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施工管理 2026年9月28日

清水建設、高さ390mの現場で建設物流DXシステムを運用開始|揚重代行

清水建設、高さ390mの現場で建設物流DXシステムを運用開始|揚重代行

清水建設は2026年9月28日、建設現場内の資機材搬入と揚重管理を一元化する「建設物流DXシステム」を開発し、本格運用を開始した。本システムは高さ約390メートルの超高層ビル「Torch Tower」建設現場に先行導入され、専門の揚重センターが作業計画と荷役を一括代行することで、協力会社が担っていた現場内移動や待機の手間を解消している。

Torch Tower現場で始動した建設物流DXシステムの全容

建設現場における物流管理は、長年にわたり各専門工事業者(協力会社)の裁量に委ねられてきた。しかし、現場の大規模化や超高層化が進むにつれ、資機材の搬入調整や荷役に伴う非稼働時間が技能労働者の大きな負担となっている。清水建設が開発した「建設物流DXシステム」は、従来の紙ベースによる入退場管理や揚重予約をクラウド上で統合し、専門組織の配置と組み合わせて物流動線を抜本的に見直すものである。

現場物流を一元管理するシステム構成と役割分担

本システムでは、資機材の入場予約から揚重設備の割り当て、ゲート誘導、揚重作業までの工程をデジタル上で連動させている。システムへの情報入力と現場の専門スタッフが有機的に連携することで、現場内の動線錯綜を防ぐ設計となっている。

役割・組織 主な業務内容 使用ツール・運用方法
協力会社 車両の入場予定日時、資機材の内訳・数量、車両情報の事前登録 クラウド予約画面(PC・スマートフォン)
揚重センター(新設) 事前登録情報に基づく日次揚重計画の策定、資機材の荷役・揚重作業代行 クラウド揚重管理画面、揚重機械
誘導員(専門配置) 搬出入車両の誘導、ドライバー連絡、入退場実績の記録 タブレット端末(ワンタップ入力)

協力会社は現場に向かう車両情報を事前にクラウドへ登録するだけでよく、資機材到着時に作業階から1階ゲートまで降りてトラックの誘導や荷降ろしを行う必要がなくなる。現場内の鉛直搬送を担うクレーンや工事用エレベーターの運用は揚重センターが一括してスケジューリングし、実作業まで代行する。

プロジェクトの経緯と法規制への適合プロセス

Torch Towerの建設現場では、地上鉄骨建方が進展するにつれて現場内の通信環境構築と物流改革が必須課題となっていた。さらに、物流関連法規の施行により、元請ゼネコン側での荷待ち時間削減が強く求められる状況にあった。

年月 出来事・制度改正の推移
2023年 「Torch Tower」(地上62階、高さ約390m、延床面積約55万1,000㎡)本体工事に着工
2024年4月1日 改善基準告示の改正施行(トラックドライバーの時間外上限年間960時間規制開始)
2024年5月15日 改正物流効率化法公布(荷待ち・荷役時間短縮等の努力義務規定)
2025年9月2日 Torch Towerの地上階鉄骨建方開始を発表、人流・物流改革の推進を表明
2026年4月1日 物流効率化法の全面施行(年間貨物量9万トン以上の荷主に対する特定事業者指定等)
2026年9月28日 清水建設が「建設物流DXシステム」を発表、Torch Tower現場で実運用を開始

国土交通省が2026年7月に公表した全国トラック輸送調査によると、トラック1運行あたりの拘束時間は平均10時間13分であり、荷待ち・荷役等の時間は合計2時間2分に及んでいる。特に建設資材輸送は敷地の制約や他作業との兼ね合いから現場周辺での待機が発生しやすい。Torch Towerのように関係作業員が5,000人から7,000人に上る超大規模現場では、搬入車両の到着遅延やゲート前の滞留が周辺交通や後続工程に直ちに悪影響を及ぼすため、分単位での搬入バース予約と荷役の迅速化が不可欠であった。

参考記事: 国土交通省、年9万トン超荷主に10月末提出義務の物流計画事例集を公開

建設サプライチェーンを構成する主要プレイヤーへの波及効果

現場内物流をクラウドで集約管理し荷役を専門組織化するモデルは、元請け、下請け、資材サプライヤーそれぞれの作業環境とコスト構造に直接的な影響を与える。

ゼネコン(元請け):現場統括業務の標準化と特定荷主規制への適応

元請ゼネコンにとって、搬入車両の入退場や揚重設備の利用調整は、現場管理者が日々多大な工数を割いてきた調整業務の一つである。これをクラウド上で一元化し、実績データをタブレット経由で自動蓄積する体制に切り替えることで、施工管理者の間接業務が削減される。

