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法規制・制度 2026年10月27日

国土交通省が主要7団体に経審ヒアリング|W点の他産業共通指標化を検討

国土交通省が主要7団体に経審ヒアリング|W点の他産業共通指標化を検討

国土交通省の「企業評価ワーキンググループ」は、経営事項審査をはじめとする建設企業の評価制度を他産業と比較可能な仕組みへ見直すため、業界団体へのヒアリング結果を公表しました。日本建設業連合会など主要7団体を対象とした調査では、公共工事の格付けに特化した既存の枠組みから、民間発注者や金融機関、労働市場にも通用する客観的な評価指標への刷新を求める声が相次ぎました。

企業評価ワーキンググループにおける検証の経緯とヒアリング結果

国土交通省は2017年に策定した「建設産業政策2017+10」から約10年を迎えるにあたり、2026年7月に「持続的な成長産業としての建設業のあり方に関する検討会」を設置しました。その下部組織として立ち上げられた「企業評価ワーキンググループ(WG)」では、座長を務める芝浦工業大学の蟹澤宏剛教授を中心に、現行制度の検証と新たな評価枠組みの検討が進められています。

2026年9月から10月にかけて開催された会合では、建設業固有の評価にとどまらず、製造業やIT産業など他産業と同じモノサシで生産性や健全性を測れる基盤の構築が主要な論点として浮上しました。

企業評価制度の見直しに向けた検討プロセス

ワーキンググループの設置から意見聴取結果の公表に至るまでの経緯は下表の通りです。

時期 開催組織・政策の動き 主な検討内容と決定事項
2026年7月 成長産業検討会の設置 産業政策2017+10から10年を控え、企業評価など2つのWG設置を決定
2026年9月17日 第1回 企業評価WG 処遇優良事業者証の創設や経審におけるサプライチェーン評価を提示
2026年10月21日 第2回 企業評価WG 業界7団体を対象としたアンケート・ヒアリング調査結果を報告
2026年10月26日 第3回 企業評価WG 調査結果の精査と今後のスケジュール、評価項目の論点整理を協議
2026年10月27日 調査結果の公表報道 他産業比較の仕組みや開示方法に関する企業意見の集約内容が判明

主要7団体に対する調査結果と浮き彫りになった課題

今回のヒアリングおよびアンケート調査は、日本建設業連合会、全国建設業協会、全国中小建設業協会、住宅生産団体連合会、建設産業専門団体連合会、日本電設工業協会、日本空調衛生工事業協会の主要7団体を通じて実施されました。

調査結果では、既存の評価制度に対する受け止めと、今後の見直しに対する要望が明確に分かれました。

  • 経営事項審査(経審)の評価:労働環境や社会貢献性を審査する「W点(その他の審査項目)」について肯定的な受け止めが多く、配点比率の引き上げや、公共発注以外の場でも活用できる独立指標化を望む意見が寄せられました。
  • 専門工事企業の施工能力等の見える化評価制度:2020年4月から運用されているものの、元請企業・専門工事業者の双方から「認知度が不足している」「取得しても受注や単価に結びつくメリットが薄い」との指摘が大半を占め、制度の抜本的な見直しが求められています。
  • 横断的な評価指標へのニーズ:建設業固有の数値だけでなく、他産業と共通基準で比較できる指標が確立されれば、民間工事の新規取引先開拓、サプライチェーン全体の健全性評価、新卒求職者や教育機関への自社アピールに活用したいという意向が示されました。

有識者・行政担当者が提示した評価制度刷新の方向性

会合では、評価制度の設計や活用方法に関して有識者から具体的な提言がなされました。

蟹澤宏剛座長(芝浦工業大学教授)は、W点で評価している社会貢献性について、公共工事の発注者だけでなく施主やエンドユーザーにまで広く届く見せ方を構築すべきだと指摘しました。また、業界の基盤として普及が進む建設キャリアアップシステム(CCUS)と連携させ、適正な処遇を行う正直な企業が選ばれる枠組みの必要性を説いています。

杉田昌平弁護士(企業評価WG委員)は、経審のデータを求職者や教育機関に向けて活用する際、評価項目そのものを大幅に変えずとも、見せ方や開示の形式を改めることで若年層の採用課題に対応できると提案しました。

鈴木章弘日本政策投資銀行都市開発部長(企業評価WG委員)は、民間発注者や金融機関など多様なステークホルダーが判断材料として利用できるよう、データの検索性や即時性を高めたシステム基盤の構築を課題に挙げました。

国土交通省不動産・建設経済局の伊勢尚史建設業課長は、今日的な社会的要請に応えるため、建設企業を多面的に評価する仕組みの検証を継続する方針を示しています。

参考記事: 国土交通省、2027年夏まとめに向け新企業評価を始動|経審や民間工事に連動

参考記事: 経審や処遇評価の見直しへ国交省が企業評価WG第2回、2026年10月開催

参考記事: 建設企業の評価制度見直しへ国交省WG、2026年10月26日に第3回会合を開催

建設業界各層への影響

今回の評価見直しは、公共工事の入札資格付けにとどまらず、民間工事の選定や金融機関からの格付け、下請取引の構造に直接波及します。

ゼネコン(元請企業)への影響

元請ゼネコンにとっては、従来の形式的な経審の点数対策から、他産業水準に合わせた資本効率や生産性の向上への転換が求められます。これまで経審のP点(総合評定値)を維持するために行われてきた完成工事高の積み上げや一時的な技術者確保といった対症療法は、他産業比較の指標が導入されることで通用しにくくなります。

