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法規制・制度 2026年10月7日

国土交通省、上下水道DXカタログを222件へ拡充|点検費の交付税措置も新設

国土交通省、上下水道DXカタログを222件へ拡充|点検費の交付税措置も新設

国土交通省は2026年9月30日、上下水道分野の維持管理や点検を効率化する「上下水道DX技術カタログ」に新たに52技術を追加公開しました。今回の拡充では実用段階の35技術と実証段階の17技術が加わり、カタログ全体の掲載数は計222件に達しています。

掲載件数222件に達した「上下水道DX技術カタログ」の改訂経緯と技術内訳

国土交通省は、上下水道インフラの老朽化と管理に精通した技術職員の減少に対応するため、民間企業が開発した先端技術の社会実装を目的として本カタログを運用しています。

2024年4月1日の水道法等改正施行により、水道整備・管理行政が厚生労働省から国土交通省へ移管され、上下水道一体のマネジメント体制が発足しました。これを受けて2025年3月に163技術で初公開されたカタログは、現場適用と実証の進展に伴い段階的に拡充されています。

年月 掲載件数 主な改訂内容・追加機能
2025年3月28日 163件 初版公開。点検・調査・運転管理等の基礎技術を体系化
2026年3月27日 189件 実証段階技術や活用補助金情報の追加、フリーワード検索機能の実装
2026年9月30日 222件 52技術(実用35件、実証17件)を追加。AI、ドローン、空洞探査等を拡充

カタログ改訂を後押しするインフラ老朽化と自治体の人員データ

管路更新の遅れと人員体制の縮小が、今回の技術選定とカタログ拡充の前提となっています。

  • 管路経年化と更新スピード: 水道管路の経年化率(法定耐用年数40年超)は23.6%に達している一方、年間の更新率は0.64%にとどまります。全管路を更新するには約150年を要する計算です。
  • 維持管理職員の推移: 水道事業の職員数はピーク時の7.5万人から4.7万人へ約37%減少し、下水道事業も4.7万人から2.7万人へ約43%減少しました。
  • 小規模事業体の実情: 給水人口1万人未満の事業体における技術系職員数は、水道で平均4人、下水道で平均2人まで体制が縮小しています。
  • DX導入の現状: AIやドローンなどのメンテナンスDXを導入済みの事業体は、2024年度時点で水道が34%、下水道が21%にとどまっています。

政府は「第1次国土強靭化実施中期計画」等に基づき、2027年度までに上下水道事業におけるDX技術の標準装備を掲げています。

参考記事: インフラ長寿命化計画とは?予防保全への転換と実務担当者が押さえるべき計画策定のポイント

自治体・専門工事業者・SaaSベンダーに及ぶ実務への影響

カタログへの技術追加と掲載件数の増加は、自治体の発注手続きから下請け・専門工事の施工手法、ソフトウェアの提案活動まで直接的な影響を与えます。

自治体(発注者):仕様書作成の標準化と特別交付税措置の適用

自治体の水道・下水道部局では、カタログ掲載技術を発注仕様書や特記仕様書に直接引用できるようになり、新技術採用に伴う技術審査や前例踏襲の負担が軽減されます。

総務省は2026年度から2027年度までの2年間、「上下水道DX技術カタログ」に掲載された技術を活用して委託する点検・調査経費に対し、一般会計負担分の50%(事業費の25%を上限)を特別交付税措置の対象とする財政支援を新設しました。財政基盤の弱い地方自治体であっても、カタログに掲載された工法を指定して点検業務を発注しやすくなっています。

サブコン・専門工事業者:調査・修繕業務における施工機器とノウハウの再編

管路調査や補修工事の実務を担う専門工事業者にとって、カタログ掲載技術の運用スキルは受注可否を分ける条件になります。

従来の高圧洗浄車と自走式TVカメラを別々に運用する手法から、カメラ一体型ノズルや非GPS環境対応ドローンを用いた手法への転換が進みつつあります。例えば、大成建設らが開発した360°カメラ搭載ドローンによる非立ち入り管路点検や、奥村組らが福島県いわき市で実証した洗浄・撮影の1工程化など、現地工数を半減させる工法への対応が現場に求められます。

参考記事: 奥村組、2026年8月にいわき市で下水管調査をワンストップ化した実証結果を発表

参考記事: 大成建設ら、最大100mの管路点検をドローンで非立ち入り3D化

ソフトウェアベンダー:画像診断AIや管理SaaSの市場浸透

管内カメラ画像や点群データを扱うSaaSベンダーにとっては、公共調達での採用基準を満たす根拠となります。

撮影動画からクラックや取付管口を自動検出するAIソフトウェア(「スマカン」など)や、3次元点群データをCIMと連動させる解析ツールは、単体利用だけでなくハードウェアとセットで提案されるケースが増えています。国土交通省のカタログに掲載されたことで、ベンダー側は自治体や元請ゼネコンに対する技術提案の検証コストを抑えることができます。

ConShiftの視点:特別交付税措置とカタログ掲載が促す維持管理の標準化

2026年度から始まった特別交付税措置(点検・調査委託費の一般会計負担分50%支援)の適用条件が「上下水道DX技術カタログ掲載技術の活用」に設定された点は、今後の維持管理市場の枠組みを決定づける要素です。

これまで新工法の導入は、自治体ごとの単独裁量や実証実験の枠組みに委ねられていましたが、財政支援とカタログ登録が連動したことで、発注側の選定基準が実質的にカタログ掲載技術へ一本化されます。これにより、カタログ外の独自工法を展開する事業者は、随意契約や総合評価落札方式での競争力を維持しにくくなります。

今後は、奥村組や大成建設が実証を進めたような「ハードウェア(カメラ・ドローン)+解析AI+帳票作成SaaS」がパッケージ化された技術群が、複数年契約を前提とした包括的民間委託の入札仕様に組み込まれていきます。技術単体の優劣だけでなく、管路全体のデータ連携と予防保全計画に直結するシステムを構築できる企業が、官民連携市場での受注優位性を確保することになります。

参考記事: 包括的民間委託とは?従来発注との違いや下水道事業での導入メリットを徹底解説

明日の現場・事業戦略で意識すべき実務対応

カタログ掲載件数が222件に拡充され、国の財政措置が具体化した状況において、施工会社や維持管理事業者が即座に確認すべき事項は以下の通りです。

  1. 自社保有技術および提携ツールのカタログ掲載状況の確認

自社で採用している点検カメラ、AI診断ソフト、空洞探査技術が「上下水道DX技術カタログ」の222件に含まれているかを確認してください。掲載されていないツールを用いている場合、発注元自治体が特別交付税措置を活用できないため、入札時の技術提案で不利に働く可能性があります。

  1. 実用段階(35技術)と実証段階(17技術)の区分に応じた提案準備

今回追加された52技術のうち、実用段階の技術は即座に通常発注の積算や特記仕様書に反映できます。一方、実証段階の技術については、新技術活用工事や実証フィールド事業としての提案枠組みを検討し、自治体の課題に応じた提案書への反映を進める必要があります。

  1. 現地オペレーションと解析ソフトウェアのパッケージ化の推進

従来の「管内撮影のみ」「洗浄のみ」という単一作業の受託から、画像取得・AIスクリーニング・CIM連携までを一括で請け負える協力会社間の連携網を整え、業務委託の包括化に対応できる現場体制を構築することが求められます。


出典: 環境新聞オンライン
出典: 国土交通省
出典: 総務省

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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