DJI Terraとは?
DJI Terraは、SZ DJI Technology Co., Ltd.が提供する写真測量および点群データ処理ソフトウェアです。土木施工現場や公共測量における起工測量、土量計算、出来形管理のデータ処理負担を軽減するために設計されています。DJI製の産業用ドローンや搭載センサー(Zenmuse P1やLiDARセンサーのZenmuse Lシリーズ等)に最適化されており、可視光画像からの高精度な2Dオルソモザイク作成や3Dメッシュ生成、LiDAR点群の高速処理を同一環境内で完結できます。従来の複雑な解析工程を簡素化し、建設現場の内製化と三次元データ運用の効率化を支援するツールです。
主な機能
2D・3D画像再構築機能(写真測量・SfM)
- 2Dオルソモザイクマップ生成
空撮写真の位置姿勢情報と画像特徴点を自動解析し、歪みのないオルソモザイク画像を作成します。広域な土木現場全体の現況把握や進捗確認、平面図のベースデータとして活用可能です。 - 3Dメッシュ生成および3Dガウシアンスプラッティング(3DGS)
複数アングルからの写真データからフォトリアリスティックな3Dテクスチャメッシュモデルを構築します。上位プランでは3Dガウシアンスプラッティング(3DGS)技術に対応しており、構造物のエッジや微細な形状を忠実に再現した現況モデルを生成できます。 - 温度情報付きオルソ画像・動画からのモデル生成
V5.3.0などのアップデートにより、赤外線サーマルカメラによる温度情報を含んだオルソ画像の出力や、撮影動画ファイルを基にした3Dモデル生成に対応しています。コンクリート構造物の点検や設備診断など、静止画撮影以外のソースも解析に適用できます。
LiDAR点群データ処理・公共測量対応機能
- LiDAR点群の軌跡補正とカラー化処理
Zenmuse Lシリーズ(L1/L2等)で取得したレーザー照射データとGNSS/IMUの自己位置・姿勢角データを統合し、高密度な三次元点群データを高速に生成します。可視光カメラのRGB情報を重ね合わせたカラー点群の生成もスムーズに行えます。 - 作業規程の準則に基づく成果物出力
国土地理院が定める「作業規程の準則」に準拠した成果物生成機能を備えています。公共測量マニュアルに基づく点検表や管理データの出力作業が省力化され、i-Construction案件における電子納品データの作成負荷を軽減します。 - 電力施設向け詳細点検モデリング
送電線や鉄塔などのインフラ設備に特化した処理アルゴリズムを搭載しています。細い電線や骨組みが入り組んだ複雑な形状でも欠損の少ない点群・メッシュモデルを生成し、離隔距離の計測や設備保全に活用できます。
こんな企業・現場に向いている/向いていない
向いている企業・現場
DJI製の産業用機体やLiDARモジュールを導入して三次元測量の内製化を進める建設・測量企業
- 機体・センサーごとの解析ソフトの使い分けによる業務の煩雑化
写真測量(Zenmuse P1等)とレーザー測量(Zenmuse L2等)の双方をDJI Terra単体で解析できます。センサーごとの別ツール契約や操作習得のコストを削減し、同一の操作体系で2Dオルソから高密度点群までスムーズに出力可能です。 - 公共測量やi-Constructionにおける帳票作成と精度検証の負担
「作業規程の準則」に準拠した成果物生成機能を標準で備えているため、従来行われていた外部ツールへの点群移行や手作業による帳票整理工程を短縮できます。現場での計測から提出データ作成までのリードタイムを圧縮できます。 - 広域な現場におけるフライト時間と撮影データ処理の肥大化
広域計測現場において高解像度カメラと組み合わせることで、飛行高度を引き上げて撮影枚数を抑えながら高精度な解析を行えます。後述の導入事例にあるように、撮影枚数を約6割削減し、飛行時間を4時間以上から47分へ短縮させつつ水平・標高ともに2cm以内の精度を確保する運用を実現します。
向いていない企業・現場
DJI以外の他社製ドローンや地上固定式スキャナーなど多様なハードウェアデータを一元処理したい現場
- マルチベンダー環境における点群・画像データ処理
DJI TerraはDJI製ハードウェア(機体・カメラ・LiDAR)に強く最適化されています。他社製ドローンで撮影した画像や位置情報(POSデータ)を持たない画像は2D再構築などで非対応となる制限があるため、特定メーカーに依存しないドローン・アグノスティックな処理環境を求める場合は、Pix4D等の汎用SfMソフトウェアを検討する方が適しています。 - Mac環境や非NVIDIA製グラフィックス環境での解析を前提としている組織
