Cat GRADEとは?
Cat GRADEは、日本キャタピラー合同会社が提供する建設機械向けの情報化施工支援システムです。油圧ショベルやブルドーザー、モータグレーダーなどに搭載され、キャブ内のタッチモニターによる設計面ガイダンスや「Grade with Assist」による半自動油圧制御を提供します。土木施工現場において熟練技能者の不足や丁張り作業に伴う接触リスクが深刻化する中、丁張りの大幅削減と過掘削の物理的防止を通じて手戻りを排除し、整地・法面成形作業における現場生産性を最大35%向上させることを目的としたマシンコントロール・マシンガイダンスソリューションです。
主な機能
Cat GRADEは、施工現場の規模や工事種別、要求される測量精度に応じて柔軟に選択できるよう、ガイダンスから半自動油圧制御、三次元設計連動まで複数の機能体系で構成されています。
作業機誘導・ガイダンス機能
- Cat グレード 2D(二次元マシンガイダンス)
機体に内蔵された慣性加速度計(IMU)や角度センサーにより、ブーム・アーム・バケットの正確な作業姿勢をリアルタイムに検出します。キャブ内のタッチモニター上に設計深さや勾配情報をグラフィカルに表示し、カラーバーと3種類の音響ガイダンスによって目標面までの距離をオペレーターに伝達します。基準点から相対的な深さや勾配を高精度に追従できるため、丁張りの設置本数を減らしながら基礎掘削や溝掘りの手戻りを抑えられます。 - 車内タッチスクリーンモニターによるリアルタイム表示
キャブ内に設置された高解像度モニターで、設計断面に対するバケット刃先やブレードの現在位置をミリ単位で視覚化します。直感的なインターフェースにより、手元作業員による検測を待たずにオペレーター単独で掘削深さを把握できるため、作業員が重機稼働範囲へ立ち入る接触災害リスクを低減させます。
半自動油圧制御(マシンコントロール)機能
- Cat グレード with アシスト(二次元マシンコントロール)
オペレーターがアームを引き寄せるレバー操作を行うだけで、設定された目標設計面に沿ってブームの上下動作を油圧システムが自動制御します。バケット刃先が設計面より深く入り込む過掘削を物理的に防止するため、経験の浅い若手オペレーターであっても熟練者に匹敵する平滑な仕上がり面を迅速に造成できます。 - バケットアシスト
アームの引き込み動作中、バケットの対地角度を常に一定に保つよう自動調整する制御機能です。法面整形や敷均し作業においてバケットの角度を手動で微調整し続ける負担を解消し、面精度の均一化と作業時間の短縮を支援します。 - ブームアシスト
硬質地盤の掘削や急激な負荷がかかる場面において、過度な押し付けによる機体前部の浮き上がりを自動的に抑制する機能です。車体の接地安定性を保ち、履帯や足回りのスリップ・摩耗を抑えつつ、安定した掘削力を維持します。 - アシストオンデマンド
ジョイスティックのボタン操作ひとつで、半自動アシスト機能の作動・一時解除を瞬時に切り替えられる機能です。障害物周辺での手動微調整と広範囲の自動整地作業をレバーから手を離さずに使い分けられるため、作業リズムを乱すことなく施工効率を高められます。
3次元設計データ連動・管理機能
- Cat グレード 3D(三次元マシンコントロール / ガイダンス)
GNSS(全球測位衛星システム)アンテナから取得した絶対座標と3次元設計データを直接連動させ、国土交通省の推進するi-Constructionに準拠した施工を実現します。広大な造成工事や複雑な曲線構造を持つ道路土工において、現場全域で丁張りを設置することなく、設計面通りの絶対標高・法面勾配を一発で仕上げることが可能です。 - 段階的アップグレード機構
新車導入時に標準的な2D仕様(ガイダンスまたはアシスト)を採用した場合でも、将来的なICT活用工事の受注拡大に合わせて「3Dアップグレードキット」を後から追加装着できます。現場の受注状況や設備投資計画に応じて段階的に三次元自動制御へ拡張できる構造設計が採られています。
こんな企業・現場に向いている/向いていない
向いている企業・現場
直轄工事や大規模土工の受注を拡大したい地方ゼネコン・土木施工会社
- 熟練オペレーターの不足により法面整形や仕上げ作業の歩掛が安定しない
Cat GRADE with アシストのブーム自動制御とバケットアシスト機能を活用することで、オペレーターが手動で行っていたバケット角の微調整や掘りすぎ防止を油圧側で自動追従します。技能者の経験年数に左右されず一貫した面精度が確保され、仕上げ工程の施工速度が安定します。 - 丁張り設置や頻繁な検測作業に多大な人手と工数が割かれている
