Leica iCON site excavatorとは?
Leica iCON site excavator(ライカ アイコン サイト エクスカベーター)は、ライカ ジオシステムズ株式会社が提供する、小型・中型油圧ショベル向けに最適化された3Dマシンガイダンスソリューションです。施工現場における手元作業員の省人化や丁張り作業の削減を目的として開発されました。GNSS(全球測位衛星システム)やトータルステーション(TS)の測位データと機体各部の傾斜センサーを連動させ、キャブ内のコントローラー画面上で設計面に対するバケット刃先のアプローチ状況をリアルタイムに案内します。現場での測量から掘削誘導、施工後の出来形レポート作成までを同一システム内で完結できるワークフローを提供します。
主な機能
Leica iCON site excavatorの機能群は、運転席でのガイダンスにとどまらず、機外での測量作業やクラウドを通じたデータ同期までをシームレスにつなぐ点に特徴があります。公表されている主要な機能は以下の通りです。
建機ガイダンス・掘削支援機能
- リアルタイム3Dマシンガイダンス
GNSS受信機および車体・ブーム・アーム・バケットに装着された各種傾斜センサーのデータを統合し、設計面と刃先位置の離れをモニター上に視覚的・直感的に表示します。オペレーターは画面のガイダンスや音響インジケーターを確認しながら掘削を進めることで、設計高さに対する過掘削(掘りすぎ)を手動操作下で防止できます。 - スイングブーム機構・各種アタッチメント対応
都市部の狭小地工事などで多用されるスイングブーム機に対応しており、ブームを左右に振った状態でも正確な刃先位置を算出します。さらに、標準バケットだけでなくチルトバケットやチルトローテーターの装着にも対応しており、複雑な法面整形や側溝掘削のガイダンスが可能です。 - 省スペース設計の車載ハードウェア
小型ジャンクションボックス(SJB2x)などを採用することで、小型ショベルの限られたキャブ内スペースを圧迫しない構成を実現しています。運転席周りに設置する配線や機器類を最小限に抑え、オペレーターの良好な作業視界と居住性を維持します。
ワンマン測量・出来形管理機能(機外連携)
- 端末・UIの兼用によるGNSS測量ローバー化
キャブ内に設置しているフィールドコントローラー(CC80やCC200等)を取り外し、GNSSスマートアンテナ(iCON gps 70 T / 160等)を取り付けた測量ポールと組み合わせることで、そのままGNSS測量機(ローバー)として現場測量に活用できます。建機の運転席と現場の地上測量で全く同一の画面UI・ソフトウェアを使用するため、別途専用の測量端末を用意することなく現場運用を完結させられます。 - 現地での簡易設計データ作成・杭打ち・出来形チェック
事前にオフィスで準備した3D CADデータを取り込むだけでなく、現場のコントローラー上で基準点や勾配を指定して直接設計データを作成できます。掘削作業前の位置出し(杭打ち)や、掘削完了直後の施工履歴データの書き出し・出来形確認までをワンストップで現場内で完結できます。
クラウド連携・データマネジメント機能
- クラウドプラットフォーム「Leica ConX」連携
ライカが提供する建設クラウドサービス「Leica ConX」と通信デバイス(Leica iCON CR50等)を介して接続可能です。オフィスから現場のコントローラーへ最新の設計データをリモートで転送・同期できるほか、建機側で取得した施工履歴データをオフィス側へリアルタイムに共有し、手戻りのないデータマネジメントを支援します。
こんな企業・現場に向いている/向いていない
向いている企業・現場
都市部の狭小地や上下水道・管路工事を多く手がける土木施工会社
- スイングブーム機や小型ショベルを用いた狭小掘削の課題
都市部の道路工事や住宅密集地では障害物が多く、スイングブームを備えた小型油圧ショベルが多用されますが、従来の重機用ICTシステムではスイング角の補正に対応していないケースがありました。Leica iCON site excavatorはスイングブーム機およびチルトバケット/チルトローテーターに標準対応しているため、ブームを屈折させた複雑な掘削姿勢でも正確な刃先位置を把握でき、狭隘地での高精度な施工を実現します。 - 重機近傍の手元作業員配置による接触リスクと人件費負担