DJI Terraの動作にはWindows OS環境およびNVIDIA製GPUが必須要件となっています。macOS環境やAMD製GPUを搭載したPCでは動作しないため、既存のハードウェア環境をそのまま流用したい事業者には不向きです。
類似ツールとの比較
写真測量・点群処理の分野において、DJI TerraとPix4D(Pix4DmapperやPix4Dmaticなど)は代表的な選択肢ですが、設計思想と対応環境に明確な違いがあります。
DJI Terraの強みは、DJI製ハードウェアとの密接な連携とローカル処理のスピードです。Zenmuse P1による高解像度写真やZenmuse LシリーズによるLiDAR生データの解析、軌跡補正、カラー化、さらに国土地理院「作業規程の準則」に準拠した成果物作成までが同一ソフト内で完結します。DJI機材を中心とした土木現場においては、センサー特性に最適化されたアルゴリズムにより、パラメータ調整に迷うことなく迅速に処理結果を得られます。
一方でPix4Dなどの汎用ソフトウェアは、ドローンの機種やカメラメーカーを問わず幅広い画像・点群データを処理できる柔軟性を備えています。地上撮影画像や他社製レーザースキャナーのデータを統合したい場合や、クラウド上で処理・共有を行える「Pix4Dcloud」、CAD/GIS向け抽出に特化した「PIX4Dsurvey」のような高度な周辺モジュール群との連携を重視する場合は、Pix4Dに分があります。DJIエコシステム内での効率性を最優先するか、マルチベンダー対応やクラウド連携を重視するかによって選定が分かれます。
料金・プラン
DJI Terraの料金プランは公開されておらず、正規代理店経由での見積もり(要問い合わせ)となっています。ライセンスの種別や契約期間の体系は以下の通りです。
| ライセンス種別 | 利用期間形式 | 認証方式 | 主な用途・対応機能 |
|---|---|---|---|
| Standard(スタンダード) | 1年(サブスクリプション) / 永久 | オンライン / オフライン | 2Dオルソ、3Dメッシュ等の写真測量基本機能 |
| Flagship(フラッグシップ) | 1年(サブスクリプション) / 永久 | オンライン / オフライン | LiDAR点群処理、3DGS、電力点検など全機能 |
| 農業用(Agriculture) | 1年(サブスクリプション) | オンライン | マルチスペクトル画像解析、農地マップ作成 |
| クラスター(Cluster) | 1年(サブスクリプション) / 永久 | オンライン / オフライン | 複数PCによる分散並列処理(大規模解析向け) |
※参考価格帯としては税込約10万円〜50万円程度(プラン・期間・ライセンス形態により変動)とされていますが、正確な導入費用は利用するセンサー構成や必要な機能(LiDAR処理や3DGS機能の要否)を代理店に提示したうえで見積もりを確認する必要があります。また、利用環境に応じてインターネット常時接続を必要とする「オンライン認証」と、機密現場向けの「オフライン認証」が選択可能です。
導入事例・実績
株式会社安田測量(公共測量現場における空撮測量の効率化)
公共事業における約26haの広域計測現場において、DJI Matrice 300 RTK、Zenmuse P1、および解析ソフトウェアとしてDJI Terraを組み合わせたSfM写真測量が導入されました。
従来の「Phantom 4 Pro」単体運用と比較し、カメラ解像度の向上とDJI Terraの最適化処理により、飛行高度を35mから75mへと引き上げる運用が可能となりました。これにより、撮影枚数は従来の6,200枚から2,700枚へと約6割削減され、飛行時間も260分(4時間以上)から47分へと大幅に短縮されました。また、検証点を用いた精度確認では、水平精度で平均1.4cm、標高精度で平均1.2cmを達成し、公共測量の許容基準(5cm以内)を十分にクリアする高精度な測量成果が実証されています。(出所: ドローンジャーナル / 株式会社安田測量 事例発表会レポート)
導入前に知っておきたいこと
DJI Terraの導入を検討する際は、ハードウェア要件およびデータ入力に関する以下の仕様や制限事項を事前に把握しておく必要があります。
- Windows OSおよびNVIDIA製GPUの必須要件
DJI TerraはWindows 10(64ビット)以降専用のデスクトップソフトウェアです。macOSやLinuxには対応していません。また、画像処理エンジンがCUDAアーキテクチャに依存しているため、NVIDIA製グラフィックスカード(Shader Model 6.1以上、VRAM 4GB以上、RTX 2070以上推奨)が必須であり、AMD製GPUやIntel内蔵グラフィックスでは動作しません。大規模な点群・高解像度画像を処理するには、最低32GB、推奨64GB以上のメインメモリを搭載したワークステーションの準備が必要です。 - 他社製データや入力フォーマットの制限
