鹿島建設、ダイナミックマッププラットフォーム、三菱電機、西濃運輸の4社グループは、国土交通省の公募事業に基づき成田国際空港の専用路を活用した自動物流道路の実証実験を2026年11月に開始します。自動運転車両3台を投入し、道路構造物に敷設した光ファイバーセンシング技術によって従来の路側カメラや照明設備を代替・削減できる走行環境を検証します。
成田空港の専用路で検証する自動物流道路の運用要件と実証体制
国土交通省道路局が主導する「令和8年度 自動物流道路の社会実装に向けた実証実験」において、鹿島建設らの共同提案が「テーマ2:複数台の搬送機器の自動走行」の実証事業として採択されました。本事業は2026年11月から12月中旬にかけて実施され、閉鎖された専用空間における複数台走行の安定性とインフラ設備の合理化を現場レベルで評価します。
実証実験で用いる機材仕様と検証走行のプロセス
本実証では、中国ZELOSTECH社製の自動運転車両「ZELOS(ゼロス)」を3台使用します。内訳は小型モデル「Z5」が2台、大型モデル「Z10」が1台です。
走行検証は成田国際空港内の専用路で実施され、基本走行速度を時速10キロメートルに設定します。さらに直線路で確保できる一部の走行パターンにおいては時速30キロメートルまで速度を引き上げ、中高速域における車両の加減速挙動や隊列制御の精度、緊急停止時の制動距離を直接測定します。
車両側の自律センサー情報に加え、ダイナミックマッププラットフォームが提供するインフラ協調型モビリティ基盤および高精度3次元地図データを連携させます。路面状態や障害物の検知結果をリアルタイムで管制システムと各車両へフィードバックし、車群管理の安定性を確かめます。
光ファイバーセンシングによる道路側設備の削減検証
本実証の技術的焦点は、鹿島建設が保有する光ファイバーセンシング技術を道路構造物に組み込むことによる地上インフラの簡素化です。
従来の路車協調システムでは、車両の位置把握や落下物検知のために、路側へ多数のカメラ、ミリ波レーダー、LiDAR、専用照明機器を密に配置する必要がありました。これらの機器は初期設置コストがかさむだけでなく、風雨や経年劣化への対策、定期的な清掃点検、通信配線や電源確保など、維持管理の負荷が大きくなる要因となっていました。
今回の実証では、舗装面や路肩に敷設した光ファイバーが感知する微小な振動やひずみの伝播データを解析し、車両の位置特定や異常検知を路側センサーの代わりに担わせます。得られた施工性データや運用実績を基に、以下の3点を検討します。
- 路側に配置する電子機器の削減可能数と間隔の最適化
- 監視カメラや照明機器の要求スペック引き下げ(スペックダウン)
- 光ファイバー敷設時の施工手順および路面切削・復旧の標準化
自動物流道路政策の進展と2026年度採択の経緯
国土交通省が推進する自動物流道路(オートフロー・ロード)構想は、幹線道路の中央分離帯や路肩、地下空間などに物流専用レーンを設け、無人搬送システムによって24時間荷物を運ぶ国家プロジェクトです。2024年4月に適用されたトラックドライバーの時間外労働上限規制(年間960時間)に伴い、試算では対策を講じない場合2030年度に約9億トン相当(2025年比で約34%)の輸送能力が不足すると推計されています。
こうした事態を回避するため、政府は2030年代半ばまでに第1期先行区間の運用開始を計画しています。
| 年月 | 主な政策・事業の動き | 決定・実施内容の概要 |
|---|---|---|
| 2023年10月 | 国土幹線道路部会中間とりまとめ | 道路空間を活用した自動物流道路の10年での実現方針を明記 |
| 2024年2月 | 自動物流道路に関する検討会設置 | 産官学による導入ルートや技術仕様の議論を開始 |
| 2024年7月 | 自動物流道路のあり方 中間とりまとめ | 2030年代半ばの先行区間運用開始に向けたロードマップ策定 |
| 2025年5月 | 実装に向けたコンソーシアム設置 | 民間事業者100社以上が参画し技術規格の検討に着手 |
| 2026年7月〜8月 | 令和8年度実証事業の公募実施 | テーマ1(拠点荷役)およびテーマ2(複数台走行)を募集 |
| 2026年9月8日 | 実証実験採択事業者を公表 | 鹿島建設連合を含むグループの採択を正式決定 |
| 2026年9月30日 | 鹿島建設らが詳細内容を発表 | 成田空港専用路でのZELOS 3台走行と光ファイバー検証を公表 |
| 2026年11月 | 実地実証実験の開始 | 成田空港専用路にて走行性能と設備簡素化のデータ収集に着手 |
2026年7月22日から8月21日にかけて実施された公募では、拠点での荷役を扱う「テーマ1」と専用路での複数台走行を扱う「テーマ2」が設定されました。鹿島建設連合はテーマ2の中で、搬送機器の走行性能、自動運転設備の簡素化、路側インフラと拠点のシステム連携という3項目を網羅する計画として採択を受けています。
参考記事: 国交省、2026年度自動物流道路に6グループ採択|ゼネコン参画の要点
参考記事: 鹿島建設ら4社、成田空港で自動運転車両3台を11月実証|地上設備簡素化へ
建設および物流インフラ関連プレイヤーへの影響
