Skip to content

Conshift(コンシフト)

  • 施工管理
  • 人材マネジメント
  • 積算・受発注
  • 政策動向
  • ツール紹介
  • 統計分析
  • 用語辞典
Home > 品質・安全> 大林組が仙台市役所でAI映像検知を120日実証|不安全行動を半減へ
品質・安全 2026年10月27日

大林組が仙台市役所でAI映像検知を120日実証|不安全行動を半減へ

大林組が仙台市役所でAI映像検知を120日実証|不安全行動を半減へ

広大な建設現場で施工管理者がどれだけ巡回を重ねても、死角や高所における職人の不安全行動を常時把握することは物理的に不可能です。大林組は仙台市役所本庁舎建て替え工事において、クラウドカメラとAI映像分析を組み合わせた「Ailytics(SF)」を120日間運用し、目視監視に頼らない自動検知体制により、不安全行動の検知件数が肌感覚で約半減したと効果を実感しています。

カメラ×AIによる不安全行動検知・通知の基本構造

建設現場における映像活用は、従来の「防犯や進捗確認のための録画」から「AIによる危険事象の自動検知と即時通知」へと進化しています。シンガポールのAilytics社が開発し、セーフィー株式会社が国内展開する「Ailytics(SF)」は、現場に設置した固定式クラウドカメラの映像から、労働災害につながる危険動作やルール違反をアルゴリズムがリアルタイムで判定する仕組みです。

ゼロからの自社開発を排した「パッケージ型AI」の特徴

国内の建設DXでは個別現場の要件に合わせてアルゴリズムを共同開発するPoCが多く見られますが、実用化までに膨大な教師データの収集と検証期間を要する点が課題でした。「Ailytics(SF)」は、シンガポールをはじめとするアジア圏の大規模建設プロジェクトで既に標準実装されている検知モデルをパッケージ化したソリューションです。

ゼロからの学習モデル構築を省き、標準化された機能を現場カメラへ割り当てるだけで即座に稼働できる即効性を備えています。日本国内での提供窓口を大手ゼネコン上位30社中29社への導入実績を持つセーフィーが担うことで、契約や通信インフラの調達、現場サポートが円滑に行える体制が整えられています。

主要な5つの検知機能と自動クリッピングの仕組み

本システムは、建設現場の三大災害(墜落・転落、建設機械・クレーン等による挟まれ・巻き込まれ、倒壊・崩壊)に直結する挙動を中心に、以下の検知機能を備えています。

機能名称 検知対象となる状況 現場への通知条件
吊り荷下立ち入り検知 クレーン揚重作業中の吊り荷直下への進入 作業員が吊り荷の直下領域に入った瞬間
重機近接検知 バックホウ等の稼働旋回半径への作業員接近 重機周囲の事前設定エリアへ人が立ち入った際
立入禁止エリア検知 開口部周辺や足場解体エリア等への進入 指定した仮想フェンス内への侵入を捉えた際
装備品未着用検知 フルハーネス型安全帯やヘルメットの不備 指定エリアで未着用者を画像識別した際
車両速度超過検知 現場構内を走行する工事車両の制限速度超過 設定速度を超えた移動体をフレーム解析で検知

AIが危険事象を判定すると、クラウド上の管理ダッシュボードにアラートが届きます。同時に「検知の前後5秒間(計10秒程度)」の映像が自動でクリッピング保存されるため、管理者は長時間の録画データを巻き戻して探す手間なく、発生状況をピンポイントで確認できます。

参考記事: Safie Pocketシリーズとは?遠隔臨場を実現するクラウド型ウェアラブルカメラの機能と特徴

建設現場でAI映像監視が求められる制度的・構造的背景

現場の安全パトロールや目視確認に依存した従来の安全管理体制は、労働環境の変化と法制度の厳格化によって維持が困難になっています。

時間外労働上限規制の適用と巡回工数の限界

2024年4月1日より、働き方改革関連法に基づく時間外労働の上限規制(年960時間規制等)が建設業にも適用されました。施工管理者は限られた労働時間の中で、施工計画の策定、品質管理、工程調整、安全管理を同時に遂行しなければなりません。

