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法規制・制度 2026年9月8日

国土交通省、年9万トン超荷主に10月末提出義務の物流計画事例集を公開

国土交通省、年9万トン超荷主に10月末提出義務の物流計画事例集を公開

国土交通省は2026年8月28日、物流効率化法の全面施行に伴い、建設業の特定荷主が提出を義務付けられる中長期計画書の記載事例集を公開した。この事例集は様式第3に対応し、年間貨物取扱量が9万トン以上の特定事業者が2026年10月末までにオンラインフォームで提出する計画の具体的な記載水準を示している。

物流効率化法に基づく中長期計画書と建設業向け事例集の公表経緯

2026年4月1日の「物資の流通の効率化に関する法律(通称:物流効率化法・新物効法)」の全面施行を受け、建設業においても資材物流を大量に発注・受領する事業者が「特定荷主」として法的な規制対象に位置付けられた。国土交通省不動産・建設経済局建設業課および物流・自動車局物流政策課は2026年8月28日、一般社団法人日本建設業連合会や一般社団法人全国建設業協会などの主要建設業団体に対し、「中長期計画書(様式第3)記載見本集 ―特定第一種/第二種荷主向け― 【建設業編】」を周知する事務連絡を発出した。

本事例集は、法律に基づき作成が求められる中長期計画書について、記載すべき施策の粒度や数値目標の水準を企業側が把握できるように策定された参考資料である。国土交通省は利用に際し、「個社の実態(取扱品目、拠点構成、委託先との役割分担、事業規模等)に合わせて数値や実施時期、表現を調整しながら活用いただくことを想定している」とし、自社の施工体制やサプライチェーンの状況に合わせた調整を求めている。

努力義務から特定荷主の義務化へ至る法制度のタイムライン

改正物流効率化法は、段階的な施行プロセスを経て規制措置が本格化した。2024年の法改正公布から2026年8月の建設業向け事例集公表に至る経緯は以下の通りである。

年月日 制度・政策の動き 建設業および荷主への主な適用内容 主管官庁・機関
2024年5月15日 改正法の公布 流通業務総合効率化法および貨物自動車運送事業法の改正法が成立公布。 国土交通省・経済産業省・農林水産省
2025年4月1日 努力義務の施行 すべての荷主・物流事業者に対し物流効率化の判断基準が適用開始。 国土交通省・関係省庁
2026年3月3日 先行4業種の事例集公開 製造業・卸売業・小売業・連鎖化事業向け中長期計画記載例を公表。 「物流効率化法」理解促進ポータルサイト
2026年4月1日 物流効率化法の全面施行 年間貨物量9万トン以上の荷主を特定事業者に指定。CLO選任等の義務化。 国土交通省・関係省庁
2026年8月28日 建設業向け事例集の公表 様式第3に基づく建設業編の記載見本集を公開。業界団体へ周知要請。 国土交通省

参考記事: 建設業の2024年問題とは?時間外労働上限規制のポイントと現場が取るべき対策を徹底解説

年間9万トン基準による特定第一種荷主と特定第二種荷主の区分

改正法において規制措置の対象となる「特定事業者(特定荷主)」の基準は、前年度において貨物自動車運送事業者を利用して輸送させた貨物重量の合計が年間9万トン以上であることと定められている。日本全体では上位約3,200社程度がこの特定荷主に該当すると推計されており、大手ゼネコンや準大手ゼネコンの多くがこの指定基準を満たすことになる。

建設業の実務における特定荷主の区分は、資材の調達や現場受け入れの形態によって以下の2つに大別される。

  • 特定第一種荷主(主に発荷主)
    • 生コンクリート、鉄筋、PC部材、仮設機材などの建設資材メーカーや加工場から運送事業者へ資材の輸送を発注し、現場へ送り出す役割を担う事業者。自社で資材調達・輸送契約を一元管理している建設業者も含まれる。
  • 特定第二種荷主(主に着荷主)
    • 施工現場で大量の建設資材や重機・機材を受け取る側の事業者。自らが直接運送契約を締結していない場合でも、現場に搬入される貨物重量の合計が基準を超える元請けゼネコンなどが該当する。

指定を受けた事業者は、役員クラスを責任者とする「物流統括管理者(CLO: Chief Logistics Officer)」の選任、中長期計画書の作成・提出、ならびに毎年度の取り組み実績を報告する「定期報告書」の提出が義務付けられる。初年度の中長期計画書の提出期日は2026年10月末日と設定されており、専用のオンラインフォーム経由で所管大臣宛てに提出を行う必要がある。

事例集(様式第3)が示す3つの主要評価軸

今回公開された建設業編の記載事例集では、中長期計画書の標準フォーマットである「様式第3」に記載すべき中核事項として、以下の3つの計画項目が設定されている。

  • 運転者一人当たりの一回の運送ごとの貨物重量の増加(積載率向上)に関する計画
    • 小口分散発注の見直し、近隣現場との資材共同配送、大型車への集約配送、資材パレット化による積載スペースの有効活用など。
  • 運転者の荷待ち時間の短縮に関する計画
    • 現場搬入バースの事前予約システムの導入、日ごとの搬入台数・時間帯の平準化、現場周辺での待機指示の禁止、待機車両情報の事前把握など。
  • 運転者の荷役等時間の短縮に関する計画
    • クレーンや揚重機の事前配置による積み降ろし作業の即時着手、現場荷下ろし作業員の配置によるドライバー負担軽減、プレカットやユニット化による荷役点数の削減など。

