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Home > BIM/CIM> 清水建設、20億円現場を常駐2人で運営へ|Forma活用AXで定常業務半減
BIM/CIM 2026年9月18日

清水建設、20億円現場を常駐2人で運営へ|Forma活用AXで定常業務半減

清水建設、20億円現場を常駐2人で運営へ|Forma活用AXで定常業務半減

清水建設は2026年7月22日、通常5名で担当する20億円規模の建築現場を常駐2名で運営する「20億、2人」体制の実現に向けたDX・AX(AI Transformation)戦略を発表した。Autodesk Formaを共通データ環境(CDE)の基盤に位置付け、設計・施工・見積もりに伴う定常業務を2030年までに50%削減することで、技術者不足と施工管理者の業務過多を直接解消する運用体制の構築を進めている。

清水建設が打ち出す「20億、2人」体制とAX構想の骨子

清水建設が掲げる構想は、建築工事のボリュームゾーンである20億円前後の現場において、元請け技術者の常駐人数を従来の5名から2名へ縮小させる取り組みである。単一業務のデジタル化にとどまる局所的な改善ではなく、業務基盤の共通化と施工プロセスの自動化を2段階で進める計画となっている。

2段階で進めるプラットフォーム戦略と自律化

業務変革の第1段階では、現場ごとに分散していた管理業務のうち、集約可能な作業を支店や本社へ集約・専門化するプラットフォーム戦略を展開している。この基盤として活用されているのが、オートデスクのクラウド型共通データ環境「Autodesk Forma(以下、Forma)」内の施工管理機能「Forma Build」である。すでに全プロジェクトの約8割でFormaが基盤として適用されており、図面検討などの特定業務を扱う部署では適用率がほぼ100%に達している。

第2段階では、Forma上に集約された設計・施工データをCPUやAIに処理させ、業務プロセスの自動化を図る「AX」へ移行する。構造躯体モデルからの鉄筋自動生成や、AIによる鉄筋納まりの自動判定といったアルゴリズムを実務へ組み込み、現場監督の業務をAIエージェントが代行する体制を目指している。

変革ステップ 実施内容 主な基盤・技術 到達目標
第1段階:集約化 現場業務の支店・本社移管、遠隔共同作業環境の構築 Autodesk Forma(Forma Build) 現場常駐業務の切り離し、基盤適用率100%
第2段階:自律化(AX) 蓄積データに基づくAI施工管理、製造連携、AIエージェント化 マルチモーダルAI、Autodesk Informed Design 2030年までに定常業務50%削減、常駐2人体制

構造化データと「現場の言葉」を紐付けるデータ蓄積

AXを実現するための技術的特徴は、BIMなどの幾何学的な「構造化データ」に対し、現場の議事録や指摘事項といった非構造化の「言葉」を関連付けて保存する点にある。

AIに実務判断を学習させる際、専門用語を単一のルールで統一しすぎると、現場ごとの多様な言い回しや例外的な表現に対応できなくなるリスクが生じる。清水建設では、表現のばらつきを許容したまま、その発言が「BIMモデルのどの部材・どの変更プロセスに対して行われたのか」という文脈情報をForma上で紐付けて蓄積している。

国際標準フォーマットであるIFC(オープンBIM)は特定の断面情報を切り出す性質を持つため、変更履歴や設計変更に至った議論のプロセスを追跡するには外部の仕組みが必要となる。Formaをハブとして設計変更の履歴と対話データを一元化することで、AIが実施工の判断文脈を直接学習できる環境を構築している。

参考記事: BIM/CIMとは?原則義務化の運用ルールと実務での導入メリット・導入ステップを解説

逼迫する工事消化能力と案件構造の実態

清水建設が定常業務の半減と現場常駐者数の削減を進める背景には、国内の建設需要と施工リソースの乖離がある。

拡大する投資額と減少する技能者・着工面積

国内の建設投資見通しは、2010年度の約42兆円から増加傾向にあり、2024年度見通しで約73.2兆円、2025年度見通しで約75.4兆円規模に推移している。一方で、国内の建築着工床面積は過去20年間で約1.8億平方メートルから約1億平方メートルへと縮小し、建設技能者数も約100万人減少した。

総務省の労働力調査によると、2024年平均の建設業就業者数は477万人であり、1997年のピーク時(685万人)から約30.4%減少している。さらに就業者の36.7%を55歳以上が占める一方、29歳以下は11.7%にとどまり、高齢技術者の大量離職が進んでいる。

2024年4月には改正労働基準法に基づく時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間、特別条項でも年720時間以内)が建設業へ適用された。品質要求の高度化や安全基準の厳格化も重なり、管理職や技術者が従前と同じ人数でこなせる施工量は低下している。

