Site Scan for ArcGISとは?
Site Scan for ArcGISは、ESRIジャパン株式会社が提供する、ドローンによるデータ収集からクラウドでの画像処理、GIS(地理情報システム)基盤上での解析・共有までをワンストップで実行するクラウドネイティブなドローン写真測量・マッピングソリューションです。専用のフライト計画アプリとWebブラウザベースのマネジメント機能を組み合わせ、現場での自律飛行撮影から2Dオルソ画像、数値標高モデル(DEM/DTM)、3Dメッシュ、3D点群データの生成をクラウド上で自動化します。ハイスペックな解析用ローカルPCを現場ごとに用意することなく、EsriのArcGIS環境やAutodeskのBIMプラットフォームと直接連動させ、大規模土木現場や広域インフラ管理における空間情報DXを支援します。
主な機能
Site Scan for ArcGISは、現場でのデータ取得を司るモバイル環境と、クラウド上でデータ処理・解析・管理を一元化するWeb環境によって構成されています。主要な機能は以下の3点に分類されます。
フライト計画・自律飛行制御機能(ArcGIS Flight)
- テンプレートベースの3D自律飛行計画
iPad等のiOS端末向け専用アプリ「ArcGIS Flight」を用い、現場の形状や計測対象に応じた飛行計画を直感的に作成できます。標準的な格子状のサーベイ飛行をはじめ、交差撮影を行うクロスハッチ、垂直構造物を捉えるバーティカル、単一対象物の周囲を旋回するインスペクション、広域景観用のパノラマ、道路や河川などの線状構造物に適したコリドースキャンといったテンプレートが用意されており、現場の幾何学的な条件に合わせた自律飛行・撮影制御が可能です。 - 飛行ログの自動同期・データ管理連携
飛行完了後、ドローンが記録した飛行経路や高度、センサーログがSite Scanのクラウド基盤へ自動的にアップロードされます。パイロットが手動でフライトログを管理・集計する作業が不要になり、誰が・いつ・どの機体で・どのような飛行パラメータを用いて撮影したのかを後から確実に追跡・検証できる環境が整います。
クラウド画像処理・空間解析機能(Site Scan Manager)
- クラウドSfMによる3次元データの自動生成
撮影した空撮画像をWebブラウザ「Site Scan Manager」経由でアップロードすることで、クラウド上でSfM(Structure from Motion)多視点ステレオ処理が自動実行されます。高解像度のトゥルーオルソ画像、地盤高を示す数値標高モデル(DEM/DTM)、構造物の外観を再現する3Dメッシュ、高密度な3D点群(LAS等)が自動的に生成され、高価な解析用ワークステーションに依存しない処理体制を構築できます。 - GCP(地上基準点)の手動・自動検出
測量成果の絶対位置精度を担保するための地上基準点(GCP)について、画像内からの手動指定だけでなく自動検出機能に対応しています。標定点・検証点のターゲット認識と座標照合作業を効率化し、公共測量やi-Construction基準に沿った高精度な出来形管理や現況把握のデータ処理工数を圧縮します。 - ブラウザ上での2D/3D計測・土量計算
専用のCADやデスクトップGISを起動することなく、Webブラウザ上で直接、二次元の距離・面積計測や三次元での体積計算(切り盛り計算)が実行可能です。土工現場における盛土・切土の土量を算出して進捗を定量把握できるほか、タイムラインビューアー機能によって異なる撮影時期のデータを重ね合わせ、現場の経時的な変化を視覚的に比較できます。
プラットフォーム連携・組織フリート管理機能
- ArcGISプラットフォームおよびAutodesk環境とのデータ連携
生成されたオルソ画像や点群、標高データは、ArcGIS OnlineやArcGIS Enterpriseへダイレクトに公開・共有できます。さらにAutodesk BIM 360やAutodesk Construction Cloud(ACC)との連携に対応しており、ドローンで取得した最新の現況メッシュ・点群データと設計3Dモデル(BIM/CIMデータ)をWeb上で重ね合わせ、設計と施工の差異チェックや現場の指摘事項共有がスムーズに行えます。 - ドローン機体・パイロットのフリート管理
組織内で保有するドローンの機体情報、搭載センサー、バッテリーなどのハードウェアインベントリと、各パイロットのフライト履歴を一括管理するフリートマネジメント機能を備えています。企業全体での機材稼働状況の把握や安全運航管理の徹底をクラウド上で統一的に推進できます。
こんな企業・現場に向いている/向いていない
向いている企業・現場
複数の大規模現場を抱え、土木進捗や点群データを組織横断で共有・解析したい大手・中堅ゼネコン
- 解析用PCのスペック不足と処理待ちによる業務停滞
