FAST Hybridとは?
FAST Hybridは、株式会社ファーストクルーが提供する、建築鉄骨の製作図(工作図)およびNC加工データ作成に特化した鉄骨専用CAD/CAMシステムです。鉄骨ファブリケーターや詳細設計部門における作図作業の属人化と長期化を解消し、伏図・軸組図の入力から3Dモデリング、各種施工図・単品図の自動作図、積算帳票出力までを一貫処理します。万トンクラスの大型物件にも耐えうる処理性能を備え、複数オペレーターによる同時並行入力やBIMソフトウェアとの連携によって、鉄骨製作における生産性向上と手戻り削減を支援します。
主な機能
FAST Hybridは、鉄骨ファブリケーターの工作図作成から工場加工データの生成、BIM連携までをカバーする機能を備えています。公表されている機能は主に以下の3つに分類されます。
3Dモデリングおよび図面自動生成機能
- 平面・軸組入力による3Dモデル自動生成
平面図(伏図)や軸組図の骨組情報を入力することで、3次元の鉄骨架構モデルを自動構築します。立体的な取り合いを視覚的に把握しながら作業を進められるため、平面図面だけでは気付きにくい部材同士の干渉や納まりの不整合をモデリング段階で早期に発見できます。 - 接合部およびプレート類の自動生成・配置
柱・梁の取り合い条件や標準仕様に基づき、仕口・継手・スプライスプレート・ガセットプレートなどの接合部位をルールに沿って自動生成します。手動による微細なプレート作図やボルト配置の手間を大幅に削減し、設計変更に伴う修正作業の負担を低減します。 - 各種製作図面・型紙の自動作図
構築された3Dモデルデータから、一般図、詳細図、部材ごとの単品図、デッキ・胴縁などの各種割付図、さらには工場加工用の型紙や加工指示書までを自動で図面化します。作図にかかる時間を大幅に圧縮し、作図ミスの混入を防ぎます。
CAMデータおよび積算帳票の出力機能
- NC加工データの自動生成
3Dモデルおよび図面データと連動し、鉄骨加工機械(孔あけ機、切断機など)に直接読み込ませるNC加工データを出力します。CAD作図からCAM加工へのデータ変換がシームレスに行えるため、工場側の加工準備工程を迅速化し、転記や手入力による加工不具合を防止します。 - 材料・加工関連の積算帳票自動作成
部材の寸法や数量情報を自動集計し、材長内訳表、製品重量一覧表、溶接長集計、HTB(高力ボルト)集計表などの各種帳票を自動出力します。拾い出し積算に伴う計算工数を削減し、購買部門や工場管理部門への正確な資材手配指示を支援します。
協調設計および外部システム連携機能
- 複数オペレーターによる同時並行モデリング(コラボレーション機能)
1つの同一物件データに対して、複数のオペレーターが同時にアクセスして入力・モデリング作業を行える機能です。従来は物件ごとに1人の担当者が抱え込みがちだったモデリング工程をチームで分担できるため、急ぎの大型物件や短工期案件における納期短縮に寄与します。 - 2D汎用CAD「実寸法師」との連携
鉄骨業界で広く普及している2D汎用CAD「実寸法師」とのデータ連携に対応しています。FAST Hybridで自動出力した図面を実寸法師に渡し、ファブリケーター独自の細かな図面表現や加工調整を慣れ親しんだ2D環境で行うといった柔軟な運用を可能にします。 - Autodesk Revitとの双方向連携アドイン(FAST Hybrid for Revit)
意匠・構造設計で標準的に用いられるBIMソフト「Autodesk Revit」との双方向データ連携を実現するアドイン機能を提供します。設計段階のRevitモデルを取り込んで詳細な製作モデルへ展開したり、FAST Hybrid側で作成した鉄骨詳細データをRevit側へ戻したりすることで、設計と製作の間の手戻りを抑えます。
こんな企業・現場に向いている/向いていない
向いている企業・現場
超高層ビルや大型物流倉庫など、万トンクラスの大型物件を扱う鉄骨ファブリケーター
- 大型物件の作図工数が膨大で、納期が逼迫しやすい
FAST Hybridは万トンクラスの大規模プロジェクトのデータ処理に対応しており、部材点数が極めて多い構造物でも安定した動作を実現します。データ肥大化によるレスポンス低下を防ぎ、大型物件の出図遅延リスクを低減させます。 - 1人のオペレーターに作図負荷が集中しボトルネック化している
