Solution Linkage MGとは?
Solution Linkage MG(ソリューション リンケージ エムジー)は、日立建機株式会社が提供する油圧ショベル専用の後付け3Dマシンガイダンスシステムです。現場における熟練オペレーター不足や丁張り設置に伴う手元作業員の安全確保といった課題を抱える土木・建設業者に向けて開発されました。車載モニタに表示される設計データとバケット爪先位置のガイダンスにより、手動操作を直感的に支援します。国土交通省のNETIS登録(KT-250040-A)およびICT建設機械等認定制度の認定を受けており、専用Webアプリを通じて事務所からの遠隔データ配信や土量進捗の可視化までを一貫して実現します。
主な機能
Solution Linkage MGの機能は、オペレーターの操縦を車内で直接アシストする「運転席向けガイダンス機能」と、事務所側から施工データや進捗を一元管理する「クラウド・Webアプリ連携機能」の大きく2つに分類されます。
運転席向けガイダンス機能(車載システム)
- 4周波マルチGNSSおよび高精度IMUによる安定測位
GNSS補正情報を受信し、4周波に対応したマルチGNSSアンテナと建機各部に取り付けたIMU(慣性計測装置)センサーにより、機体の傾きやバケット爪先位置を高精度に算出します。高度なマルチパス処理技術が組み込まれており、構造物の近傍や衛星配置の厳しい現場環境下でも安定した測位情報を運転席へ伝達します。 - 専用モニタによるゴーストアングル・直感的ガイダンス表示
キャブ内に設置された専用ガイダンスモニタ上に、3次元設計データとバケットの現在位置・角度をリアルタイムで描画します。目標面に対する車体の正対角度を色と音で分かりやすく案内する「ゴーストアングル機能」を搭載しており、機体の向きを正確に合わせることで、不慣れなオペレーターでも目標設計勾配に沿った掘削作業をスムーズに行えます。 - 爪先座標測定および設計面オフセット設定
バケット爪先を現地の測量点や構造物に当てることで現在地の3次元座標を計測できる爪先測定機能を備えています。さらに、路盤工や下層路盤の施工時に目標設計面を平行に上下移動できる「設計面オフセット機能」により、仕上げ面から一定深さの掘削・盛土作業を車載モニタ上の操作だけで柔軟に設定可能です。
クラウド・Webアプリ連携機能(事務所・遠隔管理システム)
- 専用Webアプリによる遠隔データ配信・機材設定
現場の3次元設計データ(LandXML等)やGNSS補正情報の設定を、事務所のPCから専用Webアプリを介して通信経由で重機へ直接配信できます。現場ごとにUSBメモリを持参してキャブ内でデータを読み込ませる手間を省き、複数台の機材に対して同一の設定や設計変更を一括して迅速に適用できます。 - 施工履歴データの自動蓄積と出来形管理帳票の出力
日々の掘削作業に伴うバケット爪先の通過軌跡を施工履歴データとしてクラウドへ自動蓄積します。蓄積された面データはWebアプリからダウンロードでき、国土交通省のi-Construction基準に沿った出来形管理帳票の作成データとして活用することで、測量・帳票整理にかかる工数を削減します。 - 土量進捗ビューワ「Solution Linkage Ryube」連携
収集した施工履歴データを日立建機の土量進捗ビューワ「Solution Linkage Ryube」と連携させることで、設計面と現況面の差分から日々の切土・盛土土量を自動算出できます。進捗状況が色分けされたヒートマップや数値データとしてグラフィカルに表示されるため、現場全体の土量バランスや掘削進捗率を視覚的に把握可能です。 - ダンプトラック積載量を計測するペイロード機能連携
ショベルの掘削・積込動作に伴うバケット内の土砂重量をリアルタイムに計測するペイロード機能(Webアプリ Solution Linkage Payload連携)が2026年6月より提供されています。ダンプトラックへの積載重量を可視化することで、過積載の防止や過少積載による運行効率低下を防ぎ、運搬工程を含めた施工全体の最適化を図ることができます。
こんな企業・現場に向いている/向いていない
向いている企業・現場
日立建機製の指定油圧ショベルを保有し、ICT土工の内製化を進めたい土木施工会社
- 丁張り設置や検測による補助作業員の接触リスクと施工遅延を解消したい
Solution Linkage MGを後付けすることで、3次元設計データとバケット爪先位置がモニタ上で可視化されるため、従来施工で必須だった丁張り設置作業を大幅に削減できます。手元作業員が掘削箇所の近傍に立ち入ってスタッフで検測する回数が激減し、接触事故の防止と作業待ち時間の削減につながります。 - 現場ごとの設計データ投入や機材設定による技術者の移動負荷を減らしたい