敷地面積が数万平方メートルに及ぶ大規模現場や多層階の高層建築工事では、施工管理者が1日に何万歩も歩いてフロア間を往復し、現場の隅々まで目視監視し続ける運用は破綻を迎えています。巡回していない時間帯や巡回ルートの外側で発生する不安全行動は見落とされやすく、事故の芽を事前に摘み取ることは困難でした。

建設業の労働災害統計と重機・揚重作業の固有リスク

厚生労働省が公表した令和6年の労働災害発生状況確定値によると、全産業の死亡者数746人のうち建設業は232人を占め、全産業の31.1%と業種別で最多を記録しています。死亡事故の類型では「墜落・転落」が77人と約3割を占め、次いで「崩壊・倒壊」「はさまれ・巻き込まれ」が上位に並びます。

災害類型 建設業における主な発生要因 AI検知による防止アプローチ
墜落・転落 開口部養生の隙間接近、足場上での安全帯不使用 立入禁止エリア侵入検知、装備品未着用検知
はさまれ・巻き込まれ 重機旋回範囲への誤進入、死角での合図不徹底 重機近接検知による前後映像の即時確認
飛来・落下 クレーン揚重作業中の吊り荷下通過・作業 吊り荷下立ち入り検知による即時是正指示

重機の配置や揚重ルートは工程の進捗に応じて毎日変動するため、職人が移動経路の危険性に気づかず無意識に近づいてしまうケースが頻発します。管理者が常駐できないエリアで発生するこれらの一瞬の油断を、定置カメラとAIによって24時間捉え続ける仕組みが不可欠となっています。

参考記事: 安全支援アプリとは?写真1枚で生成AIが危険予測しKY活動を標準化する機能を解説

大林組・仙台市役所建替工事JVにおける120日間実証実験の成果

大林組・鉄建建設・仙建工業・深松組JVが施工を担当する「仙台市役所本庁舎建て替え事業(第1期工事)」において、2026年2月1日から5月31日までの120日間にわたり、「Ailytics(SF)」の実証実験(PoC)が実施されました。

現場にはセーフィーの屋外型PTZカメラ「Safie GO PTZ」3台を配置し、「立ち入り禁止」「重機近接」「吊り荷下立ち入り」の3機能を割り当てて運用が行われました。

実証で実感された不安全行動の低減と重機近接の解消

導入当初、AIのダッシュボードには施工管理者の想定を上回る件数の危険アラートが記録されました。特に重機近接については、日々変わる重機の作業位置に対して作業員が知らず知らずのうちに接近している実態が浮き彫りになりました。

管理者が通知内容を確認し、後述する映像を用いたフィードバックを継続した結果、現場の行動パターンは急速に変化しました。実証期間の経過とともに危険な重機への近接はほぼ撲滅され、不安全行動全体の検知件数も体感値として約半分にまで減少しました。人の目では捉えきれなかったクレーン旋回時の吊り荷下立ち入りも確実に捕捉され、揚重作業時の安全水準が底上げされました。

客観的映像による指導と職人の心理的納得感の向上

定置カメラによる自動記録は、施工管理者と職人とのコミュニケーション摩擦を大幅に解消しました。

従来の口頭による注意喚起では、作業員側の反発や言い合いが生じるリスクがありました。しかし、AIが切り出した客観的な映像証拠を提示しながら指導を行うことで、作業員自身が自らの不安全行動を視覚的に自覚できるようになりました。客観的根拠に基づく安全指導は現場の納得感を醸成し、元請と協力会社間の良好な関係性を保ちながら現場規律を徹底させる基盤となりました。

施工管理者のフロア移動削減と巡回業務の効率化

高所作業を俯瞰できる最上階へのカメラ設置は、施工管理者の身体的負荷の軽減にも直結しました。

従来は上層階の作業状況や設備の配置を確認するため、多い担当者で1日に10回以上も現場事務所や地上フロアと上層階を往復していました。地上にいながらPCやタブレットでリアルタイムの状況を把握できる体制が整ったことで、不要な昇降移動が激減しました。移動に消費されていた工数を、工程精査や事前の安全計画づくりへと再配分できるようになり、現場管理全体の生産性向上をもたらしました。