深さのあるトレンチ掘削では、作業員が掘削溝内に入ってスタッフ(標尺)を当てながら頻繁に深さを検測する必要があり、接触事故のリスクと人員確保が課題となっていました。本システムを導入することで、モニター表示のみでミリ単位の深さ管理が可能となり、丁張り設置および検測に伴う手元作業員を排除した安全なワンオペレーション施工へ移行できます。
測量専任者を置く余裕がなく、現場代理人やオペレーター自身が測量を行う中小施工業者
- 測量機とICT建機で別々の操作習得が必要となる負担
起工測量や位置出し用ソフトと、重機キャブ内のガイダンスソフトの操作体系が異なると、現場作業員への教育コストが倍増し運用の形骸化を招きます。Leica iCON site excavatorでは、キャブ内のコントローラーを取り外してGNSSアンテナ付きポールに装着するだけでそのまま測量ローバーとして活用でき、全く同一のUIで「測量」「設計作成」「重機ガイダンス」「出来形確認」を行えるため、少人数の現場でも早期に技術習得が完了します。
向いていない企業・現場
オペレーターの操作介入なしで完全自動施工を行いたい大規模土工現場
- 半自動の油圧制御による過掘削防止(マシンコントロール)を求める現場
Leica iCON site excavatorは、音やモニター表示でオペレーターの手動レバー操作を支援する「マシンガイダンス(MG)」システムです。排土板やバケットが設計面に自動追従して油圧を自動制御する「マシンコントロール(MC)」機能は備えていません。大規模造成や長大な法面整形など、レバーを引くだけで設計面通りに仕上がる半自動油圧制御を必須要件とする現場では、マシンコントロールに対応した上位システムや専用ICT建機を検討する必要があります。
高架下・トンネル内など、衛星電波や視通が恒常的に遮断される現場環境
- 上空視界が確保できずGNSS電波を受信できない閉塞空間
本システムをGNSS測位で運用する場合、上空視界(天空率)の確保が前提となります。高架下、トンネル内、深い切り通しなどでは衛星補足数が不足し精度を維持できません。トータルステーション(TS)連動での運用も可能ですが、建機1台ごとに追尾用TS1台を据え付け、重機との視通を遮る障害物がない環境を整える必要があるため、閉塞空間が主体となる現場では測位方式に応じた機器構成の精査が求められます。
類似ツールとの比較
マシンガイダンス・マシンコントロール市場における他社ソリューション(トプコン、トリンブル、コマツ等のシステム)と比較した場合、Leica iCON site excavatorの最大の特徴は「小型建機への適応力」と「機外測量機との高い統合性」にあります。
一般的な重機用3Dガイダンスシステムは中型〜大型の標準機(バックホウ)を主対象としており、キャブ内のコントロールボックスや受信機材が大型になりがちでした。また、ブームが左右に可動するスイングブーム機ではアングル検知の難しさから適合対象外とされることも少なくありませんでした。これに対しLeica iCON site excavatorは、小型ジャンクションボックスを採用して狭いキャブ内の省スペース化を図りつつ、スイングブーム機やチルトローテーターへの対応を標準で備えています。
さらに、多くのシステムでは「地上測量用の端末」と「建機ガイダンス用の端末」がハードウェア的にもソフトウェア的にも分断されているのに対し、本ソリューションはフィールドコントローラーを脱着して両方の用途で全く同じソフトウェアを走らせることができます。1セットの機材投資で「昼間は重機ガイダンスとして稼働させ、施工後は端末を取り外してそのまま出来形測量を行う」といった運用が可能となり、設備投資を抑えたい現場にとって導入障壁を下げる構成となっています。
料金・プラン