Site Scan for ArcGISのクラウドネイティブな自動画像処理を適用することで、現場事務所ごとのハイスペックPC調達や数時間におよぶローカル処理へのリソース占有を排除できます。空撮データをアップロードするだけでクラウド側でオルソ画像や点群が自動生成されるため、内業時間を圧縮しながら複数工区の進捗確認を並行して推進できます。 - 設計モデル(BIM/CIM)と現況点群の重ね合わせ確認に手間がかかる課題
Autodesk BIM 360やACCとのダイレクト連携機能を活用し、Webブラウザ上でドローン現況データと設計3Dモデルを直接オーバーレイ表示できます。特別な三次元CADソフトを持たない関係者とも同一画面上で切り盛り状況や施工誤差を視覚的に共有でき、フロントローディングによる手戻り防止と合意形成の迅速化が図れます。
広域インフラや公有資産の管理においてGISとドローンデータを統合したい官公庁・自治体・インフラ企業
- 点群データやオルソ画像が単発のファイルとして散逸し活用されない課題
Site Scanで生成された成果品をArcGIS Online/Enterpriseの地理空間データベースへ直接連動させ、登記情報や都市計画図、ハザードマップなどの既存GISレイヤーと一体化して管理できます。スキー場や大規模造成地、沿局インフラなどの広域デジタルツイン構築において、空間位置に紐づく一元的な維持管理・点検台帳基盤として運用できます。 - 複数拠点・多数の操縦者によるフライト履歴や安全管理の形骸化
組織内のドローン機体情報やパイロットのフライトログをクラウド上で自動収集・一元管理できるフリート管理機能を活用することで、ガバナンスの効いた安全運航管理体制を容易に維持できます。
向いていない企業・現場
インターネット接続環境がない現場でのローカル完結処理や、SfMアルゴリズムのパラメータを細部まで手動調整したい事業者
- 通信環境が制限される山間部やセキュアな閉域網での運用を求めるケース
Site Scan for ArcGISは撮影画像のアップロードから点群・オルソ生成までをクラウドで実行するアーキテクチャであるため、大容量の画像データを転送できる安定した高速通信環境が不可欠です。オフラインのローカル環境のみで処理を完結させたい場合や、通信回線の確保が難しい現場を主とする場合は、ローカル処理に対応したデスクトップ製品(ArcGIS Drone2Mapなど)の導入を検討した方が合理的です。 - SfM処理におけるタイポイント抽出や内部パラメータを職人的に調整したいケース
Site Scanは自動化されたプッシュボタン式のクラウド処理を重視して設計されているため、解析アルゴリズムの詳細なパラメータをマニュアルで微調整しながら限界精度を追求する用途には不向きです。研究開発や特殊構造物の変状解析などで詳細な手動調整を必須とする場合は、設定の自由度が高い専門のデスクトップSfMソフトウェアが適しています。
類似ツールとの比較
ドローン写真測量ソフトには、ローカルPCにインストールして解析を行うデスクトップ型と、サーバー側にデータを転送して処理を行うクラウド型(SaaS)が存在します。同じEsri製品群のなかで比較対象となるのが、デスクトップ完結型の「ArcGIS Drone2Map」です。Drone2Mapはオフライン環境のPC単体でSfM処理を実行できるため、インターネット接続が制限された環境や、自社内サーバーからデータを一切外部に出せないセキュリティ要件を持つ現場に適しています。一方、Site Scan for ArcGISはクラウド処理を採用しているため、ローカルマシンのCPU/GPU性能に依存せず、大容量ストレージの管理や複数案件の並行処理、さらに機体やパイロットを束ねるフリート管理をWeb上で完結できる点が大きな違いです。
また、一般的なドローン点群処理SaaSと比較した場合、Site Scan for ArcGISの最大の強みは「EsriのGISエコシステム」および「Autodeskの建設クラウド」とのネイティブな統合性にあります。多くのSfMソフトウェアが点群やオルソの生成・書き出しに主眼を置いているのに対し、Site Scanは生成された成果物をArcGISの広範な地理空間レイヤー(地形、気象、行政境界など)やBIM 360/ACCの設計モデルとシームレスに結合し、Webブラウザ上で切り盛り土量計算やタイムライン比較をそのまま実行できるデータ連携基盤としての価値を持っています。
料金・プラン
Site Scan for ArcGISの日本国内向けライセンス体系は、利用者の役割や権限に応じた定額利用のSaaS形式が採用されています。具体的な導入費用および年額・月額の定価は公表されておらず、利用規模や構成に応じた個別見積もり対応となっています。