Cat GRADE 3Dによる丁張りレス施工へ移行することで、事前の測量杭打ちや重機周辺での手計測作業が不要になります。補助作業員と建設機械の混在が排除されて接触リスクが解消されるとともに、少人数体制での高効率な土工管理が定着します。
ICT施工の初期投資を抑えつつ段階的に設備を高度化したい中堅建設会社
- 自社保有重機のすべてに最初から高額な3Dシステムを導入するのは投資回収リスクが高い
2Dガイダンスまたは2Dアシスト搭載機をベースに運用を開始し、直轄工事などの3D施工案件を受注したタイミングで3Dアップグレードキットを装着する段階的運用が可能です。自社の工事ポートフォリオに合わせて設備投資のタイミングを分散できます。 - 現場ごとに異なる通信・衛星環境に応じた確実な立ち上げサポートを求めている
全国の正規Catディーラーに配置された専任の「ICTインストラクター」による現場立ち上げ支援やオペレーター講習が提供されます。ICT重機の操作に不慣れな現場でもスムーズに実運用へ移行できます。
向いていない企業・現場
小規模な維持修繕工事や障害物の多い狭小地のみを手がける企業
- GNSS電波の受信が遮蔽される環境での単発・小規模作業が中心である
橋梁下や密集市街地、鬱蒼とした山間部など上空視界が開けていない場所では、GNSS衛星電波の受信が制限され、3Dシステムの安定稼働が難しくなる場合があります。相対的な高さ基準で作業できるレーザー基準器や簡易MGレトロフィットキットの方が機動性・投資対効果ともに適しているケースがあります。
他社製建機を多頭保有しており既存機への外付けキットのみで共通化を図りたい企業
- 特定メーカーに固定せず複数メーカーの既存重機をそのままICT化したい
Cat GRADEはキャタピラー社製重機の車体油圧系統や制御基板と高度に統合された工場装着システム(または専用設計)です。他社製建機を主体とするフリート全体に同一のマシンコントロールシステムを横断導入したい場合は、サードパーティ製の後付けレトロフィットキットを検討する方が整合しやすい場合があります。
類似ツールとの比較
ICT建機およびマシンコントロール(MC)・マシンガイダンス(MG)の分野において、Cat GRADEは建機メーカー純正の工場統合型システムとして位置づけられます。
サードパーティ製の外付けレトロフィットキットと比較した場合の決定的な差異は、油圧制御・センサー配線・車載コンピューターが車両の設計・製造段階から組み込まれている「ファクトリーインテグレーション(工場装着)」構造にあります。後付けキットの場合、ブームやアームの外部にセンサー配線や油圧バイパス配管を露出させて取り付けることが多く、過酷な土木現場での木の枝の引っ掛かりや土砂の衝突による断線リスクが懸念されます。Cat GRADEは配線やセンサーが機体内部に保護されているため、高い物理的耐久性と動作安定性を備えています。
他社OEM純正のICT建機と比較した場合、アンテナまわりの運用性に特色が見られます。Cat GRADE 3Dでは油圧ショベルのGNSSレシーバをキャブ本体内に別置きし、アンテナ自体を薄型・軽量化しています。また、ブルドーザーにおいてはブレード上のポール(マスト)を排除し、キャブ屋根部にアンテナを直接マウントするマストレス設計を採用しています。これにより、ブレード操作時の振動や土砂の跳ね返りによる破損リスクが低減され、終業時や現場間輸送のたびに高価なアンテナ・受信機をブレードから取り外す手間が省けるため、日々の段取り時間が短縮されます。
料金・プラン
Cat GRADEの導入費用は、新車購入時のベース機種(次世代油圧ショベルシリーズやブルドーザーなど)、選択する仕様(2Dガイダンス、2Dアシスト、3D連動)、ならびに既存機へのアップグレードキット構成によって異なるため、日本キャタピラーおよび全国のCat正規ディーラーによる個別見積もり(要問い合わせ)となっています。
見積もりを依頼する際は、以下の要件を事前に整理しておくことが推奨されます。
- 導入形態の区分
対象機種(Cat 320、325、D5、D6等)の新車購入時に組み込む工場装着か、すでに保有している対応機種への2D/3Dアップグレードキットの追加装着かを確認します。 - 要求される施工次元