自動物流道路の実用化に向けた検証が進むことで、元請けゼネコンの設計・施工領域や、行政による道路構造令の整備、物流デベロッパーの施設計画に具体的な設計条件の変更が生じます。
ゼネコン(元請け):構造物築造からセンシング内蔵型スマートインフラの施工へ
大手ゼネコンにとって、自動物流道路の建設は従来の舗装や土工を仕上げる請負形態とは異なります。路盤工やトンネル覆工の内部に光ファイバーや受変電設備、通信基盤を高精度に埋設し、土木構造物そのものをセンサーネットワーク化する施工管理が必須となります。
鹿島建設は、ダム工事等の現場において自動化施工システム「A⁴CSEL(クワッドアクセル)」を展開し、重機の群管理や管制アルゴリズムのノウハウを蓄積してきました。こうした土木施工の自律化技術は、自動運転車両の複数台制御や、路面性状と車両挙動をリアルタイムで連動させるインフラ側の通信制御設計に適用されています。
今後は、路盤内に配置する光ファイバーの張力管理や長期耐久性の確保、ミリ波レーダーやカメラに依存しない道路構造令対応の工法設計が、幹線道路案件における入札時の技術提案力を左右します。
参考記事: 大成建設、150kW走行中EV給電道路を開発|27年度に館山道実証へ
行政・道路管理者:地上保安設備の技術基準見直しと整備コスト抑制
国土交通省や高速道路各社などの道路管理者にとって、本実証のデータは専用道路の構造令や維持管理基準を策定する際の数値的根拠になります。
数百キロメートル規模に及ぶ幹線道路網に地上センサーを敷設し続ける方式は、設置費だけでなく電源供給設備の確保や経年故障に伴う交換費用が膨大になります。本実証によって光ファイバーによる振動検知で車両追従や落下物判定が十分に機能すると証明されれば、路側機器の設置間隔を広げ、照明設備を最小限に抑えた簡素な道路構造基準を策定できます。
この基準緩和は、自動物流道路全体の建設単価およびライフサイクルコストを抑制し、全国規模の路線展開計画の策定を後押しします。
物流事業者・施設デベロッパー:専用道路接続を見据えた拠点配置と荷役設計
西濃運輸などの幹線輸送を担う運送会社や、大型物流施設を開発する不動産デベロッパーにとって、自動物流道路との直結を前提とした荷役インターフェースの再設計が進みます。
成田国際空港周辺では、貨物地区と周辺流通業務団地を結ぶ物流アクセス道路の整備が検討されています。幹線輸送が無人搬送機器で連続的に行われる場合、施設側には従来の大型トラック用バースではなく、自動運転車両の到着ピッチに合わせた連続積載・荷卸しシステム(テーマ1で検証される拠点荷役技術)が必要となります。
施設の入出荷ヤード面積や待機スペースの必要寸法が縮小される一方、自動搬送機がスムーズに進入できる専用接続ランプや、高精度3次元地図と同期した施設内誘導路の整備が開発計画の標準仕様に組み込まれます。
ConShiftの視点:地上設備依存を断つ光ファイバー統合と建設業の役割拡張
自動物流道路の早期実用化において、これまで最大の障壁とされてきたのは「地上側インフラの維持管理コスト」です。路側に数百メートル単位でカメラ、照明、レーダーを連続配置するモデルは、トンネル内や高速道路本線のような過酷な環境下で維持し続けるための定期点検と機器更新のサイクルが短く、投資回収の目処が立ちにくいという欠点がありました。
本実証において鹿島建設が提示しているアプローチは、道路構造物そのものにセンシング機能を埋め込むことで地上露出機器を減らし、土木インフラの長寿命性と情報処理を両立させる点に独自性があります。光ファイバーは路盤や側溝ブロックの打設時に同時に敷設できるため、供用開始後の耐候性が高く、地上機器のように天候不順(豪雨、濃霧、直射日光)によるセンサー検知性能の低下を回避できます。
ここから見えてくるのは、建設会社の役割が「設計図通りに土工・舗装を行う請負業者」から「モビリティの運用コストを最小化するインフラシステムインテグレーター」へと構造転換している現実です。
ダイナミックマッププラットフォームの高精度地図基盤や三菱電機の通信・制御システムと土木躯体を接続するポジションをゼネコンが担うことで、ハードウェアとソフトウェアの責任分界点を跨いだ最適設計が可能になります。インフラの初期建設費用(CAPEX)のみならず、20年、30年に及ぶ運用・修繕費用(OPEX)を圧縮できる工法を自ら提示できる建設企業が、次世代の社会基盤整備において発注主導権を握ることになります。
まとめ
成田空港での実証実験は、自動運転車両そのものの走行試験にとどまらず、路側設備を簡素化して持続可能な物流インフラの土台を築くための具体的な検証です。
施工管理関係者や工務店・ゼネコンの実務担当者は、単なる道路舗装や躯体築造の枠組みを超え、通信線やセンシングデバイスを路盤構造に一体化させる複合工法の施工精度管理に目を向ける必要があります。構造物の中にデジタル機能を組み込み、長期の維持管理負荷を低減させるインフラ施工技術の動向を把握しておくことが、今後の大規模インフラ案件への対応力を高めます。
出典: ニュースイッチ by 日刊工業新聞社
出典: 鹿島建設株式会社 プレスリリース
出典: ダイナミックマッププラットフォーム株式会社 ニュースリリース
出典: 国土交通省 報道発表資料