参考記事: 大林組が蔵衛門を全国建築現場へ導入|写真のAI自動整理と台帳作成を標準化

現場導入を成功させるための4つの実務ステップ

カメラとAIによる安全監視を実務で機能させるには、機器の設置位置や職長会との合意形成など、事前の運用設計が成否を分けます。

ステップ1:工事フェーズに応じた監視エリアの画定と画角設計

現場の進捗に伴い、危険エリアの性質は基礎工事(重機土工)、鉄骨建方(揚重・墜落)、内装・設備(混在作業)と変化します。カメラの設置にあたっては、以下の設計を事前に行う必要があります。

  • 死角の最小化: クレーンの旋回範囲や主要通路がフレーム内に収まる高所(タワークレーンマスト、仮設ポール、最上階スラブ等)の選定
  • 画角と解像度の両立: AIが人物や重機を正確に認識できる距離と角度の検証(遠すぎると判定精度が低下し、近すぎると監視範囲が狭まる)
  • 通信環境の確保: 大容量の映像データを途切れずクラウドへ送るためのLTE回線や現場Wi-Fiの電波強度測定

ステップ2:作業員のプライバシー配慮とデータ利用指針の策定

現場に監視カメラを増設する際、作業員から「常に監視されている」「サボりを監視されているのではないか」といった不信感を抱かれると、現場の士気低下を招きます。導入に先立ち、現場入場時教育などで以下の基本方針を明文化して周知することが重要です。

  • 利用目的の限定: 映像は労働災害の防止および安全指導のみに利用し、個人の勤怠評価や懲戒の口実に用いないこと
  • 追跡の否定: 特定の個人を追跡・特定する顔認証等の機能は使用せず、挙動の危険性のみを判定すること
  • 閲覧権限の統制: 映像を閲覧できる担当者を安全担当職員や現場所長など必要最小限に限定すること

ステップ3:職長会を経由したエスカレーションフローの確立

AIが危険を検知した際、元請職員が直接個別の作業員へ駆け寄って叱責する運用は、専門工事業者の指揮命令系統を乱す原因になります。大林組のPoCでも実践されたように、元請管理者が通知を確認した後、一次協力会社の職長を介して対象作業員へ注意を促すエスカレーションルートを確立します。

[カメラ×AI検知]
       │
       ▼
[管理ダッシュボードへの通知・自動クリッピング]
       │
       ▼
[元請・施工管理者による事実確認]
       │
       ▼
[専門工事業者の職長へ情報連携(映像共有)]
       │
       ▼
[職長から作業員本人への具体的・納得感ある安全指導]

このフローを踏むことで、職長自身の安全意識が向上し、朝礼や危険予知(KY)活動の場へ具体的な事例として即座に還元される好循環が生まれます。

ステップ4:通知頻度のチューニングと「アラート疲れ」の防止

AI検知を導入した初期段階で最も陥りやすい失敗が、過剰な通知による「アラート疲れ」です。検知エリアの境界線設定が曖昧な場合、通常作業のための正当な通行まで不安全行動として頻繁に通知され、管理者がダッシュボードを確認しなくなる恐れがあります。

運用の最初の数週間は、検知範囲の絞り込みや判定閾値の微調整を重ね、本当に介入が必要なクリティカルな危険挙動だけに通知を絞るチューニング作業が不可欠です。

参考記事: 清水建設、最大1800人規模の現場で8秒顔解析AI導入し熱中症防ぐ

AI検知の定着がもたらす現場安全管理の変革

定置カメラとAI映像分析の連携は、施工管理者の経験や勘に依存していた巡回確認を、データに基づく体系的な安全管理へと転換させます。

リアルタイム通知と現場チャットツールの連携展望

大林組の検証でも今後の展望として挙げられているのが、AI検知と現場連絡チャットツール(LINE WORKSやSlack等)の自動連動です。システムが不安全行動を検知した瞬間、職長や該当班のグループチャットへ映像クリップが自動送信されれば、元請管理者の確認を待たずとも現場内で自律的な是正が行われます。