専用Webアプリを通じた遠隔データ配信機能を活用することで、事務所から複数の油圧ショベルへ設計面データやGNSS補正パラメータを一括送信できます。現場監督が重機のキャブを回ってUSBメモリを差し替える移動負担がなくなり、設計変更にも即座に対応可能です。 - 日々の掘削・土量進捗を定量的に把握してダンプ手配や工程を最適化したい
施工履歴データから切盛土量を自動算出する土量進捗ビューワ「Solution Linkage Ryube」と連携させることで、進捗率や残土量をヒートマップで確認できます。土量算出のための測量作業を待つことなく、正確な進捗状況に基づいたダンプトラックの配車計画や工期管理を行えます。
公共工事における入札評価を高め、費用を抑えてICT施工対応機を確保したい地域ゼネコン
- 新車購入の投資を抑えつつ国交省基準のICT建機を現場へ配備したい
新車のICT専用ショベルを購入する場合と比べ、既存の保有機械(ZX200-7やZX135US-7等)に本体価格450万円(消費税・取付費別)のキットを後付け装着することで導入コストを抑えられます。油圧制御機構を伴うマシンコントロール(MC)機よりも初期投資を圧縮しながら、3Dマシンガイダンス施工の要件を満たす機材を導入できます。 - 総合評価落札方式での加点評価や施工成績評定点の向上を狙いたい
本システムはNETIS登録番号(KT-250040-A)を取得し、国土交通省の「ICT建設機械等認定制度」の認定製品(認定番号:2024-2-2-1-)に登録されています。公共工事の技術提案や総合評価落札方式において加点対象となり、工事成績評定点の向上や受注機会の拡大に直結します。
向いていない企業・現場
他社製建機が中心のフリート構成であり、メーカー横断で共通システムを導入したい企業
- コマツやキャタピラーなど複数メーカーの建機に同一のガイダンスキットを搭載したい
Solution Linkage MGは日立建機製の特定型式(ZAXISシリーズの指定機種)専用に開発されたシステムです。コマツの「Smart Construction Retrofit Kit」のようにメーカーを問わず後付けできる汎用設計ではないため、日立建機以外の車両を主軸に運用している施工会社や、混在フリート全体で同一のUI・操作体系に統一したい現場には適していません。
トンネル坑内や高架下など、GNSS衛星電波の受信が遮蔽される環境の施工現場
- 上空視界が得られずGNSS電波や携帯キャリアのセルラー通信が遮断される現場環境
本システムは4周波マルチGNSSによる位置情報取得と、NTTドコモの4G(LTE)回線によるデータ通信を前提としています。上空が遮られるトンネル工事や橋梁下、あるいは携帯電話通信の圏外となる山間部奥地では、自動追尾トータルステーション(TS)方式を採用したガイダンスシステムや衛星通信対応ソリューションを別途検討する必要があります。
類似ツールとの比較
ICT施工向けのマシンガイダンス・レトロフィット市場において、Solution Linkage MGは建機メーカー純正ならではの統合性と、クラウドエコシステムとの直結性で他社ツールと差別化されています。
市場で広く普及しているコマツのレトロフィットキット(Smart Construction Retrofit Kit)は、自社・他社を問わず幅広い油圧ショベルへ後付けできる「オープンプラットフォーム性」を特徴としています。これに対してSolution Linkage MGは、対象を日立建機製の特定型式に絞り込むことで、専用設計のブラケットや車載ディスプレイ、センサー配置の最適化を図り、機体への高いフィット感と配線の保護性を担保しています。また、後付けキットとしてだけでなく、新車発注時の「工場取付」を選択できる点も純正品ならではの利点です。
クラウド連携の面では、建機単体の刃先誘導にとどまらず、日立建機が展開する「Solution Linkage」プラットフォーム(Solution Linkage Cloud、進捗管理の「Ryube」、積載管理の「Payload」)と密接に結合しています。一般的なサードパーティ製ガイダンスシステムでは、刃先ガイダンスの画面とクラウド進捗管理が別々のベンダーに分かれ、データのインポート・エクスポートに専用ソフトを経由させる手間が発生しがちです。Solution Linkage MGでは、施工履歴データから土量進捗ヒートマップの生成やダンプトラックの積載重量管理までを同一ポータル内で処理できるため、管理業務の一元化を重視する現場にとって親和性の高い構成となっています。
料金・プラン
Solution Linkage MGのハードウェア導入費用は以下の通り公表されています。クラウド利用料等の月額費用については個別見積もりとなります。