また、投下資本利益率(ROIC)の向上やDXによる省人化実績、CCUSの就業履歴を活用したサプライチェーン全体の労務費配分が評価項目として組み込まれれば、民間デベロッパーからの特命受注やコンペにおける差別化要因になります。一次・二次下請に対する賃金行き渡りの管理負担は増加するものの、下請支援体制を客観データで証明できるゼネコンほど、施主や金融機関から選好される構造が形成されます。

サブコン・専門工事業者(下請企業)への影響

専門工事業者にとっては、形骸化が指摘されていた「見える化評価制度」の再編とCCUS能力評価の連動により、自社の施工能力と処遇改善実績を直接アピールできる環境が整います。日給制から月給制への移行実績や社会保険の適正加入、若手技能者の育成データを公的に証明できれば、元請企業に対する労務費転嫁の交渉力が向上します。

反対に、技能者の処遇改善やデジタル対応を先送りにしてきた事業者は、元請企業がサプライチェーン評価を維持する過程で取引対象から除外されるリスクが高まります。全国建設業協会の調査では231市町村で協会会員企業が不在となるなど地域の担い手不足が進む中、適切な賃金支払いを客観指標で提示できる専門工事業者が選ばれる二極化が進みます。

行政・規制当局への影響

国土交通省をはじめとする行政機関は、公共調達の枠内に閉じていた企業評価を、民間市場や資本市場からも利活用できるオープンなデータ基盤へと改編する役割を担います。2024年に公布された改正建設業法に基づく標準労務費の勧告や原価割れ契約の禁止を実効化させるためにも、企業評価を入札契約制度の改善に直接接続させる必要があります。

さらに、経審データの検索性向上や開示フォーマットの共通化を進めることで、地方自治体ごとの独自の入札資格基準を標準化し、全国的な建設企業の健全育成と地域インフラ維持の担い手確保を両立させることが規制当局の重点施策となります。

参考記事: 経営事項審査(経審)の仕組みとP点アップのポイント|申請手順から有効期限まで分かりやすく解説

参考記事: 改正建設業法(2024・2025年施行)のポイントを解説|標準労務費と契約実務の変更点

ConShiftの視点:制度改定が迫る経営指標の転換

今回のワーキンググループにおける議論は、建設業独自の閉じた評価制度から、他産業と同等の生産性・デジタル化・収益性を測る評価軸への移行を決定づけるものです。

従来の経審は、公共工事の発注者が企業の倒産リスクを回避し、施工規模を測るためのスクリーニング装置として機能してきました。しかし、技能者の約25.8%を占める60歳以上が今後10年で大半引退する見通しの中、従来の財務指標や完成工事高の大きさを競うモデルは限界に達しています。他産業と比較可能な指標への移行は、単なる見せ方の変更ではなく、建設企業が製造業やIT産業と同じ土俵で「人材獲得力」や「資本効率」を評価される市場へ放り込まれることを意味します。

特に注目すべきは、経審のW点やCCUS能力評価のデータを、民間発注者や就職活動中の学生、金融機関に開示する構想です。これまで民間建築市場では、見積価格と過去の施工実績が選定基準の大半を占めていました。ここに処遇水準やサプライチェーン管理状況が他産業水準の客観データとして組み込まれれば、価格叩きを前提とする発注構造は成立しなくなります。

2027年夏に予定される新ビジョンの策定に向け、企業が取るべき針路は明確です。P点取得のための一時的な資格取得や建設機械の形式的な保有といった小手先の対策を脱し、CCUSレベル別技能者数の引き上げや下請契約における標準労務費の完全反映など、外部市場に胸を張って開示できる本質的な経営革新を着実に進める必要があります。

参考記事: 建設業働き方改革加速化プログラムとは?適正工期・賃金引き上げ・現場DXを実現する3つの柱を解説

明日から意識すべき経営実務の対応

企業評価制度の刷新を見据え、建設企業の経営層や実務責任者は以下の実務対応を速やかに進める必要があります。

  1. 自社の財務指標を他産業の尺度で再点検する

売上高や完成工事高の規模拡大を優先する管理を改め、自己資本比率や投下資本利益率(ROIC)、従業員1人あたりの付加価値額など、他産業の投資家や金融機関が重視する指標で自社の経営数値を分析する体制へ移行してください。

  1. CCUS登録と就業履歴蓄積の運用を徹底する

現場でのCCUSカード読み取り実績やレベル別技能者の在籍比率は、今後の企業評価において不可欠なエビデンスとなります。自社技能者のみならず、一次・二次の協力会社に対しても登録支援と日次の読み取り運用を現場ルールとして定着させてください。

  1. 改正建設業法に沿った下請契約の実態を点検する

標準労務費を考慮した適正な見積書の交付や原価割れ契約の排除が徹底されているか、自社の発注・下請契約実務を精査してください。元請企業としてのサプライチェーン管理実績が将来の入札や民間選定に直結することを前提に、取引プロセスの可視化と適正化を完了させておくことが求められます。

出典: 建設通信新聞Digital
出典: 国土交通省
出典: ワイズ公共データシステム

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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