- 概要:2025年度の大手50社受注高は前年度比+12.0%の21兆2,286億円と1992年度以来の水準に達し、手持ち工事月数は19.1か月と1985年度以降で最長を記録しました。2026年4〜8月累計では大手50社の民間受注が前年同期比-18.9%となる一方、公共は同+38.9%と伸長しています。
- 実務への影響:名目受注額が膨らむ一方で施工枠が先々まで埋まっているため、ゼネコン各社は自社の労務キャパシティを見極めた選別受注と、改正建設業法に沿った適切な工期・請負代金変更条項の確保が重要になります。
建設工事受注動態統計調査の最新結果:建設業界の現状を3つのポイントで
国土交通省が公表している「建設工事受注動態統計調査」のデータから、足元の受注状況を整理します。この統計は、建設業許可業者全体へ復元した「全体推計」と、主要ゼネコンの数値を合算した「大手50社調査」の2つに分かれています。
| 調査区分 | 期間 | 受注高 | 増減率(前年比・前年同月比) |
|---|---|---|---|
| 全体推計 総受注高 | 2025年度 | 126兆2,531億円 | -0.3% |
| 全体推計 総受注高 | 2026年8月 | 9兆9,578億円 | +8.6% |
| 大手50社 総計 | 2025年度 | 21兆2,286億円 | +12.0% |
| 大手50社 総計 | 2026年8月 | 1兆4,388億円 | -3.6% |
最新のデータから読み取れる要点は以下の3点です。
- 受注額は高い水準にある:大手50社の2025年度受注高(総計)は前年度比+12.0%の21兆2,286億円で、1992年度(22兆8,951億円)以来の高い水準です。
- 受注残(手持ち工事)が積み上がっている:大手50社の手持ち工事高は2025年度末に28兆7,557億円と1985年度以降で最大になりました。手持ち工事月数も19.1か月と1985年度以降で最も長くなっています。
- 2026年度に入り民間受注は前年度を下回り、公共は上回っている:2026年4〜8月累計の大手50社受注高では、民間等が前年同期比-18.9%(4兆9,290億円)となった一方、公共機関は同+38.9%(1兆4,690億円)でした(ただし前年同期の民間等は前年比+30.2%と高い水準でした)。
全体推計と大手50社調査では、対象範囲や集計方法が大きく異なります。それぞれの数字を分けて確認していきます。
全体推計:建設業者全体の受注高(2021〜2025年度)
建設工事受注動態統計調査の「全体推計」は、建設業許可業者全体を母集団として復元推計した総受注高です。推計方法が2021年4月分から改定されたため、2020年度以前の数値とは水準がつながりません。そのため、ここでは改定後の2021年度から2025年度までの5年間を比較します。
| 年度 | 総受注高 | 元請受注高 | うち公共機関から | うち民間等から | 下請受注高 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2021年度 | 107兆0,296億円 | 70兆4,497億円 | 21兆1,086億円 | 49兆3,411億円 | 36兆5,800億円 |
| 2022年度 | 116兆6,226億円 | 76兆6,970億円 | 22兆2,643億円 | 54兆4,328億円 | 39兆9,256億円 |
| 2023年度 | 108兆6,210億円 | 71兆5,528億円 | 21兆7,383億円 | 49兆8,145億円 | 37兆0,682億円 |
| 2024年度 | 126兆6,532億円 | 81兆9,885億円 | 23兆2,298億円 | 58兆7,587億円 | 44兆6,647億円 |
| 2025年度 | 126兆2,531億円 | 87兆3,854億円 | 24兆5,509億円 | 62兆8,345億円 | 38兆8,676億円 |
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元請受注高の増加と下請受注高の減少
2025年度の全体推計における総受注高は126兆2,531億円となり、前年度(126兆6,532億円)から0.3%減少しました。