Leica iCON site excavatorの利用料金および本体導入費用は、公式Webサイト上では一律の定価が公開されておらず「要問い合わせ」となっています。本システムはハードウェア構成(デュアルGNSS受信機、各種センサー、コントローラーの選定)や取り付ける重機の仕様、クラウド連携(Leica ConX)の有無、正規販売代理店による取付・キャリブレーション費用など現場ごとの条件により総額が変動するため、個別見積もり形式で提供されています。
導入を検討する際は、以下のポイントを代理店・メーカーへ確認することを推奨します。
- 構成ハードウェアの選定
対象とする油圧ショベルの機種・ブーム形状(スイングブームの有無)、チルトバケット対応センサーの要否、および組み合わせるフィールドコントローラー(CC80またはCC200等)とGNSS受信機の組み合わせ。 - 機外測量キット(測量ポール・アンテナブラケット等)の同梱有無
キャブ内コントローラーを取り外してGNSSローバーとして兼用する場合のオプション部材費用。 - 初期キャリブレーション・設置調整費用の内訳
機体へのセンサー取り付け工賃、初期寸法計測、キャリブレーション作業および現地オペレーショントレーニング費用の有無。
導入事例・実績
国土交通省 関東地方整備局(小規模ICT活用施工検証)
国土交通省 関東地方整備局が実施した「小規模ICT活用施工の技術検証」において、上下水道などの管路敷設工事を想定した小規模土工掘削(20m³あたり)の現場にLeica iCON site excavatorが採用され、従来施工との比較検証が行われました。
- 手元作業員の省人化
従来の掘削施工では、掘削状況を監視・検測するために重機オペレーターに加えて手元作業員1名が溝付近に常駐する必要がありましたが、3Dガイダンスの導入により丁張り設置作業および手作業での出来形検測が不要となりました。これにより、現場作業員数が従来施工の2人からICT施工では1人へと半減しました。 - 作業時間の短縮(38%削減)
直線部の小規模工事において、延べ作業時間(人・時間)が従来施工比で38%削減されました。また、検証報告書では曲線施工など線形が複雑になるほどガイダンス表示による丁張り省略効果が高まり、作業時間の削減率がさらに向上することが確認されています。
民間企業における導入実績としては、株式会社コクホウや株式会社田中住建などによる導入実績が正規代理店等を通じて公表されています(民間単独での詳細な定量削減効果数値は非公表)。
既存保有重機へのレトロフィット(後付け)対応とキャブ内機器構成
Leica iCON site excavatorは、特定の建設機械メーカーの新車に限定されず、既存の保有重機に後からセンサーや配線を取り付ける「レトロフィットキット」として提供されている点が実務上の大きな特徴です。
小型キャブに配慮された省スペース構成
小型ショベルやミニショベルはキャブ内の空間が極めて狭く、大型のコントロールボックスを設置するとオペレーターの足元や視界を遮る問題が生じます。本システムでは、スマートジャンクションボックス(SJB2x)を採用し、機体外部に設置した各種センサー(ブーム、アーム、バケットの傾斜角センサー)からの配線を最小限のユニットに集約しています。キャブ内に持ち込む機器をコントローラーと最低限の受信デバイスに抑えることで、狭小キャブであってもオペレーターの居住性と安全視界を確保しています。
スイングブームおよびチルトローテーターの連動
標準的なバックホウだけでなく、スイングブームの旋回角度を検出するセンサーを組み込むことで、旋回中心から外れた位置での掘削作業でも刃先の3次元座標を正確に追従します。また、近年普及が進むチルトバケットや360度回転するチルトローテーターのアタッチメントにも対応しており、法面の斜め切りや障害物をかわしながらの複雑な掘削でも、リアルタイムに刃先高さを案内できます。
導入前に知っておきたいこと
導入を検討するにあたり、現場環境や運用面に関して事前に留意すべき事項が確認されています。
初期キャリブレーションと機体寸法の正確な計測
