KYアシストとは?
KYアシストは、毎日の作業前ミーティングで作成されるKYシート(危険予知活動表)の作成から周知、承認、クラウド保管までをスマートフォンやPC上で完結させる建設現場向け安全DXソリューションです。NTTコミュニケーションズ(NTTドコモビジネス)と株式会社竹中工務店が共同開発し、ドコモ建設現場IoTソリューション「tateras®」のラインナップとしても展開されています。職種や作業内容に応じた過去の事故事例データを即座に呼び出し、現場作業員全員で具体的な被災リスクを共有しながら危険予知を行える点が特徴です。従来の紙帳票の配布や回収、承認印の受領、事務所でのファイリング作業にかかる労務負担を削減し、2024年4月適用の時間外労働上限規制に対応しつつ現場の安全水準向上を支援します。
主な機能
KYアシストは、現場におけるKY活動の実効性向上と、管理・回収に伴うバックオフィス業務の合理化を両立させる機能を備えています。主な機能を用途別に分類して解説します。
KYシート作成・承認ワークフロー機能
- モバイル帳票作成・オンライン回覧
職長や現場作業員が所持するスマートフォンやタブレットから、直感的な操作でKYシートや作業安全指示書、日常点検チェックリストを作成・提出できます。現場内で紙の用紙を持ち歩く必要がなく、朝礼後や作業着手直前のツールボックスミーティング(TBM)の場ですぐに当日の作業内容や安全指示を記録・共有できます。 - ワンタップ電子承認・リアルタイム確認
元請の現場監督や安全管理者は、現場内や詰所、遠隔の事務所からPCやモバイル端末を用いて提出された帳票を確認し、電子的に承認できます。紙のシートを回収して印鑑を押す作業フローが不要になり、朝の混雑した時間帯における詰所での受け渡し待ちや承認漏れを防ぎます。 - 重複項目の自動連携・入力予測支援
作業場所、工種、元請名など、日々繰り返し入力する共通項目を自動補完し、記載内容の予測表示によって職長の入力工数を低減します。文字入力の手間を最小限に抑えることで、スマートフォン操作に慣れていない職人でもスムーズに作成を完了できる操作性を担保しています。
事故事例データベース・安全意識向上機能
- 職種・作業内容別の事故事例サジェスト
鉄筋工、とび工、設備工などの職種や、「高所作業」「揚重作業」といった作業区分を選択することで、蓄積された過去の労働災害・事故事例集から関連する事例が自動提示されます。過去に起きた類似被災パターンを参照しながら「どこに危険が潜んでいるか」を視覚的に確認できるため、経験の浅い作業員でも直感的にリスクを把握できます。 - 危険予知4ラウンド法(4R法)に沿った議論設計
提示された事故事例をもとに、現場の現状把握(1R)から本質追究(2R)、対策樹立(3R)、チーム目標設定(4R)へと進める対話型ミーティングを支援します。単なる「注意する」「気をつける」といった精神論の記入を脱却し、実効性のある安全対策をシートへ落とし込めます。 - KY活動記録のクラウド一元管理
作成・承認された帳票データはクラウド上に安全に保管され、後からの検索や過去履歴の確認が容易に行えます。労働基準監督署や社内安全パトロールの監査時にも必要な記録を即座に出力・提示できるため、法定帳票の保管・管理業務が効率化されます。
現場DXエコシステム連携機能
- 顔認証入退場システム「FACEma」連携
ドコモビジネスが提供する顔認証入退場システム「FACEma」と連携することで、現場に入場した作業員データをKYアシストへ自動で連動させることが可能です。当日の入場実績をもとに作業員名簿の突合や参加確認の抜け漏れを防止し、職長が朝礼時に一人ひとりの名前を手書き・再入力する手間を削減します。 - 施工管理IoTプラットフォーム「tateras®」連携
「朝礼アシスト」「段八エリア(作業間連絡調整・揚重機調整)」「ToDoコネクト」といったtateras®シリーズの他機能とシームレスに接続できます。現場全体の工程情報やエリア調整結果を安全指示書に反映させるなど、安全管理と施工管理を分断させない統合的な運用環境を構築できます。
こんな企業・現場に向いている/向いていない
向いている企業・現場
毎朝のKY活動が形骸化し、紙帳票の配布・回収・承認に追われているゼネコン・現場
- KYシートの記入内容が「足元注意」など毎回同じ文言になり、形骸化している