項目 過去(ピーク・約20年前) 現在(2024〜2026年) 変化の要因・現場への影響
国内建設投資額 約42兆円(2010年度) 約75.4兆円(2025年度見通し) 再開発・インフラ更新需要の増大
建築着工床面積 約1.8億平方メートル 約1億平方メートル 案件あたりの工事密度・単価の上昇
建設業就業者数 685万人(1997年) 477万人(2024年) 若年層不足(11.7%)と高齢化(55歳以上36.7%)
清水建設の消化能力 過去水準を維持 2029年度に工事量が消化能力を超過試算 1現場あたりの管理工数圧縮が不可避

10億〜50億円規模の現場に集中する工数負担

清水建設の受注構造において、過去5年間の国内建築案件で請負金額10億〜50億円の工事は全プロジェクトの約20%を占め、件数ベースで最も大きな割合を持つ。同社の試算では、2026年度の工事消化能力を基準とした場合、対策を講じなければ2029年度には工事量が消化能力を上回る見通しとなっている。

100億円を超える大規模プロジェクトでは専任の管理スタッフや専門部署を配置しやすいが、20億円規模の案件では現場監督が安全・品質・工程・原価管理から協力会社との調整まで広範な実務を直接抱え込みやすい。通常5名で運用している20億円規模の現場を2名体制へ移行できれば、浮いた管理人員を他現場へ再配置し、企業全体の工事消化能力を維持できる。

参考記事: 【週間サマリー】08/24〜08/31|「現場依存と属人性の解体」が導く自律施工と組織的ガバナンスの確立

業務50%削減を支える自動化技術とサプライチェーン連携

現場常駐人員の削減は、施工管理業務自体の自動化と、設計・製造プロセスとの直結によって実現される。

鉄筋モデリングと納まり判定の自動化

清水建設は、構造躯体モデルから配筋ルールに基づいて鉄筋モデルを自動生成するシステムを自社開発し、実案件での本格運用を開始している。従来は構造図をもとにモデラーや現場技術者が手作業で配筋を入力していたが、ロジックに基づく自動計算によってCPU上で即座に3次元モデル化される。

さらに、生成された鉄筋モデルの干渉や納まりの不具合を検知するAI判定ツールを導入している。50年以上の実務経験を持つ熟練職人の知見を学習データとして組み込み、「この納まりではコンクリートの充填性が悪化する」「この配筋ピッチでは重ね継手が干渉する」といった判断基準をアルゴリズム化した。現在はAIが問題を検出・指摘する段階だが、今後は修正案の自動生成やBIMモデル自体の自律修正まで機能を拡張する計画である。

参考記事: 清水建設、FEM解析モデル生成を3日に短縮!設計変更の即時反映を実現

東芝エレベータとの製造連携実証(Informed Design)

現場の調整業務を削減する施策として、清水建設は取引パートナーである東芝エレベータとともに「Autodesk Informed Design(IND)」を活用した実証実験を実施している。

従来のエレベーター工事では、メーカー側が工場用の製造図面(バラ図・加工図)とは別にゼネコン提出用の製作図や確認用3Dモデルを作成していた。現場監督は意匠図や構造図と照合しながら開口寸法や鉄骨梁の取り合いを手作業で確認・指示しており、モデルの二重作成や確認作業に多くの工数が割かれていた。

本実証では、東芝エレベータが「Autodesk Inventor」で保持する詳細な製造CADデータと、清水建設が「Autodesk Revit」で作成する施工BIMデータをクラウド上で直接連携させた。ゼネコン側が必要とするのは機械内部の構造ではなく、シャフト寸法、出入口枠、鉄骨接合部の位置関係である。必要なデータ粒度を保ったままRevit上で寸法を修正すると、その変更が製造側のCADデータへ即座に反映される。

施工現場で発生する部材干渉の約95%はオペレーター間の作業で解決可能と試算されており、製造データと施工モデルを直接つなぐことで、元請けの現場監督が介在する図面調整作業の大幅な削減が可能となる。完成データを受け渡すだけでなく、製造途中の段階(Work in progress)からデータを共有する体制へ移行している。

Tandemを活用した竣工後の維持管理AI連携

施工段階で統合されたデータは、建物の竣工後における維持管理業務へ引き継がれる。清水建設はクラウド型デジタルツイン基盤「Autodesk Tandem」を活用し、BIMデータとファシリティマネジメント(CAFM)の運用データを連動させる実証を進めている。

BIMから属性値をCSVなどで書き出して別システムへ移管すると、部材同士の接続関係や空間上の位置情報が失われる。Tandemを介して運用データをモデルと直接リンクさせることで、「どの系統の配管か」「外壁に面した部材か」といった空間条件を保持したまま設備稼働データを取得できる。これにより、異常値が発生した際に建物の環境条件を加味したAI原因分析が可能となり、竣工後の点検・修繕計画の策定業務を効率化する。