ライセンスの構成としては、データ処理や詳細解析、外部へのエクスポート権限を有するオペレーター向けの「Full-Access」ライセンスと、Webブラウザ上でのデータ閲覧や簡易的な計測作業を中心に行う関係者向けの「Viewer」ライセンスなどが設定されています。また、導入検討用の仕組みとして21日間の無料トライアルが用意されています。
導入見積もりを依頼する際は、以下のポイントを事前に整理しておくことが推奨されます。
- 自律飛行や画像処理を直接実行するパイロット・解析担当者の人数(Full-Accessライセンスの必要数)
- 現場の進捗データや土量計算結果をブラウザ上で確認する発注者・施工管理者・協力会社の人数(Viewerライセンスの必要数)
- 既存のArcGIS Online / ArcGIS Enterprise組織アカウントとの連携有無およびストレージ要件
導入事例・実績
Site Scan for ArcGISは、海外の大規模施設管理や国内の土木・インフラ分野において活用が進められています。公表されている代表的な事例として、米国Esriによる「Telluride Ski Resort(テリュライド・スキーリゾート)」での取り組みが挙げられます。
同リゾートでは、広大な山岳リゾート全体の地形・設備を正確に把握するため、Site Scan for ArcGISを導入してドローン空撮データから高精度な広域デジタルツインを構築しました。急峻な地形や天候変化が激しい広大なエリアにおいて、クラウド処理を介して3Dメッシュやオルソ画像を効率的に生成・更新し、ゲレンデの保守管理や開発計画の策定、安全対策の高度化に寄与しています。
なお、国内の建設・土木分野における活用実績については、ESRIジャパン公式のリソース集やチュートリアル等を通じて一般的なGIS連携・施工管理効率化の手法が多数提示されているものの、単独の国内民間企業による具体的な削減工数(時間・パーセンテージ等)を数値として公表した個別事例は現時点で確認できていません。
ArcGISおよびAutodesk BIM 360とのシームレスなデータ連携構造
Site Scan for ArcGISを導入する最大の技術的メリットの一つが、GISプラットフォームとBIM環境をシームレスに横断できるデータ連携アーキテクチャにあります。従来の土木測量ワークフローでは、SfMソフトで出力した点群(LAS形式)やオルソ画像(GeoTIFF形式)を外部ストレージに保存し、個別のCADソフトやGISソフトに手動でインポートして座標系を合わせ直すという分断された作業が発生していました。
Site Scanは処理完了と同時に、成果物をArcGIS OnlineやArcGIS Enterpriseのレイヤーとして直接パブリッシュする機能を備えています。これにより、国土基本情報や都市計画データ、地下埋設物データなどの豊富な空間情報とドローン最新現況データを同一の地理座標上で重ね合わせることが可能です。
さらに、Autodesk BIM 360やAutodesk Construction Cloud(ACC)とのコネクタ機能を標準で備えており、Autodesk側のリポジトリに格納されているRevitやCivil 3Dの設計データをSite Scan Managerの画面上へ直接呼び出すことができます。土工の掘削面や構造物の設計3Dモデルと、ドローンで生成した最新の現況点群・メッシュをWebブラウザ上で透過的に重ね合わせ、設計面に対する超過・不足の確認や、施工上の干渉リスクをオフィスと現場の双方がリアルタイムに把握できる仕組みを実現しています。
現場運用を支える技術リソースと国内サポート体制
ドローン測量やクラウドSfMを現場実務へ定着させるにあたっては、ソフトウェアの操作習得だけでなく、測量精度管理やGCP配置に関する実践的なノウハウが求められます。ESRIジャパンは国内ユーザー向けに、日本語による各種支援リソースとサポート窓口を提供しています。
具体的には、基本操作から高度な空間解析までを網羅した「画像処理マニュアル」や「逆引きガイド」、初学者がステップバイステップで習得できる「チュートリアル」などの技術文書が整備されています。また、グローバルおよび国内のユーザーが集う「Esri Community」による知見の共有基盤に加え、ESRIジャパン専任技術者による導入支援やテクニカルサポートが提供されており、ドローン運用の内製化を進める建設企業や自治体におけるスムーズな立ち上げを支援する体制が構築されています。
導入前に知っておきたいこと
Site Scan for ArcGISの導入を検討する際は、運用面やシステム仕様における以下の制約事項について事前に把握しておく必要があります。
- 自律飛行制御(ArcGIS Flight)の機種およびOS制約