職種や当日の作業内容に応じた過去の事故事例データが提示されるため、作業員同士が具体的な被災リスクをもとに議論を交わす運用へ転換できます。中災防が推奨する4ラウンド法(現状把握・本質追究・対策樹立・目標設定)の思考プロセスをスマートフォン上で自然に実践でき、マンネリ化していた朝の安全ミーティングを実効性の高い場へと再構築できます。 - 始業直後に数十組の職長が詰所に並び、承認印の押印や書類整理に現場監督が忙殺されている
スマートフォンからの作成・電子提出とPC画面での即時承認に対応しているため、朝礼後の紙の受け渡し移動が不要になります。提出状況もダッシュボード上で一覧確認できるため、未提出の協力会社を即座に把握し、現場監督は書類の回収係ではなく実地パトロールや施工指導に注力できるようになります。 - 工事完了後に段ボール数箱分に達するKY用紙の保管・整理・廃棄コストがかさんでいる
承認済みの帳票はクラウド上に自動保管され、日付・工種・協力会社名で瞬時に検索・閲覧が可能です。紙のファイリング作業や保管スペースの確保、法定保管期間経過後の廃棄業務が解消され、監査や安全点検時にも必要なデータを即座に呼び出せます。
入場者の把握と安全管理を連動させ、現場全体の統轄管理を効率化したい大規模・中規模現場
- 当日の入場作業員とKYシートの記載名簿に齟齬があり、安全指示の周知漏れが起きやすい
顔認証入退場システム「FACEma」との連携に対応しているため、実際に現場入場を済ませた作業員情報を連動させて参加者確認を省力化できます。作業員の入場状況と安全ミーティングの受講実績を一気通貫で確認できるため、統轄安全衛生責任者としての指導・管理責任を確実に果たせます。 - 安全管理だけでなく、工程や揚重機調整など毎日の作業間連絡調整を一元化したい
ドコモ建設現場IoTソリューション「tateras®」の空間・揚重機調整機能(段八エリア)や朝礼支援機能と連動させることで、作業間の干渉防止や連絡調整事項をダイレクトにKYシートや安全指示へ引き継げます。ツールごとに別々で入力・指示出しを行う二重手間を省き、現場運営全体の業務フローを統合できます。
向いていない企業・現場
作業班が1〜2名で完結し、協力会社の出入りがほぼない小規模リフォーム・専門工事会社
- 元請・下請間の重層下請構造がなく、毎日の提出・承認フロー自体が存在しない
自社社員数名で完結する小規模リフォームや単日工事では、複数階層にわたる提出・承認ワークフローや顔認証連携といった機能の恩恵が限定的です。事故事例の検索や安全対策の提示のみを目的とする場合は、単機能の安全アプリや汎用的なチャットツールの活用にとどめた方が運用コストや導入負荷を抑えられます。 - 現場作業員がスマートフォンを所持しておらず、紙文化からの切り替えが難しい現場
KYアシストはモバイル端末での操作を前提としているため、作業員や職長が操作端末を持たない、または通信環境が整備されていない地下深部などの現場では初期導入時のハードルが生じます。社内端末の貸与や操作説明会の開催など、現場の受け入れ体制が整っていない場合は、まず施工管理アプリなどの基本的な連絡ツールから段階的に導入を進めることが推奨されます。
類似ツールとの比較
建設現場向けの安全管理支援ソリューションには、KY活動のペーパーレス化に強みを持つ製品から、AIによる危険要因抽出、ウェアラブルセンサーによる生体データ監視まで多様なアプローチが存在します。現場の運用課題に応じた代表的なツールとの比較は以下の通りです。
| ツール名 | 特徴 | 料金 | 向いている企業 |
|---|---|---|---|
| KYアシスト | 竹中工務店と共同開発。過去の事故事例を職種別に提示し、KYシート作成・承認をスマホで完結。tateras®や顔認証と連携可能 | 要問い合わせ | 事故事例を活用して形骸化を防ぎたいゼネコン、現場IoTや入退場管理と連動させたい企業 |
| HACARUS KY | 入力作業名からAIが危険ポイントと労災事例をイラスト付きで自動提案。NETIS登録技術でQRコード連携にも対応 | 要問い合わせ | イラスト付きの危険予知で直感的にリスクを把握させたい現場、NETIS加点を狙う公共工事 |
| 安全支援アプリ | 現場写真を1枚撮影するだけで生成AIが危険箇所を特定し、関連法令や事故事例を自動提示するスマート安全管理ツール | 要問い合わせ | 写真ベースで瞬時に危険予知を行いたい現場、ベテランのノウハウをAIで標準化したい施工会社 |