また、物流効率化法の全面施行に伴い、年間の貨物取扱量が9万トンを超える大手ゼネコンは「特定第二種荷主(着荷主)」として、荷待ち・荷役時間の削減に向けた中長期計画書の提出や物流統括管理者(CLO)の選任が求められている。システムを通じて車両の入退場実績や荷待ち時間を正確にデータ化・把握できる基盤を構築することは、行政への定期報告や改善指導に対する実効的な対策となる。

サブコン・専門工事業者(下請け):高層階からの移動時間削減と実施工への集中

下請負人である専門工事業者にとって、資機材の搬入作業は技能労働者の本来業務を阻害する要因となっていた。超高層現場では、作業階から地上ゲートへのエレベーター昇降や車両の到着待ちだけで1回あたり30分から1時間以上の移動・待機ロスが生じるケースが珍しくない。

荷受けと鉛直搬送を元請け側の揚重センターに委ねられる体制が確立されたことで、職人は現場内移動を最小限に抑え、作業階での実施工に専念できる。作業員の手待ち時間が減少することは、協力会社における時間外労働の圧縮や人工(にんく)効率の改善に直結する。

建材メーカー・運送事業者:搬入バース予約による待機時間の極小化

建材メーカーや運送事業者にとって、建設現場への納入は到着順の入場待ちや荷降ろし開始までの現場待機が常態化しやすい領域であった。トラックドライバーの時間外労働上限規制が適用される中、現場周辺での待機時間はドライバーの拘束時間を圧迫し、配送効率低下の原因となっていた。

本システムによる事前予約制と専任誘導員のタブレット誘導により、納入車両は指定時刻に入場し、揚重センターの手で速やかに荷降ろしを完了できる。現場滞在時間が読める運行計画が組めるようになることで、運送事業者は車両の回転率を高められ、運送引き受け拒絶や待機料請求といった物流リスクを回避しやすくなる。

参考記事: 建設業の2024年問題とは?時間外労働上限規制のポイントと現場が取るべき対策を徹底解説

ConShiftの視点:現場物流の「シェアードサービス化」が促す発注管理の転換

清水建設の建設物流DXシステムが示す本質的な変化は、資機材搬入と揚重という「現場付帯作業のシェアードサービス化」にある。

従来の建設現場では、資機材の荷役や揚重は各専門工事業者の契約範囲や現場慣行に分散して委ねられていた。しかし、地上62階建て・高さ約390メートルのTorch Towerのような超高層かつ超過密な現場においては、分散管理そのものが物流のボトルネックを引き起こす。揚重設備というボトルネック設備を元請けが専任組織(揚重センター)で完全にコントロールし、荷降ろし・鉛直搬送を共通インフラとして提供する運用は、現場内物流を個別最適から全体最適へと転換させる。

このモデルを他現場へ横展開するにあたっては、見積・契約体系の再定義が焦点となる。従来、協力会社の見積もりに含まれていた「荷役・揚重手間」を元請け側が集約して負担することになるため、下請契約における労務費・経費の切り分けや、揚重センターの運営コストを現場共通仮設費の中でどう適正に配分・回収するかという積算上の整理が求められる。清水建設が予告している「AIを活用した計画最適化や待機車両削減」が実装されれば、日々の施工進捗と納入スケジュールが連動し、現場物流全体のプラットフォーム化が一段と加速する見通しである。

施工現場の物流効率化に向けて明日から意識すべきこと

現場物流のデジタル化と効率化を自社に定着させるため、施工管理者や現場リーダーが着手すべき実務項目を整理する。

  1. 現場内の荷待ち・荷役時間の実態把握を行う

日々の搬入車両がゲート前や場外で待機している平均時間を計測し、どの資材・工種の納入で待機が常態化しているかを洗い出す。

  1. 搬入調整の連絡・予約手段をデジタルツールへ移行する

ホワイトボードや紙の搬入予定表による運用を終了し、協力会社が前日までにオンラインで希望時間帯と車両情報を入力する体制を敷く。

  1. 揚重機の稼働計画を工種横断で平準化する

朝一番の搬入集中を避け、時間帯ごとに揚重設備の利用枠を割り振ることで、現場内の鉛直搬送待ちによる職人の手待ちを低減させる。

出典: 清水建設
出典: 国土交通省

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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