| 項目 | 金額(税別) | 備考 |
|---|---|---|
| 本体販売価格 | 450万円 | ガイダンスモニタ、GNSSアンテナ、IMUセンサー等のシステム一式。取付費・消費税は別途必要。 |
| 月額利用料(SaaS) | 要問い合わせ | Solution Linkage ポータルサイト経由でのクラウド利用料、Webアプリ通信利用料等の詳細。 |
| 取付費用・初期設定費 | 要問い合わせ | 対象重機の型式や装着形態(後付け/工場取付)に応じたキャリブレーション等の費用。 |
※見積もり時には以下の点を確認してください。
- クラウド利用契約の単位と最低契約期間
機体ごとの月額ライセンス体系、契約更新サイクル、および解約条件。 - 現場への取付工数と校正費用
既存保有重機へのセンサー取り付けにかかる作業工数、および初期キャリブレーションに必要な測量費用。 - 連携Webアプリ(Ryube、Payload等)のライセンス費用
土量進捗ビューワやペイロード機能を利用する際のオプション料金の有無。
導入事例・実績
日立建機の「Solution Linkage」シリーズ全体としては、土量計測サービス「Solution Linkage Survey」や運行管理システム「Solution Linkage Mobile」、転圧管理システム「Solution Linkage Compactor」等において、福美建設、月の輪建設工業、大島組などの建設会社における導入実績が公表されています。
ただし、「Solution Linkage MG」単体としての「導入企業名・導入規模・定量的効果の数値」がすべて揃った公式導入事例は現時点では確認できていません。最新の導入状況については日立建機の公式サイトをご確認ください。
対応機種・装着形態とハードウェア仕様
Solution Linkage MGは、日立建機製油圧ショベルの特定型式を対象とした専用設計となっており、導入可能な重機の仕様が厳密に定められています。
| 分類 | 仕様・対象範囲 | 詳細・特徴 |
|---|---|---|
| 対象機種(計8機種) | 中型〜20tクラス標準機・後方小旋回機 | ZX135US-6、ZX135US-7、ZX200-7、ZX200LC-7、ZX225US-7、ZX225USLC-7、ZX225USR-7、ZX225USRLC-7 |
| 装着形態 | 工場取付 / 後付け | 新車購入時の工場ラインでの事前組込、または既存の保有機械に対するレトロフィット装着の双方が選択可能。 |
| 測位・通信仕様 | 4周波マルチGNSS + NTTドコモ4G(LTE) | マルチパス処理対応の4周波GNSSと機体姿勢角IMU、およびドコモLTE網を通じたクラウド常時接続。 |
発売当初(2024年5月)は20tクラスの標準機「ZX200-7」のみの対応でしたが、2026年2月に対象機種が大幅に拡充されました。道路土工や市街地工事、狭小現場で需要の高い13tクラス後方超小旋回機「ZX135US-6 / ZX135US-7」や、20tクラス後方小旋回機「ZX225US-7シリーズ」など、合計8機種に適用範囲が広がっています。これにより、広大な造成地だけでなく、旋回スペースが限られる都市土木現場でも同一システムを用いたICT施工が可能となりました。
NETIS登録および「ICT建設機械等認定制度」認定への対応状況
Solution Linkage MGは、公共工事におけるICT施工の円滑な導入を支援するため、国が定める公的な技術認定制度に適合しています。
国土交通省が運用する新技術情報提供システム「NETIS」において、登録番号「KT-250040-A」として登録されています。NETIS登録技術を公共工事の入札時に技術提案したり、実際の施工現場で活用したりすることで、総合評価落札方式での評価加点や、工事完成後の工事成績評定点における加点対象となります。
また、国土交通省の「ICT建設機械等認定制度」における認定製品(認定番号:2024-2-2-1-)としても登録されています。この制度は、直轄工事等のICT活用工事において要求される測位精度や機能要件を満たしている建設機械および後付け装置を公的に証明するものです。施工会社は発注者に対して煩雑な事前検証や適合証明を行う負担を軽減でき、i-Construction要綱に基づく施工履歴データを用いた出来形合否判定をスムーズに実施できます。
導入前に知っておきたいこと
Solution Linkage MGを検討するにあたり、現場環境や運用体制に関して事前に留意すべき仕様上のポイントがいくつか存在します。