レトロフィットで建機に後付け設置する場合、システム稼働前に建機各部(ピン間距離、バケット刃先寸法など)の厳密な実測と、センサーの初期キャリブレーション(傾斜補正)作業が必須となります。この初期調整が適切に行われない場合、ガイダンス表示と実際の刃先位置にズレが生じる原因となります。導入初期には代理店技術者による精密な設定作業を計画しておく必要があります。
測位方式(GNSS / TS)ごとの現場環境制約
現場の測位方式としてGNSSを用いる場合、作業現場ごとに最低1回のローカライズ(現場基準点に合わせた座標補正)作業を行う必要があります。また、上空に十分な天空率(見通し)が確保されている現場環境が必須条件となり、山間部の深い谷間や高架橋下など衛星電波を受信しにくい場所では測位精度が低下する制約があります。電波遮蔽エリアでトータルステーション(TS)測位を利用する場合は高精度な誘導が可能ですが、建機1台に対して追尾型TSが1台専有され、重機とTS間の見通しライン(視通)を常に維持する現場管理が求められます。
導入の流れ・期間
Leica iCON site excavatorの導入は、機器構成の設計から建機への取り付け、オペレーター研修まで代理店やメーカー技術者と連携して進められます。一般的な導入フローは以下の通りです。
- 問い合わせ・現場ヒアリング
正規代理店(株式会社神戸清光など)またはメーカーへ問い合わせを行い、対象となる油圧ショベルのメーカー・型番・ブーム構造(標準またはスイングブーム)、対応させたいアタッチメント(チルト等)の仕様を確認します。 - システム構成の選定と見積もり
GNSS仕様またはTS仕様の決定、機外測量キットの要否、クラウド連携(Leica ConX)の構成を確定し、機材費・取付費・サポート費を含む見積もりが提示されます。 - 契約・発注
見積内容に基づき契約を締結します。 - 機体へのセンサー取り付け・初期キャリブレーション
技術員が現地または指定ヤードに出向し、ショベルへのセンサー・ジャンクションボックス・配線類の艤装を行います。取り付け完了後、機体寸法の実測とセンサーのキャリブレーションを実施します。 - 現地トレーニング・運用開始
現場オペレーターや施工管理者向けに、コントローラーの画面操作、設計データの取り込み、測量ローバーとしての兼用手順などの操作研修を行い、本運用を開始します。
※油圧ショベルへのセンサー艤装およびキャリブレーションに要する具体的な導入日数や納期については、重機の配車状況や代理店のスケジュールにより異なるため、事前の問い合わせ・確認が必要です。
よくある質問(FAQ)
- 小型油圧ショベルだけでなく、中型や大型のショベルにも取り付けられますか?
- Leica iCON site excavatorは小型・中型油圧ショベル向けに最適化されていますが、ライカの3Dマシンガイダンス技術自体は幅広いサイズの油圧ショベルに対応可能です。対象重機の仕様や型番ごとの適合状況については、正規代理店またはメーカーへの事前確認を推奨します。
- 運転席のタブレット(フィールドコントローラー)は市販のiPadやAndroid端末で代用できますか?
- 市販の汎用タブレットでの代用はできません。振動、粉塵、直射日光、降雨にさらされる過酷な現場環境に対応するため、堅牢設計の専用フィールドコントローラー(Leica CC80やCC200等)を使用する仕様となっています。
- 3D CADデータ(設計データ)がない現場でも使えますか?
- 利用可能です。事前の3次元設計データがない場合でも、フィールドコントローラー上で現地の基準点や希望する勾配・オフセット値を入力することにより、現場内で簡易的な設計データを作成して掘削ガイダンスを行う機能が備わっています。
- 無料トライアルやデモ機の現場実演は可能ですか?
- ライカ ジオシステムズおよび正規販売代理店において、実機を用いたデモンストレーションや施工検証が随時実施されています。現場環境への適合可否を含め、対応窓口へデモの可否を問い合わせることを推奨します。
- 導入後の保守サポートや操作教育はどのような体制になっていますか?
- ライカ ジオシステムズおよび株式会社神戸清光などの認定正規代理店により、納入時の製品研修、現場への導入支援、ソフトウェアのバージョンアップ、不具合発生時のテクニカルサポートが提供されています。