大成建設、ティアフォー、大成ロテックの3社は2026年10月14日、国土交通省の「令和8年度自動物流道路の社会実装に向けた実証実験」に採択されたと発表しました。本実証は2026年10月下旬から11月上旬にかけての8日間にわたり、国土技術政策総合研究所の実大トンネル実験施設や試験走路で実験用自動運転車両3台を用いて実施されます。
国総研の実大トンネル施設で行う実証実験の全容と検証体制
国土交通省が主導する自動物流道路(Autoflow Road)構想は、既存道路の地下空間や中央分離帯などに物流専用レーンを確保し、自動運転車両を用いて貨物を輸送する国家事業です。今回の実証では、トンネルなどの閉鎖空間における走行安定性と、道路インフラおよび車両側機器の簡素化を検証します。
実大トンネル実験施設と試験走路における走行検証項目
実証の舞台となるのは、茨城県つくば市の国土技術政策総合研究所(国総研)内に設置された実大トンネル実験施設および試験走路(東直線、南ループ)です。3台の実験用自動運転車両を投入し、以下の項目を多角的に検証します。
- 基本走行・隊列制御: 先行・追従走行、追従・停止、対面走行、並走、停止機器とのすれ違い
- 分岐・合流制御: レーンチェンジを伴う分流および合流挙動の安定性
- 異常・障害物対応: 走路上の落下物を想定した回避走行および追い越し動作、停止位置の正確性
- 走行空間(幅員)の検証: 標準幅員、中間幅員、最小幅員の3段階における離隔距離と車両挙動の測定
特に注目されるのがトンネル断面の幅員検証です。自動運転専用空間における最小幅員を割り出すことで、将来的なトンネル掘削断面積を縮小し、建設工事費の削減へとつなげる狙いがあります。
参画3社の役割分担とシステム連携
本実証は、ゼネコンの土木計測技術、自動運転ソフトウェア開発、道路舗装技術を融合させた共同体制で進められます。大成ロテックは大成建設の子会社であり、舗装施工と路面反射体の設置を一貫して担当します。
| 参画企業 | 主な担当領域 | 実証における具体的役割 |
|---|---|---|
| 大成建設 | 全体統括・計測検証 | 実証実験の計画・実施、自己位置推定支援技術の検証、データ分析・評価 |
| ティアフォー | 車両・自律走行制御 | 実験用自動運転車両の提供、Autoware基盤「Pilot.Auto」の走行設定とデータ分析 |
| 大成ロテック | 舗装・路側設備施工 | 反射体の設置計画・精密施工・計測、走路環境の整備支援 |
システムの中核を担うのは、オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware」をベースにティアフォーが開発した「Pilot.Auto」です。これに大成建設が開発した自己位置推定支援技術「T-Localizer」を組み合わせます。
トンネル内などのGNSS(全地球航法衛星システム)電波が届かない地下空間では、車両の自己位置推定が困難になります。本実証では、大成ロテックが施工した路側の反射体を車両側センサーが検知し、「T-Localizer」によって高精度に自車位置を補正します。この技術連携により、路側に多数の通信アンテナや高価な地上センサーを密配置することなく、安定した自動走行を維持できる構成の確立を目指します。
自動物流道路実証に向けた技術開発の経緯
大成建設とティアフォーは、数年にわたり自動運転分野での協業を積み重ねてきました。
| 年月 | 主な動き | 実施内容・検証の概要 |
|---|---|---|
| 2020年度 | 西新宿での自動運転実証 | 新宿副都心エリア環境改善委員会の一員として都市部走行実証に参画 |
| 2021年度 | ティアフォーとの技術連携開始 | インフラ協調型自動運転に向けた共同開発に着手 |
| 2023年度 | 資本提携の実施 | 大成建設がティアフォーへ出資を実行 |
| 2024年度 | 佐渡市でのT-Localizer実証 | 非GNSS環境下における自己位置推定支援技術の有効性を確認 |
| 2025年度 | 関電トンネル実証および国交省実証 | トンネル空間での走行検証に加え、国交省自動物流道路実証に初参加 |
| 2026年9月8日 | 令和8年度実証事業の採択公表 | 国交省が自動物流道路実証の採択グループ(計7者)を公表 |
| 2026年10月14日 | 実証計画の正式発表 | 大成建設、ティアフォー、大成ロテックが国総研での8日間の実験概要を公表 |
大成建設は2023年度にティアフォーへ出資し、ハードとソフトの両面から自律走行インフラの開発を進めてきました。2025年度の国交省実証実験に続く今回の取り組みは、単路部の基礎走行から、複数台によるすれ違いや合流、最小幅員の特定という実運用に近い要件定義へとフェーズが進んだことを示しています。