| Work Mate | スマートウォッチで脈拍等のバイタルデータとWBGT値をAI解析。熱中症予兆や転倒・転落を早期検知してアラート通知 | 要問い合わせ | 書類の電子化だけでなく、作業中の作業員個人の体調変化や転倒事故をリアルタイムで見守りたい現場 |
ツール選定の基準として、毎朝のKY活動やTBMにおける「書類業務のペーパーレス化」と「参加型の安全教育」を最も重視する場合は、KYアシストが有力な選択肢となります。大手ゼネコンである竹中工務店の実務ノウハウが組み込まれており、職種ごとの過去事故事例を起点に対話形式で危険予知を進められるため、単に紙をPDF化するだけの電子帳票ツールに比べて安全意識の向上効果を期待できます。
一方、より視覚的なイラスト提案やAIによる危険要因の自動抽出を重視する場合は、作業名からイラストと事例を提示するHACARUS KYや、スマートフォンで撮影した現場写真から危険箇所を即座に判定する安全支援アプリが適しています。また、朝のミーティング記録にとどまらず、日中の高熱環境下における作業員のバイタル状態や転倒・転落リスクを作業中にリアルタイム監視したい場合は、ウェアラブル端末を活用するWork Mateなどの見守りシステムとの併用や個別導入を検討する必要があります。
料金・プラン
KYアシストの導入費用および月額利用料は、現場の規模や利用ユーザー数、導入期間などに応じた個別見積もりとなっており、公式サイト上での定額料金は公開されていません(要問い合わせ)。
なお、KYアシストが組み込まれているドコモ建設現場IoTソリューション「tateras®」シリーズ全体としては、「初期費用+1カ月目の利用料」から利用を開始でき、解約時の違約金が発生しない契約体系が案内されています。現場ごとの工期に合わせた柔軟な契約運用が可能な設計となっています。料金見積もりを依頼する際は、以下のポイントを事前に確認することをおすすめします。
- 課金単位の基準(現場ごとの現場単位課金、利用するユーザー・職長アカウントごとのID課金、もしくは現場規模による従量課金か)
- 初期導入費用の有無(初期アカウント発行費、マスタ登録代行、現場説明会などの導入サポート費用の内訳)
- 関連ソリューションとのセット割引(顔認証入退場システム「FACEma」や、tateras®内の「朝礼アシスト」「段八エリア」とセットで導入する場合の割引適用の有無)
導入事例・実績
KYアシストは、共同開発元である大手ゼネコンの株式会社竹中工務店をはじめとする建設現場で実導入されています。
株式会社竹中工務店
竹中工務店の実際の施工現場において、日々のKY活動のペーパレス化および現場の安全管理高度化を目的にKYアシストが導入されました。職種ごとの過去事故事例を呼び出し、朝のミーティングで作業員全員に共有することで、従来よりも具体的かつ説得力のある安全注意事項のディスカッションを実現しています。紙帳票の受け渡しや承認待ちにかかっていた非生産時間の削減と、現場全体の安全意識向上の双方が確認されています。(出所:株式会社竹中工務店 公式Webサイト)
※そのほか、ドコモビジネスの公開資料において「写真付き事故事例によって外国人や若手作業員への理解が格段に深まった」「毎朝の職長の帳票作成負担が軽減された」といった定性的な利用者の声が報告されていますが、企業名・現場規模・具体的な工数削減数値が揃って公開されている単独事例は現時点で上記のみとなっています。
竹中工務店との共同開発背景と現場IoTプラットフォーム「tateras®」連携の実務価値
KYアシストが一般的な建設SaaSと一線を画している要因として、スーパーゼネコンである株式会社竹中工務店の現場知見と、NTTドコモグループの通信・クラウドインフラが融合して開発された背景があります。建設現場の安全管理においては、労働安全衛生法第60条に基づく職長・安全衛生責任者の指導義務や、中災防が提唱する「4ラウンド法(現状把握・本質追究・対策樹立・目標設定)」の実践が求められますが、紙帳票による運用では「書くこと自体が目的化」し、実効性が失われやすい構造的課題がありました。KYアシストは、現場の作業員が直感的に扱えるUIと、職種別に蓄積された事故事例の活用ロジックを実装することで、法令遵守と安全意識の向上を両立させています。
