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Home > BIM/CIM> 清水建設、FEM解析モデル作成を約3日に短縮し耐震検証を迅速化
BIM/CIM 2026年9月14日

清水建設、FEM解析モデル作成を約3日に短縮し耐震検証を迅速化

清水建設、FEM解析モデル作成を約3日に短縮し耐震検証を迅速化

清水建設は2026年7月1日、建物のBIMデータから高精度な3次元FEM(有限要素法)解析モデルを自動生成する「BIM-FEM連携システム」を開発したと発表した。
本システムはBIMに含まれる部材形状や材料強度、配筋情報を自動抽出し、従来は手作業で1カ月以上を要していた解析モデルの構築期間を約3日へと短縮する。

清水建設「BIM-FEM連携システム」の技術的要点と開発背景

地震大国である日本において、激甚化する自然災害リスクへの対応は建物の資産価値や操業継続性に直結する経営課題となっている。特に原子力建屋や重要インフラ、大規模生産施設などの設計では、地震動に対する建物の力学的挙動(応力分布や部材の変形、微細なひび割れなど)を網羅的に検証できる3次元FEM解析が不可欠とされてきた。

しかし、高度な解析精度を誇る一方で、その準備工程には膨大な手作業が介在していた。構造設計者は完成した2次元図面やBIMモデルを目視で確認しながら、解析専用ソフトウェア上に節点(ノード)や要素(エレメント)を手動で配置し、材料物性やメッシュ分割の境界条件を再定義する必要があったためである。

手作業の再入力を排除したデータ変換アルゴリズム

清水建設が開発した「BIM-FEM連携システム」は、BIMデータ内に格納されている3次元幾何情報と属性情報を直接解析し、構造計算用の3次元メッシュへと一元的に変換する処理基盤である。

従来の手作業プロセスでは、部材寸法の読み間違いやメッシュ境界の不整合といったヒューマンエラーが発生しやすく、入力後の整合性チェックにも数週間単位の工数が費やされていた。新システムでは、BIMオブジェクトが保持する幾何データと力学パラメータをダイレクトに紐付けることで、作業工数を従来の約10分の1に圧縮している。

評価項目 従来の手作業による作成手法 BIM-FEM連携システム
モデル作成期間 1カ月以上 約3日程度(工数を約10分の1に短縮)
入力方式 図面・BIMを見ながら解析ソフトへ手動入力 BIMデータ(形状・物性・配筋)から自動抽出
設計変更への対応 変更部位に応じたモデルの手動再構築(数週間) BIMデータの更新と連動して即座に再解析を実行
主な適用対象 原子力建屋などの極めて限定的な特殊重要施設 重要施設に加え、高度なBCPが求められる一般生産施設・オフィス

BIM属性情報の網羅的抽出による高精度シミュレーション

本システムが自動で読み込み、解析モデルへと反映するパラメータは多岐にわたる。単なる外形形状のメッシュ化にとどまらず、非線形解析に必要な内部構造情報を完全に連動させている点が特徴だ。

  • 部材形状および空間幾何配置: 柱、大梁、小梁、耐力壁、スラブの立体的な取り合い情報
  • 材料物性値: コンクリートの設計基準強度やヤング係数、鋼材規格、密度パラメータ
  • 断面性能・内部配筋仕様: 構造部材内部の主筋・帯筋・あばら筋の配筋ピッチ、鉄筋径、かぶり厚さ

これらの詳細な仕様が自動的に抽出され、大規模な非線形時刻歴応答解析が可能な3次元FEMメッシュへと瞬時に落とし込まれる。これにより、地震時に建物各部に生じる最大応答加速度の層分布や、コンクリート内部のひび割れ歪み分布を部材単位で精緻に割り出すことが可能となった。

制度改正と業界のデジタル化動向

国内の建築分野では、デジタルモデルを活用した業務プロセスの標準化が制度面からも進展している。国土交通省は2026年4月1日より、建築確認手続きにおいてBIMデータから出力された図書を活用する「BIM図面審査」の運用を任意利用方式で開始した。さらに2029年春には、IFCデータなどを活用した「BIMデータ審査」への移行が計画されている。

国土交通省の「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査」(2025年1月公表)によると、国内の建築関連団体会員におけるBIM導入率は58.7%に達した。しかし、内訳を見ると総合設計事務所の導入率が80.0%に達する一方、総合建設業は48.6%にとどまる。未導入企業の理由としては「従来のCADで業務が成り立っている」(73.7%)や「発注者からの要求がない」(68.7%)が上位を占めている。

清水建設の今回の取り組みは、単なる作図・申請の合理化にとどまりがちであったBIMの活用領域を、高度な工学的シミュレーションや防災DXへと拡張する動きと軌を一にしている。

参考記事: 清水建設、FEM解析モデル生成を3日に短縮!設計変更の即時反映を実現

参考記事: BIM確認申請とは?2026年運用の図面審査と2029年モデル審査のロードマップを解説

建設業界の主要プレイヤーに及ぼす波及効果

BIMデータから高精度FEM解析モデルを約3日で生成できる基盤の確立は、ゼネコンの設計・施工サイクルだけでなく、発注者のリスクマネジメントや設計事務所の業務構造にも直接的な影響を与える。