これらの項目について、第一種荷主および第二種荷主の実務特性に応じた具体的な数値目標(例:荷待ち時間を〇%削減、積載率を〇%改善など)と、3〜5年間で進める実施スケジュール、具体的な達成手段の記述例が明示されている。

参考記事: 建設業働き方改革加速化プログラムとは?適正工期・賃金引き上げ・現場DXを実現する3つの柱を解説

建設資材物流が直面する構造的課題と施策の背景

国土交通省が建設業に特化した事例集を作成・通知した背景には、建設現場特有の商慣習が物流機能の停滞を招いているという強い危機感がある。国土交通省の試算によれば、物流効率化などの抜本的な対策を講じなかった場合、営業用トラックの輸送能力は2024年度に約14%(4億トン相当)、2030年度には約34%(9億トン相当)が不足する可能性があるとされている。

ドライバー不足が急速に進行する中、建設業界は資材の安定調達を維持するためにも、自らの受け入れ環境を抜本的に見直さざるを得ない局面に突入している。

1運行あたり平均1時間34分に上る待機時間の実態

トラック輸送状況の実態調査において、全業種におけるトラック1運行あたりの荷待ち時間は平均1時間34分に達している。特に建設現場への資材納入においては、現場の敷地制約や揚重機の空き状況によって到着順の待機が常態化しやすく、2時間を超える待機が発生する事例も少なくない。

建設現場における物流の停滞は、主に以下の要因によって生じている。

  • 現場搬入ゲートやバースの物理的な狭小性と台数制限
  • 揚重機(タワークレーンやエレベーター)の利用権を巡る下請各社間の調整不足
  • 前工程の遅れに伴う資材受け入れの一時中断や時間変更
  • 「朝一番での納入」など特定時間帯への納品車両の集中

これらの要因は、運送事業者の稼働時間を著しく圧迫し、物流業界における時間外労働上限規制の遵守を困難にする直接的な引き金となってきた。

商慣習の改善と2027年度予算要求への連動

物流効率化に向けた行政の動きは、法規制の執行にとどまらず財政面での支援策とも一体で進められている。国土交通省は2027年度予算概算要求において、物流関係予算として前年度の8倍となる209億円を計上した。この要求額のうち61億円が「商慣習変革」に充てられており、荷待ち・荷役時間の削減に向けたデータ連携や予約システムの導入支援、業種横断の共同配送網の構築などが重点支援項目として位置付けられている。

建設業界においても、厚生労働省による商慣習是正キャンペーンなどと歩調を合わせ、発注者や運送事業者との契約・運用慣行を見直す動きが一段と強まっている。

参考記事: 厚労省が2026年8月に新PR動画公開、発注者との適正工期交渉を後押し

建設業界の主要プレイヤーに及ぶ実務への影響

物流効率化法に基づく特定荷主としての計画策定義務は、元請けゼネコンから施工現場の管理者、IT支援事業者まで、建設サプライチェーンに関わる各プレイヤーの実務に直接的な影響を与える。

ゼネコン(元請け):資材物流の管理責任が現場から経営直轄へ移行

大手・準大手ゼネコンにとって、中長期計画書の提出と毎年度の定期報告は、経営レベルでのガバナンスが問われる重大な責務となる。これまで資材の調達や搬入計画は、各作業所の所長や施工担当者に一任される傾向が強かった。しかし、年間9万トン以上の貨物を扱う特定事業者として指定されることで、会社全体としての輸送量や待機時間のモニタリング体制を構築することが必須となる。

選任が義務付けられる物流統括管理者(CLO)は、全社的な資材物流の最適化方針を策定し、支店や作業所を横断した改善指示を行わなければならない。中長期計画に記載した削減目標が達成できない場合や改善が見られない場合には、国からの指導・助言、さらには改善勧告や命令などの行政処分に発展する法的リスクを抱えることになる。

このため、調達部門、安全環境部門、工務部門が連携し、資材メーカーや一次下請け事業者との運送条件見直し、共同配送の枠組み構築、現場バース予約システムの標準化などを経営計画として推進する体制整備が進んでいる。

現場監督・施工管理者:搬入バース予約と荷下ろし作業の標準化

施工管理者が直面するのは、日々の工程管理と物流管理を完全に同期させる実務の定着である。従来は、当日の現場状況を見ながら電話や現場指示で資材トラックを誘導するケースも見られたが、中長期計画の実効性を担保するためには、こうした属人的な対応の排除が求められる。

現場監督は、着工前の施工計画段階において、日別の資材搬入計画や車両台数の上限設定を緻密にシミュレーションすることが標準業務となる。現場内に設けた搬入バースのタイムテーブルを作成し、資材ごとに納入時間帯を割り振る事前予約管理を徹底しなければならない。