複数人による同時並行モデリング(コラボレーション機能)を活用することで、階層ごとや構面ごとに作業を分担し、チーム全体で作図を進められます。繁忙期や急な設計変更時にも分業体制を敷くことで、出図までのリードタイムを圧縮できます。 - 加工指示書や積算帳票の作成に手間取っている
モデル作成と同時に単品図、加工指示書、ボルト集計表、材長内訳表などが自動出力されるため、工場側への受け渡し工数を削減できます。集計漏れや寸法ミスによる工場の手戻り加工を未然に防止します。
設計者・ゼネコンとのBIM連携を進め、フロントローディングを図りたい組織
- 設計図(意匠・構造図)から製作図への落とし込みで手戻りが頻発している
「FAST Hybrid for Revit」を活用し、Revitモデルの骨組情報を直接取り込んで仕口や継手などの詳細化を進められます。設計意図を正確に引き継いだ詳細モデリングにより、質疑応答や図面再提出の往復を最小限に抑えられます。 - 施工図検討会での合意形成に時間がかかっている
3Dモデルを用いて複雑な接合部の納まりを可視化できるため、ゼネコンや構造設計者との事前確認(フロントローディング)が円滑化します。現場着工前の早い段階で物理的な干渉や施工性の不備を潰し込み、現場での工期遅延を防ぎます。
向いている企業・現場(向いていない企業の条件)
鉄骨部材の加工を外注しており、自社工場での工作図・NCデータ作成を行わない事業者
- 鉄骨製作図の作成や加工指示は外注ファブリケーターに一任している
FAST Hybridは自社で詳細な工作図を描き、孔あけや切断などの工作機械を動かすファブリケーター向けの専門システムです。現場施工管理が主業務で、自社でNCデータや単品図を直接作成する必要がないゼネコンや工務店の場合、機能が過剰となり費用対効果を得にくい可能性があります。汎用の施工図CADやBIMビューアの利用を優先した方が適合する場合があります。 - 木造住宅や小規模RC造が中心で、鉄骨骨組の作図頻度が極めて低い
鉄骨専用に高度化されたシステムであるため、他工種(RC躯体や木造軸組など)の作図には適していません。異種構造を混在して扱う設計施工会社では、建築全般をカバーする汎用CADや建築向け汎用BIMソフトの導入が候補になります。
類似ツールとの比較
鉄骨専用CAD/CAMおよび鉄骨詳細モデリングツールの領域において、FAST Hybridは日本の建築鉄骨ファブリケーターの実務に特化した設計思想を持っています。グローバルで広く活用されている「Tekla Structures(テクラ・ストラクチャーズ)」などの鋼構造BIMソフトウェアと比較した場合、Tekla Structuresは鉄骨にとどまらずプレキャストコンクリートやRC躯体を含む構造全体の詳細詳細モデリングに強みを持つ一方、日本の細かなファブリケーター標準(加工ルール、型紙出力、標準的な工作図表現)に合わせるには高度なテンプレート設定やカスタマイズが求められる傾向があります。FAST Hybridは日本の鉄骨製作基準に即した接合部自動生成や帳票出力があらかじめ組み込まれており、国内の工場実務に即座に適合させやすい点が特徴です。
また、国内の主要な鉄骨専用CAD製品と比較した場合、FAST Hybridは早くから「複数人による同一物件への同時モデリング(コラボレーション機能)」を開発・実用化した点や、Autodesk Revitとの直接的な双方向連携アドインを用意している点が特徴的です。さらに、多くの国内ファブリケーターで仕上げ図面作成用として定着している2D CAD「実寸法師」との親和性が確保されており、従来の2D実務資産を生かしながら3DモデルやBIMへの移行を進めたい企業にとって有力な選択肢となります。
料金・プラン
FAST Hybrid本体の導入費用およびライセンス料金は公式には公開されておらず、導入企業の規模、利用ライセンス数、必要とするオプション機能(コラボレーション機能等)の構成に応じた個別見積もり対応となっています。また、Autodesk Revitと連携するためのアドインソフトウェア「FAST Hybrid for Revit」については、保守・サポートを含めた1年単位のサブスクリプション契約形態が案内されています(導入時の操作講習会などは別途費用)。
