大林組と宮地組による地域維持型JVは、能登半島地震で被災した石川県輪島市の国道249号本復旧工事において、4種類の建設機械を連携させた盛り土工事の自動化施工を導入しました。崩落土の掘削から約1キロメートル離れた盛土ヤードへの運搬・敷き均しに至る一連の土工工程を、自律運転や遠隔操縦を組み合わせた統合管制によって無人化しています。
国道249号大川浜工区における4機種自律連携施工の実態
国土交通省北陸地方整備局能登復興事務所が直轄権限代行として進める「R6 249号輪島地区道路復旧その13工事」において、複数機種の重機を協調動作させる土工システムが稼働しています。施工現場は石川県輪島市町野町大川から渋田町地先に位置する大川浜工区の約1.72km区間であり、山側の斜面崩落と海側の地盤隆起によって寸断された幹線道路の再生を目的としています。実工期は2026年1月5日から2027年3月31日まで設定されており、2026年9月末時点で工事全体の進捗率は18%に到達しています。
崩落土の掘削から盛土造成までの無人化プロセス
現場では土砂の発生場所から盛土造成箇所までの作業フローをデジタルデータで接続し、重機の自律動作と遠隔操縦を組み合わせています。作業の流れは以下の手順で進行します。
- 自律掘削と土質改良機への投入
地震により斜面から崩落した土砂を自律運転バックホーが掘削し、自走式土質改良機「リテラ」へ自動投入します。 - 遠隔操作による積込み作業
改良された盛土用土砂を、3次元対応遠隔操縦モニターを備えた汎用遠隔操縦装置「サロゲート」搭載のバックホーにより、自動運転アーティキュレートダンプトラックの荷台へ積み込みます。 - 1km区間の自律運搬と放土
土砂を積載したダンプトラックが、隆起した海岸沿いに整備された約1kmの運搬ルートを自律走行し、盛土ヤードの指定位置へ土砂を排出します。 - 自動ブルドーザーによる敷き均し
排出された土砂を、3次元設計データと連動する自動運転ブルドーザーが走行しながら均一な厚さに敷き均し、法面および路盤の盛り土を成形します。
これら4工程の連携は、建機フリートマネジメントシステム(FMS)によって一元管理されています。各建機から取得されるGNSS位置情報、稼働ステータス、走行ルート上のセンサー監視データを集約し、重機同士の離合制御や作業エリアの干渉回避をプログラム側で自動処理しています。
| 施工工程 | 投入機械・システム | 制御方式 | 役割・処理内容 |
|---|---|---|---|
| 掘削・投入 | 自律運転バックホー | 自律制御 | 崩落土を掘削し自走式土質改良機へ投入 |
| 土質改良 | 自走式土質改良機「リテラ」 | 機械処理 | 掘削土を盛土に適した品質へ改質 |
| 積込み | 遠隔操縦バックホー「サロゲート」 | 遠隔操縦 | 3D映像支援による遠隔操作でダンプへ積込 |
| 運搬 | 自動運転アーティキュレートダンプ | 自動運転 | 海岸沿い約1kmの専用路を自律走行・放土 |
| 敷き均し | 自動運転ブルドーザー | 自律制御 | 3次元設計データ連動による盛土の敷き均し |
能登復旧における自動化施工投入の時系列推移
大林組は福島県飯舘村長泥地区での盛土実証などで蓄積した技術を基盤とし、能登半島地震の発生直後から段階的に通信インフラと無人重機の配備を進めてきました。
| 年月日 | プロジェクトの進捗・公表事項 | 実施主体・関係機関 |
|---|---|---|
| 2024年1月 | 能登半島地震発生直後、国道249号の道路啓開作業に着手 | 大林組、大林道路、宮本組 |
| 2024年9月 | 啓開現場に自動充電ポート付きドローンを常設、Starlink活用開始 | 大林組、KDDIスマートドローン |
| 2024年10月 | 国道249号復旧現場(渋田町〜町野町大川間)へ無人重機の遠隔操作を投入 | 北陸地方整備局、大林組JV |
| 2025年12月 | 千葉県君津市から輪島市現場のバックホーを3D映像遠隔操作する実証を実施 | 大林組、EIZO |
| 2026年1月 | 「R6 249号輪島地区道路復旧その13工事(大川浜工区)」着工 | 大林組・宮地組JV |
| 2026年7月27日 | 大川浜工区にて4機種連携盛土自動化施工の現場見学会を開催 | 北陸地方整備局、大林組JV |
| 2026年9月末 | 大川浜工区の本復旧工事進捗率が18%に到達 | 国土交通省 北陸地方整備局 |
| 2026年10月13日 | 国道249号復旧における4機種連携盛り土自動化の実績を公表 | 日本経済新聞、大林組JV |
参考記事: 大林組、能登国道249号で1km盛土土工を4機種連携により自動化
施工プロセス統合が建設サプライチェーンに与える波及
複数機種の自動運転建機と遠隔操縦建機を1本の施工ラインに束ねる運用の確立は、建設現場の関与者に対して業務プロセスの再構成を求めています。
ゼネコン(元請け):個別建機のICT化から「群管理システム統合力」への移行