相対的な勾配管理を行う2D仕様(MGまたはAssist)で運用を開始するか、直轄工事等のi-Constructionに対応する3D仕様(GNSS接続)を最初から導入するかを決定します。 - サポートおよび研修体制の付帯条件
ICTインストラクターによる初期現場立ち上げ指導やオペレーター講習、通信機器の定期点検サービスの契約範囲を確認します。
導入事例・実績
田中産業 株式会社:高規格道路の土工・法面仕上げを一貫自社施工
上越魚沼地域振興快速道路(上沼道)の地盤改良および盛土工事(総土量6万立方メートル、工期1年3ヶ月)において、Catブルドーザー(Cat D6R)による撒きだし・転圧と、Cat油圧ショベル(Cat 320 / 312)のICT機能を導入しました。起工測量から3次元設計データ作成、建機によるICT施工、出来形検査に至る一連のプロセスを自社一貫体制で実施し、外注コストの圧縮と高精度な法面仕上げを達成しています。
Hiraga Construction Company(平賀建設):圃場整備工事の工期を大幅短縮
施工面積6.1ヘクタールの大規模な圃場整備工事において、Cat Grade Assist 3Dを搭載した油圧ショベル(Cat 320、Cat 325、Cat 352等)およびブルドーザーを現場投入しました。半自動油圧制御による整地・法面成形と丁張りレス施工を全面的に適用した結果、従来工法で通常7ヶ月を要すると試算されていた工事全体を約3ヶ月で完了させました。
スパルタンレース(千葉大会コース造成):大規模障害物造成の工期を半減
障害物レース「スパルタンレース」千葉大会の特設コース造成において、大会用の巨大泥障害物(ローリングマッド等)の掘削成形にCat 320(グレード3D搭載機)が採用されました。複雑な掘削断面を3次元設計データ連動で正確に再現することにより、従来は丁張りと手動検測を繰り返して2日以上を要していた造成作業を約1日で完工させました。
過酷な現場環境に耐えるハードウェア構造とマストレス設計
ICT建機の運用において現場で大きな課題となりやすいのが、外部露出したセンサーやアンテナの破損、ならびに日々の取り外しに伴うオペレーターの手間です。Cat GRADEは、ヘビーデューティーな土木現場での連続稼働を前提とした設計が施されています。
従来の3Dマシンコントロールブルドーザーでは、ブレードの両端に支柱(マスト)を立て、その頂部にGNSSアンテナを設置する構造が一般的でした。しかしこの構造は、粗掘削時の激しいブレード振動や土砂のこぼれ落ち、現場内の樹木への接触によるアンテナ破損リスクを抱えており、毎日の作業終了時に高所からアンテナを取り外して保管する必要がありました。Cat GRADEを搭載したブルドーザーでは、キャブ上部にGNSSアンテナをマウントするマストレス設計を採用しており、ブレード周辺の視界を良好に保ちながら破損リスクを低減し、日常的な脱着作業を不要にしています。
また油圧ショベルにおいても、GNSS受信機本体をキャブ内部に保護配置し、機外のアンテナを小型・薄型化することで、粗掘削から仕上げ成形、転圧作業に至るまでアンテナを取り外すことなく連続運用できる耐久性を実現しています。
専任ICTインストラクターによる現場立ち上げと人材育成
ICT施工技術の導入において最大のボトルネックとなりやすいのが、オペレーターの初期習熟と心理的抵抗感です。日本キャタピラーをはじめとする正規Catディーラー(四国建販、キャタピラー九州など)では、機器の納入にとどまらず、現場実装を伴走支援する専任の「ICTインストラクター」を全国に配置しています。
ICTインストラクターは、納車時の操作説明だけでなく、実際の工事現場において3次元設計データの重機へのインポート、現場キャリブレーション(ローカライゼーション)、設計データと実地形の整合確認といった実務手順を現地で直接指導します。丁張りのない作業に対して不安を抱くオペレーターに対し、モニターの見方やAssist機能を作動させた際のレバー感覚を実機上で教育することで、若手からベテランまで短期間でICT機能を使いこなせるよう支援体制を整えています。
導入前に知っておきたいこと
Cat GRADEの導入を検討するにあたり、以下の課題・注意点を確認しておく必要があります。
- 専用機導入時の初期投資と稼働率管理