さらに、作業員のスマートウォッチやヘルメット装着型スピーカーと連動し、重機近接エリアへ立ち入った瞬間に警告音や振動で本人へ直接通知するシステムの開発も進められており、事故発生の数秒前に回避行動を取らせる環境が現実になりつつあります。

蓄積された検知データの安全計画へのフィードバック

日々の検知データがクラウド上に蓄積されることで、「現場内のどのエリアで」「何時頃に」「どのような不安全行動が多発しているか」というヒートマップ分析が可能になります。

分析指標 抽出される現場の課題 安全計画への反映策
時間帯別検知数 休憩直前や終業前の集中力低下 作業手順の見直し、合図・声かけの強化
工種別・エリア別検知数 特定の重機作業帯における動線の交差 仮囲いやカラーコーンの再配置、歩車分離の徹底
曜日別・天候別検知数 降雨後や週初めにおける焦り・慣れ 朝礼時KY活動での重点確認項目の更新

属人的な「注意喚起」の繰り返しから、客観的な発生傾向データに基づいた「危険箇所の構造的改善」へと安全マネジメントのレベルを昇華させることができます。

参考記事: 大林組が集中調達を16品目へ拡大|AI連携と3階層の権限再編で現場負荷を削減

不安全行動検知AIの導入に向けた検討ステップ

カメラ×AIによる不安全行動検知は、ゼネコン各社が取り組む安全DXにおいて実用的な選択肢として確立されつつあります。自社現場での導入に向け、まずは以下の実務から着手することが推奨されます。

  1. 現場の死角・危険作業の洗い出し

現在施工中の現場において、過去にヒヤリハットが頻発したエリア(重機稼働帯、クレーン揚重エリア、開口部周辺)をリストアップし、目視巡回の盲点となっている箇所を特定します。

  1. 既存インフラの活用可否の確認

現場に既にセーフィー等のクラウド録画カメラが導入されている場合、カメラ機器を総入れ替えすることなく、AI解析ライセンスを追加契約するだけで「Ailytics(SF)」のようなソリューションをスモールスタートさせることが可能です。

  1. 小規模現場や特定工種でのトライアル実施

全工種への一斉適用を目指すのではなく、まずは「躯体工事中のクレーン揚重エリア」や「土工時の重機旋回エリア」など、検知項目を1〜2点に絞り込んだ短期実証を行い、通知頻度や現場職長との連絡フローの実効性を検証します。

客観的な映像データをもとに現場全体で危険の芽を摘む体制の構築は、重大労働災害を未然に防ぐだけでなく、施工管理者の巡回負担を軽減し、持続可能な現場運営を実現するための有力な手段となります。

出典: クラウド録画サービスSafie(セーフィー)
出典: PR TIMES
出典: BUILT

Share this article:

監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

関連記事

国土交通省、砂防工事の遠隔施工で作業効率1.36倍向上へ中間まとめ
2026年9月28日

国土交通省、砂防工事の遠隔施工で作業効率1.36倍向上へ中間まとめ

鹿島建設、門型AI移動装置を導入し鉄筋籠の立会検査時間を7割削減
2026年10月1日

鹿島建設、門型AI移動装置を導入し鉄筋籠の立会検査時間を7割削減

大林組の八重洲鉄骨崩落、58トンを32トンと誤認し2人書類送検
2026年9月18日

大林組の八重洲鉄骨崩落、58トンを32トンと誤認し2人書類送検

ConShift

建設業のビジネス知識に関心を持つ経営層・現場リーダーのための課題解決メディア。現場のノウハウから最新のDX事例まで、ビジネスを加速させる情報をお届けします。

カテゴリー

  • 施工管理
  • 品質・安全
  • コスト管理
  • 人材マネジメント
  • 積算・受発注

もっと探す

  • 政策動向
  • BIM/CIM
  • 法規制・制度
  • 海外トレンド
  • ツール紹介
  • 統計分析
  • 建設業界用語辞典

サイト情報

  • 運営者情報
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー
  • LogiShift
  • TechShift

© 2026 ConShift. All rights reserved.