元請けゼネコンの現場技術力は、単体のICT建機を採用して丁張りを省略する水準から、異種建機群を通信ネットワーク経由で統制する「フリートマネジメントの構築力」へと評価軸が移っています。
自律建機と遠隔操縦建機が同一ルートで稼働する大川浜工区では、運搬路における通信の途絶やセンサーの死角が工程全体の停止に直結します。低軌道衛星通信(Starlink)を用いた大容量通信環境の確保や、機体間の干渉を防ぐインターロック回路の設計、運行管理システム(FMS)と現場地形データのリアルタイム同期といったシステムインテグレーション能力が、土工の施工計画を立てる前提条件となります。
建機メーカー・レンタル企業:遠隔・自律化アタッチメントと通信パッケージ供給
建機メーカーおよび建機レンタル会社は、機械本体の貸出にとどまらず、既存機へ後付け可能な遠隔操作ユニットや自動走行キット、通信機器をセットにした供給モデルへの対応が進みます。
現場ごとに通信インフラや進入路の条件が異なるため、汎用重機にレトロフィットできる操縦装置や、可搬型基地局を含めたネットワーク機器のパッケージ提供が求められます。また、トラブル発生時に現場通信ログや重機の制御ログを解析し、現地へ行かずに復旧を支援する遠隔サポート体制の整備がサービス価値を左右します。
参考記事: 国土交通省、砂防の遠隔施工で作業効率1.36倍|直轄1割から中小普及へ
現場監督・施工管理者:物理的な常駐監視からデジタル管制オペレーションへの転換
現場代理人や主任技術者の日常業務は、重機の周囲に立ち会って合図を送る安全確認作業から、モニター画面を通じた稼働状況の監視と例外対応へと移行します。
施工管理者は、ドローンや車載センサーから取得される点群データを基に日々更新される3次元土量と設計面を比較し、自律重機への動作指示パラメータを修正する業務を担います。土砂の性状変化によるダンプトラックのスリップや、建機の緊急停止アラートが発生した際に、どの遠隔オペレーターへ操作権限を切り替えるかを判断する管制能力が実務の中心となります。
参考記事: 国交省が能越道で4機種を1台に集約、盛土ICT自動化施工を全国初公開
ConShiftの視点(独自考察)
大林組・宮地組JVによる国道249号大川浜工区の取り組みは、土木工事における自動化が「個別建機の単体自律化」から「異種建機を束ねた施工プロセス全体の群制御」へ移行したことを実証しています。
従来のICT土工は、バックホーの掘削アシストやブルドーザーのブレード自動制御といった「単一工程の精度向上」にとどまっていました。そのため、前後の積込みやダンプによる運搬工程に有人オペレーターが介在し、そこがボトルネックとなって施工サイクル全体の省人化には限界が存在していました。大川浜工区では、崩落土掘削から自走式改良機「リテラ」での改質、汎用遠隔操縦装置「サロゲート」による積込み、1kmの自動運搬、自動ブルドーザーによる敷き均しまでをFMSで直列に結合し、施工サイクルを自律的に循環させています。
特筆すべきは、延長1.72kmの急峻な海岸被災地という悪条件下で、Starlink通信とFMSを連動させ、2026年9月末時点で進捗率18%を達成している点です。国土交通省が「i-Construction 2.0」で掲げる2040年度までの省人化3割目標に対し、専用機をゼロから新規開発するのではなく、既存の建機に遠隔ユニットや自動運転ソフトウェアを外付けして群管理する方式は、機材調達コストと現場適用性の双方において成立しやすい現実解を示しています。今後の直轄土木工事では、単にICT重機を保有しているかではなく、複数機械の運行データを統合し、有人作業を排除した安全空間をどれだけ連続して維持できるかが積算基準や技術提案の評価を決定づける要因になります。
現場導入に向けた今後の実務対応
複数建機の連携自動化に対応するため、施工現場の管理者が明日から着手すべき実務項目は以下の通りです。
- 自社が担当する土工現場における通信環境の事前評価
現場事務所と作業ヤード間の高低差や遮蔽物を把握し、Starlinkや可搬型ローカル5G、Wi-Fiメッシュの電波到達範囲を事前調査します。重機の自動運転や遠隔操縦ではミリ秒単位の伝送遅延が機体停止の原因となるため、仮設通信インフラの設計を土工計画書に組み込みます。
- 建機レンタル会社との遠隔・自律化アタッチメント調達経路の確認
自社保有機を即座に更新できない場合でも、油圧ショベルへ後付け可能な遠隔操縦装置(サロゲート等)や、自動走行アシスト機能付きダンプトラックの配備状況を取引先の建機レンタル会社と共有し、現場導入が可能な機材リストを作成します。
- 3次元データ更新と施工管制スキルの現場教育
重機の自動運転を稼働させるには、毎日の掘削面・盛土面の出来形点群データを管制システムに正確に読み込ませる必要があります。ドローン測量データの解析からFMSへの走行ルート指示データの入力までを、現場監督自身がPC上で完結できる運用体制を整備します。