第一に、本システムは日立建機製の指定8機種専用の設計であり、他社製重機や対象外の型式(旧型機や小型ミニショベル等)には装着できない点です。自社保有機械の型式が適合リストに含まれているかを事前に確認する必要があります。
第二に、稼働環境としてGNSS衛星信号が正常に受信できること、およびNTTドコモの4G(LTE)サービスエリア内であることが必須条件となります。山間部の電波不感地帯や、上空が遮られる構造物の下ではガイダンス機能やクラウド連携が制限される可能性があります。
第三に、本システムは「マシンガイダンス(MG)」であり、油圧制御を自動で行う「マシンコントロール(MC)」ではない点です。ガイダンスモニタと警告音によって目標設計面との高低差や角度が正確に案内されますが、実際のレバー操作や仕上げ面の微調整はオペレーター自身の手動操作に依存します。完全な自動追従掘削を求める場合は、専用の油圧コントロール弁を備えたICTショベルとの機能差異を理解したうえで選定する必要があります。
導入の流れ・期間
Solution Linkage MGの導入は、販売代理店である日立建機日本を通じて進められます。一般的な導入フローは以下の通りです。
- 問い合わせ・機種適合の確認
日立建機の公式サイトまたは日立建機日本の営業担当窓口へ問い合わせを行います。保有している油圧ショベルの型式・シリアル番号を確認し、システム装着が可能か適合性を診断します。 - 現場要件の確認・見積もり
想定する現場環境(GNSS受信環境、LTE通信エリア等)や連携させたい機能(RyubeやPayload等)をヒアリングし、本体機器費用、取付工数、キャリブレーション費用、月額サービス料を算出した見積書が提示されます。 - 契約手続き
本体購入および「Solution Linkage ポータルサイト」を通じたクラウドサービスの利用契約を締結します。請求・契約管理は日立建機日本を通じて一元的に行われます。 - 機器の取付・センサー校正(キャリブレーション)
サービスエンジニアにより、油圧ショベルへのガイダンスモニタ、GNSSアンテナ、IMUセンサー、配線類の取り付けが行われます。取り付け完了後、重機の各寸法やバケット爪先位置の精密なキャリブレーションを実施します。 - 初期設定・オペレーター操作指導
事務所側のPCでポータルサイトのアカウントを開設し、通信確認や3次元設計データのアップロードテストを行います。あわせて運転席にてオペレーター向けにガイダンス画面の操作レクチャーが実施されます。 - 現場での実運用開始
Webアプリから現場へ設計データを送信し、ガイダンス機能を用いた丁張りレス掘削や施工履歴データの取得を開始します。
※油圧ショベルの配備状況や後付け改修工期、納車スケジュールによるため、具体的な導入期間については要問い合わせとなります。
よくある質問(FAQ)
- Solution Linkage MGとマシンコントロール(MC)の違いは何ですか?
- マシンガイダンス(MG)である本システムは、設計面とバケット爪先位置の差分をモニタの表示や音で案内し、レバー操作はオペレーター自身が手動で行います。一方のマシンコントロール(MC)は、油圧系統を自動制御して設計面に沿ってバケットが動く半自動システムです。MGはMCに比べて構造がシンプルで初期導入コストを低く抑えられる特徴があります。
- 事務所側のWebアプリはどのような環境(ブラウザ/OS)で利用できますか?
- クラウド型のWebアプリケーションとして提供されるため、一般的なPCの標準的なWebブラウザからインターネット経由でアクセスして利用します。専用のソフトウェアをローカルPCへインストールする必要はありません。
- 現場での無料トライアルやデモ体験は可能ですか?
- 公式サイト上で無料トライアルに関する定常的な記載は確認できていません。実機のデモや実演機の見学可否については、日立建機日本の担当営業窓口への確認が必要です。
- 他社メーカーの油圧ショベルにも装着できますか?
- 装着できません。日立建機製油圧ショベルの指定型式(ZX135US-6/7、ZX200-7、ZX225US-7シリーズなど計8機種)専用に設計されたシステムです。
- 契約手続きやサポート窓口はどのようになっていますか?
- クラウド利用契約や機器の管理は「Solution Linkage ポータルサイト」にて一元管理され、請求書の発行およびアフターサポート窓口は販売元の日立建機日本株式会社が担当します。
- バケット内の積載量を測る「ペイロード機能」はすぐに使えますか?
- ダンプトラック積載量をリアルタイムに計測する「ペイロード機能(Webアプリ Solution Linkage Payload連携)」は、2026年6月より提供が開始されています。