業務区分 従来の運用フロー AX導入後の運用フロー
鉄筋納まり検討 施工図をもとに現場監督が目視確認、手動で修正指示 構造モデルから自動配筋、熟練工知見AIが干渉を自動判定
建材・設備調整 メーカーが提出した製作図・確認モデルを現場が個別に検図 Informed Designにより製造CADとBIMを直結、変更を即時反映
干渉チェック対応 ゼネコン監督員が数十〜数百件の干渉箇所を仲介・調整 95%の干渉をオペレーター・メーカー間で直接解決
維持管理引き継ぎ 竣工図(紙・PDF)や別途作成した台帳を手入力で登録 Autodesk Tandemで施工BIMとCAFM運用データを常時リンク

自社現場へ展開するためのデータ基盤と運用の要件

元請け技術者の省人化とAI活用を現場へ定着させるためには、ツールの導入だけでなく、データ構造の統一と人間の役割の再定義が求められる。

ポイントソリューション乱立の回避とCDEの確立

施工現場のデジタル化において生じやすい失敗パターンが、写真管理、工程管理、チャット、図面閲覧などを用途ごとに異なる単体アプリ(ポイントソリューション)で運用することである。個別のツールは使い勝手が優れていても、データが各サービスのサーバー内に閉じ込められ、最終的な帳票を紙やPDFで出力する運用が残ると、AIが学習・処理するための連続したデータパイプラインが断絶する。

清水建設の三戸景資氏が「ポイントソリューションは紙でのアウトプットを前提にしており、データで仕事をしていく環境を阻害している」と指摘するように、AXの推進にはすべての業務ログ、モデルデータ、指摘事項が1箇所に集まる共通データ環境(CDE)の整備が不可欠となる。業務フローをCDE中心に再設計し、手戻りのないデータ連携環境を整えることが、施工管理自動化の前提条件となる。

「AIに委ねてはならない仕事」の線引き

AIエージェントによる施工管理の自動化が進む一方で、現場常駐を「1名」ではなく「最低2名」とする理由は、建設業の産業特性にある。建設は現地屋外生産の一品受注産業であり、天候の急変、地中障害物、近隣対応、重大な安全管理判断など、アルゴリズムでは担保できない現場判断が常に発生する。

清水建設の原田知明氏は「1名だけで運営することは安全管理の観点から現実的ではない。だからこそ最低2名は必要」と述べており、三戸氏も「技術的に可能かどうかとは別に、AIに委ねてはならない仕事は何かを見極める必要がある」と強調している。

法的な主任技術者・監理技術者の配置義務を遵守しつつ、定常的な確認・集計・作図業務をAIに委ね、人間は安全管理の最終確認、クライアントとの合意形成、協力会社職長との対面折衝にリソースを集中させる。この職務分離を明確に設計することが、省人化現場の安全性を維持する鍵となる。

組織展開を支えるリテラシー教育

先端的なシステムを開発しても、現場技術者が利用しなければ工数削減効果は得られない。清水建設では、2019年から全社的なAIリテラシー向上を進め、日本ディープラーニング協会(JDLA)のG検定合格者を300名以上輩出してきた。さらに、施工計画書のドラフト作成や仕様書検索を題材とした体験型ハンズオンセミナーを継続し、全社3,000人規模へのAI活用定着を図っている。

現場監督が「指示待ちの作業者」から「AIの出力を評価・判断するマネージャー」へと意識を変えられるかどうかが、2人体制運用の成否を分ける。

参考記事: 清水建設、正答率93%を実現した生成AI現場定着の組織戦略

2030年に向けた現場マネジメントの再設計

清水建設が推進する「20億、2人」体制への取り組みは、施工管理者の役割を日常的な調整・帳票作成業務から解放し、工程・安全の統括判断へシフトさせるプロセスである。

自社の現場効率化を検討する建設企業にとって、まず着手すべきは自社の工事規模ごとの人員配置と定常業務比率の可視化である。現場監督が1日のうち「図面の整合性チェック」「取り合い調整の連絡」「施工写真の仕分け」に費やしている時間を数値化し、どの部分を本支店への集約やCDE上での直接調整へ置き換えられるかを検証することが第一歩となる。

同時に、社内で導入されている各種クラウドツールやフォルダの利用実態を総点検し、データが特定形式で分断されていないかを確認する必要がある。BIMデータと日常の指示・記録がシームレスに結合するデータ基盤を段階的に整備することが、将来的なAI施工管理を現場へ実装するための確実な土台となる。

出典: BUILT
出典: EnterpriseZine(2026年8月7日)
出典: EnterpriseZine(2026年7月27日)
出典: 清水建設 中期DX戦略〈2024-2026〉
出典: 厚生労働省 建設業の時間外労働上限規制

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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