また、トラックが現場に到着してから荷下ろしを完了して退場するまでの滞在時間を記録・集計し、計画値との乖離を把握することも求められる。揚重機の割り当て計画を事前に確定させてドライバーの荷待ち時間を極小化するとともに、現場詰所や下請け作業員との連携によってスムーズな玉掛け・荷下ろし作業を支援する体制づくりが日々の工程管理に組み込まれる。

BIM・施工管理SaaSベンダー:物流可視化ソリューションの導入需要拡大

特定荷主となった建設企業が中長期計画書や定期報告書を作成するためには、現場ごとのトラック待機時間や積載状況、入出荷実績に関する定量的なデータ収集が不可欠となる。この要件を背景に、BIMや施工管理プラットフォーム、バース予約管理システムを提供するSaaSベンダーの役割が急速に高まっている。

従来、施工管理アプリやBIMは現場内の図面共有や干渉チェック、施工プロセス管理を主用途として導入されてきた。しかし今後は、4D-BIM(時間軸を統合したBIM)と連携した資材搬入シミュレーションや、スマートフォンのGPSやETC通信を活用した資材車両の接近検知・バース予約機能とのデータ連携が有力な差別化要素となる。

手書きの受領証や現場監督の記憶に依存していた荷待ち・荷役時間を客観的に自動集計し、法律の提出様式に合わせたレポートとして出力できる機能を持つソリューションは、ゼネコンの法規制対応を支える必須のデジタルインフラとして需要が拡大している。

ConShiftの視点:現場依存の資材搬入からデータ駆動型サプライチェーンへの転換

国土交通省が建設業向けの中長期計画記載事例集を公表したことは、建設業界における資材調達が「現場ごとの慣習的対応」から「法令に基づく経営主導のサプライチェーン最適化」へと構造転換したことを決定づけている。

これまで建設業における資材運送は、請負代金の内訳や下請け契約の中に埋没し、現場ごとの裁量に委ねられてきた。しかし、物流効率化法の規制対象となったことで、ゼネコンは自らを製造業や流通業と同様の「巨大な物流ハブを運営する荷主」として再定義することを迫られている。特に年間9万トンという基準値は、主要ゼネコンの多くを直接の規制対象に巻き込むものであり、現場単位の部分最適を許容する余地はなくなっている。

今後、建設業のサプライチェーン最適化は以下の3つの段階を経て不可逆的に進展していくと考えられる。

第一に、デジタルバース予約の標準インフラ化である。都市部の大規模現場を中心に導入されてきた搬入予約システムは、中長期計画で必須となる荷待ち時間削減の客観的エビデンスを担保するため、中小規模の現場や地方の作業所へも急速に波及する。待機時間をデータとして証明できない現場は、運送事業者からの車両配車を拒否される実務上のリスクに直面するためである。

第二に、資材プレカット化とモジュール化による現場荷役の根源的削減である。現場内での荷下ろし・仕分け・加工の工程を減らすため、工場側でプレハブ化やユニット化を進め、トラック1台あたりの積載効率を高める設計・施工の一体化が進む。これはBIMデータを設計から物流・施工まで一気通貫で連動させる契機となる。

第三に、エリア単位での「建設資材共同配送」の本格稼働である。単独現場でのバース管理には限界があるため、近隣に複数の現場を抱えるゼネコン同士や、同一地域内の下請け業者がハブ拠点を中継し、資材を集約して現場へジャストインタイム配送する仕組みが実務化されていく。

法規制への形式的な書類対応にとどまらず、現場搬入管理のデータを蓄積・分析し、サプライチェーン全体の生産性向上へ転換できるかどうかが、持続可能な施工体制を維持できるゼネコンとそうでない企業の明確な分水嶺となる。

明日から意識すべき資材物流管理のアクション

物流効率化法に基づく中長期計画の策定と運用を円滑に進めるため、建設企業の経営層や現場責任者が明日から着手すべき実務対応を以下に示す。

  1. 年間取扱貨物量の精査と特定荷主該否の確定

自社が発注した資材輸送および施工現場で受け入れた資材輸送の年間貨物重量を集計し、特定荷主(9万トン以上)の基準に該当するかを正確に把握する。該当する場合は、物流統括管理者(CLO)の社内選任手続きを速やかに完了させる。

  1. 様式第3に基づく数値目標と施策スケジュールの策定

公開された事例集を参考に、自社の取扱品目(生コン、鉄筋、PC板、仮設材など)に応じた「積載率向上」「荷待ち時間短縮」「荷役時間短縮」の具体的な数値指標を設定する。2026年10月末のオンライン提出期限に向け、調達部門と施工部門が連携して実行可能な計画書を作成する。

  1. 施工現場における搬入管理のデジタル化と可視化の着手

全社一括または主要現場を対象に、トラックの搬入バース事前予約システムや待機時間記録ツールの導入を進める。手作業や現場判断に頼る資材受け入れを排し、運送事業者や下請け業者と共有可能な運行・バース管理体制を整備する。


出典: トラックニュース
出典: 国土交通省
出典: 経済産業省
出典: 「物流効率化法」理解促進ポータルサイト

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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