ゼネコン(元請け):フロントローディングの深化と受注提案力の差別化

元請けゼネコンにとって、設計初期段階における構造安全性の検証スピードは、受注競争力を左右する重要なファクターである。従来のワークフローでは、意匠設計や架構計画の変更が入るたびに解析モデルの再構築に1カ月を要していたため、概略的な略算モデルで検討を進め、実施設計の後半で手戻りが発生するリスクを抱えていた。

解析モデルの作成が約3日に短縮されることで、基本設計の段階から複数パターンの架構案に対して実動レベルの耐震・損傷シミュレーションを実行できるようになる。これにより、設計の早い段階で問題点を洗い出して対策を講じる「フロントローディング」が実効性を持つ。

さらに、施工段階での部材変更や開口補強の検討が生じた際にも、現場の最新BIMデータからシームレスにFEMモデルを生成して構造安全性を再確認できるため、手戻り工事の削減や工期遅延リスクの抑制に直結する。

発注者・デベロッパー(施主):BCP意思決定の迅速化と資産価値の可視化

施主や施設管理部門にとっては、被災時の事業継続リスクを具体的な数値とビジュアルで迅速に把握できるメリットが大きい。データセンターや先端半導体工場、物流中枢拠点などでは、震災による数日間の操業停止が巨額の営業損失をもたらす。

従来の概略応答解析では「建物が倒壊するか否か」といった大枠の評価にとどまることが多かったが、詳細な3次元FEM解析を用いれば「どのフロアのどの柱・壁にひび割れが集中し、操業再開までに何日を要するか」といった復旧シナリオまでシミュレーション可能となる。

設計変更の内容が約3日で解析結果に反映されるため、耐震ダンパーの増設や部材強度の見直しに伴う費用対効果をスピーディーに天秤にかけ、最適な仕様決定を下す環境が整う。

構造設計者:単純入力作業からの解放とエンジニアリング業務への集中

構造設計事務所やゼネコンの設計部門において、技術者の作業環境は劇的に改善される。これまで構造設計者の稼働時間の多くは、BIMや意匠図面から寸法や配筋仕様を拾い出し、解析ソフトのグリッドに合わせて手作業で数値を打ち込む「転記作業」に奪われていた。

モデル生成の自動化により、設計者は単純なデータ入力作業から解放され、出力された応力集中箇所のメカニズム分析や、より合理的な配筋パターンの模索といった、本来のエンジニアリング業務に注力できるようになる。限られた設計期間の中で検討できる構造バリエーションの試行回数が飛躍的に増加するため、構造物全体の安全性と経済性の両立を追求しやすくなる。

参考記事: BIM/CIMとは?原則義務化の運用ルールと実務での導入メリット・導入ステップを解説

ConShiftの視点(独自考察)

本件が建設業界に投げかける本質的な示唆は、「BIMデータの役割が、図面間の整合チェックツールから、構造力学と事業継続性を自律的にシミュレーションするデジタルインフラへ進化を遂げた点」にある。

これまで建設DXの文脈で語られてきたBIMの導入効果は、3次元可視化による干渉チェックや数量拾い出し、確認申請の効率化といった「作図・合意形成プロセスの省力化」が中心であった。国交省の実態調査で総合建設業の導入率が48.6%にとどまり、「CADで事足りる」という回答が7割を超える背景には、BIMを導入しても設計・施工の図面作成コストを相殺できるほどの直接的な付加価値を見出せていなかった実情がある。

清水建設の「BIM-FEM連携システム」は、この投資対効果の力学を変える技術だ。BIMに部材強度や詳細配筋といった属性情報を正しく持たせること自体が、1カ月を要していた高度FEM解析を3日で完了させるトリガーとなる。つまり、データ入力の手間が「高度な耐震シミュレーションの即時獲得」という明確な工学的リターンに直結する設計がなされている。

さらに注目すべきは、清水建設が掲げる「デジタルツイン」へのロードマップである。建屋の竣工後、構造ヘルスモニタリング用の加速度センサーや歪みゲージの測定データと、本システムで構築したFEMモデルをリアルタイムに連動させることで、地震発生直後に構造物の内部損傷状態を可視化し、安全点検なしで操業再開の可否を自動判定する運用が現実味を帯びる。

暴風や津波荷重への解析拡張も含め、BIMデータを核とした「リアルタイム防災プラットフォーム」を構築できるゼネコンが、今後の重要施設開発における元請け受注競争をリードしていく構図が鮮明になりつつある。

まとめ

清水建設による「BIM-FEM連携システム」の開発は、構造解析モデルの構築期間を1カ月以上から約3日へと短縮し、高度な耐震シミュレーションを日常的な設計・検証プロセスに組み込む技術的ブレークスルーを示した。BIM図面審査の運用開始など業界全体の制度改革が進む中、施工管理や設計実務に関わる関係者が明日から意識すべきアクションは以下の通りである。

  1. 設計初期段階における構造検討プロセスの見直し

解析モデル構築の短縮を前提とし、基本設計段階から複数パターンの架構案をシミュレーション比較するフロントローディング型の業務フローを検討する。

  1. BIM属性情報入力ルールの標準化

部材形状だけでなく、材料規格や配筋情報などの属性パラメータを設計初期から正確に入力・管理できるモデリングルールを社内で整備する。

  1. 施主のBCP要求を捉えた付加価値提案の構築

単なる法令基準の遵守にとどまらず、被災後の損傷予測や復旧期間の試算を盛り込んだ構造安全性の提案手法を確立する。


出典: BUILT
出典: 清水建設株式会社 公式ニュースリリース
出典: 国土交通省 建築BIM推進会議

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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