国土交通省は2026年9月17日付で、直轄工事において競争参加者の有無を事前確認した上で契約を結ぶ「参加者確認型随意契約方式」の全国統一運用ルールを各地方整備局などの発注部局へ通知した。従来の一般競争入札で1者応札が続いていた地域の道路巡回や除雪などの維持工事、高度な技術を要する機械設備・電気通信設備工事を対象とし、公募で他の応募者がいないことを確認した上で随意契約へ移行する。
改正品確法第21条に基づく「参加者確認型随契」全国展開の経緯と発注要件
これまで一部の地方整備局が会計法の解釈に基づき試行・準用してきた参加者確認型随意契約方式が、全国の直轄部局で統一ルールとして運用される体制が整った。本運用の根拠となるのは、2024年6月に成立・公布された改正公共工事品質確保促進法(品確法)第21条に新設された「競争が存在しないことの確認による方式」の規定である。
制度化に至るまでの時系列と背景
直轄工事における調達手続きは、原則として一般競争入札が基本とされてきた。しかし、地方部における施工企業の減少や特殊設備を扱う専門工事の担い手不足により、形式的な公告を行っても過去の受注者1者しか入札に参加しない事例が多発していた。
| 年月 | 出来事・制度の動き | 現場および発注実務への影響 |
|---|---|---|
| 2024年6月 | 改正品確法(第3次・担い手3法)公布・施行 | 第21条に「競争が存在しないことの確認による方式」が新設 |
| 2024年12月 | 品確法基本方針および入契法適正化指針の改定閣議決定 | 地域実情に応じた発注方式として参加者確認型随契の活用を明記 |
| 2026年5月 | 国土交通省が全国統一運用ルールの策定方針を決定 | 山間部の維持工事や特殊設備点検を想定した要件整理に着手 |
| 2026年9月17日 | 国土交通省が地方整備局等の全発注部局へ統一ルールを通知 | 一部地整での試行枠組みを解消し、全国共通の運用基準を即日適用 |
北陸、中部、近畿、九州などの各地方整備局において機械設備工事や維持工事を中心に個別運用されていた手続きが、法第21条の施行および入契法適正化指針の改定を経て、全国統一基準として明文化された形となる。
適用される2つの工事類型と随意契約への移行プロセス
発注部局への通知文書では、参加者確認型随意契約方式の対象として主に以下の2類型を例示している。
- 維持工事: 道路や河川インフラの巡視、日常的な維持管理、冬期の除雪作業など。緊急時の即応性や地域固有の地理条件から参加要件を広げても1者しか見込めず、過去の同一工事で1者応札が継続している案件。
- 専門工事: 機械設備や電気通信設備など、高度な技術や特殊な機材・プラントを必要とし、特定の1者以外に施工が著しく困難な案件。
これら以外の工事であっても、工事特性や地域の実態に応じて発注者の判断により柔軟に適用できる。発注手続きの流れは以下の通りである。
- 各地方整備局などに設置された会議体(技術審査会等)において、対象工事の特性を審査し、適用工事および契約候補となる受注予定者を選定する。
- 当該工事の施工希望者を募る公募手続きを実施し、仕様書や参加要件を開示する。
- 公募期間内に他の建設企業から応募がなかった場合、競争が存在しないことが確定したとして、選定済みの受注予定者と随意契約を締結する。
- 他の参加者から応募があった場合は、即座に一般競争入札の手続きへと移行する。
従来の入札手続きでは、実質的な競争者が存在しない場合でも公告期間や現場説明、入札・開札までの法定期間を厳格に消化する必要があった。本ルールの統一により、調達プロセスの形骸化を防ぎつつ、手続き期間の短縮が図られる。
参考記事: 公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)とは?2024年改正の要点と発注者・受注者の実務解説
発注行政・元請けゼネコン・専門工事業者に生じる実務の変化
参加者確認型随意契約方式の全国展開は、発注者側の事務処理だけでなく、受注者である施工企業の積算業務や人員配置の意思決定に直接的な影響を与える。
発注部局(行政・規制当局)における調達事務の圧縮と説明責任
発注機関である地方整備局や開発局では、1者応札が常態化していた案件の公告・審査事務が削減される。不調・不落に伴う再公告や仕様見直しの反復作業が解消され、出水期や降雪期前の確実な契約締結が可能となる。
一方で、随意契約へ移行する正当性を担保するため、局内の会議体における対象工事の選定理由や受注予定者の選定根拠に関する客観的な記録管理が求められる。公募手続きを経る設計となっているため、外部に対する公平性・透明性の説明責任は従来通り維持される。