3Dマシンコントロール搭載機はベース車両を含めた初期設備投資が大きくなります。対象となるICT活用工事の受注頻度が少ない場合、機体の稼働率が低下して投資回収に時間を要する懸念があります。自社の受注見込みに合わせて、最初は2D仕様から導入して後から3Dキットを追加するアップグレード機構の活用や、レンタル機での実証を先行させることが推奨されます。 - オペレーターの初期習熟と丁張りレスへの心理的負担
従来の施工方法に慣れたオペレーターにとって、現場に丁張りがない状態でモニター表示と自動油圧制御を信頼してレバー操作を行うことには心理的な戸惑いが生じる場合があります。ディーラーのICTインストラクターによる講習を受講し、検測結果とモニター数値の合致を実機で体感しながら段階的に慣れさせることが重要です。 - GNSS電波受信環境への依存性
3D仕様はGNSS衛星電波を利用して測位を行うため、深い切土法面やトンネル坑口、高圧電線下、鬱蒼とした山間部など上空視界が遮蔽される現場では測位精度が低下したり、一時的にガイダンスが中断したりする可能性があります。現場条件に応じて自動追尾トータルステーション(TS)連動などのバックアップ体制や2D相対制御の併用を検討する必要があります。
導入の流れ・期間
Cat GRADEを導入する際の標準的な実務プロセスは以下の通りです。具体的な納期・導入期間はベース車両の在庫状況や工場装着オプションの組み合わせによって異なるため、ディーラーへの事前問い合わせが必要です。
- 問い合わせ・現場要件のヒアリング
最寄りのCat正規ディーラーへ問い合わせを行い、主に取り扱う工事種別(道路土工、造成、河川工事等)、必要な制御機能(2Dガイダンス、2Dアシスト、3D連動)、対象機種(油圧ショベル、ブルドーザー等)の要件を整理します。 - 実機デモ・施工提案
ディーラーのデモ施設や実証フィールドにおいて実機の操作性やアシスト機能の挙動を確認します。導入目的に応じた機種構成と見積もりの提示を受けます。 - 売買契約・仕様決定
機体の購入契約またはレンタル契約を締結し、工場装着オプションやアップグレードキットの構成を確定させます。 - 納車前整備・初期設定
ディーラー工場において機体のキャリブレーションや通信機器・センサー類の初期セッティングを実施します。 - 現場納入・実地講習・運用開始
施工現場へ重機を搬入し、専任のICTインストラクター立ち会いのもとで実現場の座標キャリブレーションとオペレーターへの操作指導を行い、本番稼働を開始します。
よくある質問(FAQ)
- スマートフォンやタブレットからCat GRADEの操作や設定を行うことはできますか?
- Cat GRADEの掘削ガイダンスや油圧制御設定は、重機キャブ内に固定された専用の高耐久タッチスクリーンモニターで直接操作します。スマートフォン単体での直接制御アプリは提供されていませんが、事務所PCなどで作成した3次元設計データをUSBメモリや通信経由で車載システムへインポートして運用します。
- すでに保有しているCat製油圧ショベルに後からCat GRADEを装着できますか?
- 次世代油圧ショベルシリーズなど対応する設計基盤を持つ機種であれば、後から「Cat グレード with アシスト」や「3Dアップグレードキット」を追加装着することが可能です。保有機種の年式や型式がアップグレードに対応しているかについては、日本キャタピラー等の正規ディーラーによる機体確認が必要です。
- 他社メーカーの油圧ショベルやブルドーザーにもCat GRADEを装着できますか?
- Cat GRADEはキャタピラー社の重機専用に油圧回路や電子制御が統合された工場装着・専用設計システムであるため、他社製建機への直接装着はできません。他社製建機のICT化を検討する場合は、汎用的なサードパーティ製後付けレトロフィットキットなどを検討する必要があります。
- 操作に不慣れなオペレーター向けの研修や講習体制は用意されていますか?
- 日本キャタピラーをはじめとする正規ディーラーに専任の「ICTインストラクター」が配置されています。納車時の機体説明にとどまらず、現場での実機を用いた操作指導やデータ取り込みのサポートが提供されています。
- 契約期間や解約条件、レンタルでの利用可否はどうなっていますか?
- Cat GRADE搭載機は新車・中古車としての購入のほか、大手建機レンタル会社やディーラー系列のレンタルサービスを通じて工事単位で利用することも可能です。購入時の保証期間やレンタル期間中の保守条件、解約規定については、契約窓口となるディーラー各社への確認が必要です。