内訳を見ると、元請・下請の違いによる動きが分かれています。元請受注高は前年度比+6.6%の87兆3,854億円でした。うち公共機関からは同+5.7%の24兆5,509億円、民間等からは同+6.9%の62兆8,345億円とともに増加しています。一方で、下請受注高は同-13.0%の38兆8,676億円へ減少しました。
なお、受注高は契約時点の名目値であり、建築費の上昇分を含みます。そのため、受注金額が増えたからといって、実際の工事量が同じ比率で増えたわけではありません。建築費の推移については、統計記事「建築費高騰の推移」で詳しく解説しています。また、受注は契約を結んだ時点の金額であり、実際の施工時期を示す着工(建築着工統計)や工事の進捗を示す出来高とは別の指標です。
大手50社:1985年度からの長期推移
大手50社調査は、主要50社の受注実績をそのまま合算した数値です(母集団への復元は行っていません)。1985年度からの長期的な傾向を把握できます(なお、大手50社調査は2015年4月に調査対象を一部変更しています)。
2025年度は21兆2,286億円、1992年度以来の水準
大手50社の受注高(総計)は、1985年度以降で見ると1990年度の26兆8,167億円が最も多く、2010年度の10兆0,685億円が最も少ない水準でした。
2025年度の総計は前年度比+12.0%の21兆2,286億円となり、1992年度(22兆8,951億円)以来の高い水準となりました。
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発注者別の内訳は次の通りです。
- 民間等:15兆5,113億円(前年度比+13.7%)で、1991年度(19兆4,196億円)以来の水準
- 公共機関:4兆4,272億円(前年度比+7.6%)で、1999年度(4兆7,514億円)以来の水準
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さらに細かい内訳を見ると、以下の構成になっています。
- 民間等の内訳:非製造業が12兆1,054億円(前年度比+19.5%)と増加した一方、製造業は3兆4,059億円(同-3.2%)でした。
- 公共機関の内訳:国の機関が2兆6,975億円(同-5.8%)となったのに対し、地方の機関は1兆7,298億円(同+38.4%)でした。
- 工事種別:建築が14兆7,214億円(同+12.5%)、土木が6兆5,072億円(同+10.8%)でした。
- 海外:7,390億円(現地法人分を除く)でした。
受注高10億円以上の国内大規模工事の動向
国内で受注した1件あたり10億円以上の「大規模工事」は、2025年度に2,776件・15兆9,849億円となりました。件数・金額ともに、比較可能な2008年度以降で最も多い実績です(件数が最も少なかったのは2009年度の1,701件、金額が最も少なかったのは2010年度の4兆6,217億円でした)。
2026年度の動き:民間からの受注が減り、公共からの受注が増える
2026年度に入ってからの受注動向を見ると、前年度とは異なる傾向が出ています。2026年4〜8月の累計データと月次の推移を確認します。
2026年4〜8月累計:民間減・公共増の数値
2026年4〜8月の累計受注高を前年同期と比べると、大手50社・全体推計の元請ともに民間が減少し、公共が増加しています。
- 大手50社調査(2026年4〜8月累計)
- 総計:6兆7,448億円(前年同期比 -12.3%)
- 民間等:4兆9,290億円(前年同期比 -18.9%)
- 公共機関:1兆4,690億円(前年同期比 +38.9%)
- 全体推計(2026年4〜8月累計)
- 総受注高:53兆5,016億円(前年同期比 +6.7%)
- 元請(民間等から):24兆3,739億円(前年同期比 -2.4%)
- 元請(公共機関から):9兆4,925億円(前年同期比 +3.3%)
- 下請受注高:19兆6,352億円(前年同期比 +23.1%)
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月次の推移を見ると、大手50社の民間等は2026年3月から8月(1兆1,072億円、前年同月比-10.6%)まで6か月連続で前年同月を下回りました。