飛行計画の立案から自動操縦までを担うArcGIS Flightアプリは、現時点でiOS(iPad等)専用となっており、Android端末には対応していません。また、自律飛行を直接制御できる機体はDJI Phantom 4 RTKなどメーカーが公式に認定した特定モデルやSDK対応送信機に限られます。非対応のドローンを使用する場合は、他社製アプリで撮影した位置情報付き画像(JPG/TIFF)をWebブラウザから手動アップロードして処理する必要があり、フライトログの自動同期などの恩恵は限定的になります。 - 通信環境とクラウド処理待ち時間
数百〜数千枚に及ぶ高解像度写真をクラウドに転送するため、高速かつ安定したアップリンク回線が不可欠です。また、処理自体はサーバー側で自動的に行われるものの、アップロード容量やサーバー負荷状況、撮影枚数によっては完了までに一定の待ち時間が発生します。現場で撮影直後にその場で解析結果を確認したい用途では、即時性の面で運用ルールの工夫が求められます。 - ライセンス区分によるエクスポート権限の制限
成果物である点群データ(LAS等)やオルソ画像のダウンロード、外部CAD/GISへの生データエクスポートは「Full-Access」権限を持つユーザーに制限されます。「Viewer」ライセンスのユーザーはWebブラウザ上での閲覧や簡易計測、重層表示に機能が限定されるため、社内外のどの担当者にデータ出力権限を付与するか、事前のライセンス配分計画が必要です。
導入の流れ・期間
Site Scan for ArcGISを導入する際の標準的なプロセスは以下の通りです。一般的なSaaSと同様のステップを踏みますが、具体的な導入期間やアカウント発行までの日数は要問い合わせとなっています。
- 問い合わせ・要件ヒアリング
ESRIジャパンの公式サイト経由で問い合わせを行い、運用規模、対象工種、現在保有しているドローン機体やGIS/CAD環境についてヒアリングを受けます。 - 無料トライアルの実施(21日間)
提供されている21日間の無料トライアルを活用し、自社のiPad端末やドローン機体との適合性、ArcGIS Flightでの飛行制御、クラウド画像処理の精度やWebブラウザ上の計測操作性を検証します。 - 構成検討・見積もり
パイロット数(Full-Access)や閲覧者数(Viewer)、連携させるArcGIS組織環境の構成をもとに最適なライセンス構成を決定し、見積もりを取得します。 - 契約・アカウント発行
契約締結後、Site Scan Managerの組織テナントおよびユーザーアカウントが発行されます。 - 初期設定・運用開始
iPadへのArcGIS Flightアプリのインストール、機体・センサー情報の登録、必要に応じたArcGIS OnlineやAutodeskアカウントとの連携設定を完了させ、実現場での運用を開始します。
よくある質問(FAQ)
- スマートフォンやAndroidタブレットでフライト計画は作成できますか?
- フライト計画および自律飛行制御を行う専用アプリ「ArcGIS Flight」はiOS端末(iPad等)向けに提供されており、Android端末には対応していません。ただし、処理後のデータ閲覧や計測を行うWebアプリ「Site Scan Manager」は主要なWebブラウザに対応しているため、一般的なPC環境からアクセス可能です。
- 指定のドローン機体以外で撮影した画像も処理できますか?
- 可能です。自律飛行制御に対応していない機体であっても、位置情報(ジオタグ)が付与されたJPGまたはTIFF形式の画像ファイルであれば、Webブラウザ経由でSite Scan Managerに手動アップロードしてオルソ画像や点群のクラウド処理を実行できます。
- 無料トライアルは提供されていますか?
- はい、21日間の無料トライアルが用意されています。自社の現場データや対応端末を用いて、クラウド処理の速度やブラウザ上での計測機能を事前に検証することができます。
- 導入後のサポート窓口や日本語マニュアルはありますか?
- ESRIジャパンによる日本語の導入支援およびテクニカルサポートが提供されています。また、公式の画像処理マニュアル、逆引きガイド、チュートリアル、Esri Communityなどの技術情報リソースも利用可能です。
- 契約期間や途中解約の条件はどうなっていますか?
- 定額利用のサブスクリプションライセンス体系となっていますが、最低契約期間や更新・解約に関する具体的な契約条件は公開されていません。見積もり取得時に販売元へ直接確認してください。
- 生成した点群データを他のCADソフトへエクスポートできますか?
- はい、LAS形式などの標準的な点群フォーマットでエクスポートし、外部のCADソフトや出来形管理システムへ取り込むことが可能です。ただし、ファイルのダウンロードやエクスポートを行うには「Full-Access」ライセンスが必要となります。