見積もりを依頼する際は、以下のポイントを確認することが推奨されます。
- 同時稼働ライセンス数とスタンドアロン/ネットワーク運用の形態
- コラボレーション(複数人同時入力)オプションの有無と費用
- バージョンアップ費用や技術サポート(電話・Web窓口)が含まれる保守契約の条件
- オペレーター向け操作教育・立ち上げ講習の有無と見積もり
導入事例・実績
FAST Hybridおよび連携機能の導入実績として、以下の事例が公表されています。
株式会社基設計
意匠・構造モデルの設計・検討プロセスにおいて、Autodesk RevitとFAST Hybridを双方向でつなぐアドイン「FAST Hybrid for Revit」を活用しています。仕口や継手などの鉄骨詳細部を早期に3Dモデル化することで、設計段階におけるおさまり検討のフロントローディングを実現し、後工程における手戻り削減や整合性向上に取り組んでいる事例として紹介されています(出所:Autodesk Revit活用事例紹介)。
※なお、「企業名・導入規模・具体的な削減数値(工数削減率など)」の3要素がすべて揃って公表されているFAST Hybrid単体としての公式事例データは、現時点では確認できていません。
BIMモデルと製作図をつなぐ「FAST Hybrid for Revit」の連携仕様
近年、建設現場では時間外労働上限規制への対応や品質向上を目的に、設計から施工・製作段階へのBIMデータ受け渡し(フロントローディング)が重要視されています。従来の鉄骨製作フローでは、設計事務所やゼネコンが作成した設計図書(2次元図面やBIMデータ)を基に、ファブリケーター側のオペレーターが鉄骨専用CADへ骨組情報を最初から再入力する作業が一般的であり、二重入力の手間や入力ミスに伴う手戻りが課題となっていました。
FAST Hybrid for Revitは、この断絶を解消するために開発された連携モジュールです。Autodesk Revit上で作成された意匠・構造の鉄骨骨組データ(柱・梁・ブレース芯線や部材断面情報)をFAST Hybridへ直接受け渡すことで、初期モデリングの再入力を不要にします。FAST Hybrid側で自動生成した詳細な仕口・スプライスプレート・ボルトなどの製作詳細情報を再びRevit側へフィードバックすることも可能なため、施工計画や干渉チェックを行うゼネコン側でも極めて精度の高い鉄骨詳細モデルを活用できるようになります。
後継製品「FAST ZERO」への展開とファーストクルーの組織再編情報
FAST Hybridの導入や運用を検討するにあたり、製品の開発ロードマップおよび提供元の組織再編について把握しておくことが重要です。
株式会社ファーストクルーは2021年6月に株式会社ハマネツの完全子会社となり、グループ内での事業強化が進められてきました。さらに、2025年10月1日付でCNS株式会社と合併し、存続会社である「株式会社CADネットワークサービス」へ移行する組織再編が発表されています。鉄骨CAD/CAM分野における開発・サポートリソースの統合が進められています。
また、ソフトウェア製品としては、FAST Hybridでオプション提供されていた「コラボレーション機能(マルチ入力モード)」などを標準搭載し、操作性や処理能力をさらに刷新した次世代の後継ソフト「FAST ZERO」が2023年6月にリリースされています。現在新規に鉄骨CAD/CAMの導入やリプレイスを検討する場合は、既存のFAST Hybridの稼働要件だけでなく、後継ソフトであるFAST ZEROへの移行性やサポート体制についてもあわせて提供元へ確認することが推奨されます。
導入前に知っておきたいこと
導入を検討する際は、以下の動作環境および実務上の留意点を確認しておく必要があります。
- ハードウェア要件とストレージ容量