参考記事: 国交省、2026年度自動物流道路に6グループ採択|ゼネコン参画の要点
建設および物流インフラ関連業界への実務的影響
トンネル空間を前提とした自動物流道路の実証は、元請けゼネコンの設計・積算、道路管理者の基準策定、物流施設の開発計画に直接的な影響を及ぼします。
ゼネコン(元請け):土木構造物の最適化とソフト統合能力の要求
元請けゼネコンにとって、本実証の最大の焦点は「トンネル断面の縮小による建設コストの低減」です。従来の道路トンネルは、有人トラックの走行安全性や建築限界を考慮して大きな断面で掘削・覆工を行う必要がありました。
自動運転車両の走行軌跡が数センチ単位で制御可能になり、最小幅員が実証されれば、シールドトンネルの掘削外径や開削トンネルの掘削幅を大幅にスリム化できます。掘削土量の削減、覆工コンクリート量の圧縮、工期短縮が実現し、長大トンネル工事の積算基準そのものが書き換わります。
また、ゼネコンには構造物を築造するだけでなく、ティアフォーのようなテック企業と連携し、自己位置推定技術や管制システムを土木構造と統合するシステムインテグレーターとしての役割が求められます。
参考記事: 鹿島建設ら4社、成田空港で自動運転車両3台を11月実証|地上設備簡素化へ
行政・道路管理者:自動物流道路の幾何構造基準と設備仕様の策定
国土交通省や高速道路各社などのインフラ管理者にとって、本実証で得られる離隔距離やすれ違い時の挙動データは、新たな道路構造令や専用道路技術基準を策定するための設計根拠となります。
自動運転専用空間における車線幅員、路肩幅、非常時の待避所(バッファレーン)の幾何構造基準が具体化することで、建設計画の精度が向上します。また、路側にカメラやLiDAR、照明設備を連続配置するのではなく、安価な反射体と「T-Localizer」の組み合わせで走行精度が担保できれば、インフラ側の受変電設備や通信設備の数量を最小限に抑えられます。これは将来の幹線道路網への展開において、初期整備費と維持更新コストの抑制につながります。
発注者・デベロッパー:専用トンネル直結を見据えた物流拠点計画
幹線道路の自動物流インフラが具体化するにつれ、物流施設を開発する不動産デベロッパーや施主企業の立地戦略にも変化が生じます。
専用道路との接続口(インターフェース)となる物流結節点では、地下や専用高架から進入する無人搬送車両と、施設内の自動倉庫や垂直搬送機を直結させる設計が必要になります。従来の大型トラック待機バースを中心とした施設計画から、自動荷役機器と無人搬送車が滞留なく循環するコンパクトな荷役ヤード設計へとシフトしていきます。
参考記事: 大成建設、150kW走行中EV給電道路を開発|27年度に館山道実証へ
ConShiftの視点:地上インフラと車両側の「引き算」が左右する採算性
自動物流道路構想が社会実装に至るか否かの分岐点は、1キロメートルあたりの建設・維持管理コストをどこまで圧縮できるかにあります。
従来のインフラ協調型自動運転では、路側に多数の高性能センサーや通信アンテナを配置するアプローチが主流でした。しかし、数百キロメートルに及ぶ幹線ルートに精密電子機器を密配置する手法は、電源確保、風雨や粉塵による劣化対策、定期交換に伴う莫大な維持管理費用が発生し、事業採算性を圧迫します。
今回の実証で大成建設とティアフォーが試みるのは、インフラ側と車両側の徹底的な「引き算」です。路側設備を高精度な電子機器からシンプルな「反射体」に置き換え、車両側の「T-Localizer」と「Pilot.Auto」で位置推定を補完する構成は、地上側のライフサイクルコストを大幅に抑制します。
さらに、走行空間の最小幅員を割り出すことは、土木工事における最大のコスト要因であるトンネル掘削断面積の縮小に直結します。構造物の物理サイズを削り、路側設備を削るという2重の合理化を達成できるかが、2030年代半ばを目指す自動物流道路の実現性を左右します。
まとめ
国土交通省が推進する自動物流道路の実証実験において、大成建設、ティアフォー、大成ロテックの3社は、実大トンネル施設を用いた複数台走行と設備簡素化の検証に着手しました。
施工管理や土木設計に携わる技術者は、自動運転システムと道路構造物が一体化する「インフラ協調型」の施工基準がどのように形成されつつあるかを把握しておく必要があります。特に、非GNSS環境下での位置推定技術や、専用レーンの幅員設計値の動向は、将来の地下構造物・道路トンネル工事の標準仕様に直結するため、実験データの進展を注視することが求められます。
出典: 物流ニュース LNEWS
出典: ティアフォー(PR TIMES)