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一方、大手50社の公共機関は2026年8月に2,747億円(前年同月比+46.3%)となりましたが、月ごとの差が大きく、4月は-25.0%、6月は+118.5%、7月は-5.4%となっており、毎月増えているわけではありません。なお、全体推計の2026年8月の総受注高は前年同月比+8.6%の9兆9,578億円でした。
2年前の同期と比べた場合の水準
足元の前年同期比で民間受注が減少している点を見る際は、前年度(2025年度)同期の受注水準が高かった前提を踏まえる必要があります。大手50社の民間等は、2025年4〜8月に前年同期比+30.2%(6兆0,774億円)と大きく伸びていました。
2年前の同期(2024年4〜8月)と比べると、以下のように民間も上回っています。
- 大手50社調査(2024年4〜8月比)
- 民間等:+5.6%(4兆6,675億円 → 4兆9,290億円)
- 公共機関:+20.1%(1兆2,230億円 → 1兆4,690億円)
- 全体推計(2024年4〜8月比)
- 元請(民間等から):+7.9%(22兆5,796億円 → 24兆3,739億円)
- 元請(公共機関から):+5.2%(9兆0,219億円 → 9兆4,925億円)
民間受注の動きに関しては、民間発注未達企業の68%がコスト増拒否で調達見直しへという調査結果もあるように、発注側の予算調整や計画見直しが影響している可能性があります。
手持ち工事高と手持ち工事月数:受注残は1985年度以降で最大
受注の積み上がりに伴い、受注したものの未施工である「手持ち工事高」と、それを消化する期間を示す「手持ち工事月数」が高水準になっています。
手持ち工事月数とは、手持ち工事高を直近12か月の施工高の月平均で割った値で、現在の施工ペースを維持した場合に手持ち工事を終えるまでに何か月かかるかを示します(国土交通省の公表値ではなく、手持ち工事高と施工高から計算した値です)。
| 期間 | 大手50社 手持ち工事高 | 大手50社 施工高 | 大手50社 手持ち工事月数 |
|---|---|---|---|
| 2024年度末 | 24兆8,241億円 | 17兆4,563億円 | 17.1か月 |
| 2025年度末 | 28兆7,557億円 | 18兆0,366億円 | 19.1か月 |
| 2026年7月 | 28兆9,133億円 | ― | 19.1か月 |
大手50社の手持ち工事高は、2025年度末(2026年3月末)に28兆7,557億円となり、1985年度以降で最大となりました(それまでの最大は1991年度の26兆5,314億円)。2026年7月時点でも28兆9,133億円となっています。
これに伴い、手持ち工事月数は2025年度末に19.1か月となり、1985年度以降で最も長くなりました(それまでの最長は2021年度の17.4か月。1985〜2019年度は10.5〜15.3か月でした)。最新の2026年7月時点も19.1か月です。
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施工高の伸びを上回る手持ち工事高の増加
手持ち工事月数が延びているのは、施工活動が滞っているからではありません。大手50社の施工高は、2020年度の13兆5,562億円から2025年度には18兆0,366億円(前年度比+3.3%)まで増えており、1997年度以来の高い水準にあります。
しかし、2025年度末の手持ち工事高は前年度末(24兆8,241億円)から15.8%増えました。手持ち工事高の伸び(+15.8%)が施工高の伸び(+3.3%)を大きく上回ったため、手持ち工事月数が長期化しています。
手持ち工事月数が19か月を超えている水準は、大手各社の施工予定が先々まで埋まっている状況と整合的です。労務制約や稼働日数の調整が求められる中で、各社がこなせる工事量を見極めながら受注活動を行っている可能性があります。
調査の見方:全体推計と大手50社の違い
建設工事受注動態統計調査のデータを見る際は、「全体推計」と「大手50社調査」の性格の違いを整理しておく必要があります。
| 項目 | 全体推計 | 大手50社調査 |
|---|---|---|
| 対象企業 | 建設業許可業者全体から抽出 | 主要大手50社(2015年4月に一部対象を変更) |
| 集計方法 | 標本調査をもとに母集団へ復元推計 | 50社の提出数値をそのまま単純合算 |
