジタル操作リテラシーを高める社内教育を実施します。

  1. 資材・労務費上昇を反映した適正価格での受発注とスライド条項の運用確認

2027年度予算の事業量確保に向け、見積もり段階における資材価格や労務費の最新実勢価格の反映を徹底します。インフレスライド条項や単品スライド条項の適用基準を社内で再確認し、発注者との適切な価格協議を行える管理体制を整えます。

出典: 建設通信新聞Digital
出典: 日刊建設工業新聞
出典: 建通新聞
出典: 国土交通省 記者発表資料

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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