さらに、NTTドコモビジネスが展開する建設DXブランド「tateras®」の各種ソリューションと有機的に接続できる点も実務上の大きな強みです。顔認証入退場システム「FACEma」と連携すれば、現場への物理的な入場実績がKYシートの参加者情報とシームレスに突合され、入場と安全指示の受講確認が一気通貫で完結します。また、作業間連絡調整ツール「段八エリア」と連動させることで、揚重機の使用予定や作業場所の重複といった空間的リスクをKYシートへ直接反映させることが可能です。単なる書類のペーパーレス化にとどまらず、朝礼から入場、連絡調整、作業前KYに至る現場の朝の業務フロー全体を同一プラットフォーム上で最適化できる点が、KYアシストの実務的な価値を裏付けています。
導入前に知っておきたいこと
KYアシストを検討するにあたり、現場定着に向けた運用上の注意点として以下の点が報告されています。
- 形式的な入力による形骸化防止と「対話」の設計
帳票作成をスマートフォン上で行えるようになる一方、単に画面上でチェックを入れて完了とするだけでは、紙の時と同様に形式的な作業に陥るリスクがあります。NTTコミュニケーションズや竹中工務店の公開情報においても、提示される事故事例を作業員全員で画面確認し、双方向で危険のポイントや対策を声に出して話し合う現場運用のルールづくりが重要であると指摘されています。 - 協力会社・職長への端末配備とリテラシー対応
元請の現場監督だけでなく、各工種の職長が現場でスマートフォンを操作して入力を行うため、協力会社側の通信端末の準備や操作習熟が必要です。現場導入初期には、操作に不慣れな高齢の職長やITツールの扱いに抵抗感を持つ作業員に対して、朝礼時や安全協議会での操作レクチャーやサポート体制を整えておくことが定着の鍵となります。
導入の流れ・期間
KYアシストの導入は、問い合わせから現場運用開始まで段階的に進められます。公式サイトに記載された情報および同カテゴリSaaSの一般的な導入手順は以下の通りです(具体的な導入期間は現場規模や契約内容によるため要問い合わせ)。
- 問い合わせ・ヒアリング
公式サイトの専用フォームより問い合わせを行います。担当者より現場の規模、工期、現在のKYシート運用状況や抱えている課題のヒアリングが行われます。 - デモンストレーション・提案
実際の画面を用いたデモ操作や、過去事故事例の提示機能、承認ワークフローの説明を受けます。現場ごとの運用要件(FACEma等の連携有無)に合わせた最適な構成が提案されます。 - 見積もり・契約
導入現場数やアカウント数に応じた見積もりが提示され、利用契約を締結します。 - 初期設定・マスタ登録
現場ごとの組織情報、協力会社情報、工種・作業内容マスタなどの初期登録を行います。現場監督や職長向けのアカウント発行を実施します。 - 説明会実施・現場稼働開始
現場の職員や協力会社の職長を対象とした操作説明会を実施し、実際の朝礼・TBMでの利用を開始します。定着化に向けたフォローを受けながら実運用へと移行します。
よくある質問(FAQ)
- 利用するために専用の端末を購入する必要がありますか?
- 専用の専用ハードウェアを購入する必要はありません。現場監督や職長が所持している一般的なスマートフォン(iOS / Android)やPCのWebブラウザ環境から利用できます。
- 無料トライアルやデモ画面の確認は可能ですか?
- 公式サイト上で無償トライアルの可否は明記されていませんが、問い合わせを通じて実際の画面デモや機能説明を受けることが可能です。トライアル運用の可否についてはベンダー窓口へ直接ご確認ください。
- 契約期間の縛りや、途中解約による違約金は発生しますか?
- KYアシストを含む「tateras®」ソリューション群は、「初期費用+1カ月目の利用料」から開始でき、契約期間の縛りや違約金なしで解約可能な体系が案内されています。現場の工期に応じた柔軟な運用が可能です。
- 外国人作業員が多い現場でも活用できますか?
- 職種別の過去事故事例データが提示されるため、文字情報だけでなく具体的な事故パターンを共有することで、言語の壁があっても危険箇所のイメージを共有しやすいメリットがあります。詳細な多言語対応状況については問い合わせ時の確認が推奨されます。
- 電波が届きにくい地下や山間部の現場でも利用できますか?
- ブラウザおよびクラウド通信を基本とするため、入力・送信時にはインターネット接続環境が必要です。通信環境が極端に制限される現場での運用方法やオフライン対応の可否については、事前にベンダーへご相談ください。
- 現場への定着支援やサポート体制はどのようになっていますか?
- 現場作業員が直感的に使えるUI/UXが設計されているほか、現場への定着に向けた各種フォロー体制が用意されています。導入時の運用設計や協力会社への説明方法についても相談が可能です。