| 比較可能期間 | 2021年度〜(推計方法改定のため) | 1985年度〜 |
| 公表時期 | 調査対象月の翌々月中旬 | 調査対象月の翌月末(施工高等は翌々月) |
| 把握できる内訳 | 元請(公共・民間)、下請 | 公共(国・地方)、民間(製造・非製造)、建築・土木、大規模工事、海外等 |
全体推計は中小業者を含む建設業全体の傾向を把握できますが、2021年4月に推計方法が改定されたため、2020年度以前の数値とは比較できません。
大手50社調査は長期の推移を追跡できる一方、あくまで大手50社の合算値であり、建設業界全体の受注額を示すものではありません。また、施工高と手持ち工事高は受注高より1か月遅れて公表されます。
なお、本統計では2013年4月分から2022年3月分について、集計上の不適切な処理を直した遡及改定値が2022年に公表されています。
今後のウォッチ指標とまとめ
建設会社の経営層や現場責任者が、今後の事業方針を検討する際に確認したい指標は以下の通りです。
| 指標名 | 確認元 | 公表頻度 |
|---|---|---|
| 大手50社 受注高(民間等・公共機関) | 国土交通省「建設工事受注動態統計調査」 | 毎月(翌月末) |
| 大手50社 手持ち工事月数 | 同調査(手持ち工事高・施工高より算出) | 毎月(翌々月) |
| 全体推計 受注高(元請・下請) | 国土交通省「建設工事受注動態統計調査」 | 毎月(翌々月中旬) |
| 建築着工統計調査(床面積・工事費予定額) | 国土交通省 | 毎月(翌月末) |
| 建設工事費デフレーター | 国土交通省 | 毎月(翌々月) |
今回の要点
今回の調査結果の要点は以下の通りです。
- 受注水準:2025年度の大手50社受注高は前年度比+12.0%の21兆2,286億円で、1992年度以来の水準でした。全体推計の総受注高は同-0.3%の126兆2,531億円でした。
- 受注残:大手50社の手持ち工事高は2025年度末に28兆7,557億円、手持ち工事月数は19.1か月となり、1985年度以降で最大・最長となりました(2026年7月も19.1か月)。
- 2026年度の動き:2026年4〜8月累計の大手50社は、民間等が前年同期比-18.9%となった一方、公共機関は同+38.9%でした(ただし民間等は2年前同期比では+5.6%です)。
今後の実務で押さえるべき点
手持ち工事が積み上がり施工枠に限りがある状況では、無理な受注を避け、消化能力に応じた管理が求められます。
- 施工キャパシティに応じた選別受注
手持ち工事月数が19か月を超える状況では、自社の現場技術者の配置計画や協力会社の稼働状況を把握し、採算や工期が見合わない工事を避ける判断が重要になります。 - 契約実務の見直し
改正建設業法を踏まえ、資材価格の変動リスクに応じた請負代金の変更条項や適正工期の確保を、あらかじめ契約条件に盛り込む対応が目安になります。 - 無理のない工程計画の策定
現場の実稼働日数をもとに余裕のある工程を組み、突発的な人員不足や工期遅延を防ぐ体制を整えることが実務上の対策となります。
出典: 国土交通省「建設工事受注動態統計調査」 / 国土交通省「建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)」 / 統計最終更新: 2026年8月
よくある質問(FAQ)
Q. 大手50社調査と全体推計は何が違いますか?
A. 全体推計は建設業許可業者全体を母集団として復元した推計値(2021年度以降)で、下請受注も含みます。大手50社調査は主要ゼネコン50社の数値をそのまま合算したもので、1985年度からの長期推移を比較できます。
Q. 手持ち工事月数19.1か月とはどのような状態ですか?
A. 手持ち工事高を直近1年間の月平均施工高で割った値で、現在のペースで施工した場合に未消化工事を終えるまでに約19.1か月かかる計算です。1985年度以降で最も長い水準です。
Q. 2026年度に入って民間受注が減っているのはなぜですか?
A. 比較対象の前年度同期(2025年4〜8月)は、大手50社の民間受注がその前年同期比+30.2%と高い水準でした。2年前(2024年同期)と比べると+5.6%上回っていますが、資材や人件費の高騰による発注側の予算見直しが影響している可能性があります。