DJI製以外の機体・カメラで取得したデータや、位置情報(POSデータ)が付与されていない画像は2D再構築などで解析対象外となる場合があります。また、画像フォーマットはJPEGやTIFFが推奨されており、RAW/DNG形式の直接処理には非対応です。さらに、撮影傾斜角のズレが35度を超える画像が含まれていると2D処理から除外され、サイドラップ・オーバーラップ不足による解析エラーを招く可能性があるため、撮影パラメータの管理に注意が求められます。 - ルート計画機能の仕様変更とライセンス区分
デスクトップ版ソフトウェア内での自律飛行ルート計画機能は、バージョンV5.0.0以降非対応となっています(送信機側のアプリ等で計画を実施)。また、LiDAR点群処理や3Dガウシアンスプラッティング、電力設備点検などの高度機能を利用するには上位ライセンス(Flagship)が必要となるため、自社の保有センサーや業務目的に合わせた適切なライセンス選定が必要です。
導入の流れ・期間
DJI Terraを導入する際の標準的な手順は以下の通りです。デスクトップインストール型のソフトウェアであるため、機材とライセンスが揃っていれば短期間で解析を開始できます。
- 問い合わせ・代理店への相談
DJI公式代理店へ問い合わせを行い、自社が使用しているドローン機体(Matriceシリーズ等)やセンサー(Zenmuse P1/L2等)、処理する現場の規模に応じた推奨プラン(StandardまたはFlagship、クラスター構成の要否)を相談します。 - 動作環境(PCスペック)の確認と見積もり
所有するPCのスペック(Windows 10/11、NVIDIA製GPU、メモリ容量等)がDJI Terraの要求仕様を満たしているか確認します。必要に応じて解析用PCの選定を含めた見積もりを取得します。 - 発注・ライセンス発行
契約締結後、ライセンスコードが納品されます。利用形態に応じて1年更新のサブスクリプションまたは永久ライセンスを選択します。 - ソフトウェアのインストールとアクティベーション
公式サイトよりDJI Terraインストーラーをダウンロードし、PCにインストールします。DJIアカウントを用いてオンライン認証、またはネットワークから切り離された環境の場合はオフライン認証用ファイルを適用してアクティベーションを完了します。 - 初期データ処理の検証と実業務運用
テストフライトで取得した画像やLiDARデータをインポートし、オルソ画像や点群の生成フローを確認します。DJI Terraの具体的な納期や導入期間は代理店の在庫・発行状況によって異なるため、要問い合わせとなります。
よくある質問(FAQ)
- スマートフォンやタブレット端末、Webブラウザ上で動作しますか?
- 動作しません。DJI TerraはWindows OSを搭載したデスクトップPC専用のソフトウェアです。クラウドサービスやモバイルアプリ形式での処理提供は行われておらず、ローカルPCのハードウェアリソース(特にNVIDIA GPUおよびメモリ)を使用して解析を行います。
- 無料トライアルやデモ版の利用は可能ですか?
- DJIアカウントを作成することで、一部の基本機能を試用できるトライアルライセンスが提供される場合があります。詳細な試用期間や利用可能な機能範囲については、DJI公式サイトまたは正規販売代理店へご確認ください。
- 操作サポートや技術的な問い合わせ窓口はありますか?
- DJI公式のオンラインサポート(マニュアル、FAQ、リリースノート等)のほか、購入元の正規販売代理店(セキドやヘリカムなど)による導入支援、技術問い合わせ窓口、操作講習セミナーなどが提供されています。
- インターネット接続がないオフライン環境のPCでも使用できますか?
- 使用可能です。DJI Terraにはオフライン認証ライセンスが用意されており、機密保持が求められる自治体やインフラ企業の隔離ネットワーク環境下でもアクティベーションを行い、データ解析を完結させることができます。
- 解約条件や契約期間の縛りはどのようになっていますか?
- サブスクリプション版(1年契約)の場合は年単位での更新となります。買い切り型の永久ライセンスを選択した場合は定期的な更新費用は発生しません(アップデート保守条件等はプランによる)。詳細な契約条件については代理店への見積もり時にご確認ください。