対応OSはWindows 10 64ビット版です。万トンクラスの大規模鉄骨データや複数人による協調作業を安定して処理するためには、16GB以上のメインメモリと、500GB〜900GB以上のHDD/SSD空き容量が推奨環境として挙げられています。旧型の端末や低スペックPCでは大規模モデルの処理時にパフォーマンスが低下する懸念があるため、ハードウェアの更新計画もあわせて検討が必要です。 - 公開されているユーザー口コミ・不満点の状況
第三者レビューサイトやSNS上において、FAST Hybridに関する具体的な批判的レビューや不満点の公式報告は現時点では確認できていません。検討にあたっては、自社で扱う鉄骨製品のタイプ(S造ブレース構造、ラーメン構造、露出柱脚・埋め込み柱脚の仕様など)が標準機能でどこまで自動処理できるか、デモやヒアリングを通じて実務検証を行うことが確実です。
導入の流れ・期間
FAST Hybridの導入は、専門CAD/CAMソフトウェアの標準的なプロセスに沿って進められます。具体的な導入期間は物件規模や台数、オプション構成によって異なるため要問い合わせとなりますが、一般的な流れは以下の通りです。
- 問い合わせ・ヒアリング
公式サイトの問い合わせ窓口や電話にて、自社の製作工場の規模、年間加工トン数、現在使用しているCAD/CAM環境やNC工作機械のメーカー・型番を伝えます。 - デモンストレーション・機能確認
営業担当者や技術担当者による製品デモを通じて、作図画面の操作性、伏図・軸組入力の手順、自社標準の接合部ルールが再現できるかを確認します。 - 見積もり・構成決定
必要ライセンス数、スタンドアロンまたはネットワーク構成、コラボレーション機能の有無、講習会受講の有無を確定し、見積書が提示されます。 - 契約・納品・環境構築
契約締結後、ソフトウェアのインストールおよびライセンス認証を実施します。工場のNC工作機械と連動させる場合は、CAMデータの出力テストやポストプロセッサの適合確認を行います。 - 操作講習・実務稼働
オペレーター向けの操作講習を受講し、テスト作図を経て実際の物件データの入力・製作図出図へと移行します。
よくある質問(FAQ)
- クラウド版やスマートフォン・タブレット向けアプリはありますか?
- FAST HybridはWindows PC上で動作するデスクトップ型のオンプレミスソフトウェアです。スマートフォンやタブレット専用のアプリは提供されていません。作業は推奨環境を満たすWindows搭載のワークステーションまたはPCで行います。
- 無料トライアルやデモ版の貸し出しは行っていますか?
- 無料トライアルの一般公開や即時ダウンロード提供は確認されていません。導入検討時のデモンストレーションや機能適合性の確認については、公式サイトの問い合わせフォームまたは電話窓口より個別相談を行う必要があります。
- サポート体制や問い合わせ窓口の受付時間はどのようになっていますか?
- 株式会社ファーストクルーにより、電話(平日9:00〜17:30)および公式Webサイトの問い合わせフォームによるサポート窓口が開設されています。また、導入時の立ち上げを支援する有償の操作講習会なども案内されています。
- 2D CAD「実寸法師」との図面データのやり取りは可能ですか?
- 連携に対応しています。FAST Hybridで自動作図したデータを実寸法師側へ受け渡し、ファブリケーターごとの微細な納まり表現や加工情報の追記作業を慣れ親しんだ2D環境で行う運用が可能です。
- 「FAST Hybrid for Revit」の契約形態と期間はどうなっていますか?
- Autodesk Revitと双方向連携を行うアドインモジュール「FAST Hybrid for Revit」は、保守サポートを含めた1年単位のサブスクリプション形態で提供されています。複数年契約の有無や解約条件については個別問い合わせが必要です。
- 後継製品の「FAST ZERO」との違いは何ですか?
- FAST ZEROは2023年6月に発表された後継ソフトウェアで、FAST Hybridで開発されたコラボレーション機能(複数人同時並行入力)などを標準搭載し、プラットフォームの近代化や操作性の向上が図られています。新規導入にあたってはFAST ZEROの提案を受ける形になるケースが多いため、最新の提供状況を担当者へ確認してください。