参考記事: 入契法(公共工事入札契約適正化法)とは?基本構造や4つの柱、施工体制台帳の提出義務を徹底解説
地場ゼネコン(元請け)における積算コスト削減と体制確保の前倒し
地域のインフラ維持や除雪を担う地場ゼネコンにとって、受注可否が確定しないまま長期にわたって拘束されていた積算担当者や現場代理人の工数を大幅に削減できる。
これまでは、競合が存在しない地域であっても形式的な競争入札のために膨大な積算書類や入札書を作成・提出する必要があった。公募手続きで他者の参入がないことが確定すれば早期に契約締結へ進めるため、除雪機械のオペレーター確保や下請業者への事前発注、資材手配を前倒しで確定できるようになる。
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サブコン・設備系専門工事業者の保有技術評価と手戻り防止
河川水門・排水機場、トンネル換気設備、道路情報板などの専門工事を担う設備業者・サブコンにとっては、自社の特許工法や特殊機械の保有状況が契約選定段階で正当に評価される。
従来の競争入札では、技術力や特殊機材を持たない他社が低価格で応札し、施工段階で技術的トラブルや仕様変更が生じるリスクがあった。特定技術を持つ1者しか施工できない設備工事において本方式が全国展開されたことで、技術力を前提とした直接的な仕様協議および適正価格での契約締結が進みやすくなる。
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ConShiftの視点:形骸化した競争入札の廃止と維持管理パートナーへの移行
今回の全国統一ルール施行は、人口減少と担い手不足が進む日本国内において、従来の「建前としての競争入札」から「実態を前提とした協調的調達」へと契約行政が転換したことを示している。
「1者応札=競争不全」という固定観念の脱却
これまで公共調達においては、会計法上の原則に基づき、1者応札であっても一般競争入札の手続きを踏むことが厳格に義務付けられてきた。しかし、地方部ではインフラ維持を担える建設企業が物理的に1社しか存在しない地域が拡大している。
改正品確法第21条に基づき、公募により他者の参入意思がないことを確認した上で随意契約に切り替える本方式は、形式的な手続きにかかる受発注双方の行政コストと間接コストを排除する合理的な措置である。
都道府県・市区町村への波及と包括的民間委託の布石
本通知は国土交通省の直轄工事を対象としたものだが、同様の担い手不足に直面している都道府県や政令指定都市、市区町村などの地方自治体へも運用指針として波及していく見通しが強い。
特に地方自治体の道路・河川維持管理では、複数年の包括的民間委託や地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)の導入が進められている。本方式が全国的に定着すれば、複数年にわたる維持管理業務において、地域を守る実質的な担い手企業が発注者と早期に協議を行い、計画的な人員配置と設備投資を進める基盤が確立される。
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明日から自社の対応体制を確立するための実務ポイント
全国の直轄部局で参加者確認型随意契約の運用が始まったことを受け、維持工事や専門工事を手掛ける施工企業が直ちに着手すべき実務項目は以下の通りである。
- 直轄工事における過去の入札履歴の確認
自社が受注してきた維持管理工事や設備点検工事において、過去に1者応札が継続していた案件を抽出し、今回通知された2類型(維持工事・専門工事)の要件に合致するかどうかを整理する。
- 発注機関の公募スケジュールおよび仕様開示の監視
参加者確認型随意契約方式では、局内審査後に公募手続きが実施されるため、各地方整備局のポータルサイトや発注予定情報を定期的に確認し、公募期間を見落とさない監視体制を敷く。
- 特殊設備・有資格者の保有状況の棚卸しと可視化
機械設備や電気通信設備などの専門工事において、自社のみが対応可能な特殊機材、ライセンス、専任技術者の配置実績を証明できるよう、技術資料を最新情報へ更新しておく。
- 随意契約時の見積精度向上と協議記録の整備
随意契約へ移行した場合、発注者との仕様協議および予定価格算定に向けた見積根拠の提出が求められるため、資材価格や標準労務費の高騰を反映した内訳明細を迅速に提示できる体制を整える。
出典: 日刊建設工業新聞
出典: 建通新聞
出典: 建通新聞
出典: 建設通信新聞Digital
出典: e-Gov法令検索
出典: 国土交通省



